スクウェア・エニックスが10月28日、まもなく正式サービスを開始するスマートフォン(iOS/Android)向けRPG『オクトパストラベラー 大陸の覇者』。2019年3月に本作のタイトル発表が行われた当時、私は素直に発表を喜ぶことができなかった。

昨今見受けられる、コンシューマー向けタイトルのスマートフォンへの展開。過去に私がプレイした新天地へと飛び立った作品の多くは、私が愛したものとはまったく異なる形へと生まれ変わった、いや、生まれ変わってしまっていたのだ。ユニークだったUIは界隈にありふれたインターフェースやバトルシステムで組み立てられ、オリジナリティに満ち溢れていたゲームデザインの影はない。あげくにはサービスを間延びさせるために生まれた退屈なシナリオや、ストーリーを進めるためにしばしば半強制される課金システムの導入。そこに過去作のような心躍るゲーム体験は待っていなかった。それらの経験から、本作も私がプレイしてきた作品と同様に、前作の唯一無二であるオリジナリティが失われてしまうのではないかという悲観的な考えに至ったのだ。

『オクトパストラベラー』


Nintendo Switch/Steamにて発売された前作『オクトパストラベラー』は、筆者にとって傑作と呼べるものだった。同年に発売されたさまざまなゲームタイトルのなかで、もっとも楽しめたタイトルといっても過言ではない。往年の名作JRPGを彷彿とさせながらも、現世代のエッセンスが散りばめられたグラフィックス。パーティー編成、ジョブシステム、アビリティによる多彩な組み合わせが生みだす戦略の奥深さと、戦局を見極めて劣勢を一気に覆していく爽快さを秘めるバトルシステム。イベントシーンからバトルへのスムーズな繋がりに胸が高鳴るオーケストラサウンド。人が持ちえる善と悪をリアリスティックに描写する8人の旅人の物語が、やがて一つの壮大な結末へと収束する緻密に練られた群像劇。

それらすべてのピースを噛み合わせることで、唯一無二であるオリジナリティがたしかに形成されていた。それゆえに、スマートフォン向けに贈られる本作発表当時の衝撃はあまりにも大きすぎたのだ。その不安は発表以来拭えないながらも、今回スクウェア・エニックスより本作を先行プレイする機会をいただいた。本稿では、前作との比較をまじえながら、本作をプレイしたありのままの所感を綴っていきたい。

継承された世界観とストーリーテリング

はじめに、ストーリーの骨組みを紹介しておこう。本作の舞台は、原母神オルサによって創造されたオルステラ大陸だ。前作から数年前を描く作品となる。神々の力を宿した指輪に選ばれし主人公たちは、大陸に存在する8つの地方を巡りながら、「富」「権力」「名声」を手中に収める者たちと対峙していく。同じ指輪を持つ彼らの底なしの欲望が世界にもたらす闇、それに抗う人々と交差することで、やがて大陸の覇者へと導かれる物語が紡がれる。

本作は前作と同じく、ストーリーを自由に選択できる魅力を持つ。前作が8人の旅人にスポットを当てたメインストーリーが展開されたのに対して、本作では富・権力・名声を極めし者、各ルートのボスキャラクターにスポットを当てた3つのルートでメインストーリーが展開される。ゲーム開始時、プレイヤーは3つのルートの中から1つを選択する。各物語は章仕立てになっており、選択したルートをある程度進めると、別ルートの物語も解放される。すなわち、各ルートを少しずつ並行して進めたり、集中して1つの物語を紐解いたりといったように、どの物語をどれだけ進めていくのかはプレイヤー自身に委ねられる。

ちなみにゲームプレイの流れは、おおむね前作と同じ。メインクエストとサブクエストが存在しており、フィールドを移動してそれらをこなしていく形式である。クエスト目的を達成するための道中で、敵とのエンカウントバトルが発生。自身の戦略を駆使してバトルに勝利することで、経験値やアイテム、通貨となるリーフが入手できる。経験値を得てレベルアップすることでステータスが伸び、新たなアビリティを習得していくことでキャラクターを成長させることが可能だ。また戦闘で入手したリーフを用いて武器や防具を整え、さらなる強化を図っていく。そうしてパーティーメンバーを強化し、強敵とのバトルに勝利するなどのクエスト目標を達成することでクエスト報酬が得られる。これらのJRPGとして求められる一般的な要素、コンシューマー向けRPGである前作の根幹となるゲームサイクルは、スマートフォン向けRPGである本作にも踏襲されている。


では、本作で語られる物語は前作からどう変化したのか、もしくは継承されたのか。物語の内容について触れていこう。メインストーリーの作風は、前作同様に登場人物の内面をリアリスティックに写し出すものだ。人物の心情を個性的に表現するテキストや、各シーンに抑揚を与える重厚なオーケストラサウンドなど、前作の持ち味ともいえる演劇作品を鑑賞しているかのような独特の演出は健在だ。それらの演出によって表現される一つ一つの物語は、重厚である。物語の中心人物となる性質は善から悪へと前作から変化したものの、信条や価値観が異なる登場人物によって織りなされる群像劇は変わりない。また富・権力・名声と、人が持ちえる欲望をテーマとしたルートごとに、異なるメッセージ性が感じられるだろう。一方で、過剰な欲望が生みだした悪とそれに立ち向かっていく善を描くという一貫性も持ち合わせており、どのルートも心湧き上がらせるものになっている。

それらの物語を視覚的に彩るビジュアル面についても、前作の魅力であるテイストが色濃く継承されている。中世ヨーロッパをイメージさせる町並み。四季折々のさまざまな表情を見せる自然。味わい深いピクセルアートに立体的なフォトリアルの画面効果を加える「HD-2D」を踏襲し、地方ごとに深味の異なる幻想的な風景が表現される。前作をプレイしている場合は、各地方に点在する懐かしい風景に感銘を覚えることだろう。もちろん新規のロケーションも多く用意されており、新たな旅路に目新しさも感じられる。

しかしながら、物語を読み進めていくうえで一つ気がかりだった点がある。それは、初回のイベントシーンをスキップできないことだ。前作を含め、昨今のJRPGにはスキップ機能を取り入れている作品が多くある。それは、ユーザーの中に長すぎるイベントや1度見たイベント、演出の流れが同じようなイベントシーンを繰り返し見るのが面倒だと感じる者が一定数存在するという象徴でもある。本作にもスキップ機能が導入されており、1度見たイベントシーンはスキップ可能だ。ボスとの再戦時など、同一のイベントシーンに対してはスキップ機能を用いて瞬時に読み飛ばすことができる。ただし1度も見たことのない、初回のイベントシーンについては必ず読み進める必要がある。本作は比較的長めのイベントシーンも多く、演出が同じようなイベントシーンが繰り返される場面は少ないながらも、まったくないわけではない。したがって、ユーザーによっては初回のイベントシーンがスキップできないことに煩わしさを感じる場面もあるだろう。


なおメインストーリー以外にも、サイドストーリーやトラベラーストーリー、町の住民に交渉するフィールドコマンドを通じて、重厚なテーマ性を持つメインストーリーとは異なる味わいを持つ、ユーモラスな物語が楽しめる。前作にも存在したフィールドコマンドは、枠組みこそ同じものの、その仕組みは異なる。前作のフィールドコマンドは、「聞き出す」「けしかける」といったコマンドがキャラクターごとに割り振られ、交渉の成功確率はキャラのレベルに依存していた。本作ではキャラクターに依存する仕様を撤廃。すべてのコマンドがプレイヤーに集約され、交渉の成功確率もプレイヤーの影響力に依存する仕様に変更されたのだ。この変更によって何が起きたか。結果として、実行したいコマンドによってパーティー編成を見直す必要がなくなり、利便性が向上したわけだ。

フィールドコマンドについては前作と同じく、対象人物の生い立ちや性格を覗きみられる点が魅力といえる。シアトポリスの町の入口で出迎えてくれる兵士は厳つい風貌から怖がられてしまう事が多い、ヴァローレの町にいる強面の男は、実は森を愛する真面目な木こりだったといったように、町の住民に秘められた設定を知る事で、素通りしていた住民の息づかいが感じられるようになるだろう。


明確に変化したバトル


バトルにおいては、敵の弱点を突いてシールドポイントを削りきるブレイク、毎ターン蓄積されるBP(ブーストポイント)を消費してアビリティ効果を強化するブーストといった、バトルの要となるシリーズ独自のシステムを踏襲しつつ、本作独自のさまざまな変更がなされている。その中でも変化が顕著にあらわれているのが、パーティーメンバー数の増加だ。編成可能なパーティーメンバーは4人から8人へ。一見すると難易度の大幅な緩和にも思えるが、その他の変更点によってバランスが保たれているようだ。

まず大きな差異としてあげられるのは、バトルジョブの撤廃だ。前作では、キャラ固有のベースジョブが持つ性質に加えて、異なる性質を持つジョブを装備することができた。たとえば、近接攻撃に長けた剣士に回復魔法が使用可能な神官をバトルジョブとして装備することで、攻撃面と回復面を両立するキャラクターに仕上げられたのだ。今回のバトルジョブの撤廃によって、個々のキャラクターが持つ性質は固定化されることになる。ジョブの組み合わせによってキャラクターが持つ性質をプレイヤー好みに変更できる点は前作の魅力の一つであったため、この変更は賛否があるように思える。

次に変化として注目したいのは、使用可能なアビリティ数の制限だ。習得済みのアビリティがバトル中にすべて使用可能だった前作に対して、本作では使用可能なアビリティをあらかじめバトル前に3つまで装備する仕様に変更されている。また、パッシブスキルとなるサポートアビリティについても、装備できるアビリティが4つから2つに減少した。結果として、個々が持ちうるスキルのバリエーションは狭まったと感じる。さらに影響ある変更点としては、バトルにおけるアイテム使用の撤廃が挙げられる。そもそも、本作にはHP・SPなどの回復アイテムが存在しないのだ。JRPGとしては、非常に珍しいケースだろう。


8人バトルの楽しさはどうか

これらの撤廃と制限によって、バトルの戦略性がかなり狭まったように感じるかもしれないが、それは否定しておこう。むしろ戦略性は前作から拡充されている。それだけパーティーメンバー数の増加は、バトルシステム全体に大きな変革をもたらしたのだ。どういう変革かについては、以下で説明する。


今作ではパーティーメンバー数の増加によって、前衛と後衛の2人1組・4ペアで構成する隊列の概念が加わった。前衛4人のメンバーが敵と直接対峙し、後衛4人のメンバーは待機要員に該当する。前衛と後衛のメンバーは毎ターン交代することができ、待機している後衛メンバーはターン終了時にHPとSPが回復する。また、交代することで能力値に補正がかかるサポートアビリティも存在する。これらの要素が新たな戦略性を生み出しているのだ。行動順によって戦局を見極め、的確なジョブ・アビリティを備えるメンバーに交代してバトルを有利に展開する。HPやSPが尽きる前に交代し、来たるチャンスをうかがう。攻撃面に特化したパーティーを編成し、回復手段は隊列効果でまかなう。これらの筆者が実践したものを挙げるだけでも、前作からはるかに戦略のバリエーションが広がっていることが理解いただけるのではないだろうか。多くのユーザーがプレイしていくことで、ほかにもさまざまな戦略が編み出されていくことだろう。

また先述したその他の変更点についても、プレイしていくうちにバトルバランスを保つために、辻褄を合わせた調整であるように思えた。バトルジョブは撤廃されたものの、パーティーメンバー数が前作の倍になったことで、実質バトルに介入できるジョブ数は変わりない。ペアとなる前衛の剣士の後衛に神官を配置することで攻撃面と回復面を両立させるといったように、異なる性質を持つキャラを配置することで、前作同様にキャラクターが持つ性質を補う事が可能だ。またキャラクターが持つ性質が固定化されることで、個々の個性が際立ったとも見て取れる。アビリティについては、個々が使用できるアビリティ数こそ減少したが、パーティー全体で見れば持ちうるアビリティのバリエーションは保たれている。さまざまなアビリティを駆使して弱点を発見した時の高揚感、炎・氷・雷・光魔法などのさまざまな色合いで飾られるバトルの華やかさは健在である。さらには、対峙する敵によって組み合わせを変更していく新たな戦略性が生まれたともいえる。パーティー編成やアビリティの組み合わせは前作以上に熟考していく必要があるだろう。アイテム使用については、隊列による新たな回復手段が生まれたことで撤廃したと考えられる。さまざまな戦局において、交代のタイミングをうかがう機会は多い。


ちなみに、後衛メンバーは待機時にもBPが貯まる。ブーストによって猛攻を仕掛け、敵を一掃していく爽快感を味わう機会が増えたわけだ。そのほか、行動順が回ってきたメンバーごとに決定していたコマンドを、ターン開始時にパーティー全体のコマンドをまとめて決定するよう変更された。結果として、コマンドを決定する時間が短縮され、1ターンのバトルアニメーションが繋がれることで、バトル全体の流れがテンポアップしている。また倍速機能も追加されており、利用することで雑魚戦などの快適性が向上する。このように、シリーズ独自のシステムを踏襲しつつ、隊列によって戦略性を拡充、バトルのテンポや快適性にも配慮した本作のバトルシステムは、前作から大きく進化したといえるだろう。

ただし、回復手段についてはもう一歩の配慮を望みたい。本作における主な回復手段には、バトル中における隊列効果やアビリティ使用のほか、レベルアップ、町の宿屋がある。加えて、新たにボス前などで全回復できる「癒しの聖火」も設けられた。またファストトラベル機能も改善されており、訪れたことのある町以外に、各ダンジョンの入口がファストトラベルの対象先に加えられた。よって、パーティーが窮地に陥った際は、たとえダンジョン内部であったとしても瞬時に町へワープして宿屋で回復、その後ダンジョン入口まですぐに戻って再度攻略に挑めるわけだ。しかしながら、先述した回復アイテムの使用が撤廃されたほかにも、フィールド上で回復魔法を使用する手段はなくなっている。ようするにバトル終了時、その場で瞬時に回復する術がないのだ。そのため、強敵となるシンボルエネミーに万全の態勢で挑むために一旦ファストトラベルで町まで回復に戻ったり、あえて別の敵と“回復するための”バトルを行う術を駆使せねばならない場面もあった。この過程は、他のJRPGと比較してみても一手間に感じるものだった。回復アイテムを設ける、フィールド上でアビリティを使用可能にするなど、既存の回復手段とは別途、その場で瞬時に回復できる何らかの手立てを求めたい。


直感的な操作への違和感


そのほか、プラットフォームの違いによって生まれた違和感も存在した。物理コントローラーとタッチ操作による差異、ゲームにおける操作性だ。本作はメニュー、フィールド、バトルと、前作の画面設計、インターフェースをほぼ忠実に再現している。前作と比べても遜色ない画面において、タップ・スワイプ・フリックなどの異なる操作体系でプレイを進行していかねばならないという違和感にしばらく引きずられたのだ。筆者のようなコンシューマー向けRPGの操作に手が馴染んだプレイヤーほど抵抗があるかもしれない。

直感的な操作体系となった本作では、タップを多用する場面が多く存在する。町の人物に話す、建物に入る、宝箱を調べるなどのアクションは、フィールド上に表示されるアイコンをタップすることで実行する仕様になっている。また、パーティー編成・装備変更を行うメニューやバトルにおいても同様に、画面の表示項目を直接タップせねばならない。それらのアクションは、前作のNintendo Switch版ではコントローラーの十字キーとボタンを併用して行えたものだ。前作の手元が固定される操作方法に対して、本作では画面上のタップ場所を確認した後、実際に指でアイコンをタップせねばならない。場合によっては手元が動くこともあるだろう。この前作とは異なる真新しい操作方法は、慣れが必要だと感じた。また、大画面のタブレットを用いたプレイにおいては腕の位置が固定されないため、長時間のプレイでは物理コントローラーで操作する前作に比べて疲労感を感じるものだった。

とはいえ、本作の操作面においては全体を通してさまざまな配慮がみられる。フィールド時の移動操作は、フィールド上にレール状の道が敷かれ、スワイプしている間はキャラクターが移動し、フリックすればキャラクターがレールに沿ってダッシュしながら移動し続ける。ようするに、画面をタッチする頻度が極力少なくなるように設計されているのだ。さらには、スワイプ時の歩く/走るの移動速度やオート移動時に分岐路で止まることができるように変更可能なオプション機能の追加、アイコン表示の距離拡大、ミニマップに表示された踏破済みの道をタップすることでタップ地点までオート移動できるようにするなど、先行体験版をプレイしたユーザーの声を反映した複数の改善によって快適性が追求されている。筆者においては、慣れるまでの小一時間ほど苦戦したのは事実であるが、独特の操作感に慣れていけば違和感は消え、問題なく物語やバトルに集中することができた。前作プレイ済みのユーザーはとまどいを感じるものの、プレイを進めていくにつれて、さまざまな配慮がなされた本作の操作性は問題なく受け入れられるものに仕上がっているといえる。


ライブサービスゲームゆえの懸念


最後に、本作をプレイしたうえで懸念が残る形となったシステムについて触れていきたい。本作の主人公は、実に64人にも及ぶ。初期メンバーは4人。序盤のうちは4人で問題なく進行できるものの、本作のバトルシステムの醍醐味である隊列システムの理解を深めたり、後々のバトルも見据えたうえで、できる限り早い段階で8人パーティーを組みたいものだ。そこで、初期メンバー以外の主人公をパーティーメンバーとして迎え入れるためには「聖火の導き」を利用する必要がある。俗にいう“ガチャ”だ。そう、本作は基本プレイ無料のアイテム課金制が採用されている。聖火の導きを行うには、ゲーム内の仮想通貨となるルビーを用意しなければならない。

本作の仮想通貨となるルビーの入手は、アイテム課金で得られるのはもちろんのこと、メインストーリーの進行や日替・週替任務などの報酬としても入手できる。さまざまなストーリー進行やバトルを重ねていくことで、いくらかのルビーは課金せずとも入手できるだろう。聖火の導きで排出される各主人公には、星3から星5までのレアリティが設定されている。また、キャラクターによっては排出されるレアリティが異なる場合もある。基本的にレアリティが高いほど強力なアビリティが習得できたり、初期のレベル上限が高く設定され、ステータスの伸びしろが大きい“強キャラ”となる。そして強キャラであるほど、ガチャの排出確率は低くなっている。そのため、目当てのキャラのレアリティが高い場合、わずかなルビーでピンポイントに排出を狙うのは困難を極めるだろう。また本作には、キャラクターのレベル上限を引き上げる上限突破の概念も存在する。この上限突破に用いる素材にも、聖火の導きが関わってくるのだ。レベリングが重要となるJRPGにおいては、その影響度も高いことだろう。

これらの要素を考慮すると、本作も昨今にみられるスマートフォン向けRPGと同様に、無料で入手できる仮想通貨の量やガチャの排出確率が、大半のユーザーのプレイフィールに大きく影響する要素となるだろう。冒頭でも述べたが、筆者がプレイした過去にコンシューマー向けRPGからスマートフォン向けRPGへと新たに展開された作品は、ストーリーを進めるため、はたまたキャラクターを集めるために、半強制的に課金を強いるようなゲームデザインだった。そして行き過ぎた課金バランスによって、その作品のユーザーはおろか、シリーズを長らく愛したユーザーすらも離れていってしまったのだ。本作のメインストーリーが、レアリティの低いキャラクターのみで構成されたパーティーでも十分に楽しめるのか。無課金、もしくは常識の範疇での課金でキャラクターがある程度揃えられるのか。それらに関しては、メインストーリーやキャラクターが随時追加されていくであろうライブサービスゲームにおいて、全貌が明らかになるのはまだしばらく先のことだろう。したがって、筆者が持つ課金システムへの懸念は先行プレイ後もなお残ったままである。本作においては、あらゆるプレイスタイルのユーザーが共存できるような運営が継続的に行われていくよう、期待を寄せたいものだ。

ちなみに、本作には対人戦やギルドといったシステムは搭載されていない。ゲームプレイが制限されるスタミナのような概念もなく、心ゆくまでストーリー進行やレベル上げに没頭することが可能だ。ジャンルとしてもシングルプレイRPGが謳われており、それらの点でみれば、コンシューマー向けJRPGと遜色ない体験ができるだろう。こうした点に、スクウェア・エニックスの本作における決意が垣間見える。


『オクトパストラベラー 大陸の覇者』は、独自の操作性や課金システムなど、モバイル展開ゆえの変化にとまどいや懸念を抱いた部分もあった。しかしながら本作の物語、世界観、バトルシステムには、私がかつて愛したオリジナリティがふんだんに受け継がれ、進化を果たした面もある。本作が新たなライブサービスゲームとしてユーザーの声を吸収しながら、前作同様に、多くの旅人から愛される作品になることを一人のシリーズファンとして切に願う。