『ツーポイントミュージアム』は「雑プレイ」もすんなり受け入れる、適当に遊んで眺めても楽しい博物館シムである。相性マシマシNintendo Switch 2版+DLC「ズージアム」試遊感想

Nintendo Switch 2版『ツーポイントミュージアム』と新DLC「ズージアム」を試遊。“シミュレーションが苦手なゲーマー”をも虜にする独特の中毒性を掘り下げていく。

「シミュレーションゲームは効率を突き詰め、計画的でないとできない」。そんなイメージを綺麗に取っ払ってくれるゲームがある。『ツーポイントミュージアム』だ。展示物は壊れ、幽霊は逃げ、泥棒は入り込み、観客は勝手に吸血鬼にされる。このカオスを前にしても、本作はプレイヤーに緻密な計画も厳密な管理も求めない。面倒なら雑に処理してしまっていいし、むしろそのほうがテンポよく進んでしまう。

そんな「気楽に回る」ヘンテコ博物館経営が、Nintendo Switch 2ではさらに気軽さを増して再登場した。携帯モードで手のひらの小窓から箱庭を覗き込むようなサイズ感は、ツーポイントのコミカルな世界観と相性がいい。さらに新DLC「ズージアム」によって、博物館はついに動物を迎え入れ、カオスの密度が一段と上昇。軽やかさと緩さはそのままに、世界が一回り広がった。

本稿では、本日12月4日にパッケージ版が発売されたNintendo Switch 2版『ツーポイントミュージアム』と、PC(Steam/Epic Gamesストア)/PS5/Xbox Series X|S向けに12月4日発売、Nintendo Switch 2向けには2026年配信予定の新DLC「ズージアム」をまとめて試遊しながら、“シミュレーションが苦手なゲーマー”をも虜にする独特の中毒性を掘り下げていく。

雑にやっても回る、驚きの“器量の広さ”

『ツーポイントミュージアム』は博物館を運営するシミュレーションゲームだ。展示物の配置、導線設計、温度・湿度管理、職員の雇用、来場者の満足度向上……やることだけ並べれば、他の経営シムのそれと同じく本格的だ。だが実際に触れてみると、まるで真逆の体験が待っている。必要最低限の管理さえ押さえておけば、かなり雑に扱っても博物館は回る。むしろ雑な方がテンポよく楽しい。

たとえばゴミが落ちていても、管理員を“つまみ上げて”そこに投げ込めば一瞬で片付く。売店のスタッフが辞めそうなら、給料をごっそり上げてしまえばいい。展示物に来場者が食われるという、相当に理不尽なアクシデントが起きても、館内はのんきなBGMと皮肉たっぷりのアナウンスに包まれ、誰も深刻な顔をしない。氷河期の展示物をうっかり暖房の近くに置いてしまい、氷漬けの人間が復活する……そんな状況ですら「ツーポイント州」の中では、居酒屋で皿が割れた程度のプチトラブルだ。

本作の面白さは、この「本格的なシステム」「雑プレイOKな緩さ」という相反する要素が共存している点にある。展示物と説明パネルを丁寧に配置し、動線を設計し、満足度を最適化していけば、国立博物館ばりの荘厳な施設だって作れる。その一方で、化石と幽霊を隣り合わせで並べ、建物の半分を売店とフードコートにしたヘンテコスポットを作っても、経営はわりと上手く回る。真面目にやっても、テキトーでも成立する。プレイヤーのプレイスタイルそのものを肯定する柔らかさが、本作の魅力を強く支えている。

情報の洪水と、ほどよい“小忙しさ”

本作のプレイ中は、常に何かが起きる。展示物は劣化し、植物は枯れ、泥棒は忍び込み、幽霊は逃げ、来場者は腹を空かせ、スタッフは疲れ、温度管理を間違えれば展示物が溶ける。見た目はデフォルメ調でコミカルだが、内部システムの密度はかなり高い。

しかし、要求される管理の水準は低めだ。多少の失敗は許容され、ゲームオーバー級の致命傷にはならない。この“軽い管理コスト”と“絶え間ない小トラブル”が組み合わさることで、常に何かをさばき続ける心地よいテンポが生まれている。計画性がなくても、「とりあえず増築して雇って値上げしておけば回る」というノリで遊べるのだ。

常に何かが起こる充実感と、いったん全部放置して来場客が楽しむ様子を見ていても問題ない緩さの配合が絶妙だ。この「底は深いが雑でも回る」システムが、『シヴィライゼーション』などにも通ずる“時間泥棒感”、「気付いたら夜が明けている」という高い中毒性につながっている。本作の場合はさらに敷居が低く、集中せずとも進めやすいカジュアル性がある。

小窓感が心地よい、Nintendo Switch 2版の感触

Nintendo Switch 2と『ツーポイントミュージアム』の相性は非常に良い。特に携帯モードでは、箱庭世界を“手のひらの小窓”から覗き込む感覚が強く、博物館の日常をぼんやり眺めるだけでも楽しい。背面スタンドを立て、スクリーンセーバー的にゲーム画面を流しておくのも一興だ。TV/携帯モードともに画質は良好で、展示物の多さによる視認性の問題も特に感じない。一方で、携帯モードでは館内に物量が増えるとフレームレートがやや不安定になる場面もある。とはいえ、基本的に快適にプレイできるレベルだ。今年3月にPC版が発売されて以来、精力的なアップデートで改善を重ねてきた本作だけに、Nintendo Switch 2向けのさらなる最適化にも期待したいところだ。

UIは基本的にPC版を踏襲しているが、画面上にはコントローラーのボタンが表示され、「何を押したらどこが反応するか」がわかりやすい。また、十字キー上で画面右上の統計情報、十字キー右で右側の目標一覧が確認できるなど直感的なボタン配置になっているのも好印象だ。多数の操作項目に対して煩雑さを感じさせず、サクサクとプレイできる工夫が凝らされている。

ソファーに寝っ転がって遊べるNintendo Switch 2と『ツーポイントミュージアム』ののんきなゲーム性は相性抜群で、プレイ体験を変えるほどの快適さを誇る。他プラットフォームと同じく「剣と魔法の宝探し」は配信済み、後述する「ズージアム」も来年発売予定(他プラットフォームでは発売中)とDLCもしっかりリリースされているため、すでにPC等でプレイ済みのユーザーでも、この気軽さを改めて味わう価値があると感じられた。

“保護”という新たな文脈が用意されたDLC「ズージアム」

新たな追加DLC「ズージアム」は、本作に野生動物という新しいベクトルをもたらす拡張だ。本編では水棲動物が登場したが、ズージアムが取り扱うのは虫から大型動物までを幅広く含む、地上の生き物たち。首がバネのように伸び縮みする「ボウエンキリン」や、煙突付きの“殻”に住む「モクモクカタツムリ」など、ツーポイントらしい奇妙なデザインの動物が40種類以上登場する。生育環境内を自由に歩き回る生き物たちの動きは、以前にも増してコミカルだ。一方で印象的なのは、動物を「自然に還す」選択肢があること。

ズージアムでの目的のひとつは、野生動物の保護だ。遠征で見つかる動物は病気を抱えていることもあれば、特定の条件下でしか満足に生きられない個体も存在する。それらを保護して「処置室」で適切な治療を施し、適切な住環境を用意するホスピタリティが求められる。展示室で元気を取り戻した動物を自然に還せば「保護ポイント」を獲得し、対象地域の生物多様性が増加、より高い品質の動物を発見できるようになる。

以前弊誌が匿名で博物館の館長と学芸員の方に実施したインタビューでは、展示物の正確性とエンタメ性のバランスなど、コミカルでフィクションチックに見える『ツーポイントミュージアム』が意外にもリアルな面を持つことが明らかになっていた(関連記事)。この「意外なリアリティ」はズージアムにおいても同じで、ヘンテコな雰囲気はそのままに、動物の保護・生物多様性の維持という、生きた動物ならではのテーマがさらりと描かれ、ゲームプレイに組み込まれている。“雑なだけ”ではないシビアな要素が、本作をただのポップなシミュレーションゲームで終わらせていない。

フランクで本格的。ストレスフリーな楽しさと中毒性

『ツーポイントミュージアム』は、本格的なシミュレーション要素を下地としながら「雑にやっても回る」という特異なバランスの上に成立している。その軽やかさと小忙しさ、カオスと愛嬌の同居が中毒性を生み、気付けば長時間プレイしてしまう。そこにNintendo Switch 2版では、「持ち運べる」という悪魔的な手軽さが加わった。通勤・通学の移動時間やカフェでのひととき、ベッドで寝る前など、スキマ時間に「いつでもできる」という利点と、「やめ時がわからない」中毒性の組み合わせは、相性が良すぎてある意味恐ろしい。

また、幅広い年齢層がプレイするNintendo Switch 2のユーザーにもぴたりとフィットする懐の深さも印象的だ。子どもには知的好奇心を刺激するコミカルな遊びを、大人にはブラックジョークが効いた、“ガチでも雑でもいい”自由な博物館シムのゲームプレイを提供してくれる。

そして新DLC「ズージアム」は、展示物中心だった世界に“野生動物”という新たな息吹を注ぎ込み、「保護と自然への返還」が博物館経営のドラマをさらに広げてくれる。シミュレーションゲームが苦手な人にこそ触れてほしい本作の特徴、すなわち“深みとおおらかさを兼ね備えたゲームプレイ”は、そのままスケールを変えて進化している。のんびり遊べて、でも気付けば止まらない。そんな『ツーポイントミュージアム』らしさを、Nintendo Switch 2とズージアムは存分に引き出している。

幸い、クリスマスが近い。クリスマスだからという“体”で本作のNintendo Switch 2版をプレゼントし、リビングではTVモードで家族とワイワイ遊びながら、皆が寝静まったころに携帯モードでじっくりと極める、なんて楽しみ方をしてみてはいかがだろうか。

ツーポイントミュージアム』は、PC(Steam/Epic Gamesストア)/PS5/Xbox Series X|S/Nintendo Switch 2向けに発売中だ。またDLC「ズージアム」は、PC(Steam/Epic Gamesストア)/PS5/Xbox Series X|S向けに発売中、Nintendo Switch 2向けに2026年発売予定となっている。

Yusuke Sonta
Yusuke Sonta

『Fallout 3』で海外ゲームに出会いました。自由度高めで世界観にどっぷり浸れるゲームを探して日々ウェイストランドをさまよっています。

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