日本の『スマブラ』プロプレイヤーたちに訊く、脅威の『スマブラDX』と「EVO 2017」へ向けて (第4回 プレイヤー編 後編)

第3回で紹介した『スマブラ』のゲーム性や『スマブラ for Wii U』の特徴に引き続き、最終回では『スマブラDX』の独自のゲーム性、3人のプロプレイヤー「aMSaさん」「うめきさん」「あばだんごさん」3人の方々の「EVO 2017」への抱負を語っていただく。

第3回で紹介した『大乱闘スマッシュブラザーズ』独自のゲーム性や『スマブラ for Wii U』の特徴。最終回となる今回はそれに引き続き、2001年にニンテンドーゲームキューブにてリリースされた『スマブラDX』の独自のゲーム性を、3人の『スマブラ』プロプレイヤー「aMSaさん」「うめきさん」「あばだんごさん」にお聞きしていく。歴史編では高い完成度を誇ると伝えられていた『スマブラDX』は、なぜ発売から10年以上が経過したいまもプレイされ続けるのか。さらについに明日開催となる「EVO 2017」へ参加する3人に、大会への意気込みを語ってもらった。

左から「あばだんご」さん、「うめき」さん、「aMSa」さん

※『スマブラ』DX参考映像 「Kings of Cali 4」にてスマブラ5神の1人「Mew2King氏(シーク)」と戦う「aMSa氏(ヨッシー)」

――『スマブラ for Wii U』に引き続き、『スマブラDX』独自のゲーム性に関してお話をおうかがいしてもよろしいでしょうか。

aMSaさん
『スマブラ for Wii U』でも多くの知識があったんですが、『スマブラDX』はさらに自由度が高くて、細かなテクニックがとても多いです。基本的なルールはまったく同じなんですが、競技ルールにおけるストックの数は『スマブラ for Wii U』の2つに対して『スマブラDX』は4つですね。これは、ほぼ一瞬でストックを落としてしまうからで、このゲームではあまりにも早く撃墜が発生してしまうんですね。

――スピードが早いというのは、ゲームの展開が早いという?

うめきさん
早いです。1コンボで相手が落ちたりしますね。

あばだんごさん
それに操作も忙しいです。aMSaさんの手元はヤバいですよ。

aMSaさん
まずゲームの操作的な面で見ると、『スマブラDX』は先行入力がほぼないんです。何か技を出したあとに行動しようとしても先行入力が効かないので、プレイする人の操作スキルによってキャラクターのスピードがまったく違います。

――それは皆さん、入力をビタ押し(※ 技や行動が出終わったあとの特定のタイミングにボタンを入力すること。0フレーム目押しとも)されているということでしょうか?

aMSaさん
みんなビタ押しでやっていますね。技の硬直だったり、くらった後の行動だったりを把握しています。

それとこのゲームは、走ってから反転ダッシュする動作がとても簡単にできます。これも『スマブラ for Wii U』と違うところですね。走っているモーション中であればいつでも反転することができるので、反転して相手の行動を釣って差し替えしてというパターンが基本になってくる。早いスピードで走っていると相手は技を置きたくなるんですけど、動きに釣られて置いてしまうと差し替えされるんですね。

『大乱闘スマッシュブラザーズDX』 image by official site

――(実演中の手さばきを見ながら)コントローラを動かす音が『スマブラ for Wii U』とはまったく違いますね。

aMSaさん
常時キャラクターが動き回っているので、みんなカチャカチャとすごい音が鳴りますね。ダッシュがいつでも反転できるので直感的に操作しやすくて、プレイしている側としては、左右にスティックを倒してるだけでもけっこう楽しいです。

あと、これも『スマブラ for Wii U』にはないテクニックなんですが、スティックを倒した方向に空中緊急回避をすると一瞬止まってから後隙で降りていくんですけど、これを地面で最速でやることで「絶空」と呼ばれる動きができます。

――「絶空」。

aMSaさん
「超絶低空空中緊急回避」の略なんですけど、これを組み合わせて「走る」「反転」「絶空」でキャラクターの位置を調整しながら戦っていく感じですね。これらで地上戦をまず制覇する。あとは空中攻撃を出すときに、けっこう後隙があるんですけど、これを「着地キャンセル」というテクニックを使って着地の隙を半分にすることができます。これはもう基本的に上位の『スマブラDX』プレイヤーは全員やっています。やり方は着地する瞬間にガードボタンを押します。

このゲームは着地キャンセルのシステムがあるので、シールドがとても弱いです。着地ギリギリで行動すると、基本的に攻撃した側がずっと有利になります。ガードを張ったときにどんどん攻撃を置く感じで、基本的に攻めが強いゲーム性です。ただ、「フォックス」だけはガードから即リフレクターが出せるのでカウンターできます。

――これらの操作を毎回やっている……?

aMSaさん
毎回です。これがデフォルトです。これをミスしたことによって手痛い反撃をくらって撃墜されるとか、ざらにありますね。そういったミスから撃墜するコンボは、テンプレート化されています。

――ほかにも『スマブラDX』ならではの要素とは。

aMSaさん
さらに『スマブラ for Wii U』との違いに関しては、このゲームでは崖をつかんだ直後に行動することができます。この時、崖をつかんだ瞬間から30フレームぐらい無敵がある状態になるので、崖で様子を見つつ無敵を復活させて攻撃することができますね。これに関してもテクニックがありまして、崖からの転がり上がりとその場上がりは『スマブラ for Wii U』よりもさらに後隙が出るんですね。基本的にこれらをやると手痛い反撃をくらってしまうので、「崖絶空」というテクニックを使います。崖を離してジャンプしてから、地面に近い状態の時に絶空をして登って滑っていく。これをすると、地面に着いて動ける状態のときにまだ崖捕まりの際の30フレーム無敵が残っている。これが「崖絶空」といって、すごく大事なテクニックです。

ただ、「崖絶空」をするときに入力を失敗すると、落ちて自滅してしまうことがあります。逆にそういうのを見たときは、「崖絶空」をミスったんだなと思ってもらえればいいです。あと「崖絶空」を失敗したときによく出るのが、崖のジャンプ上がり。『スマブラ for Wii U』だとジャンプしたあとにすぐ動けるんですけど、『スマブラDX』では地面に着地するギリギリまで隙だらけになる。これも間違えて出してしまうと、手痛い反撃をくらいます。こんな感じでリスクがあるテクニックなんですが、最大を求めるためには使っていかなければならない。

あと一つ、崖は1人のキャラクターしかつかむことができないですね。なので復帰中の相手が崖をぴったりとつかもうとしたときに、復帰阻止する側が崖をつかんだままにしておくと、相手はそのまま落ちていきますね。また、一度復帰阻止する側の攻撃があたると、簡単に復帰阻止されてしまいます。『スマブラ for Wii U』の「ベヨネッタ」みたいな復帰が強いキャラは『スマブラDX』』にはそれほどいないので、外に出るとなかなか帰ってこれない。

――試合中は多数のテクニックをフル活用しつつ操作入力を続けている感じになりますね。

aMSaさん
それぞれのテクニックは単発なら出せるはずなんですけど、組み合わせがとても多いんです。もし『スマブラDX』を格ゲーに含めるとするなら、一秒間あたりの入力は一番多いゲームだと言われてます。コンボをやっているときの硬直も長いので、かなりつながります。一度のコンボで撃墜されなければ安いと言われるほど。

――上位陣でも操作のミスはやはり出ますか。

aMSaさん
出ますね。フルセットの試合の最後の1ストックがミスで終わってしまうこともざらにあります。あとは有利な状況で試合を進めていたのに、ある失敗で流れが悪くなってしまい一気に逆転されてしまったり。1人で練習するときは、各テクニックをずっと反復練習するといったこともやります。

フォックス image by official site

aMSaさん
さらにこのゲームの大事なシステムの1つに「しゃがみ」があります。これは単純にしゃがんでいるだけなんですけど、この状態だと吹っ飛びの硬直がものすごく弱くなります。アーマー耐性みたいなものですね。これを使ってしゃがみで相手の攻撃を耐えてからカウンターすることができます。実はガードするよりも、しゃがんだ方がいい時もありますね。ただ、このしゃがみにも弱点がありまして、しゃがみでは耐えられない技もあります。つかみにも弱いですね。上位のキャラクターはしゃがみ耐性のある技を持っていて、「フォックス」だとリフレクターなどがそうですし、「ピーチ姫」だと下スマッシュになります。「ピーチ姫」の下スマッシュはかなり強い技で、発生5フレームで攻撃判定が5回出るんですよ。その上、一発一発の威力が高い。なので、これに対してしゃがんでしまうと、一気に持っていかれてしまう。

――「フォックス」の話が何度か出てきましたが、彼はどのような立ち位置のキャラクターなんでしょうか。

aMSaさん
『スマブラDX』でもっとも使われるキャラクターですね。このゲームの最強キャラクターです。最強クラスとかではなくて、「フォックス」が一強です。基本的にみんな使えます。

あばだんごさん
『スマブラDX』プレイヤーの半分以上が「フォックス」使いですね。

aMSaさん
トップ100のプレイヤーランキングが去年発表されたんですけど、半分以上が「フォックス」使い、もしくは「フォックス」も使えるプレイヤーです。

――「フォックス」が完全に一強……ほかに選択肢があるとしたら、どのキャラクターになるんでしょうか。

aMSaさん
次は「ファルコ」ですね。これは「フォックス」のマイナーチェンジ版で、これもなかなかクセのある、ズルい技をたくさん持っています。ただ、復帰だけが弱い感じですね。

ファルコ image by official site

aMSaさん
で、「フォックス」というキャラクターなんですけど、最強たる理由はスピードにもあるんですけど、もう1つは下B攻撃の「リフレクター」ですね。これが発生1フレームで全体無敵の攻撃判定あり、しかもジャンプキャンセルすることができる。ジャンプでキャンセルできるまでわずか4フレーム。ジャンプキャンセルができるので、「絶空」につなぐこともできまして、「絶空」して「リフ」してから「リフリフリフリフ」とつなぐことも可能です。

――これは一般的な「フォックス」プレイヤーなら必須のテクニックになるんでしょうか?

あばだんごさん
「フォックス」を使う人にとっては普通です。

aMSaさん
ジャンプでキャンセルできるし、ガードから即リフレクターもできます。あとこのゲーム、「ジャンプキャンセルつかみ」という謎のシステムがあって、走ってからつかむと隙があるんですけど、一度ジャンプ入力してからつかむと、その場でつかむのと同じ後隙になるんです。これを使うことで、リフレクターからのつかみがそのまま通る。「フォックス」はつかんだ後のリターンがとても大きいキャラクターなんですね。たとえば「フォックス」対「プリン」というシチュエーションでよくあるのは、「プリン」を50パーセントちょっとぐらいで上投げしてから攻撃を当てて撃墜みたいな。あとは、上スマッシュの威力がものすごく高くて発生7フレーム、「ピーチ姫」であれば80パーセント弱ぐらいで撃墜できる。上スマッシュはリフレクターからもつながるので、どんな状況からでも撃墜できます。

ピーチ姫 image by official site

――先ほど、しゃがみ耐性のある技の話では「ピーチ姫」が出てきましたが、こちらはいかがでしょう。

aMSaさん
最上位のプレイヤーが使っていますね。『スマブラDX』の「五神(※海外における『スマブラDX』の最強プレイヤー5人を指す言葉)」の一角である「Armada」という選手が使っていて、五神以外は「ピーチ姫」で全員倒してしまう。

うめきさん
これだけ「フォックス」使いが多いなかで、優勝するのは意外と「ピーチ姫」だったりしますね。1位と2位が「ピーチ姫」「プリン」というのはけっこうあります。

aMSaさん
ほかのキャラクターは着地隙をキャンセルで埋めるんですけど、「ピーチ姫」は「空中浮遊」を使ったあとに攻撃すれば、着地の隙が自動的に4フレームになります。これを使えば、相手のガードに対する固めだったりとか空中攻撃が、ガードさせて有利という展開になります。「ピーチ姫」は空中緊急回避の使用がちょっと違うというのも特徴です。あとこの時、「ピーチ姫」は体が少しZ軸方向へと傾いているので、相手の攻撃を避けることができます。

あばだんごさん
無敵属性ではないんですが、軸がずれているので攻撃は当たらない。『スマブラ』には基本Z軸があって、攻撃が当たらないタイミングがあります。

――キャラクターランクとしては、「フォックス」「ファルコン」「ピーチ姫」が三すくみになっているような?

あばだんごさん
三すくみではないですね。やはり一強は「フォックス」です。

aMSaさん
Sランクが「フォックス」、あとAランクが4、5人という感じですね。ただ、「フォックス」がすごく強そうに聞こえると思うんですけど、弱点はいくつかあります。コンボにとても弱くて、一撃を当てられるとそのまま撃墜されます。「ピーチ姫」だと「フォックス」に対して投げが通ります。あと、復帰が弱いのでワンチャンスで持っていかれるときがある。崖外の「フォックス」の駆け引きはかなり熱いですね。

プリン image by official site

――かつて『スマブラDX』をプレイしていたプレイヤーとしては、「プリン」は弱いキャラクターというイメージが強かったです。キャラクターランクの上位に名前が出るとは。

aMSaさん
「プリン」は空中後ろ攻撃の判定がものすごく強いので、それでひたすら壁を作って相手を倒すという感じですね。あとは横移動の制動が効きます。崖つかみで無敵が付与されるのを利用して戦うこともできる。

――お話を聞いていると、同じシリーズ作品でありながら『スマブラ for Wii U』とはまったく違いますね。最大の違いは早くて忙しい。

aMSaさん
まったく違いますね。「フォックス」は操作精度を求められすぎて事故も起きるんですけど、慣れてくるとポテンシャルがあるんで、自分にしかできない動きができます。

――『スマブラ for Wii U』をプレイしているプレイヤーからすると、『スマブラDX』はどうですか。

あばだんごさん
自分も『スマブラDX』は少しやっていたんですが、『スマブラ for Wii U』との大きな違いは、操作が難しいので操作量と技術で格下を抑えられるんですね。操作だけで勝てる場合がある。読み合いのレベルに達するまでにかかる時間がものすごくて、それがきついですね。『スマブラ for Wii U』は操作は簡単なんですけど、読み合いの回数が桁違いに多い。だから『スマブラDX』のプレイヤーが操作が簡単だからといって『スマブラ for Wii U』をやっても、簡単に勝てるわけではない。読み合いに関しては『スマブラ for Wii U』の方が難しい場合が多いです。

――同じシリーズなのに、操作の『スマブラDX』、読み合いの『スマブラ for Wii U』と、本当に性質が違う。

aMSaさん
『スマラブDX』はまさに対戦アクションゲームという感じですよね。操作でできるだけ読み合いを減らすことになる。大会では、操作が難しいからここは妥協しようとかいうこともあります。

――操作で勝敗が決することも多いのなら、自己との戦いになってきそうです。

aMSaさん
勝っても負けても自分のせいにしやすい部分がありますね。自分が操作できれば勝てる。できなかっから負けた。だから実力の差が激しくでます。ワンチャンスがほぼなくて、実力どおりの結果になる。実力のある方がたとえ自滅してストックを2回落としても、やはり実力のある方が勝ったりするのが普通です。

――『スマブラDX』を見るときの楽しみは、やはりそういう部分にある?

aMSaさん
そうですね。あとはコンボがガンガン入るんで、観客の方のテンションが上がりますね。それに同じような試合展開があまりないです。

うめきさん
受身も盛り上がりますね。さっき言ったベクトル変換とヒットストップずらしを利用した受け身ですね、ふっとばされたときに下方向にすると受身が取れる。

あばだんごさん
「Mew2King」の防御テクニックは、本当にすごいですね。

aMSaさん
あとは台の使い方も違うかもしれませんね。『スマブラDX』は「絶空」を使ってすぐ台に乗ることができます。なので、台を使ってコンボをさらに伸ばしたりします。上方向に敵を投げて、「台絶空」ですぐに台に乗って、そこからまたコンボを伸ばす。

あとこのゲームは、相手をダウンさせる状況が多いです。その時に相手の動きをしっかり見て読みを通す。立っている側が有利なので、ダウンをした後にどういう動きをするかは、すごく大事です。「フォックス」はすごくダウンしやすいので、一回ダウンさせてから展開を有利に持っていくことができます。ただ、「フォックス」は発生1フレームのリフレクターを持ってるので、こっちがちょっとでも遅れるとリフレクターで大ダメージを受けてしまう。なのでダウンしたからとつかみに行くんですけど、それが間に合わないと判断をした場合には一度後ろに下がってスカさせてから攻撃する。このゲームはその辺の展開がめちゃくちゃ早いですね。

それと、このゲームは相手の飛び道具を跳ね返すことができます。「フォックス」の飛び道具はダメージを蓄積するためだけのブラスターなんですけど、逆に言えばワンパターン相殺をブラスターで埋めることができます。「ファルコン」のブラスターはちょっと遅くて、なおかつ相手が硬直するようになっているので、ジャンプキャンセルと併せて攻撃するという動きがテンプレになっている。その対抗手段としてあるのが、猶予2フレームの「シールドリフレクト」ですね。難しいテクニックなので、その後のシリーズではなくなっています。

シーク image by official site

aMSaさん
あとはキャラクター的な話に戻ると、「フォックス」が一番強いのが前提ですけど、ほかにも強いキャラクターとして「シーク」が挙げられます。例によって、つかみからのコンボ火力が高い。下投げからつかみがつながったりしますね。あとやっぱり針も強いですね。針のダメージが最大17パーセントくらいあって、復帰阻止にも使える。ただ、「シーク」は『スマブラ for Wii U』だと復帰が強いんですけど、『スマブラDX』だと復帰がすごく弱いです。でも立ち回りも強いし、どんな場面からでも持っていけるので強いです。上から3番目辺りのキャラクターですね。「フォックス」「プリン」に次ぐ最上位のキャラです。強い人が使っていると、すごいスタイリッシュでかっこいいですね。このキャラが唯一きついのが、「フォックス」と「ファルコ」の上位2キャラ。

あと強いのは「キャプテンファルコン」ですね。捨て技が多いです。

キャプテン・ファルコン image by official site

――捨て技が多いというと?

aMSaさん
いらない技ですね。地上攻撃は発生が遅いので、基本的に空中技で差し込む感じのキャラクターです。空中前攻撃の膝がものすごく吹っ飛ぶ技なんで、空中攻撃から膝、つかんでから膝、とにかく膝を当てるキャラクターです。相手がなにか差し込んできたら、ひたすら膝。ショートジャンプで飛んで差し込んで、なにか出てつかんだら膝。

――膝を当てるキャラクター。

aMSaさん
空中の軌道制御はしやすいので、「キャプテンファルコン」使いはどんどん外に飛び出していきますね。会場がとても盛り上がる。「キャプテンファルコン」が勝っていると、みんな応援しますね。

うめきさん
とても愛されているキャラクターです。

aMSaさん
ただこのキャラクター、体重が重いのはいいんですが復帰がきついのと、あとガードからの暴れる技がまったくない。攻撃の早いキャラクターに固められると、やりたい放題されやすいキャラでもあります。ただ会場の盛り上がりはすごいですね。

――使っていて楽しそうなキャラクターですね。

アイスクライマー image by official site

aMSaさん
嫌われているキャラクターになるんですが、ほかには「アイスクライマー」がいますね。「EVO 2013」で投げハメを世界中に披露しました。『スマブラ for Wii U』の方は、相手をつかんだあとに1秒間は連続でつかみが入らないシステムになっているんですけど、『スマブラDX』はいくらでも入ってしまうのでハメが可能なんです。「アイスクライマー」は2人のキャラクターなので、一度捕まると2人で999パーセントまでずっとハメることができてしまう。「パシパシ」と呼ばれてますね。タイミングよく相方が横強を当てて、それが入ってるあいだに相方がつかんで投げる。片方が撃墜されてしまうともうできなくて、1人になってしまうとキャラクターランクでは下から数えた方が早くなる。でも上手い人はそれを読んで釣ってきたりします。投げハメができるからといって最強ではないです。

――実際の大会でもこの投げハメはよく見られますか?

aMSaさん
実戦でも可能なハメですね。「Mew2King」は、「アイスクライマー」と対戦していつも萎えています。ハメ技の上に見栄えも悪いんですよね。最近では「パシパシ」のリズムにのせて観客が「はいはい」と合いの手を入れたり、盛り上がる時もあるんですけど。

ヨッシー image by official site

aMSaさん
自分が使っているのは「ヨッシー」で、「ヨッシー」と「ピーチ姫」共通なんですけど、ジャンプを使った瞬間にちょっと下へと下がるキャラクターがいて、二段ジャンプで攻撃して低空攻撃を繰り返して固めるテクニックがあります。これは『スマブラDX』だけでできます。

うめきさん
そこにジャンプキャンセルとか「絶空」とかを絡めていくと、すごく気持ち悪い動きになります。

――キャラクターモデルの見た目通りの当たり判定になっているのは面白いですね。あと誤解をおそれずに言えば、全体的に『スマブラDX』の動きはとても気持ち悪い。

aMSaさん
わかりやすい気持ち悪さですよね、「ヨッシー」には特徴的な動きがいろいろあります。2段ジャンプを使っているときにアーマーがあるので、これを使って相手に反撃を与えることができるんです。『スマブラDX』ではわりと高パーセントまで耐えてくれる。しゃがみと同じぐらいは耐えられます。

あとはブロッキングっていう技術があります。「ヨッシー」はガードすると卵になるので、ガードを解除するか回避するかしかない。ただ、自分が動ける時にビタ押しすると、卵になる前に6フレームだけ全身無敵状態になります。それを利用すれば相手の掴みも回避できる。このゲームの仕様で、全身無敵なんですけどヒットストップがかかる状態になる「当たりアリ無敵」というのがありまして、ブロッキングもそれと同じ状態になる。しかもビタ押しした時だけジャンプキャンセルできる。これを使ってジャンプキャンセルからのカウンターなどが可能になります。

これの面白いところは、相手だけがヒットストップがかかるという点。「ヨッシー」のジャンプは5フレームなので、相手が動けるころにはヨッシーがジャンプしている。そしてニュートラル攻撃が3フレームなので、合わせて8フレームで攻撃を出せます。その上、相手が空中前攻撃とかを出したときに着地の隙も発生するので、これが成功するとたいてい反撃することができます。『スマブラDX』のゲームシステムに上手くマッチしている技術ですね。

――「ヨッシー」はキャラクターランク的にはどの辺りに位置するんでしょうか。

aMSaさん
ちょうど真ん中くらいですね。少しずつ上がっていて、今では大会でもたまに使われるようにはなっています。あと「ヨッシー」はコンボ火力がとても高いです。ある程度スピードもあって、空中上攻撃のお手玉が非常に強いですね。唯一の「ヨッシー」の弱点は、空中上攻撃以外の攻撃判定が弱いんですね。見た目通り、攻撃判定とくらい判定が両方突き出ていて、鼻が出てるところに攻撃が当たってしまう。

けっこう重いので状況次第では200パーセントくらいまで耐えることができるキャラクターで、ワンチャンスをものにできれば勝ち切ることができる。ただ、予想外のリスクもあるキャラクターなので、その辺りを把握して上手く動かさないといけない。それに、このキャラクターはいらない技がほとんどないんですよね。たとえば「ピーチ姫」だと横スマッシュなど弱くていらない技があるんですけど。

ほかには、つかみがちょっと弱いかなと思いますね。リターンは大きいんですけど、ベロの先端につかみ判定がないので、たまにつらい状況になります。「ヨッシー」の脱出つかみ判定がZ軸なんですけど、そのために一部のキャラクターがつかめないという。この点だけはどうしようもないですね。

うめきさん
逆につかまれてしまう。

※「Tempo Storm」に所属するスマブラーAxe氏によるZ軸解説映像

――いろいろとキャラクターがでてきましたが、上位キャラクターはだいたいどれくらいいるんでしょうか?

aMSaさん
地上戦の刺しあいは「シーク」とか「マルス」とかが強い。「ファルコン」に関しては差し返しの投げですね。つかんでしまえば勝ちがみえる。それに対抗するには深めの差込みを打ち出したり。このゲームは引いてしまうと背後に崖があるんで、どこまでも引いているわけにもいかない。でも崖際に自信あるから、俺は後ろに引いて崖つかみ無敵を利用しながらブラスターを撃つぜって人もいます。

大会の上位に上がってくるキャラクターは、だいたい10人ぐらいです。いずれのキャラクターでも、いまなお新しいテクニックが見つかったりしています。

――その歴史の長さが、さきほどのいい意味で気持ち悪い動きにつながってるんだなと思いますね。

aMSaさん
極まってますよね。今でもプレイヤーの情熱が本当にすごいです。

>次ページ: 『スマブラ』への情熱と、「EVO 2017」へ向けて

Nobuhiko Nakanishi
Nobuhiko Nakanishi

大学時代4年間で累計ゲーセン滞在時間がトリプルスコア程度学校滞在時間を上回っていた重度のゲーセンゲーマーでした。
喜ばしいことに今はCS中心にほぼどんなゲームでも美味しく味わえる大人に成長、特にプレイヤーの資質を試すような難易度の高いゲームが好物です。

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