『ディアブロ II リザレクテッド』では、オリジナル版から何が変わったのか?アルファ版から紐解いていく4つの要素

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Blizzard Entertainmentが開発中のアクションRPGリメイク『ディアブロ II リザレクテッド』。ハクスラの名作とも名高い『Diablo II』を、原作のプレイフィールをそのままに現代向けにアップグレードした本作のテクニカルアルファ版プレイテストが、4月9日から約3日間にかけて行われた。

今回のプレイテストはシングルプレイモードにしぼり、製品版で実装予定のキャラクター7種からアマゾン、バーバリアン、ソーサレスの3種類を体験できるというもの。また、原作にはなかったコントローラー操作など、製品版で追加される予定の機能もいち早く体験することができた。

原作『Diablo II』のファンである筆者が、実際にアルファ版をプレイしてみたところ、グラフィックの刷新にとどまらない工夫と進化を感じとれた。『ディアブロ II リザレクテッド』は原作から「何が変わったのか」、そして「何を大切に守っているか」を、4つの大きなポイントに分けてお伝えしていく。

1. グラフィックの刷新

まずなにより目立つのはグラフィックの刷新だろう。原作の2Dドットグラフィックのニュアンスを可能な限りそのままに、高精細3Dグラフィックに作り変えられている。どの程度変わっているのかというと、キャラクターの表情や皺、武具の質感や汚れまで見てとれる程だ。キャラクターモデルの比較と、実際のゲームプレイ映像の2面からその変化をお伝えする。


キャラクターモデルはプレイヤーのみならず、敵Mobのディテールにいたるまで、こだわったリメイクがなされている。原作のグラフィックも見事にキャラクターそれぞれの個性を印象づけていたが、そのイメージを崩さないように丁寧な全面3Dモデル化がなされている。シルエットまで徹底して一致しており、これにはキャラクターモデルが原作から大きくずれてしまうと、見た目と当たり判定のあいだにもずれが生じてしまうという事情もあるそうだ(関連記事)。

たとえば、なんとなく腰布を巻いたマッチョのタフガイという印象だったバーバリアンは、3D化によって顔の模様や筋肉のキレもくっきり、『ゴッド・オブ・ウォー』のクレイトスを彷彿とさせるたくましさを見せている。肉体と防具の質感がしっかり分けて表現されており、耐久力に優れた戦士という個性や、ストーリーにも関わってくるバーバリアンの文化的背景が、原作にくらべてより強く伝わってくるような印象を受けた。


なんとなくレオタードを着たお姉さんのようにも見えていたアマゾネスは防具のディテールや質感が上乗せされ、表情もはっきりとわかる3Dモデルになったことで、どこからどう見ても頼もしい女戦士に。髪の毛もより自然に動くようになり、実在感が増している。


ソーサレスについては、筆者が個人的にもう少し年若いイメージを抱いていたので、3Dモデル化された姿の精悍さに最初はやや驚いたものの、映像の説得力のおかげですぐに慣れることができた。原作のグラフィックが想像力を掻き立てるものだったので、原作ファンは3Dモデルを見てイメージとの差異が生まれるかもしれない。しかしそれを補ってあまりある作り込みがなされている。


実のところ、筆者がもっとも意表を突かれたのはリメイク版のグラフィックと原作のグラフィックをキーひとつでいつでも自由に切り替えられることだった。まさかプレイ中にロードの必要もなく切り替えられるとは思っていなかったので、タイムラグもなく、敵と戦闘しながらでも「原作ではどんな見た目だったっけ」とスムーズに切り替えて遊べる仕様には驚かされた。

そして、拠点を出ていざ本格的に戦闘などをしてみると気付くのが、モデルだけでなくモーションやエフェクトまで徹底して現代の水準で作り込まれていることだ。原作では、グラフィックが描画枚数の限られたドット絵だったため、動きにコマ送りのような“合間”があった。


リメイクされたことでその“合間”がしっかりと補完され、素早い連続攻撃スキルなどはより自然かつパワフルに。敵の攻撃も威力が見た目からはっきり感じられる説得力を持ち、普段の歩行モーションでさえ、滑らかになったことで移動がスムーズに感じられるほどである。

自キャラクターやNPCの待機モーションも、原作では左右に首を振るようなパターンを繰り返していたものが、自然な人間のように立って周囲に目をやったりするようになり、より自然に感じられるようになっている。

エフェクトについても精細、かつ視認性に気を配っている。魔法の火の玉が周囲を自然に照らし、水たまりに反射しながら飛び、敵に当たって燃え上がるところなどゲームのグラフィック技術の進歩を強く感じた。周囲の敵に影響を与えるスキルなどもエフェクトがより精細に描写されているだけでなく、範囲がわかりやすいよう配慮されている。

グラフィック面で筆者が個人的に隔世の感を覚えたのは、プレイヤーキャラクターがダンジョンの入り口や環境生物など「気になるところ」に顔を向けるようになったことだ。こまかい部分ではあるが、モデルを3Dリメイクしたからこそ可能になった、キャラクターの存在感やプレイヤーの没入感に影響してくる気配りだろう。

2. コントローラー操作の導入

次に大きなポイントがコントローラーでの操作だ。『Diablo III』のコンソール版で好評を博していたコントローラー操作。実を言うと筆者は未体験だったのだが、今回初めてさわりあまりの便利さに驚いた。何よりも嬉しかったのは「椅子に背をあずけながら遊べる」という点。マウスとキーボード操作では必然的に姿勢ものめり込みがちになるが、コントローラーならリラックスしながらゲームを楽しめる。

操作性も『Diablo II』を快適に遊べるように良く調整されており、マウス/キーボード操作においては左右クリックとF1~F8キーに割り振るため多少の慣れが必要なスキル操作を、手軽にワンボタンで繰り出せる。スキル操作で手元の忙しいキャラなどはプレイがとても楽になりそうだ。また、「遠距離攻撃が望んだ位置に飛ばないのでは」「移動系のスキルがうまくコントロール出来ないのでは」という心配もあったがまったくの杞憂で、繊細な操作も自然に、思い通りに実現してくれるよう調整されている。

3. サウンド

グラフィックや操作系と比較すると目立たないかもしれないが、筆者はサウンド面も大幅に改良が加えられているように感じた。原作の音源をそのまま活かしつつ、はっきりわかる点としては効果音とBGMのバランスなどに大幅に手が加えられている。

原作のサウンドデザインも秀逸だったものの、比較してリマスターモードでは音質自体の向上も感じられるほか、音量のメリハリがよりはっきりつけられている印象だ。足音は小さくなり、戦闘において武器の衝突する音などはくっきりと。虫のさえずる声などの環境音に至るまでBGMに自然に溶け込むよう調整されており、原作におけるサウンドデザインの良い部分を守ったまま、臨場感のアップに大きく寄与している。

4.多岐にわたるQoL関係の改善

ここまであげた点だけでも原作ファンとしては感涙モノではあるものの、さらに原作ファン、また新規にこの『Diablo II』に触れるプレイヤーのゲーム体験を向上すべく、QoL(遊びやすさ)関係の改善がふんだんに盛り込まれている。

まずは共有スタッシュ(倉庫)の追加だ。現代のハクスラではよくある「キャラクター間のアイテム共有」を手軽にするシステムだが、実は原作においてはModを導入しない限り利用できなかった。そのため、キャラクタービルド(育成方針)の方向性を決定づけるような強力なアイテムが出たにもかかわらず「しまった、このキャラで出たか!」とキャラクター間アイテム移動やビルドの変更に苦心することがしばしばあった。この共有スタッシュ機能が追加されたことにより、そういった苦労を心配する必要はなくなっただろう。

アイテムのソートにも対応しており、コントローラー操作では右スティックの押し込みによって倉庫や持ち物が自動的に整理される。マウス/キーボードでは操作方法が確認できなかったが、今後のバージョンで提示されるのかもしれない。

ほかにも倉庫利用時などにCtrlキーを押しながらのアイテムクリックでアイテムを移動してくれるショートカットキーの追加や、地面に落ちた通貨を自動で拾う機能。画面をズームして高精細グラフィックを楽しめる機能、キャラクター能力の詳細確認や、アイテムの性能を並べて比較できる機能など、『Diablo III』で培われたノウハウが発揮されている。


とにかく驚く点が多かった今回のテストプレイだが、原作を遊びこんだファンとして気になる点がいくつかあった。『ディアブロ II リザレクテッド』には原作モードが用意されていると述べたが、この原作モードのグラフィックは、内部的に解像度をアップスケールしている。実際の原作はゲームより大きい解像度のモニターにストレッチするとぼやけるので、そちらよりもピクセルがはっきりしてエッジが強い印象があり、原作ファンにとっては好みが分かれるところかもしれない。とはいうものの、モニター解像度など環境に依存する部分なので再現が難しく、ワンキーでスムーズに原作/リメイクモードを切り替えられる仕様もあり、致し方ない部分ではあるだろう。

原作においてサウンド関係のオプションに存在した3D Sound(立体音響)関係の項目もカットされていた。これはかつてのサウンドカードなどで疑似立体音響を実現するオプションだったので、おそらくハード/ソフトの進歩に合わせて割愛されたのだろう。原作を熱心にプレイしていた当時、筆者はまだ中学生だった。立体音響オンでのプレイはサウンドカードなど高価なハードウェアを必要とする憧れの的だったので、ちょっとした寂しさとともに技術の進歩を感じる。

個人的に気になっていたのが、原作で問題になっていた「避け/ブロックバグ」と呼ばれる現象。オンラインプレイにおいて、敵の攻撃を回避/ブロックしたタイミングと攻撃スキルの発動が被ると、モーションやエフェクトは出るがダメージは発生しない。つまり実質上硬直だけしてしまうという現象だったのだが、今回のテストではシングルプレイ限定であったため確認できなかった。そのほか有名なグリッチなどについても残念ながら検証に至らなかったが、研究は製品版を待ったほうが良いだろう。


今回のアルファテスト全体を通して、『ディアブロ II リザレクテッド』は、原作ファンの筆者が期待していたものを上回っていたという印象で、原作自体の面白さを守りつつ、新規に触れるプレイヤーにも受け入れられそうだと感じさせる内容だった。まだ開発中でありながらしっかり現代向けになった『Diablo II』の姿を見せてくれた本作が、製品版でどういった風に仕上がるのか、楽しみにしたい。

発売までに少なくとももう一度プレイテストを行うそうなので、本作にいち早く触れてみたい方は公式サイトにてテスターに登録してみてはいかがだろうか。『ディアブロ II リザレクテッド』は2021年、日本語対応で発売予定。対応プラットフォームはPC/PS5/PS4/Xbox Series X|S/Nintendo Switchで、クロスプログレッションに対応予定だ。

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