突如新バージョンが出た動画編集フリーソフト「AviUtl」は、どう変わったのか。AviUtl愛用歴12年以上の筆者が紹介

「AviUtl」で作った動画が2000本を超える筆者が、AviUtlの64bit対応の新バージョンの大まかな変更点などを紹介していく。

個人開発者KENくん氏は7月7日、フリーの動画編集ソフトAviUtlの64bit対応の新バージョンを公開した(関連記事)。6年間、音沙汰のなかったサイト「AviUtlのお部屋」が何の前触れもなく更新され、“ゼロから作り直した”AviUtl ExEdit2 beta1が公開されたのだ。動画編集を行う者の間で一躍話題となり、Xでは「AviUtl」がトレンド入り。多くの動画制作者が感謝や感動を叫んでいる。本稿では、AviUtlで作った動画が2000本を超える筆者が、大まかな変更点や現時点で可能なことについてざっくりと分析してみた。


AviUtlとは何ができるソフトなのか

AviUtlは1997年に開発がスタートしたフリーウェアで、本ソフトが配布されているKENくん氏のサイトでは「AVI形式のファイルに各種フィルタをかけるツール」と謳われている。筆者は、自分の記憶する限り遅くとも2008年からAviUtlを使っている。無料で、日本語UIで扱える上、有志によるプラグインやスクリプトを用いることで編集とファイル入出力の幅が広がるため、愛用している動画投稿者は数知れない。特にニコニコ動画では黎明期よりクリエイター間で一般的に用いられており、今回の新バージョン公開にあたってニコニコの代表を務めているくりたしげたか氏も、これまでのニコニコ動画でいかにAviUtlが活用されてきたか、改めて述べていた。

本ソフトは、主に動画編集の用途で用いられることが多いと思うが、ほかにもさまざまな使い方がある。筆者の場合も、当初はFLV形式の動画用エンコーダーとして使い始めたため、動画そのものの編集は本ソフト上ではしばらく行わなかった。そののち、2013年からは「拡張編集プラグイン」を活用した動画の編集も行うようになったが、それだけではない。たとえば、インプット関連のプラグインを導入することでさらに多様なファイルの取り扱いが可能となるので、編集をするかは別にして動画の内容を確認する際にもプレイヤーとして用いるようになった。また、文字や図形などのパーツ、画像ファイルなどを読み込んで加工、レイアウトして「出力イメージをクリップボードにコピー」することで一枚絵を吐き出すのにも役立つ。YouTubeなど動画サイトにアップするコンテンツのためのサムネイル画像も、AviUtl上で動画編集のついでに作ることが可能。つまりAviUtlとは、動画/音楽再生ができ、画像の加工と編集/レイアウトができ、動画の編集とエンコードもできる大層な優れモノなのだ。


新旧比較。大きな違いは2つ

本ソフトのversion1.10(以降、旧バージョン)までとExEdit2 beta1(以降、新バージョン)との大きな差として、まず最初に目を引くはやはりUIの変更だ。従来は、拡張編集機能を用いて動画編集をする際には、基本的に3つの分離されたウィンドウを並べたり重ねたりして表示しつつ編集を進めた。ファイルコマンドを使用できプレビューのプレイヤーを兼ねたメインのウィンドウと、拡張編集のタイムラインウィンドウ、そしてオブジェクトに加工を施すためのパラメータウィンドウだ。

<version1.10で拡張編集を行う際に取り扱う3つの窓>


一方新バージョンではウィンドウが単一化され、ファイルエクスプローラーも内蔵された。色設定パネルやテキスト編集パネル、シーンリストパネルなどをウィンドウ内の任意の位置に配置することができ、この点はAdobe Premiere Proの使用感に近付いたと感じる。特に色設定、テキスト編集、オブジェクトリストが独立したパネルとして常時表示されることによる利便性の向上は大きい。旧バージョンではシングルウィンドウ化するためのプラグインを導入していたユーザーもいたが、今回はその必要がなくなった。

UIは変更されたものの、タイムラインにオブジェクトを読み込んだり、シーンチェンジのフィルタを追加したりといった、タイムライン上での編集に関する操作感はほとんど旧バージョンの感覚のままで差し支えがなかった。これまでAviUtlを使用してきた動画編集者なら、これと言って手こずるポイントはないだろう。

次に、64bitに対応したことによるメリットが変化として挙げられる。旧バージョンは、ファイル容量が4GBを超える長い動画を読み込ませると尻切れトンボのオブジェクトと化してしまったり、多数の映像やフィルタ、描画系の機能(発光やオブジェクトの立体化等)を使うことで動作が重くなりプレビューがカクカクになったりというケースもままあった。こういった場合に、苦肉の策で別のソフトウェアを用いて動画を複数に切り分けてから、様子を見ながら読み込ませていったり編集したりという手段が講じられていた。新バージョンでは、長くて重いファイルも取り扱えるようになり、また読み込みにかかる時間が短く、プレビュー時の動作も軽くなるなど、長編作成時の手間と、処理に待たされる時間が劇的に減った。立体化やアニメーション描画もスムーズなプレビュー映像を見ながら作り込めそうだ。

それ以外の細かい追加・変更箇所としては、以下がある。

  • 「時間制御編集」パネルでベジェ曲線を動かしてオブジェクトの動作に緩急を付けられるようになったので、これまでよりも時間による映像変化の度合いをカスタマイズできるようになった
  • プロジェクトファイルは「.aup2」という拡張子で保存され、現時点で新旧ファイルの互換性はない
  • プラグインとスクリプトを追加するために必要なファイルを格納するディレクトリがCドライブのProgramData\aviutl2内のPlugin/Scriptフォルダへ変更になった
  • 動画の最終フレームが自動設定されるようになった


これからにも期待が高まる盛り上がりっぷり

初期状態では出力できる動画形式がAVIのみである点は旧バージョンと変わらないが、有志の手によって新バージョンに対応した出力プラグインがすでに複数公開されている。mp4の動画を書き出すには、rigaya氏によるx264guiEx 3.32や、えすご氏によるMP4Exporterを導入すればよい。rigaya氏のGPUエンコード用プラグインNVEncもすでに新バージョンへ対応済だ。

また、多彩なアニメーション表現に不可欠なスクリプトも、新たなスクリプト用フォルダに置いただけで動作を確認できたという報告が多数上がっている。X上では複数のスクリプト作者が早くも新バージョンに対応したスクリプトの公開や更新を告知している。現時点で既存のファイルのままでは動作しないというスクリプトも、新バージョンリリースの盛り上がりを受けて今後対応が進められていくことが期待される。無料で軽く、プラグインやスクリプトの共有が盛んなAviUtlは動画作成の入口としてもオススメだ。

AviUtlは、公式Webサイトより無料でダウンロード可能。

Kei Aiuchi
Kei Aiuchi

RPG、パズル、謎解きアドベンチャー、放置系などを遊びます。比較的やりこみ型。特に好きなゲームは『ルーマニア#203』

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