E3を前に各社に言っておきたいこと
毎年恒例、ビデオゲームの祭典にして立派な商談会であるところの「Electronic Entertainment Expo」通称E3が、今年も6/10~12の期間で開催される。今回も年末から来年末にかけて発売されるゲームのお披露目が集中するはずであり、また「発売延期となっているゲームが姿を表すのか」「HALF-LIFE EP3出展トトカルチョ」等、数々のユーザーサイドイベントでも楽しませてくれることだろう。『RAINBOW 6 : PATRIOTS』はどうなっているのだろうか。進捗どうですか。
「壇上」の重み
さて、私は昨年まで「このような大規模なお披露目で発表した事実をそう簡単にくつがえすはずはない」と思っていた。メディアブリーフィングやカンファレンスといった壇上のことであればなおさらだ。先述のとおりE3とは商談会であり、コンシューマーで言えばハードホルダーとデベロッパーの、そして小売との商談の場でもあるのだ。だからこそ、そのような場での発表を早々に覆したりはしないし、基本的に信用してよい――そう思っていた。
それをくつがえしてくれたのがマイクロソフトだ。Xbox Oneの発表当時、ゲームディスクをイントールしたらインストール後はディスクレスで起動できる機能が搭載されていたことを覚えている人は少なくないだろう。E3前のカンファレンスで、そしてE3本会中のカンファレンスでも、そのことをマイクロソフトは強調していた。そしてその機能のトレードオフとして、Xbox Oneは常時――すくなくとも24時間に1度――ネット接続が必要になるゲーム機であること、イントールしたディスクの他の本体での使用ができず、ユーザー間での貸し借りは難しくなる旨も同時に発表されていた。
結局この機能は米国小売などから大反発を受け、SCEに至ってはE3の壇上で挑発し喝采を浴びた。結果としてマイクロソフトはE3閉会後10日足らずで本体機能の変更を発表することになった。
さらにマイクロソフトは先日、Kinect非同梱で値段を下げたXbox One本体の発売を発表した。Xbox Oneの本体発表時から事あるごとに「KinectはXbox Oneの中核を成すデバイスのひとつ」と強調し、発売時にKinectを同梱しない本体セットを用意しなかった姿勢からは明らかに後退してしまった。しかも発売から半年でだ。
予定は未定とは言うけれど
何も私は発表会で行ったことは必ず守れと言いたいわけではない。とくに発売タイトルの日付的なところはズレこまないほうがめずらしいというものだ。だから去年「XboxOne向けHALOを2014年に出す」と言いつつ、先日「XboxOne向けHALO5は2015年発売」としたことには特に腹を立てていない(2014年内に何か動きがあることを示唆してもいるからだが)し、発売予定は所詮予定にすぎない。
しかし、発表したコンセプトそのものをくつがえしてしまうというのはそれとはあきらかに質が異なるのだ。XboxOneに対する変更はコンセプトそのものを揺るがす変更であり、そこに期待していた私を大いに失望させる内容でもあった。E3で反応を見てから方針を変更するまでの対応が速かったと評価することもできるだろうが、私は逆に「そんな簡単に方針転換できるものを大々的に売りにして発表するな」と考えてしまう。多少ソフトの予定がずれこもうが、国内での販売が遅れようが、目指すコンセプトというものは基本的にくつがえされないだろうという信頼は崩れ去ってしまった。
だから、私はE3前に言っておきたい。各社は「後で覆されるかもしれない」という余計な不安を抱かずに、発表内容を無責任に信用して期待だけしていられるようにしてくれないかと。去年はそれくらい「大々的な発表→やっぱ取り消し」というような流れが目立った。それを一番感じたのはやはりマイクロソフトに対してだが、私は昨年初頭の「Playstation Meetings 2013」で発表された「PS4参入メーカーリスト」がイベント直後にごっそり差し替えられたことを忘れてはいないし、任天堂の岩田社長が常々発言している「Wii U GamePadがあるからこそ実現できるソフトタイトル」についても、マリオ128化する前にそろそろ形にしてほしいとも思っている。どのメーカーも決して他人ごとではないのだ。E3の壇上で他社を煽っている場合ではない。
あれこれ言っても、E3が年に1度のお祭であり、その内容を肴に発売日を指折り数えたりするのはとても楽しいことなのは変わらない。どうか今年も楽しい新作ゲームが楽しくお披露目される場でありますように。