日本の『スマブラ』プロプレイヤーたちに訊く、脅威の『スマブラDX』と「EVO 2017」へ向けて (第4回 プレイヤー編 後編)

第3回で紹介した『スマブラ』のゲーム性や『スマブラ for Wii U』の特徴に引き続き、最終回では『スマブラDX』の独自のゲーム性、3人のプロプレイヤー「aMSaさん」「うめきさん」「あばだんごさん」3人の方々の「EVO 2017」への抱負を語っていただく。

――ずっとお話を聞いてると、『スマブラ』勢の方々の熱意がすごすぎるように思うんですが、みなさんの情熱はどこからきているんでしょうか。

aMSaさん
ゲームが好きすぎてですね。

うめきさん
同じく、ゲームが好きすぎてですね。

aMSaさん
単純に買う人が何百万人もいるので、そういった極めた人が出て来る可能性が高いんじゃないかなと。

――分母が大きいのは確かにありますよね。最近発売された『ARMS』なんかは、公式大会がすぐに開かれたり、ゲーム性やシステム面もe-Sportsを意識してきた感じがありますが、『スマブラ』は独自の競技シーンの歴史を歩みながら市民権を得てきた。

あばだんごさん
『スマブラ』をやってきてきた身としては、公式で大会を開いてくれるというだけでもありがたいなと。

aMSaさん
それがないものと思って、これまでやってきたので、同じくありがたいなと思います。

うめきさん
ただただ、うらやましいなって思います。ユーザー大会を主催してる身としては、公式が認めてくれてるってだけで、本当にうらやましいです。

aMSaさん
メーカー側がそういうことをやってくれるのは、モチベーションが全然違いますよね。特に『スマブラ』は、『スマブラDX』の時はイベントがあったけど、『スマブラX』の時には一切なかった。『スマブラ for 3DS/Wii U』が出てまたないのかなと思ったら、発売後に2on2のプレミアムファイトというイベントがあった。これはすごくいいイベントで、むかし「スーパーマリオスタジアム」に出てた人たちが出てきてすごい盛り上がった。しかも2on2なんで、上位同士だけじゃなくて、なにが起きるか分からないのが良い感じでしたね。

うめきさん
今はいい状況ですよね。あと、『ARMS』が出たことによって、これから任天堂のゲームもこういう風に変わっていくんじゃないかって思います。まだわからないですけど、Nintendo Switchで『スマブラ』新作が発売されたら、そういう感じで取り組んでくれるんじゃないかという期待はかなりありますね。

aMSaさん
『ARMS』みたいな新しいIPで攻めてくるのも面白いですよね。新しいIPだとe-Srpotsのイメージをつけて展開しやすいのかなと。『スマブラ』だと、あまりにガチガチすぎるとキャラクターゲームとしてのイメージが崩れることもあると思うので。両方のニーズを満たしているのが一番いいんでしょうけどね。

うめきさん
個人的には今ぐらいの感じで、あとは公式が大会を開き続けてくれたら、それが嬉しいですね。アイテムありの乱闘ルールの大会とかでも、ガチ勢の人たちは出ます。ぜひ桜井さんや任天堂に開いて欲しい話で、公式が大会を開いてくれれば、本当にそれだけでいいんです。

aMSaさん
会場はどこがいいのか、備品があるからどれぐらいの倉庫代がいるのか、車が何台必要になるのかとか、規模が大きくなってくると公式じゃないと限界が出てきます。あと個人主催だけだと、主催者にかかりっきりになってしまいますからね。主催者が抜けた瞬間に全部なくなってしまうことがよくあるので。

――それでは最後に、日本時間の7月15日(土)早朝から開催される「EVO 2017」に向けての意気込みをお聞かせいただきたく思います。

aMSaさん
自分は今回『スマブラ for Wii U』と『スマブラDX』の両方に出ようと思っていたんですが、『スマブラDX』の方に注力すれば少なくともTOP8を狙える位置にきてるなというのを自分で感じていて、『スマブラDX』1本にしぼりました。逆に『スマブラ for Wii U』は、上位陣に対してワンチャンスがあるけど、その代わりに誰にでも負ける可能性があるという状況なので、個人的にはこちらに時間を割くのは厳しいかなと思っています。

もちろんやるからには優勝は狙うんですけど、実力的なものも考慮すると、まずTOP8に絶対に入りたいと思ってます。あと、見て欲しいのは「俺のヨッシー」ですね。ちゃんとかっこいいところ見せるんで、それでテンションを上げて欲しい。たぶん世界中でも俺にしかできないことをするので、ちゃんとそれをお見せしたいですね。

『スマブラDX』はいつ見ても面白くて燃えるゲームだと思うし、今なお進化している。まずはプレイしなくてもいいので、見て欲しい。ただ視聴者が増えるだけでも全然いい。そこから入ってくる人もいるし、興味持ってくれる人が増えるとなおいい。なので、まずは『スマブラDX』をやってる配信チャンネルに足を運んでいただく。それがTOP8だけではなくて本当に大事です。あとはいろいろなキャラクターの極まった動きを見てほしいですね。16年前のゲームなんで、当時やったことがある人も多いはず。昔の思い出と一緒に語って、酒のつまみがてらが見てもらったほうがいいかもしれないですね。

うめきさん
自分は海外で大きい結果を残したことが一度もないので、TOP8に入りたいと思っています。「ピーチ姫」は特殊なキャラなんですが、自分より強いピーチ使いが1人いて、その人を超えたい。結果を出したい。もちろん、最終的な目標は優勝なんですけどね。あとは自分にしかできない即死コンボを何度も練習しているので、ここぞという時に1回だけは見せたいですね。それに配信で見ている人たちを盛り上げたい。勝ちたいのと盛り上げたいのと、半々の気持ちですね。

あばだんごさん
目標はTOP8と言うとかぶってしまうんですけど、僕は一昨年も去年もTOP8に入っているんですよ。「EVO」でTOP8に連続して入っているのは4人しかいない。なので今年TOP8に入ることができれば、3年連続TOP8という肩書が手に入る。TOP8が欲しいですね。

あと、去年はチームに所属していなかったので単純に上位に行きたいなと考えていたんですが、チームに所属してからはプレッシャーを感じつつ環境を力にできているのかなという自分なりの課題がありますね。結果が出せなかったらどうしようかなとか、プレッシャーを跳ね除けられるのかとか考えています。

見て欲しいところは……まあ正直に言えば、日本と北米のレベルを比べると、北米の方が確実に上なんですよね。なので、自分自身が残ることができるのかわからないですし、自分じゃなくてもいいんですけど、TOP8に残れそうな日本人の選手は何人か出ているので、日本勢をぜひ応援して欲しいなと思います。昨年はTOP8に3人残れたんですけど、明らかにできすぎだったんですよね。今年はどうだろう、1人でも届くことができたらいいかなって。選手がプレイしている量、大会の質と量、理由はいろいろありますけど、それぐらい北米の選手との差は明らかに開いていると思っています。なので、1人でもTOP8に残ってほしい。あわよくば自分がという感じですね。

――プレイヤーの立ち位置から見ても、日本と北米のレベルはそこまで差が開いている。

あばだんごさん
トッププレーヤーは特に差が出ていますよね。海外の大会は日本人があまりいかないので、シードでの差が出てしまうというのもあります。海外のトッププレーヤーは間違いなくトップシードがもらえる。

aMSaさん
『スマブラDX』では、今年は日本から十数人ぐらいが行く予定です(※編集部注釈: 今年は『スマブラ for Wii U』もふくめ約40人が日本から参戦予定)。これまで『スマブラDX』に関しては、アメリカが最強でヨーロッパもすごく強くて、日本はそれらの地域と比べるとすごく下でした。プレイヤーランクのトップ100に残ってるのが日本人は2人しかいない。ただ、自分も『スマブラDX』のプロは兼業という感じでやっていますが、そのなかで日本のレベルも少しずつ上がりつつあるので、TOP32に残りそうな人が少しずつ増えています。TOP32まで残るには実は大きな壁がありまして、毎回日本のトッププレイヤーが海外でやるときには33位とかで終わるんですよね。

よく知らない人は、『スマブラ』って日本のゲームですし、日本人が勝てないなんて思っていないんじゃないかと思います。でも実際には北米や欧州の方が強いという現実があって、そういうのも含めて観客の人には応援していただきたいですね。とりあえず、勝利条件を定めるとするなら、日本人がTOP8に入るということになると思います。

あばだんごさん
そうですね。『スマブラ for Wii U』に関しては、3日目に出場できれば勝ちです。逆に3日目以外は全員負けです。

aMSaさん
『スマブラDX』は、今年は2日目で終わりなんですけど、見てほしいですね。観戦するときに「フォックス」を見かけたら、「これ1フレームで出る無敵技なんだよ」とか、「ジャンプキャンセルできるんだよ」とか、自慢して欲しいですね。

――応援しております!『スマブラ』の競技シーンも、これからさらに発展を遂げていきそうです。

■運営編
第1回 「EVO参戦までの国内競技シーンを紐解く
第2回 「EVO参戦後に急成長を遂げた競技シーンの軌跡
■プレイヤー編
第3回 「ほかの対戦・格闘ゲームとなにが違うのか?
第4回 「脅威の『スマブラDX』と「EVO 2017」へ向けて」

>次ページ: 編集後記

Nobuhiko Nakanishi
Nobuhiko Nakanishi

大学時代4年間で累計ゲーセン滞在時間がトリプルスコア程度学校滞在時間を上回っていた重度のゲーセンゲーマーでした。
喜ばしいことに今はCS中心にほぼどんなゲームでも美味しく味わえる大人に成長、特にプレイヤーの資質を試すような難易度の高いゲームが好物です。

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