Steamで2025年大ヒットした中国発ゲーム開発者に秘訣と成功後の変化を訊いたら“振れ幅”が凄かった。『AI LIMIT 無限機兵』『エスケープ フロム ダッコフ』『ダンジャングル』『黄泉に落ちても麻雀』開発者

Steamのユーザーレビューにて好評率95%以上を獲得していた中国発のインディーゲームを中心に、スタジオ・販売元にアンケートを実施した。

毎年のように活気を増していくインディーゲーム界隈では、2025年もたくさんのタイトルがリリースされ盛り上がった。一方で、非常に高い評価を獲得したり、大きな成功を掴んだりできたタイトルは、全体からすると一握りだろう。そこで弊誌では、2025年にゲームをリリースし高評価を得たインディースタジオ・販売元にアンケートを実施。自らの作品の成功をどのように受け止めているのかや、今後の展望などについて語ってもらった。

今回のアンケートは、Steamのユーザーレビューにて本企画開始段階で好評率95%以上を獲得していたインディーゲームを中心に選定して実施。みな同じ5問に回答してもらった。なお、たくさんの回答をいただいたため、回答してくれた開発元・販売元の所在地域別に3回に分けて記事を公開する。本記事は中国編である。欧米編記事はこちら


『AI LIMIT 無限機兵』

PC(Steam)/PS5

──自己紹介と『AI LIMIT 無限機兵』の紹介をお願いします。

AUTOMATONの読者の皆さん、こんにちは。『AI LIMIT 無限機兵』のパブリッシング統括を務めております、周嘉偉(シュウ・カイ)と申します。『AI LIMIT 無限機兵』は、荒廃した終末世界を舞台にしたSFアクションRPGです。プレイヤーは再生能力を持つ機兵「アリサ」となり、怪物が跋扈する都市遺跡を探索しながら、世界の終焉に隠された真実と、新たな再生の希望を探し求めます。本作は2025年3月27日にPCおよびPS5向けにリリースされ、プレイヤーの皆さんから想像以上の反響をいただくことができました。

──本作はSteamのユーザーレビューにて現時点で好評率92%を得ています。こうした成功はリリース前に想像していましたか。そして高評価を得られたのはなぜだと思いますか。

正直なところ、ここまでの反響はまったく想定していませんでした。そこまで考える余裕すらなかった、というのが実情です。私にとっては、開発を最後までやり切り、無事にリリースできただけでも、社内では「奇跡」と言っていい出来事でした。道のりは本当に厳しく、正直、今でもあまり振り返りたいとは思えないほどです。中国に「もともと地上に道などはない。歩く人が多くなれば、それが道になるのだ。」という言葉があります。リリース後、その“道”を私たちと一緒に切り拓いてくれたのは、間違いなくプレイヤーの皆さんでした。

そして、この成果は、開発に関わったすべてのメンバーのものです。たとえ周囲から評価されなくても、誰一人として諦めず、最後までやり抜いた。そのこと自体が、私たちにとって何よりの誇りです。また、高い評価をいただけた理由の一つとして、開発チームの全員が、開発者であると同時に、「一人のプレイヤー」でもあったことが大きいと思います。彼らは、プレイヤーが何を求めているのかを、常に自分たちの感覚として理解していました。これはすべて、Sense Games開発チームの積み重ねてきた努力の賜物です。

──Steamで成功したことで、生活や心境面で変化はありましたか。

実は、昨年の7月頃から、ほとんど毎日3時間ほどしか眠れない状態が続いていました。忙しさで寝る時間がなかったわけではなく、時間になると自然と目が覚めてしまう、そんな感じです。ゲームは無事にリリースされ、結果も決して悪くなかったのですが、それでも睡眠の状態は最後まで改善しませんでした。その後、病院を受診したところ、診断結果はある意味、想像していた通りのものでした。重度のうつ状態や躁うつ症状、不安障害、そして軽度の統合失調症です。治療のために薬を使い始め、睡眠を助けるものも含めて一通り試しましたが、次第に効果を感じにくくなっていきました。

そんな中で、韓国のG-STARに参加した週の出来事が、さすがに「これはまずい」と本気で思うきっかけになりました。その日の朝、心臓のあたりに差し込むような痛みがあり、軽い心筋梗塞の前兆かもしれないと思いました。救急で病院に運ばれ、待つこともなくそのままベッドに寝かされ、次々と処置を受けることになりました。幸い大事には至りませんでしたが、かなり怖かったです。怖かったのは、その後どうなるかよりも、「まだやり残したことがある」という思いでした。そのとき真っ先に頭に浮かんだのは、チームのメンバーでした。もう一度、伝えておくべきことをきちんと伝えておきたいと思ったんです。また、この一連の出来事を通じて、人の本質や人間関係の難しさを、嫌というほど実感しました。そうした体験の濃さは、中国の武侠小説「秘曲 笑傲江湖」に例えてもいいほどだったと思います。

──2025年にリリースされた他社のゲームで、もっとも刺激を受けたタイトルを教えてください。

2025年にプレイした作品の中で、開発者として特に多くの学びを得たのが、『Lies of P』のDLC「Overture」でした。開発全体の完成度という点でも、チームとしての成長や挑戦していく姿勢がはっきりと感じられ、プレイヤーとしても強く印象に残っています。私たちにとっても、学ぶべき目標として強く意識している作品です。

──2026年の活動について計画をお教えいただけますか。

今後については、残る2本のDLCをしっかりと作り上げることが、まず何よりも大切だと考えています。それが、これまで支えてくださったプレイヤーの皆さんへの、ささやかな恩返しになると思っています。私たちは、自分たちの初心を決して忘れていません。プレイヤーの皆さんの支えがあってこそ、今の私たちがあります。プレイヤーの皆さんとともに、最後まで向き合いながら、『AI LIMIT 無限機兵』という作品に、きちんとした形で区切りをつけられるよう、全力を尽くしていきたいと思っています。


『ダンジャングル』

PC(Steam)/Nintendo Switch/PS5/PS4/Xbox Series X|S

──自己紹介と『ダンジャングル』の紹介をお願いします。

アストロラブゲームズ (Astrolabe Games)の創始者諸葛と申します。『Dunjungle(ダンジャングル)』は、アルゼンチンの開発者Brunoさんが一人で作ったドット絵のローグライクゲームです。一年の早期アクセスから無事に卒業ができ、2025年12月11日、PCと家庭用ゲーム機(PS5, Switch, Xbox Series X|S)にて製品版が発売されました。

──本作はSteamのユーザーレビューにて現時点で好評率96%を得ています。こうした成功はリリース前に想像していましたか。そして高評価を得られたのはなぜだと思いますか。

正直思ったことはありませんです。早期アクセス開始したばかりのゲームはとても難しかったでした。弊社のプロデューサーさんたちはみんな高難度ゲーム大好きな人ですが、みんなはこのゲームはかならずユーザーさまに指摘されるということは想定でしたね。

幸い、開発者のBrunoはとても優秀かつ素早い方です、早期アクセスの一年間、ほぼ二週間に一回程度の大型アップデートがなんとか実現ができましたほか、ユーザーさまからのご意見もしっかり吸収しつつ、本当に挫折感があるところをちゃんと調整しましたね(最初ステージの難度緩和や、お猿さんがジャンプするときの高さを増加など)。コンテンツ面も大幅に充実したから、いまの評判を頂いた一番の理由と思いますね。

──Steamで成功したことで、生活や心境面で変化はありましたか。

あまり変わってないと思いますね。最初から「絶対に大成功できるよ、成功してから何をするか」より、このゲームをサインするときや、開発者と共に早期アクセス期間調整したころの心境はまったく「こりゃ一体どうやってもっといいゲームになれるか」とおもったばかりでした。このゲームの超早期段階のデモを遊んだとき、弊社全員が面白かったと思ってたからパブリッシャーになりましたから。。。強いて言えば、多分、一番嬉しいことが、自分たちが作った(パブリッシングした)ゲームはPS5でトロコンができることですね。

──2025年にリリースされた他社のゲームで、もっとも刺激を受けたタイトルを教えてください。

『Hollow Knight: Silksong』で決まっていますね!全ての外部のストレスがなくなったとき、真の優秀な人たちは、恐ろしいほど優秀な作品を作れるという実感がこのゲームから感じました!そして「僕たちも、同じような人になりたい」という考えも生み出したよ、やはりこの業界は素晴らしいと思います。

──2026年の活動について計画をお教えいただけますか。

弊社にとって、いま言える活動はやはり『BLAZBLUE ENTROPY EFFECT X』のマルチプラットフォームにての無事発売が来年冒頭一番大事なことです。そして、やるべきことはいままでやっていた正しいことをさらに強化しつつ、間違えたことをしっかり修正することです。僕はそういうやり方を深く信じてます、まるで歌舞伎の稽古みたいと思います。舞台を上がる前に、やるべきことはとてもつらくて、しんどくてかつ地味な稽古ではないか。合格のパブリッシャーになるため、まさに同じ稽古を貫いて、日常生活の一部にすることまでだ。それこそもっとも行うべき活動と思います。

若い会社のAstrolabe Games設立されてから、いよいよ四年目に突入、足りないところは山ほどと言ってもぜんぜん過言ではありません。やはり活動と言いますなら、自分の体と心の稽古は一番大事ですよ、まだまだ足りませんから。


『エスケープ フロム ダッコフ』

PC(Steam/Epic Gamesストア/Mac App Store

──自己紹介と『エスケープ フロム ダッコフ』の紹介をお願いします。

こんにちは!Team SodaのJeffです。私たちはリリース時点で5人、その後新メンバーが加わって現在6人の小さな開発チームです。これまでに『Soda Crisis』を手がけてきましたが、最新作が『エスケープ フロム ダッコフ』です。本作は『Escape from Tarkov』にインスパイアされたシングルプレイの俯瞰視点シューティング・サバイバルゲームで、プレイヤーは探索を重ねながら物資を集め、拠点を発展させ、より強力な武器を手に入れて、この世界で生き延びていくことが目的となります。

──本作はSteamのユーザーレビューにて現時点で好評率86%を得ています。こうした成功はリリース前に想像していましたか。そして高評価を得られたのはなぜだと思いますか

正直、想定以上でした。ゲームのコアな遊びには自信があったのですが、かなり難しい部分も多く、「挫折感が強すぎて低評価につながるのでは」と心配していた時期もありました。ですが、実際のところプレイヤーの順応力は想像以上で、むしろ“挑戦”そのものを楽しんでくれました。挑み続ける中で楽しさを見出してくれたことが、高い評価につながったのだと思います。

──Steamで成功したことで、生活や心境面で変化はありましたか。

私はずっと「より多くのプレイヤーに楽しんでもらいたい」という思いでゲームを作ってきました。今回ようやく、その想いが形になって評価していただけたことが本当に嬉しく、大きな励みになりました。生活自体が劇的に変わったわけではありませんが、これからゲームを作り続けていく上で、以前より強い自信を持てるようになったと思います。

──2025年にリリースされた他社のゲームで、もっとも刺激を受けたタイトルを教えてください。

おそらく『DOOM: The Dark Ages』ですね。ジャンル自体は『エスケープ フロム ダッコフ』とは全然違うのですが、このゲームで気づかされたのは、「攻撃・防御・回避」が絡む戦闘の駆け引きや、ギリギリでの逆転といったアクションゲームの快感は、必ずしも極端に厳しい難易度設計だけで生まれるわけではない、ということです。DOOMのようにある程度の許容や余裕を残した設計でも、同様の楽しさをしっかり提供できる。その意味で、「ゲームの難易度をどうデザインするか」という点で、とても大きな示唆を与えてくれました。

──2026年の活動について計画をお教えいただけますか。

『エスケープ フロム ダッコフ』に、もっとたくさんの新要素を追加していきたいと考えています。新マップ、新モード、新武器……盛り込みたいアイデアは色々ありますし、今後も積極的にアップデートしていく予定です!


『黄泉に落ちても麻雀』

PC(Steam

──自己紹介と『黄泉に落ちても麻雀』の紹介をお願いします。

私は OMEGamesStudio の共同創業者、陳 振(チェン・ジェン) です。OMEGamesStudioは中国・北京を拠点とするインディーゲームスタジオです。これまでにSteamで推理アドベンチャーゲーム『Murders on the Yangtze River』と、ローグライク・デッキ構築型麻雀ゲーム『黄泉に落ちても麻雀』の2作品をリリースしてきました。おかげさまで、両作品ともSteamで95%以上の「圧倒的に好評」という高い評価をいただいております。

──本作はSteamのユーザーレビューにて現時点で好評率96%を得ています。こうした成功はリリース前に想像していましたか。そして高評価を得られたのはなぜだと思いますか。

正直なところ、発売前は好評率85%前後を予想していたので、最終的に95%を超えたのは期待を大きく上回る結果でした。『黄泉に落ちても麻雀』は、2025年4月にデモ版を公開した当初、Steamの好評率が一時70%前後まで下がったこともあります。しかし、プレイヤーの皆様から多くの貴重なフィードバックをいただいたおかげで、3か月間徹底的にブラッシュアップを重ねることができ、正式リリース時には95%の好評率を達成することができました。

──Steamで成功したことで、生活や心境面で変化はありましたか。

大きな変化はありませんが、2作続けて「圧倒的に好評」をいただけたことは大きな自信になると同時に、心地よいプレッシャーも感じています。次作以降もさらに気を引き締め、クオリティに妥協せず、プレイヤーの皆様に愛される精巧な作品を届けていかなければならないと強く感じています。

──2025年にリリースされた他社のゲームで、もっとも刺激を受けたタイトルを教えてください。

今年がプレイしたゲームの中で、個人的に最も印象深かった作品は『Clair Obscur: Expedition 33』です。あの独特な文化的背景の解釈や、世界観の構築、雰囲気作りには非常に感銘を受けました。

──2026年の活動について計画をお教えいただけますか。

2025年下半期には、『黄泉に落ちても麻雀』の大型無料アップデートの制作を開始しました。今回のアップデートでは、7名の新たなプレイアブルキャラクター、約30種類の新たな霊俑や遺物が追加され、これまでとは異なる新しい遊び方やビルドの方向性が楽しめる内容になる予定です。本アップデートは2026年第1四半期にプレイヤーの皆さまへお届けできることを目指しています。

また同時に、完全新作のプロジェクトも始動しており、この新作については2026年中にデモ版を公開したいと考えています。




本記事は、今回の高評価インディーゲームアンケート企画の中国編である。日本編・欧米編記事はこちら。なお、回答いただいた各スタジオのタイトルは、いずれもSteamにて配信中だ。一部はコンソールなどにも展開されており、興味のある作品があればチェックしてみてはいかがだろうか。

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Taijiro Yamanaka
Taijiro Yamanaka

国内外のゲームニュースを好物としています。購入するゲームとプレイできる時間のバランス感覚が悪く、積みゲーを崩しつつさらに積んでいく日々。

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