写真家ライターが、Steam写真撮影シム『ウムランギジェネレーション』をプレイして感じた10の「あるある」

写真撮影シミュレーター『ウムランギジェネレーション』には、写真家として思わず“あるある”と感じられる要素が詰まっている。ということで、同作をプレイして感じた10の「写真撮影あるある」を紹介しよう。

弊社アクティブゲーミングメディアが運営するPLAYISM、およびORIGAME DIGITALよりSteam向けに配信中の写真撮影シミュレーター『ウムランギジェネレーション』。さまざまなロケーションを巡りながら、写真を撮って報酬を得るゲームだ。実は筆者は、現実でも写真を撮って報酬を得るダンスフォトグラファーである。本作は荒廃世界でシャッターを切っていくファンタジー作品であるが、写真家として思わず“あるある”と感じられる要素が詰まっている。ということで、『ウムランギジェネレーション』をプレイして感じた10の「写真撮影あるある」を紹介しよう。


「あと1歩」が重要

『ウムランギジェネレーション』では、実際にステージを歩き回って被写体を探し、ファインダーを覗いてシャッターを切る。さまざまなゲームに搭載されている「フォトモード」のように宙に浮いたカメラの位置を自由に動かすことはできず、自分の足で立てる場所からしか撮影することはできない。同じ被写体を狙う場合でも、見下ろすか、見上げるかによって写真の印象は変わるし、前後左右どれかの方向に1歩動くだけで画面内の「写ってほしい(ほしくない)もの」の写り方も変わる。足を使ってより良く撮れる場所を探すことの重要性と、「あと1歩」動けばより良い写真になりそうだという感覚は、実際の写真撮影にも通じるポイントだ。

ファインダー越しのひらめき

日常生活では気に留めないようなものが、ファインダーを通して見ると魅力的に見えてくることがある。本作には、「漠然と見えている景色」と「レンズを通して見える世界」が違っているというリアルさがある。ファインダーを覗いてみてひらめく楽しさや、見えているはずの景色の中にある新しい世界に気づかされる楽しさ。これらは、ゲーム画面を自分の意図を通して加工する「フォトモード」ではなかなか味わうことができない楽しみのひとつだろう。

いろんなレンズを付け替えて撮る

一眼レフカメラはレンズを付け替えることができるのが特徴だ。同じ位置からの撮影でも、レンズを変えれば違った印象の写真を撮ることができる。レンズにはそれぞれ得手不得手があり、本作でもレンズを付け替えることによって撮影できるものや写真の雰囲気が変わる。あえて「レンズを変えない」などのルールを課して練習すれば、各レンズの特徴をより早く掴むことができるかもしれない。ゲーム内では初期装備として標準ズームレンズ1本からスタートし、それぞれのレンズに合うお題をクリアすることで少しずつ新たな装備をアンロックしてゲームが進んでいく。そのため、「レンズのことはよくわからない」という方でも徐々に慣れることができるはずだ。

ちょっと動くだけで激変、望遠レンズ

望遠レンズは、遠くの被写体を大きく切り取るため、ほんの少しカメラを振るだけで構図が大きく動いてしまう。本作でも、望遠レンズ使って撮影しようとすると、他のレンズを付けた時に比べてカメラの制御が難しくなる。ズームするほど操作に対する動き幅が大きくなり、狙った構図から外れやすくなっていく。実際の写真撮影で望遠レンズを使う際にも感じる難しさと似た体験ができるので、写真撮影が好きな方であればもどかしさを感じつつもニヤッとするだろう。なお、本作では現実世界で重い望遠レンズを手持ちで撮影する際に発生する、とくに恐ろしい「手ブレ」が発生することはないので安心してほしい。

「無難」との戦い、広角レンズ

同じ位置から撮影する場合、広角レンズは、標準・望遠レンズよりも広い範囲を写すことができる。広い範囲を写し出せるということは、画面の中により多くのものが写りこむということ。あれもこれも写そうとするほど、テーマがぼやけて「無難」な写真になってしまう可能性もあるのだ。(本作の評価システムはどんな写真でも褒めてくれるので、心配する必要はないのだが。)

さらに、本作では「写してはいけないもの」が設定されている。それらを避けて撮影しなければならないゲームシステムによって、意図を持って写真を撮ることを実践的に理解することができるだろう。「広い範囲を写し出せる」「近い位置の被写体にもピントが合わせられる」といった特徴が魅力のレンズであるが、「写り込むもの」を見極めて使用しなければならないという難しさも持ち合わせているのだ。

*ゲームに登場する「広角レンズ」には、遠近感の強調や歪みが大きいなどの特徴は見受けられないため、それらを除いた視点による。

現像で迷う

ゲームの中でシャッターを切ると、露出や色温度、コントラストなどを調整できる「現像モード」に移行する。実際のデジタル現像と同様に、この工程で気づいたり迷ったりすることがあった。失敗と感じたカットが各パラメータをいじっているうちに意外と良い仕上がりになったり、色味を少し変えるだけで写真の雰囲気が変わることもあるのだ。調整バーを大きく動かして思いっきり遊ぶもよし、ほんの少しだけ動かした時の差を気にして行ったり来たりして悩むもよし。「現像モード」を経てアルバムに残すことができるのは1枚のみのため、毎回の「こだわりの1枚」だけがアルバムに蓄積されていくことになる。

まばたきに困ったり感謝したりする

人物を撮る際に注意しなければならないことのひとつである、「目つぶり」。構図もポーズも決まって「ここだ!」とタイミングを計って撮った写真が、被写体のまばたきのタイミングと重なって意図と違う仕上がりになってしまうことがある。意図と違うとは言っても、悪い方向だけではない。被写体が目を閉じることによって、思ってもみなかった魅力や何とも言えない味が引き出されることもあるのだ。計算できない偶然によって生まれる作品もある。

フィルムカメラ特有の緊張感

本作では、シャッターを切る度に残りの撮影可能枚数が1枚減り、追加のフィルムを拾うごとに24枚増える。間違えてシャッターを切ってしまった場合だろうと容赦なく減る。デジタルカメラのように、いらない写真を消して容量を確保するといったことはできないのだ。この仕組みによって、フィルムカメラでの撮影時特有の「シャッターを切ろうとする度に生まれるほどよい緊張感」が再現されている。また、ステージクリア後のリザルト画面では、1枚撮るごとに「フィルムを使った」として金額が引かれており、『ウムランギジェネレーション』の世界でもフィルムを愛好する写真家にフィルム代がのしかかっていることがわかる。

「探す」ことで変わる写真

前述のとおり、各ステージに隠してあるフィルムを拾えば、撮影枚数が増える。初期状態の24枚では心許ないため、ステージの隅から隅まで歩き回って手のひらに収まるサイズの黒くて小さな物体を探し回ることとなる。ものを探すということは、何らかの特徴を持ったものに対して目が敏感になり、視界が大きく変わるということ。これを利用して、例えば「特定の色のものだけを撮る」というテーマでお散歩スナップをすると、それまで気づけなかった新しい被写体を発見できる場合がある。

ゲーム内でフィルムを探してステージをさまよううちに、「こんな場所があったのか」という発見が何度かあった。フィルムを見つけると撮影可能枚数が増えるというゲームシステムは、あまり注目されることがない部屋の隅や小物の陰などにプレイヤーの視線を誘導し、お題以外の新しい被写体に気づかせるきっかけとなっているかもしれない。

撮影が楽しい

最後に、本作はなんといっても撮影が楽しい。同じ場所に繰り返し行っても、その時の気分や興味を惹かれるものによって違う作品ができあがる楽しみは、現実の気軽なお散歩スナップで味わえる楽しさに似ている。各ステージにはクリアのためのお題が決められているが、それらを達成せず、バーチャルお散歩スナップをしに行くだけでも楽しいのだ。ただ、ある程度装備が整った状態でいろんなステージに撮影に行く方が楽しめるはずなので、まずはメインのお題を達成してゲームを進めることをおすすめする。

余談だが、本稿に使用した縦位置の写真は切り抜きではなく、ゲーム内でカメラを約90度傾けて撮影した画像をパソコン上で90度逆回転したもの。どうしても縦位置で撮影したい場面があり、その度に頭を90度傾けて奮闘した。ゲーム画面が横長であるため難しいとは思うが、もし縦位置撮影がサポートされることがあれば、さらに楽しみ方が広がりそうだ。

『ウムランギジェネレーション』は、Steamにて1520円で配信中。時期を考えると、今は積極的に写真を撮りに行く気になれないという方も多いだろう。まずは、ゲームでイメージトレーニングすることから始めてみてはいかがだろうか。

Maho Ikemi
Maho Ikemi

ニュースを担当します。物心ついた時にはゲームに囲まれていました。この先もゲームとともに楽しく過ごしたいと思っています。

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