『デモンエクスマキナ』レビュー。良くも悪くも初心者向けにアセンブルされたメカアクション

私は願った。悪魔に向けて。いつかよこせと。鋼の闘争を。すると悪魔はこう言った。お前の願いは叶わない。だが舞台は用意してやる。『デモンエクスマキナ(DAEMON X MACHINA)』は、人々の内に忘れさられつつある「ロボに搭乗し、動かす」という原体験を呼び覚ます一本である。それ以上でも、それ以下でもない。

『デモンエクスマキナ』はマーベラスより2019年9月13日に発売されたメカアクションゲーム。月の落下と暴走するAI。世界の終わりが始まろうとしている混沌とした状況の中、プレイヤーは1人の傭兵「ルーキー」として血の通うという鋼鉄の機兵「アーセナル」を駆り、立ちふさがる戦場の向こう側にあるという真実を追い求める。なお、発売に先立ち前日譚となるアニメーション作品が公開中だ。本作のストーリーを理解する上で鍵となる情報が詰まっているため、一度目を通しておくことをぜひオススメする。

 

プレイヤーファーストなゲームシステム

幾年月を経てようやく私達の元へ降り立った『デモンエクスマキナ』は、その悍ましい名に似つかわしくないほどプレイヤーファースト、快適な乗り心地を誇っている。今の今まで「3次元戦闘ロボアクション」というゲームジャンルの一切に触れてこなかった人々へ、機械じかけの悪魔は優しく手を差し伸べ、ゲームを遊び終えるその時まで、柔らかくそして暖かく包み込んでくれる。

本作では機体を3次元方向へ動かし、両手に構えた武器で撃つという基本的な動作をはじめ、一時的な瞬間加速や、肩と背中に装着した武装の可動、フェムトを利用した機体性能の向上まで、プレイヤーがアウターとして機体に干渉できる全ての領域が、コントローラーに割り振られたボタンの一つ一つで完結している。右手で攻撃したければ指定のボタンを押し続ければいい。両手で撃ちたければ同時押しすればいい。早く移動したければ加速ボタンを押し続ければいい。複数のボタンを組み合わせ、煩わしいコマンドを生み出す必要はこのゲームにおいて何処にも無い。

また、トゥーンシェーダーによってコミカルに描かれる爆風をはじめとしたエフェクトの数々は、プレイヤーに対し、「自らの攻撃が当たっている」という確かな証明を掲げると共に、心地よい爽快感を与えてくれる。振るとしなるビームソード、彗星の如き美しい軌跡を描きながら飛ぶミサイル。猛然と吼える銃声とニューロンを掻き立てるBGMがここに合わさることで、私達の興奮は最高潮に達するのだ。咲き乱れる爆炎の花園にて銃弾を散らしながら舞い踊る愛機の姿は、プレイヤーの脳裏にある種の全能感すら喚起する。特定の動作の後に発生する特殊モーションは、いい塩梅のスパイスとして効いている。

とはいえ、誰にでも扱えるようなシンプルな操作性であること、そして脳髄を直接刺激したかのようなトリップ体験を与えてくれることと、ゲームとしての難しさ……本作で言う「移動する標的をうまく狙い落とすことができるのか」ということは全く別の問題である。だが安心してほしい。プレイヤーファーストという言葉は伊達ではなく、優しげな悪魔の両腕はレベルデザインの領域までしっかりと届いている。

本作における戦闘、ひいてはミッションにおけるレベルデザインは、プレイヤーに高度な操作技術を要求するものではなく、「消耗戦」を軸にデザインされている。多様な戦法を駆使する強大な一つの「個」と対峙するのではなく、物量でもって押しつぶす「群れ」にどのような戦法でもって立ち向かうか。メタゲーム――即ち、事前の盤外戦術を重視する形になっているのである。

実のところ『デモンエクスマキナ』に登場する敵たちは、ザコ敵、大型、人型、あらゆる種類を含めて、一体一体であれば大した強さではない。銃口の狙いは正確ではなく、プレイヤーに対し攻めっ気があるわけでもない。大型に関しては明確な「倒し方」というものがほぼ固定されており、人型に関して言えば、罠にかかった獲物のように、オブジェクトに絡め取られた姿をしばしば確認できる。戦場に点在する建造物や凹凸のある地形は遮蔽物として、時には死角として、縦横無尽に駆けるアーセナルを拘束する役割を果たす。どうも彼らは視界で捉えきれない敵に対し積極的になれないらしい。いずれも目標をセンターに入れてトリガ―を引き続ければ自然と煙を上げて堕ちていく強さである。また回復を行えるトレーラーはオブジェクトの影もしくは戦場の端に、弾薬代わりのザコ敵は(特定の場合を除き)フィールド内の特定地域にまとまって配置されており、敵を長時間惹きつけられる優秀な僚機達や、自機に備わる分身能力も相まって、補給も簡単にできる。
【UPDATE 2019/09/29 21:00】上段落に関する記述を加筆。

では何を持ってゲーム進行に伴う難易度上昇を成し遂げているのかといえば、敵の「固さ」と、「物量」だ。本作の戦闘システムの一つとして、武器毎に存在する「適正距離」という概念が挙げられる。これは読んで字の如く、適切な射程距離を保ちながら攻撃を当てることで武器の威力が倍化するというシステムである。だが適正距離で打ち込んだ場合とそうでない場合の数値差が極端に大きく、範囲外から攻撃を仕掛けたところで雀の涙ほどのダメージにしかならない。緩やかに動くザコ敵ならまだしも、空間に弾幕を敷きながら軽々と飛び回る相手に適正距離を維持するのは至難の技であり、継続して敵に大ダメージを与えることは難しい。また、大型の敵に関しては弱点以外を攻撃してもダメージの通りが悪くなるよう調整されているため、なおのこと体力が減らないようになっている。そんな敵たちがゲームの進行度合いにつれて、3機も4機も登場するようになる(若しくは強烈にHPの高い敵が一体登場する)のが本作における難易度調整のあり方である。

故にプレイヤーは自然と消耗戦へ突入していく。フィールドに点在する回復ギミックを稼働するタイミングや、本命との戦いの最中ザコから弾薬のドロップを狙うタイミング。複数いる敵機をどうやって分断するか。大型エネミーの弱点部位をどう効率よく露出させるか。

圧倒的な物量と固さでもって迫る敵に対し、限られた弾薬と体力という資源を如何に活用し立ち向かうのかという戦術構築をプレイヤーは要求されるのである。だがたった今挙げた上記のタクティクスは、いずれも戦場の中でひらめきと共に構築するものではなく、プレイヤーの機体操作技術を問うものでも無いことに留意したい。

『デモンエクスマキナ』をクリアするために要求される能力とは、自ら組み上げたオペレーションを忠実に遂行する能力ではあるが、敵が弱いということも含め、その内に小手先のテクニックが介入する余地はほとんどない。かと言って達成までの過程が単純に楽な道のりになるというわけでもない。それ故どんなプレイヤーでも行き詰まる時は行き詰まってしまうが、試行錯誤を繰り返していれば、最終的に全ての関門を突破、エンディングを迎えることが可能となるようデザインされているのである。

爽快感あふれるド派手な戦闘と、ゲームの上手くないライトプレイヤーでも「自らの手でクリアした」という達成感を抱かせる工夫の両立。こだわりの詰まったオリジナルのアーセナルを縦横無尽に動かし、課題を着実にこなしていく楽しさこそ、機械じかけの悪魔が私達へもたらす格別の報酬なのだ。

 

悪魔との契約による代償

プレイヤーファースト、すなわち万人受けを意図した『デモンエクスマキナ』のゲームシステムは確かに「マシンを動かし目的を達成する楽しさ」をユーザーに伝えることには成功している。しかしその反面、コンピューターゲームというアクティビティにおける愉しさの一つ、個々人のプレイスキルを発揮しての「課題攻略におけるやり甲斐」は失われてしまった。具体的に言うならば、プレイヤーの操作技術が介入する余地を限りなく減らすレベルデザインを施した結果、エネミー達が持つ個性の喪失、ミッション内容のマンネリ化が生まれ、それに連なる形でマシンアセンブリをはじめとする、プレイヤー各々のスキルややり込みが直に反映されるシステムが軒並み形骸化してしまっているのだ。

幾度となく記述しているが、本作における戦闘=ミッションのあり方は、プレイヤーの操作能力依存を極力廃しつつ敵を固くし戦闘を長期化させる「消耗戦」を軸にデザインされている。それは裏を返せば「回避が困難な攻撃をしてくる敵」や「特定の武器種ばかり使ってくる敵」など攻撃的な特徴を持ったエネミーがほとんど登場しないということになる。さまざまな敵を倒し続けるゲームであるにも関わらずだ。作中では数多くの個性的なキャラクター達がそれぞれの愛機に搭乗し、プレイヤーの前に壁として立ちふさがるが、文字通り彼らはラベルと強度の違う壁でしか無いのである。大型のエネミーに関しては、先述したとおり攻略法が固定化されているため、初見時には弱点を探る楽しみが存在するが、回答に辿り着いた後には単なる作業でしかない。舞台となる戦場さえ変化があれば抱く印象もまた違ったと考えられるが、大部分が使いまわしというのが実情である。

また本作には独自のシステムとしてパイロットのみでの戦闘アクションが実装されているが、ちっぽけな人間が巨大な撃滅対象に敵うわけもなく。マルチプレイでこそ撃墜された後も友人のサポートが行えるという部分で多少の存在意義があるとは感じられるものの、シングルプレイではあって無いようなものである。

代わり映えのない風景を視界に入れつつ、続々と現れる壁に向けて弾を撃ち込み続けるばかりであるミッションの数々(時々補給をはさみながら)……その退屈さは、序盤から中盤こそゲームからもたらされる「マシンを動かす楽しさ」によって気にならないが、酔いの覚める終盤へ突入した途端に顕在化してしまう。最終局面にも関わらずワンパターンで無個性なミッションが続くなか、特にラスボス戦に関しては酷いもので、強敵と対峙している感覚は一切ない。とにかく大量の弾薬とステージギミックで押し切ることが攻略の前提という、本作の悪い部分を煮詰めたような内容となってしまっている。

ロボットゲーには付き物であるマシンアセンブリのシステム、『デモンエクスマキナ』においてのそれは、プレイヤーが抱える自己満足を具象化するための手段以上の意味を持たない。固くて飛び回るだけの敵に対し、プレイヤーはロックオンの速度と装甲の総防御力、機体の総重量以外のことを考える必要は無い。本作には敵味方問わず部位破壊の概念があり、それに対する回復手段として、撃破済みの人型エネミーからランダムな部位や武器を移植することができる。それでもミッションが達成できるようデザインされているということはつまり、このゲームにおけるマシンアセンブリというシステムの軽さを物語っている。

武器に関しては、適正距離の概念によってどの武器種を使用しても火力が出しづらいという意味で並列化がなされており、任務内容に応じて火器を手に取る楽しみは皆無だ。強いて言うなら威力の高さではなく、補給頻度を減らせる装弾数の多い武器や、そもそも補給の必要ない刀剣など近接武器が強い。逆に距離を開く立ち回りが重要なスナイパーライフルのような武器種は適正距離により役に立たない。

これに続く形で、本作独自のシステムであるハックアンドスラッシュの要素も死んでいる。マルチプレイ以外で固い敵を延々と倒し続けるのが面倒くさいというのもそうだが、なにせ強いパーツや武器を手に入れたところで、ハードモードをはじめとする上級者向けの遊び場が実装されていないことも含め、現状その性能を十全に発揮させる場所はプレイヤーの脳内以外何処にもないのだから。パッシブスキルをもたらす人体改造に関しても自己満足でしか無いが、こちらに関しては予め「強化リセット」が可能という仕様であるため、問題点として採り上げるには及ばないだろう。

以上、「敵が無個性である」ことから始まる一連の指摘は、見方を変えればライトプレイヤー向けの仕様として一貫しているとも解釈できる。しかし筆者の個人的な見解としては、あまりにもゲーム内容が淡白、手軽すぎて実体が無いようにすら思えてしまう。オリジナルのアーセナルを動かすことそれ自体の愉しさで充分満足できるなら良いのだが、半ばファッション・ショーと化した戦場にそれ以上の意味を求めるのであれば、私と同じような感覚を抱くことになるだろう。

 

仕上がりが雑な物語と、職人技光る舞台裏

月の落下を契機に人類へ牙を剥くようになったAI達と人間の激闘を描く『デモンエクスマキナ』の物語は、王道ド真ん中を征く内容となっているが、作中描写が明確過ぎて、SF作品に馴染みのある人であれば、その後の展開について簡単に予想がついてしまうものとなっている。

また戦争モノであるのに全く人が死なず(前日譚では登場人物があらかた死んでいるのにも関わらず)、むしろ死亡シーンが取ってつけたように浮いてしまっている。それ以外にも、命のやり取りをしている最中にも関わらず両者棒立ちで会話をし始めるカットシーンなど、演出面においてはかなり粗雑なつくりになっているという印象を受ける。

その一方で、世界観に関して興味を誘引するためのフレーバーはあまりにも足らない。アーセナルは何処で何を用いて作られているのか、ベースの外の世界はどうなっているのか、ベースに勤務している人たちは誰か、何故アイスクリームなのか、共同体ごとの詳しい特徴は……特にビジュアル、設定共に魅力的なキャラクター達の使い方は非常にもったいない。一言二言喋っては影法師のように目の前から去っていく彼らについて、ゲーム部分以外の場所でもう少し掘り下げても良かったのではないだろうか。

あくまで本作はアクションがメインのゲームではあるが、特製のアニメーションを公開したり、公式HPにてキャラクターの紹介ページを作るなど、大々的に宣伝をしているのだから、ナラティブな部分については丁寧に作ってほしかった想いが拭えない。

トゥーンシェーダーによって描かれる、物語に説得力を持たせる舞台背景やオブジェクト群は実に美しい。その中でもアーセナルのモデリングに関して、「精微なマシン」という題材と線描を省き、マテリアルのテクスチャを単純化させるトゥーンシェーダーは一見相性が悪いように思えるが、汚し塗装をはじめとする色彩表現でもって完全にこれをカバーしている。故に、どことなくリアルな雰囲気をもたせながら、アニメ調で描かれる世界で動かしても違和感が全く無いのだ。恐れ入った。流石機体を動かす愉しさを売りにしているだけはあると言っていいだろう。

作中流れるBGMは戦闘シーンの曲一つをとってもメタル調から歌モノ、テクノまで全く異なるのが面白い。たとえばアイスクリーム店でかかるトラックと、整備画面でかかるトラックは比較するまでもなくジャンルからして全く異質なものだが、何故か統一感を覚えてしまう。インタラクティブなBGM変更を抜きにしてもだ。楽曲制作を手掛けたバンダイナムコスタジオ サウンドチームの職人芸が光っている。

制作陣の関係上、事あるごとに『アーマード・コア』シリーズと比較される本作。こういった小ネタがあるのはシリーズファンとして嬉しい。

機械じかけの悪魔が契約により私達へもたらしたのは、血風吹く闘争の舞台ではなく、鉄の衣装を着て思うがまま踊るためのステージであった。良くも悪くもライトプレイヤー向けにアセンブルされたゲーム内容は、人により児戯にも映るだろう。だが衝動のままに演目を舞うことの愉しさそれ自体が筆舌に尽くし難いこともまた事実である。ロボアクションというジャンルが廃れたという声がよく聞かれる昨今。『デモンエクスマキナ』は、人々の内に忘れさられつつある「ロボに搭乗し、動かす」という原体験を呼び覚ます一本である。それ以上でも、それ以下でもない。

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