コロナ禍で窮屈な引きこもり生活を強いられる毎日。刺激の無い緩やかな日々を送り続けていれば、まるで木に成った果実が腐り落ちるように、体だけではなく心も蕩け病にかかってしまいかねない。時にはピリッとした刺激を与え、意識を明瞭に保つ必要があるだろう。丁度いいところに、DMM GAMESから高難易度サバイバルアクション『Outward』のPlayStation 4/Xbox One/PC(DMM GAME PLAYER)版が12月10日に発売される。生と死をかけた冒険を通じて、日々にメリハリを与えてみてはいかがだろうか。本稿はDMM GAMES提供のPS4版ゲームコードをもとに、『Outward』のゲーム内容を紹介するものである。
『Outward』は、箱庭形式の中世風ファンタジー世界を生き抜くサバイバルアクションRPGだ。開発を手掛けたのはカナダのインディースタジオNine Dots Studio。先祖の罪は末代まで継承されるという世界観のもと、物語は難破船から命からがら生存したところからスタートし、保護されるや否やいきなり先祖の借金の返済を迫られる。あくまで凡人であるプレイヤーに対して押し付けられる無理難題と理不尽の嵐。巨大コミュニティの陰謀と奸計が渦巻くメインストーリーを楽しむも良し。社会情勢なぞどこ吹く風、フィールドを周遊し野に生きるも良い。すべてが手探りの中、自らの足と豊富なクラフト要素を信じて、自分だけの物語を紡いでいこう。
本作は、端的に言ってしまうとハードコア・ゲーマーと呼ばれるような、どんな挑戦でも楽しんで受けて立つことのできる人種向きの作品である。リアル志向のサバイバルゲームとして、あえて快適性を削いだり、問いに対するヒントを極力提示しなかったりといった施策を作中随所で採用している。ゲームの攻略難易度としては上位の部類に入るだろう。プレイヤーを選ぶ内容ではあるが、先鋭化されたゆえの面白さもまた詰まっている作品である。
豊富なバッドステータスとアニメーション
サバイバルゲームと聞くとまず脳裏に浮かび上がってくるのが、生活習慣に基づくバッドステータスの数々である。本作はなんと空腹、睡眠、口渇、物資の重量や鮮度&耐久値という、命の危険に関わるお馴染みの要素に加え、ナマ物や汚染水を口に入れた場合に発生するさまざまな病気や常にHPが減り続ける出血、気温由来の風邪、体調不良などもセットでついてくる。
主人公は人間である以前に動物であるため、腹が減ったら食事をし、喉が渇けば水を飲まなければならない。しかし『Outward』では、基本的に飲食物は火を通したり浄水したりするなどして消毒殺菌しなければ病気のリスクが伴ってしまう。ゆえに火を起こすための焚き火セットや調理を行う鍋の所持は欠かせない。また旅先の天気や気候に合わせて衣替えを行う必要もある。砂漠などの暑さ伴う気候では涼しい格好を。逆に寒さが厳しい場所では暖かな服装を着用しなければ快適に旅をすることは叶わないだろう。
またプレイヤーの所持アイテムの重量には制限がある。ここが肝で、プレイヤーは自らの掲げる目標に合わせて、所持品をあらかじめ精査しなければならない。たとえば「寒い地域に行くが、厚手の衣服は防御が薄い」という場合は寒さを緩和するための薬と大量の焚き火セットで耐えしのぐという方法も考えられる。逆に酷暑が猛威を振るう場所では、温度対策はもちろんのこと水分の確保が課題となる。持ち運べる水分量は限られるため、現在所持しているアイテムの選定だけではなく、スケジュールの段階から計画を組み立てる必要があるのだ。本作はリアル志向ということで、ファストトラベル機能や移動を快適にする乗り物が実装されていない。地図には現在地も表示されない。加えて、HPが0になるとMAP中のランダムな場所からリスタートするシステムになっている(時には身ぐるみを剥がされて山賊アジトの牢屋にぶち込まれたり、見知らぬ人に助けられたりもする)。ゆえにスケジューリングは非常に大切な事柄なのである。
さらに旅の途中で野宿を行う際には夜襲の危険から身を守る必要が出てくる。本作は敵からのダメージを受けると最大HPが減少し、スタミナも同樣、運動する度に最大値が小さくなっていく。その回復のためにも定期的に就寝する必要がある。だがそこで襲われてしまえば元も子もない。完全に身を守ることが可能である特殊な場所を探し床につくか、見張りを設定しつつ運に身を任せるか、銀貨を払って宿屋を利用するかの選択が迫られることになる。寝ている間も喉が渇き腹は減るため注意が必要だ。ちなみに睡眠を取ると魔法の源であるマナの最大ステータスが減少してしまう。一人前の魔法使いになるには常に寝不足でいなければならない。目の下のくまが勲章だ。
こうしたさまざまなパラメーター管理を、アニメーションや環境音などを通じて自らのことのように没入し楽しむのがサバイバルゲームにおける醍醐味のひとつではあるが、『Outward』に実装されているモーションは、丁寧に作られている印象を受ける。たとえば本作は睡眠をとるためフィールドに寝床を設置する必要があるが、単なる寝袋の場合と、テントを設営する場合とでその内容が明確に異なる。飲食のモーションや、治療のモーションもきちんと用意されている。筆者のお気に入りはバッグにくくりつけたランタンが揺れるアニメーションである。BGMも秀逸で、壮大な中世風ファンタジーの雰囲気がよく表現されている。
そして実際のところ、パラメーターの管理自体は難しくない。あくまで管理自体は。すべて自らの足を使って手に入れなければならないが、資源自体は世界中に豊富に存在する。得た資源でクラフトを行い薬や料理を重量が許す限り常備しておけば、状態異常などへっちゃらである。チュートリアルも大変充実しており、本編から独立したゲームモードを通じて、サバイバル要素の内容をじっくりと学ぶことができるようになっている。
取り返しの効かない人生物語
押し付けられる無理難題と理不尽の数こそ計り知れないものがある一方で、私達の人生は一度きりだ。『Outword』の物語は選択と結果の連続に満ち、道中さまざまな場所で取り返しのつかない出来事が繰り返されていく。主人公が特別な能力を持たない一般人であるがゆえに、個人の矮小さと世知辛さを否が応でも味わうことになるが、同時に物事を達成した時の喜びはひとしおだ。
その「選択と結果」の代表例となるのが、記事冒頭で説明した借金返済ミッションの後、最初の選択となる「派閥」選びである。信仰の道に生きるか、血の代償を支払い部族を守るための礎となるか、果無い野望を抱き新興国の傭兵として一山当てようとするのか。所属する派閥によって、ストーリーの内容はもちろん、登場人物との相関関係が大きく変動することになる。具体的に言うと、本作には人間の他、意思疎通を図ることが可能なモンスターも登場する。通常であれば友好を深めることができるが、人間中心主義を採る聖職者の派閥に入ると彼らと敵対し戦わなければならなくなる。部族に忠誠を誓えば、志を同じくするものとして争いを回避することができるようになる場合もある。傭兵の道を選べばコミュニティ間の戦争に当然ながら巻き込まれることになるだろう。この派閥選びは後述するキャラクタービルドにも影響するため、慎重に選択することをオススメする。
その後もプレイヤーによる選択と結果の連鎖は続いていく。誰の味方をし、誰の敵となるのか。荒れ狂う時代がうねりをあげる中で、いかにして自らの信念を貫き通すのか。人に恩を売ったら仇で返され、親切を受けたと思えば身売りさせられたなど『Outword』における選択肢はプレイヤーを良いように利用し、人間の尊厳を踏みにじるような内容が目立つ。だが時折、自身に対し皮肉も言わず、純粋に感謝してくれる人間がいたりする。そういった一抹の光明に、私達は喜びを覚え生の充足を得るのである(当然、NPCをひどい目にあわせる選択もある)。
また本作のクエストは「ゲーム内時間で○日以内」というようなクリアまでの制限時間が設定されているものが多い。別段失敗したところでゲームオーバー扱いにはならず、その状況が保存されたまま物語は進行していくが、時には街一つが壊滅し利用不可能になってしまうなど悲惨な結果に陥ることもあるため、達成の後回しはなるべく避けたいところだ。再三になってしまうが、本作にはファストトラベルや快適な移動手段が存在しない。地図も見づらい。さらに死んでしまうとMAP上のランダムな地点に強制ワープさせられてしまう。失敗からのリカバリーに時かかるゲームがゆえ、心が折れないよう、クエスト達成のための計画は入念に行ったほうがいいだろう。
取り返しの効かない要素は何も物語の内容だけではない。人間としての成長、すなわちキャラクタービルドに関しても同じことが言える。本作における戦闘は非常にシビアだ。多体一では基本勝ち目は薄く、一対一の状況に持ち込んでも純粋な武技のみならず設置型の罠や各種魔法など、ザコ相手でもあらゆる手段を用い生をもぎ取っていく必要がある。ステータスは装備した武具に依存するため、持ち物が揃わない序盤は特に厳しい状況に陥ることになるだろう。
そんな状況をいち早く脱するためには、スキルの取得が不可欠。スキルにはマナを消費して発動するものと、スタミナを消費して発動する武器ごとのもの、そしてパッシブでステータスに影響を与えるものの三種類が存在する。スキルは「カザイトの魔法剣」などのカテゴリを象徴する特定NPCに銀貨を支払うことで獲得することができ、システムとしては下位スキル、ブレイクスルー・スキル、上位スキルの3段階が設定されている。下位スキルに関してはNPCに金を払えば際限なく取得することができるが、上位スキルを取得するには前提としてブレイクスルー・スキルを取得する必要があり、これはゲーム中で3回しか獲得することが出来ない。1つの才能を磨きあげるということは他の可能性を捨てることだ、とはよく言ったものだが、使いたい武器や理想とするキャラクター像に合わせてビルドの方向性は慎重に判断しよう。加えてマナに関してはデフォルトで実装されておらず、特定の場所でHPとスタミナの最大値と引き換えにすることでようやく手に入れることができる。これに関しても捧げた数値が返ってくることは一切無いため注意が必要である。
ちなみに本作に登場する武器種は、空いた左手に盾や松明を持てる「片手剣」「片手斧」「片手鈍器」といった片手武器に加え、両手で振るう槍や両手剣、両手斧、ポールアームなどさまざまなものが登場する。遠距離武器には片手で扱える銃とチャクラム、そして両手で使う弓がある。魔法を唱えるための装備も存在し、単に旅の快適化を狙うだけでなく、使いたい武器種に合わせてビルドを考えてみるのも一考に値するだろう。なおサバイバルゲームの例にならって、店売りの武具よりもクラフトで制作する武具のほうが強い。本作では自分で1からクラフトが可能なため、素材の組み合わせが記されたレシピは必ずしも必要になるわけではない。やろうと思えば序盤から強武器を握ることも可能となっている。
そして本作は2人でのマルチプレイが可能。1人では越えられない壁も2人なら越えられる。互いの助け合いや2人ならではのロールプレイを通じて、一人旅とはまた異なる趣を感じ取ることができるだろう。
総じて、『Outward』は主人公が特殊能力を持たない単なる一般人であるという背景を活かすことで、豊富なバッドステータスと取り返しの効かない要素の組み合わせを自然な形で両立させ、困難を越えた達成感や段階的な成長に由来する充実感を強調させる形で面白さを生み出している。充実したアニメーションと素晴らしいBGMはプレイヤーに強い没入を促し、主人公の体験をまるで自分のことのように感じさせるだろう。既に高難易度サバイバルゲームとして高い評価を受けている『Outward』。所持ハードの都合などから手を出せずにいる人は、ぜひ今回を機に手にとってプレイしてみてはいかがだろうか。