シミュレーションRPG『フェルシール:アービターズマーク』PS4版紹介。懐かしくも現代的、硬派なファンタジータクティクスゲーム
今月8日から再びスタートした緊急事態宣言下での生活。ここに寒波が勢いを増す冬将軍の到来も合わさって、鬱屈した心持ちを抱えた人も少なくないだろう。私達の生活には熱中できる体験の早急な用意が不可欠。肌寒い1月28日に、DMM GAMESからシミュレーションRPG『フェルシール:アービターズマーク』のPlayStation 4/Nintendo Switch/PC(DMM GAME PLAYER)版が発売される。頭を悩ませつつも、温かなノスタルジーに溢れるゲーム体験を通じて、日々にメリハリを与えてみてはいかがだろうか。本稿はDMM GAMES提供のゲームコードをもとに、PS4版『フェルシール:アービターズマーク』のゲーム内容を紹介するものである。
『フェルシール:アービターズマーク』は、中世風ファンタジーにスチームパンクの要素を組み合わせた世界観が特徴のシミュレーションRPG。同ジャンルおいて往年の名作とされる『ファイナルファンタジータクティクス』や『タクティクスオウガ』『ヴァンダルハーツ~失われた古代文明~』といったゲームをベースとした作品だ。それでいて、歯ごたえのある難易度や、30を越えるクラスと数百におよぶスキルの組み合わせで成立する、キャラクリエイトと言っても差し支えないほどの充実した育成システムによって、他作品に勝るとも劣らない個性を創出している。なお本作の開発を担当した6 Eyes Studioのメンバーはたった2人。プログラミング担当のPierre Leclerc氏と、メインアーティストのChristina Leclerc氏。Kickstarterのキャンペーンを成功させたのち、Steamの早期アクセス配信を経て、夫婦二人三脚で本作を1から創り上げた。
本作の舞台となるのは、選ばれた7人の不死イモータル達が統治する世界テオラだ。イモータルたちは自らの代理人として司法組織アービターを設立したが、長い時を経て中身は腐敗。美しい大地は無法地帯と化していた。そんな中、自らの信じる正義のために職務をこなす人間が1人。傭兵カイリー。彼女は突如として、イモータルの後継者候補である烙印者の1人に抜擢されてしまう。熾烈を極める後継者レースと、イモータルが生まれる要因となった怪物古代の獣の影。今ここに壮大な物語の幕が上がる。
昔なつかしいターン制シミュレーションバトル
先述したように、本作のバトルシステムは特に1990年代後半の国産シミュレーションRPGから得られる体験をベースとした、歯ごたえのある内容へと仕上がっている。ゲーム進行としては擬似的なステージ制を採用し、戦闘ルールはSPD(素早さ)の高い順でキャラクターが行動するターンベースである。画面上部にはキャラクターのポートレートが並び、行動順がひと目で分かるようになっている。攻撃は一方的なもので、カウンターをするにはスキルが必要になる。よって手数を増やすカウンターの用意は極めて重要だ。マップは、高低差を設けたスクウェアマップ。距離の概念に加え、地形ごとに高さの概念が存在し、高低差を無視できるクラスやスキルの採用がほぼ必須となっている。注意すべき点としては、本作はフレンドリーファイア(同士討ち)が可能だ。遠距離を自在に攻撃できるスキルや魔法の類は往々にして仲間ごと焼き尽くすことになるため、敵を1マス押し出すスキルなどと組み合わせながら注意して使っていかなければならない。「特定のマスにキャラを置き増援を防ぐ」などといった内容のリアルタイムイベントも数多く用意されており、先の先を読む立ち回りがプレイヤーには要求される。
加えて敵は全体的にHPが高く、AIも優秀だ。本作は攻撃にあたって方向を指定するシステムがあり、両脇や背後から仕掛けると攻撃の威力が高まる。というより、正面から殴りかかっても攻撃があまり通らない。AIはこれを熟知しているようで、積極的にこちらの背後をとり、攻め立ててくる。この習性を利用して敵を任意の場所へ誘導していくことが本作の戦闘における重要事項である。しかし敵を一網打尽にしようとすると、飛んで火に入る夏の虫。逆に味方側が範囲攻撃で一網打尽にされてしまうため注意が必要だ。そのため先述した遠距離攻撃要員の採用がマストになってくるのである。ちなみにバトル中一度でも戦闘不能に陥ったキャラクターは負傷状態となり、次回の戦闘に限り能力値が普段の10%へと大幅に低下する。次回に限りとは書いたものの、戦闘不能に陥る度に負傷のカウントはスタックするため、負傷状態から抜け出すためにも実質、次の戦闘には参加を控えさせる必要があることは留意しておきたい。ゲームに詰まったら難易度を変更してみるのもいい。設定項目も豊富で、全体の難易度から乱数の調整まで細かく調整することができる。
ここまでは、国産シミュレーションRPGの王道をひたすらに辿る内容と言える。現に開発メンバーの1人であるPierre Leclerc氏はGame*Sparkが敢行したインタビューに対し、「本作の強みは独創的であることではなく、むしろすでに証明されているコンセプトに光を当て、より良いものに仕上げているところです」「本作における一番大きなインスピレーションは、疑うことなく『ファイナルファンタジータクティクス』です。私たちの目標は、現在のUIとデザインを使い、これと似た体験を再現することでした」と語っている。一度でも同系統の作品に触れたことがある方であれば、本作のゲーム設計に対してもスムーズに対応することができるだろう。
しかし、『フェルシール:アービターズマーク』は古典の模倣に収まる作品ではないということを言及しておきたい。ユニークな点としてまず挙げられるのは、戦闘中のアイテム使用が、消費ではなく、使用回数の制限になっていることだろう。HP回復を行うポーションをはじめ、キャラクターの蘇生を行う不死鳥の灰など、戦いをサポートするためのアイテム群は一度のステージ中に使用できる回数が決まっている(使用回数はステージ終了後に回復)。そしてすべての仲間キャラクターが使用できることになっている。これによって俗に言う稼ぎを行っての強行突破ができなくなり、敵のレベルが自分の部隊に合わせて調整されることも含め、ゲーム体験の単純化を防いでいる。なおサポート用アイテムは、初期装備を除き戦闘の中で得られる素材を用い生産することで入手する。装備品に関しても自らの手で作り出すことが可能なほか、隠しクラスを開放するためには生産を通じて専用アイテムを制作する必要がある。
さまざまなキャラクターを雇い作り出すことができる育成システム
そして本作の売りといって間違いないのが、キャラクリエイトとも呼ぶべき育成システムである。『フェルシール:アービターズマーク』では主人公格のユニークキャラクター以外でも、ギルドにて新たに仲間を雇うことが可能だ。名前、性別、ジョブ、レベル、髪や肌などの外見、装備の色まですべて任意で選択できる(レベルに関しては高さに応じてギルドへ支払う金額が増減する)。特にキャラクターのアイコンとなるポートレート風イラストは、男女別に用意されており非常に種類が豊富。自分好みの見た目をしたキャラクターを仲間として引き入れよう。
育成自体に関しては、戦闘中のアクションを通じて獲得したEXPが上限に達することで行われる通常のレベルアップと、戦闘に参加することで獲得するAPを消費して行われるクラスのレベルアップの2種類に分けられる。通常レベルアップに関しては従来のRPGにおけるソレと同じという認識で構わない。本作はキャラクターに対するアクションすべてを通してEXPが手に入るよう設計されており(獲得量は一律ではなく、回復魔法の使用時や敵を撃破したとき多く手に入る)、レベルアップによって上昇するステータスはメインで装備しているクラス毎に設定されたブースト補正を受ける仕組みになっている。
クラスのレベルアップに関しては、APの消費を通じた新たなスキルの獲得という形式で行われる。たとえばスキルを3つ獲得していればレベルは3である。スキルの数だけレベルが存在し、レベルがMAXになるとクラス毎に設定されたステータスが一定量上昇するほか、複数のクラスが一定のレベルに到達すると、新たなクラスが開放される場合がある。クラスはユニークキャラ専用のものを除けば20種類存在し、開放さえしていれば自由に付け替えることが可能。本作はメインとサブ、合計2つのクラスを装備することができるため、使いたいアビリティやステータスの上昇補正など、吟味したい要素は山程存在する。
その吟味を助けるために存在するのが、レベルリセットシステムだ。読んで字の如くキャラクターのレベルを1に戻し、ステータスを初期値にリセットするシステムであるが、クラスの開放状況と獲得したアビリティ及びAPは保持される。これによって限りなくキャラクターのステータスを理想値まで近づけることが可能となる。なおこのシステムの利用について、ステータスに上限値があることや、ゲームクリアに吟味は必要ないことから制作チーム側はあまり推奨していない。特に主人公であるカイリーのレベルをリセットすると加入キャラクターの初期レベルに影響が及ぶため、ご利用は計画的に。また物語が進めばモンスターを捕獲し仲間にすることもできるようになる。モンスターはモンスターで彼らの種族と独自のスキル体系が融合した、人間とはまた違った育成が楽しめる。
このほか、時限ストーリーイベントや特定の条件を満たした際に加入する隠し仲間キャラクターの存在、雇ったキャラクターを一定時間、遠方へ派遣し資源や経験値を獲得するシステムなど、シミュレーションRPGにはお馴染みの要素、システムが揃っている『フェルシール:アービターズマーク』。ダラダラと時間を無為にしがちなコロナ下の生活を過ごす上で、楽しみのラインナップに本作を加えてみてはいかがだろうか。ファンタジーに満ちた冒険譚があなたを待っている。