狂信的教団とマジックマッシュルームと親バカ – MOTHER2 at 30 その4
『MOTHER2』の進捗よりも、アーサーの娘のほうが気になるのは私だけだろうか。第3回でとんでもないカミングアウトをしたグローバル版AUTOMATON編集ライターのグラハム・アーサーは、今日もまたMOTHER2 at 30にいそしむ。
MOTHER2 at 30 その4
『MOTHER2』で「ハッピーハッピーむら」にやっと辿り着く時の気持ちというのは、例えるものがなかなか思いつかない。変な例えだろうけど、どうしても出たい、出ないといけないというスポーツイベントがあるとする(この場合はボクシングとしよう)。史上最強のボクサーになるためにやはり「グレートフルデッドのたに」にあるボクシング大会に出なければいけないことは承知している。
で、大会に向かって出かけると、途中で800人ぐらい「俺は世界最強のボクサーになるぞ!」と思い込んでいるやつに会ってしまう。こいつらも当然自分を倒そうと思っているし、最悪な状態だ。マジで最悪。その800人のひとりは当たると風邪をひいてしまうという右フック技を持っている。もうひとりは脳幹にキノコを生やせるサッカーパンチ技を。そしてもうひとりはバカでかいやつで、トラックにひかれるようなパンチを持っていて、しかもそいつをKOすると自ら爆発して自分まで怪我するというやつもいる。
ちゃんとしたボクシングみたいにリングサイドに医者はいないし、審判もいないし、ばんそうこうは2、3枚ぐらいしか持ってきてない。それにいったん家に帰って怪我が治るまでちょっと休んで後から戻ってきても、その800人のやつらも完全に回復してまた待ち受けている。だからとりあえず、しょうがなく死ぬ覚悟で必死に戦いに出る。そしてやっとグレートフルデッドのたにでの大会になんとか辿り着く。とにかく怖い。先ほどのストリートファイターのやつらがただのザコだったのであれば、じゃあ、最終戦まで行ったらどうなるのか?!と。
しかし、自分は最強のファイターなんだから、そんな心配は無用。多分。この最後のマッチの覚悟や心の準備はもうできているはずだ。そして、リングに上がる直前に誰かに声をかけられる。「ねえねえ、今さっき審判から聞いたんだけど、これなら使ってもOKだって!」と、なんと拳銃を渡される。では、リングに上がって相手に一発撃ち止めるともうチャンピオン決定だ。と……え?!何やねん、これ?!
グレートフルデッドのたにの旅というのはだいたいこんなものだ。「ひとくちユーホー」や「クルーン」、そして爆発する「だいウッドー」のような敵だらけで、しかも途中で休むことはほとんどできずPPやアイテムがなくなったりすると状態異常がすぐに発生する。持ち物もいっぱいになってきてるし、(ギャグとしては面白いがアイテムとしてはほぼ無意味な)「たこけしマシン」を捨てないと食べ物以外はもう3、4個ぐらいしかアイテムを持てなくなってきている。ゲーム内で一番難しいエリアとは言わない(だってまだ「ムーンサイド」に着いてもいないし)が、確かにプレーヤーの「我慢」、「根性」、そして「コントローラーをおもいっきり壁に投げつけない力」が物凄く厳しく試されてしまうエリアである。
グレートフルデッドのたには批判的楽チンだ。それに、簡単にいうと、グレートフルデッドのたにはマジで超最高。気が向いたら「ヌスットひろば」にある「タマゴ屋」で「うみたてたまご」を好きなだけ買って(価格は1個12ドルだが、盗めば無料)しばらく待ってみると、ヒヨコが生まれそしてニワトリへと変化していくので、ニワトリ状態で売り返す(価格110ドル)とビル・ゲイツ並みにお金持ちになることも可能。ホテルに泊まりたいって?そんなのはいいから、バナナ(価格不明……盗んだことしかないので……)をいっぱいとっておこうよ!どうせこれは『The Elder Scrolls』なんかじゃないので、悪いことしたら後から大変になるとか、そういうことは全くない。好きなだけアイテムなどをパクリまくったらいい。
それにこのエリアでは、村人は全員カルト信者なため、話しかけると結構面白い。返ってくる返答がワケの解らない発言もしくはカルトのリーダーへの賛美ばかり。ここでは私が個人的に一番好きな『MOTHER2』台詞である「てんごくにいくな!」が聞けるし。また、ここでそのカルト信者のやつらを適当にやっつけたりするとかなりいい経験値稼ぎができ、後からポーラから「フランクリンバッジ」を渡される。
フランクリンバッジを手にする前に、うちの娘(「パパ!あっち行って!こっちだよ!ねえ!パパ!!」)をとにかく黙らせるためにカルトのリーダーである「カーペインターさん」との戦いに挑んでみた。すぐにボッコボコにされて敗北した私を見た娘は大喜び。まあ、一応その覚悟はしていたわけなので(カミカゼ作戦に出る前に銀行にお金を預けましょう)別に大丈夫だった。説明すると、カーペインターさんは雷で攻撃してくるのだが、フランクリンバッジは雷を跳ね返す能力がある。というかその前に、バッジを持っていないとバトル本番は始まらないので、一度フランクリンバッジを入手してカーペインターさんとのバトルに入ると、とりあえずそこからカーペインターさんは自ら自爆するようなものなので、超楽勝。それだけ簡単なプロセスだ。
では、続きまして、次の目的は2つ目の「おとのいし」確保と、自分のことができないポーラの命を守ることだ。『MOTHER2』で同時に好きでも嫌いでもある点の一つとして、パーティーに新しく入ってくる各キャラクターは自分と同レベルで入るわけではないところ。プレイヤーはずっと冒険しながらいろいろといわゆる「訓練」を受けながら強くなっていくのだが、後から合流するキャラクターはその間に何もしてないとしか思えない。ずっと適当にボーっとしたり拉致られたり勉強したり瞑想したり……何をしているのかはわからないがとにかく「ど素人」レベルで入ってくるわけだ。レベル1の初心者ばかり。そのため、新しく入ってくるメンバーがすぐに華麗にぶっ殺されてしまう確率はかなり高い。まあ、それはある意味、現実性を持たせてるわけなのでいいことでもあるかも知れないが、これから超能力を使って巨大なモグラに火をつけて殺して、太陽の光で回復するまでしばらく拝むというシーンに入るんだから、このゲームでは「現実性」なんてどうでもええやんけともいえる。
本当はゲーム内でもっと進んでいるはずだったが、先ほどリアルでいったんゲームを止めて別の部屋から飲み物を取りに行った時に、うちの子が勝手にコントローラーを触ってグレートフルデッドのたにに入る前のセーブポイントに戻ってしまって進行状況を上書きしやがった。だから進行が予定より少し遅れてしまっている。「子供を混ぜてゲームを遊ぶ」というプロセスの重要なポイントの一つを改めて実感させられた。「子供は子供なんだから、こういうことしちゃう」ということ。コントローラーやコンソールなど、近くに置かれている物をとにかく勝手にイジったり、自分のセーブデータを思わず削除したり、キャラクターを死なせたりすることもしばしばある。
逆の場合も思い出させられる。昔、(初代)ファミコンを点けっぱなしにして出かけた私が部屋に戻ってくると母ちゃんに電源切られてて、「わざと電源切らないで置いてたんだよ!!使い終わってたら自分で消してるはずなんだろ?!」とうちの母親にキレたことが何度もあった。「だって『地獄極楽丸』にセーブ機能やレベル省略などないからそうするしかねーんだよ!」って。とりあえずそれはさておき、子供は子供なので娘にはなかなか怒ることができない。あの子はただゲームに興味を持ってくれて変に触ってしまっただけだし、それに「セーブデータを消しやがった」ことに対する怒りよりも「『MOTHER2』に興味を示してくれた」ことに対する父親としての誇りの方が大きいからだ。まあ、その後改めてだいウッドーの野郎どもをいちいちやっつけながら軽くぶつぶつ言っていた自分だって、やっぱり「子供」を完全に卒業しているわけではないしね。
[翻訳 James R. Mountain]
[校正 AUTOMATON編集部]
「MOTHER2 at 30」は、グローバル版AUTOMATONに掲載された「EarthBound at 30」を和訳したものです。雰囲気が伝わるよう、一部の過激な言葉はあえて原文に近いものにしてあります。