とある理由で妻と離婚し息子と離れ離れに住むことになった熱血ライターSonoharaが、過去の思い出のビデオゲームを通じて息子と交流する月間連載「父(40歳)と息子(11歳)通信」。今週からは『ドラクエ5』シリーズがスタート、アクションをバリバリプレイするSonoharaの息子はJRPGにどういった反応を示すのか(編集部)。

私にとって『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』(以下「ドラクエ5」)には、16歳ごろの少年時代に遊んだタイトルとして、またドラゴンクエストシリーズの中でも、特別な思いがあった。現実世界でも結婚に息子の誕生といったイベントを経たことが、同タイトルを私の中で特別なものとさせているのだろう。初代のスーパーファミコン版、PlayStation 2移植版、ニンテンドーDS移植版。スマートフォンアプリ版は未プレイだったが、結局当企画がきっかけで購入してしまった。リメイク版をリリースされるたびに楽しんでいる。

そんな『ドラクエ5』を、息子にも遊ばせてみたい。幼馴染の女の子と二人きりで冒険するドキドキを感じるのか。どんなメンバー構成で要所要所を攻略するのか。そして誰と結婚するのか。子供の誕生前夜にハラハラするのか。父との別れに何を思うのか。

他のタイトルでは、なかなか味わえない魅力のある『ドラクエ5』で、何かを感じてもらいたい。40歳の私と11歳の息子の2人のあいだにある、いかんともしがたい「世代」の壁を認識した上で、それでもなおゲーム本編のように世代を超えた思いを紡いでみたいと思う。

 

「強き心は、時を越えて」

これはPS2版のキャッチコピーである。私が“強き心”とやらを持ち合わせているかははなはだ疑問だが、「世代」をテーマとした同企画に、『ドラクエ5』は相応しい。

今回息子にプレイしてもらったのは、2007年にリリースされたニンテンドーDS版(厳密にはアルティメットヒッツ版)となる。スマートフォンアプリもリリースされているが、息子はよりプレイしやすいDS版が良い、とのことだった。前々回お伝えしたように、息子とは距離が離れている時間が多いため、GWに手渡しした後は、おもにLINE上でコミュニケーションをとった。5月27日はドラゴンクエスト31周年記念日となるのだが、なんとも絶妙なタイミングでの企画となった。

さて、ソフトをプレゼントしてから数日後に連絡してみたところ、思わぬ事態が起こる。なんと息子には『ドラクエ5』は「面白いのか、よくわからない」とのことだ……。

 

強制イベントという最初のカベ

息子は私に似て根っからのゲーマーだが、夢中になったタイトルは『スーパーマリオブラザーズ』シリーズや『Minecraft』にFPSなど、非常にテンポも速くサクサクと遊べるものばかりであった。その彼にとって、JPRG特有のストーリー展開や、一切のプレイを一定時間禁じるような強制イベントは、違和感以外の何物でもなかったのだろう。

心配になり、元妻に連絡したところ、「あんまり面白そうにしてないよ。よくわからないみたい」とのことだった。

果たしてどこでつまずいたのだろうか。本人に聞いたところ、「パパスがいなくなって、そこからわからない」。最序盤じゃないか……。

再序盤の様子。主人公の名前=自分の名前という王道スタイル

ここで『ドラクエ5』を未プレイの方へ、序盤の展開を簡単に説明しておく。6歳の幼子である主人公は、威風堂々とした父親“パパス”の謎の旅に同行している。父親は各地を転々としながら何かを調査しているらしい(旅の目的は、物語中盤で明らかになる)。そんな父親の活動と並行し、主人公は子供なりの出会いや冒険を重ね、父親の知らぬ間に成長をしていく。ざっとこんな流れである。

序盤は特に自由度が狭く、原則父親と離別しての行動も出来ないし、イベントシーンも多めだ。面白くない、つまらないから、やめる。これはこれで結果として致し方ない。が、せめて『ドラクエ』がどんなゲームなのかは、ちゃんと教えよう。ということで、「レベルを上げて、装備を整えて、ストーリーを進めて」というサイクルに乗るまでは、手取り足取りLINEを使って伝えることにした。

必死にドラクエの基本中の基本を伝える。私も記憶があやふやだ

大丈夫だろうか。息子は無事に序盤を進められるだろうか。楽しめているだろうか。私のやろうとしていることは、少年の貴重な時間をいたずらに奪っているだけなのだろうか……。

 

「ドラクエにハマる」という時を越えた通過儀式

その数時間後、息子からLINEが。「話すすんだよ」「レベル3になった」「武器とか装備も手に入れた」。おお……これはもう大丈夫だろう。恐らく……と感じたが、それはさらに約30分後には確信に変わった。まずは以下LINEのやり取りを見て頂きたい。

ドラクエを満喫しているとしか思えないこの流れである

目的が出来る、仲間が増える、レベルが上がり呪文も覚える。この基本サイクルに、息子はすっかり楽しくなってしまったようで、「はじめてのドラクエ」を満喫しているようだ。特に序盤の「おばけ退治イベント(レヌール城)」は、まだ6歳の少年が女の子と二人っきりで冒険するという、ノスタルジーに浸るような不思議な体験が出来る名場面だと私は思う。

少しばかり資金が必要になるが、まだパーティーメンバーが2名の序盤に大いに役に立つキーアイテム「ブーメラン」を推奨し、難なく初ボスの「おやぶんゴースト」も撃破した息子より、テンションの高いLINEが引き続き届く。

ここまで入念に準備してボス戦に臨むことは褒めてあげたい

無事におばけ退治を終え、ネコ(言わずもがな、後のキラーパンサーであるが)を助けることに成功した息子は、続いて妖精の国でのイベントもこなしていく。

ちなみに私はキラーパンサーの名前は「プックル」を採用していた

 

ノスタルジーに浸る中年と、リアルタイムな少年と

息子はもうすっかり「『ドラクエ5』を夢中でプレイする少年」になっている。『ドラクエ』の文法、遊び方にも馴染んできたようだ。ただ、この序盤の展開については、私ほどの思い入れは無いようで、ここはやはり歳の差を感じざるを得なかった。

あらためて考えると、この『ドラクエ5』の序盤は、「大人の知らぬ世界でも、子供の冒険は確かに存在している」というテーマだと気づく。ネコを助けるために子供だけで挑むおばけ屋敷。自分にしか見えない妖精の頼みを受け、導かれる幻想の世界。特に後者は大人(パパス)は「何を寝ぼけているんだ」と一蹴してしまう。主人公の「ちがうんだ、本当に妖精がいたんだよ」という声が聞こえてくるかのような場面だ。

もう「6歳」という年齢が、遥か昔に感じてしまう私(40歳)には、「可愛らしい少年の冒険」は、鳥山明氏の素晴らしいキャラクターデザインも相まって、何とも微笑ましい展開なのだが、流石に11歳の息子には、その感覚を味わうには早すぎたと思われる。確かに私が初めて『ドラクエ5』をプレイした時(当時16歳)を改めて回想すると、今ほどのノスタルジーは感じてはいなかった。

また、この後の『ドラクエ5』の展開を知っている方には理解できるであろう、重要なシーンがある。

スクリーンショットは私がプレイ中のスマートフォンアプリ版。結局私もプレイしたくなってしまったのだ

一体この「青年」はどんな想いで、この言葉を発したのだろう。このシーンや、少年編終盤の、父と子のあの名シーンについては、また次回のお話しとさせて頂きたい。