『モンスターハンター4』のその後 改造ツールはゲームを殺したか

以前「ゲーム改造ツールと、ゲーム改造という行為。そしてその利用者が果たすべき義務」という記事の中で『モンスターハンター4』のデータ改造の事例を取り上げた。そちらの記事では、おもに改造ツールのユーザーが他のプレイヤーにもたらしうる被害と、それを防ぐために改造ツールのユーザーが持たなければいけないと考えるモラルについて書いた。

そして11/13、カプコンから『モンスターハンター4』の改造ギルドクエストへの対策パッチが公開された。これを機に、これまでのカプコンの動きと、改造データの蔓延が最終的に何をもたらしたかについて考察していきたい。

なお、カプコンからの公式発表に具体的にパッチで何が変わるのか記載されていないため、本稿中でも追加された機能の概要を必要に応じて触れるにとどめ、具体的な対策内容について触れることはしないので、予めご了承いただきたい。

 


これまでの対応

 

今回のパッチ対応までに、カプコンはこれまでに2回、改造データに対する公式声明を発表している。

重要なのは後者のリンク先での発表だ。改造データと見分けるための情報として、ギルドクエストに正規に出現しうるデータの公表に踏み切っているのだ。本来、プレイヤーが自分で、あるいは協力してゲームを遊ぶ中で解明すべきだったマスクデータのすべてを公式自ら公開してしまった。

もちろん、ここまでに至るには十分な理由がある。それほどまでに改造データの蔓延が深刻だったのだ。私が自宅から職場まで1度往復する間にも、かならずと言っていいほど1つか2つ改造ギルドクエストを受信してしまっていたし、オンラインではうかつに他人の貼ったギルドクエストを受けられない、自分が張った高レベルクエストも改造と疑われて誰も受けてくれないという状況が続いてしまっていた。

そして、改造データと判断するための材料がプレイヤーには少なすぎた。それでも正規の攻略が進み、一部の数値―――とくにクエストのレベルについてはかなり具体的な「上限値」などが絞りこまれていたが、確定することができていなかった。マスクデータである以上、それを確定できるのは開発者だけだからだ。

以上より、公式声明としてマスクデータの公開に至るには十分な状況が形作られてしまっていたのだが、言うまでもなくこれは本来やらなくても良い発表だったし、ゲームに盛り込まれた要素の寿命だけで判断するならば、やるべきではない発表だった。『MH4』というゲームの寿命を、いくらか引き換えにしてしまう内容であるからだ。

というのは、先にも触れたがこれは本来プレイヤー側が解明すべき要素だったのだ。ギルドクエストという遊びに登場する要素のすべてが公開されてしまったので、これを解明する楽しみは永遠に失われてしまった。改造ツールユーザの行為がカプコンを動かし、カプコンの公式声明により、プレイヤーの―――私の遊びを、ひとつ消し去ってしまったのだ。

公表されたマスクデータを見なければよいのでは? と思うかもしれない。私もそれは考えた。考えに考えて、結局見た。私はギルドクエストで遊びたかったし、ギルドクエストの交換もしたかった。そうなると、自衛のために公表データと比較して、アウトなデータは削除し配信者をブロックするという作業をするしかなかったからだ。

 


誰がゲームを殺したか

 

かくして『MH4』を構成するゲーム要素の一つは死んでしまった。誰がゲームを殺したか? データを公表したカプコンだろうか? 改造データの蔓延に耐え切れず、カプコンに対策を願った私を含むプレイヤー達だろうか?

少なくともカプコンに責任の一端はあることは否定できないだろう。今回のパッチでは「不正規ギルドクエストのこれ以上の拡散を防ぐ」観点の大きな修正がいくつか入っているのだが、後付のパッチでこれが出来るのであれば、発売時に入れておくべき機能だったのではないかという気持ちはある。

また、カプコンが対策パッチ配信当日まで、対策パッチの準備のことを全く告知していなかったのも気にかかる。もしも10/17の公式声明がマスクデータの公表ではなく対策パッチ制作の公表であったなら、パッチで改造ギルドクエストの拡散が防がれることを期待し、私はそれまで耐えたかもしれない。事実、今回の対策パッチにはそうした機能が盛り込まれている。

もっとも、それは対策パッチを適用出来る環境にある人間の目線である。これほど対象年齢が広く、既に100万本超の実売を記録しているようなタイトルで、対策パッチの適用を大前提とした対応を是と出来たかと言われると、やはり難しかったのではないだろうか。

この事態から目を逸らすべきでないのは、やはり改造ツールのユーザだ。彼らがウイルスのように拡散した改造データは、巡りめぐってカプコンそのものを動かし、最終的にゲーム要素の一つを殺してしまうに至った。

改造ツールが、あくまでただのツールの一つであると言っていられる一線は越えてしまったかもしれない。前回の記事を書いた時、私はまだ楽観的だった。データ改造の存在とその影響がカプコンのような大手から名指しで浮き彫りになることで、改造ツールユーザも多少の危機感を持ってくれるのではないか。せめて「バレないようにやろう」という最低限の意識ぐらいは持ってくれるのではないか。そう考えていた。

そこへ来てカプコンのマスクデータ公表である。事態は私が考えている以上に進行していて、カプコンは私が考えている以上に事態を深刻に見ていた。カプコンはゲーム要素ひとつと引き換えに、プレイヤーに自衛手段と、それによる安心を提供した。私にはその判断を責めることはどうしてもできない。自分で作ったゲーム要素を殺してしまうのが苦渋の決断でなかったはずがないからだ。最終的に手を下したのはカプコンだが、それをさせたのは改造データの存在であり、改造データを拡散させたのは改造ツールユーザなのだから。

 


おわりに

 

ゲーム改造とは、つまりそのゲームを破壊するという行為に他ならない―――前回の記事で私が書いた文章だ。その通り、少なくとも『MH4』というゲームにおいて、ゲーム改造ツールが私にもたらしたのは、味わえるはずだったゲーム体験の喪失、すなわちゲームの破壊に他ならなかった。

既に手遅れかもしれないが、このような出来事が今後も起こってしまうのであれば、いずれこうしたツールに何らかの規制の動きが起こってしまうのではないかと思う。使用範囲は自分のデータにとどめます、オンラインでは使いませんというエクスキューズがいかに無意味であったか、本件はそれを明らかにしてしまった。こうした非公認ツールがなけなしの正当性を主張するためのタテマエは今や崩れつつある。

改造ツールの存在そのものが悪ではない、と私は信じたい。しかし、改造ツールが存在しなければ、私のゲーム体験が失われることはなかったろう。私はツールを使っていないのだから。だから、もしも本当に規制の動きが起こった時、私はそれに反対の立場には立てない。その理由はすでに失われてしまった。

 

今後私の、改造ツールを使用しない一般プレイヤーのゲームに被害が出ないことを切に願って。

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Rokurou Eyama
ビデオゲームとアメコミとバイク(盗難被害遭遇済)をこよなく愛する30台前半。レトロゲームも最新ゲームも等しく同じ大切なプレイ対象である。 幼少期に出会った『マーブルマッドネス』の衝撃でビデオゲームに目覚め、なぜか実家に転がっていたMSX2+に親しみ、バーチャルボーイに立体視の未来感を植えつけられゲーム人格が形成されていった。STGからRTSまでどんなジャンルも遊んでみるが女の子がいっぱい出てくるゲームは苦手。

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