それぞれの『ゆめにっき』。海外ファンはどのように『ゆめにっき』に出会い何を愛するのか

RPGツクールで制作された『ゆめにっき』。最初のバージョンが公開されて約14年の時が経った。ファンが生まれたのは国内だけではない。『ゆめにっき』は海外でも一部熱狂的な人気を誇る。では海外の『ゆめにっき』ファンがどこでその存在を知り、どういった部分に惹かれたのだろうか。

RPGツクールで制作された『ゆめにっき』。最初のバージョンが公開されて約14年の時が経った。『ゆめにっき』は、ゲームコンセプトは「夢の中を歩くだけ」の作品であるが、その独特な世界観や示唆的な内容をめぐり国内にて多くのファンを生み出した。こうしたファンが生まれたのは国内だけではない。『ゆめにっき』は海外でも一部熱狂的な人気を誇る。

昨年にはitch.ioにて『ゆめにっき』を題材にしたゲームを短期間で作るゲームジャムDream Diary Jam(Yume Nikki Jam)が開催され、30以上もの作品が生まれた。そして2018年2月23日には、『ゆめにっき』を新たに構築する『YUMENIKKI-DREAM DIARY-』が発売される。最初のバージョンがリリースされて14年経過してもなお、『ゆめにっき』コミュニティの熱は失われていないのだ。

『YUMENIKKI -DREAM DIARY-』

しかしながら、海外にて『ゆめにっき』を好むファンはどういう人物で、どのような経緯にて同作を愛するようになったのか、なかなか想像がつきづらい。そこで、『YUMENIKKI -DREAM DIARY-』の発売を控えるいま、Dream Diary Jamの参加者に話を聞き、彼らの『ゆめにっき』に対する思いの丈を語っていただいた。今回はアメリカ在住プレイヤーの声を中心にお届けする。

 

27歳アメリカ在住プレイヤーの場合

作品:Fissure

私はMeakaといいます。27歳でアメリカ在住です。『ゆめにっき』と出会ったのは高校生の時ですね。ネットの掲示板で『ゆめにっき』のスクリーンショットを見かけたのがきっかけでした。見た瞬間に、すぐにその世界に魅了されましたね。ただ日本語なのでどうしても意味がわからず、辞書を片手にプレイするのは苦労しました。なので、Steamにて英語で『ゆめにっき』を気軽に遊べるようになったのは本当に嬉しいことですよ!

『ゆめにっき』の好きなところは、開放的でありながらシュールなところです。今までかつて経験したことのないゲームプレイが味わえます。答えがない点も私の好みですね。人それぞれ独自の解釈があり、それをコミュニティで共有するのが楽しくて。それでDream Diary Jamでは自分なりの『ゆめにっき』を作ろうと思いました。アイコニックなゲームをベースに、自分なりのエッセンスを加えます。場所ごとにテーマを設定し、かつ会話は最小限に抑えて。時間が足りなかったので思った作品にはなりませんでしたが、アップデートしていくつもりです!(笑)

私にとって『ゆめにっき』はゲームであると同時に体験に近いですね。解釈も多様なので、きっと10年後も『ゆめにっき』について話し続けていると思います。

作品リンク/Tumblr

 

26歳アメリカ在住プレイヤーの場合

作品名:you&me

ペンシルベニア州の26歳の男です。『ゆめにっき』に出会ったのは、2009年にひきこもりの研究をしていたのがきっかけでした。サイトに「ひきこもりが主人公」と書かれていたので興味を持ちましたね。ゲームに関する知識はまったくなかったんですが、ファン翻訳のゲームをして、夜更けだったんですが、とても熱中しましたね。そこから『ゆめにっき』を大好きになりました。

『ゆめにっき』は最高のエンターテイメント体験ではないですが、私にとっては特別です。ユニークなグラフィックやサウンドの不思議な雰囲気の中で、心をさまよわせるゲームに思います。マドツキのドット絵もとても好きですね。ゲームの作品の背景に存在する謎が、ただあるだけではなく、人々の解釈に委ねていますよね。そうした作風の影響でファンコミュニティがとても熱いんです。ゲームもそうですが、ファンアートやファンゲームもとても好きですね。個人的にはマドツキの大ファンで、ホイッスルやタオル、ハットとスカーフがお気に入りのエフェクトですね。お気に入りのマップもたくさんあります。

『ゆめにっき』はファンゲームも面白いものが多いですね。私はYume Nikki JamではRPGツクールで『ゆめにっき』原作の雰囲気に近い作品を作ろうとしましたが、やはり原作の影響力は強いですね(笑)。作品の名前は「you&me」で、姉妹が夢を共有するという内容です。ほかの方の作品に刺激を受けて切磋琢磨していますよ!将来的にはもっと内容を磨いてふたたびリリースしたいですね。

私にとって『ゆめにっき』はインスピレーションそのものです。絵もサウンドも含めてすべての面において創作意欲を刺激します。私はシナリオの真実やマドツキの過去はそれほど心配していなくて、作品について想像しているだけで嬉しいです。ききやまさんが若くして『RPGツクール2003』を使い、いかにして抽象的な表現を詰め込んだのでしょうか。そうしたすべてに関心と愛着があります。『YUMENIKKI-DREAM DIARY-』についてはとても期待しています。『ゆめにっき』はこれからもファンによって愛され続けるでしょうし、私もその一員であり続けると思いますよ!

作品リンク/Tumblr

 

22歳アメリカ在住プレイヤーの場合

作品名:Take The Veil

僕は22歳のアメリカ人の男です。ワシントンの小さな街に住んでいます。最初に『ゆめにっき』を遊んだのは2010年ですね。当時僕は14歳でした。誰かが僕に「こんなゲームがある」と見せてくれたことがきっかけで、プレイを始めました。僕はまだ若かったのもあって、この手のゲームについてよくわかりませんでしたが、『ゆめにっき』には何か特別なものを感じました。なにかとつながっているような、それでいてシュールな雰囲気。具体的な事象からあいまいな内容を備えており、すべてが完璧だと感じファンになりました。

プレイから3年後に、私は『RPGツクール2003』を学びゲームを作り始めました。それが私のファンゲーム「Ignite」です。「Ignite」はもっとも洗練されたゲームとはいえませんが、比較的に人気のある作品となりました。『ゆめにっき』の特徴を捉えるために愛をもってゲームを作り続けています。結果的に配信できたのは4つですが。

Yume Nikki Jamが開催されると聞いた時には興奮しましたね。2017年になってもまだ『ゆめにっき』のゲームが作れるんですから。発表時は100人以上が参加の意思を見せていて、最終的には減りましたが34人がそれぞれのゲームを作りました。今年も同じジャムがあるかもしれませんね。ユニークなイベントであるだけでなく、ゲーム開発の道を拓いた体験でもあるので、『ゆめにっき』は私の人生を変えたゲームともいえます。

作品リンク/Tumblr

 

25歳アメリカ在住プレイヤーの場合

作品:Dream Arena(Danzaman氏およびOutlanderSES氏との共同作品)

私はアメリカのアリゾナ州に住んでいる25歳の男です。記憶が正しければ、「ウボア」の動画を2012年半ばにYouTubeで見たことがきっかけですかね。「ウボアちゃん」を見て『ゆめにっき』をすぐにプレイしたくなりました。そしてすぐに『ゆめにっき』を好きになりました。本当に大好きです。独特の雰囲気に魅了され、今の私を形作った作品だといえますよ。ミステリアスでシュールで、そして奇妙で。どこが好きかというのは難しいんですが、探索と発見が私の好きな部分ですね。

Dream Diary Jamには友人に誘われて参加しました。私自身も興味がありましたし、ファンゲームを作るうえでのアイディアを長年培ってきたので……(笑)。なので、今回作った「Dream Arena」を作るうえでは最高の機会であり、やる気もあふれていました。ファンコミュニティと『ゆめにっき』には感謝したいですね。

私にとって『ゆめにっき』は「孤独」、そして「囚われ」ですね。ききやま氏はそうした怒りや悲しみの気持ちをゲームにこめたのだと思います。あらためて『ゆめにっき』にはありがとうと言いたいです。ききやま氏が幸せになっていることを祈ります。そしてたくさんのファンのメールやメッセージが彼を困らせていないことを願いたいです。『ゆめにっき』の新作、期待しています。もっともっとコンテンツを増やしてください。

作品リンク/Tumblr

 

22歳アメリカ在住プレイヤーの場合

フロリダ在住の22歳です。Dream Diary Jamの主催者でもあります。最初に『ゆめにっき』を見つけたのは2011年、英語のコミュニティが巨大だった時代ですね。Tumblrやブログを見ている最中、『ゆめにっき』について熱く語っている人を見つけ、すぐその意味を理解しました。ゲームを調べると、ファンゲームと一緒に夢中になりました。

それからずっと『ゆめにっき』には夢中です。奇妙かつユニークで、好きになるなという方が無理ですね(笑)。好きになったきっかけは個人的な理由でした。ゲームを見つけた当時、私は鬱でした。マドツキの奇妙な夢を探索するという行為は……私にとってどこか落ち着くものに感じられました。暗闇、憂鬱な場所が多く、でもスカイパークやショッピングモールの屋上のような希望を感じさせるエリアもあります。いろんな世界を探索して回り、時間をかけて「エフェクト」も含めた小さな発見をすることが私の救いでした。

そういう意味では、迷うことすらも楽しく、その中で「マドツキはなぜこんな夢を見ているんだろう」と考えるのが、束の間ですが鬱という問題から逃避できる手段ではありました。マドツキについて考えると自分に少し似ている気がして、どこか孤独ではないと感じられましたね。

私はDream Diary Jamを主催し、そして参加しました。もともとTumblrにてDayofacloseddiaryという、絵やゲームを募る月間イベントを実施していました。そしてその後My First Game Jamに参加し、自分で大好きな『ゆめにっき』を題材にしたゲームジャムを開催したいという気持ちに駆られDream Diary Jamを企画しました。正直に言うと、西の辺境の小さなイベントなので、参加者は多くて20人程度かと思いましたが108人も手をあげてもらったのはとても嬉しかったですね。13歳のインディーゲームを祝うのには十分すぎる数です。

私にとって『ゆめにっき』は本当に多くの意味を持ちます。友人ができたというだけでなく、『RPGツクール』に親しむきっかけになり、そこでも友人がたくさんできました。そうした人々と関わっていると、ゲームを最初に遊んだ時のように落ち着きます。Ebethというすばらしい友人ができ、実際に定期的に会っています。コミュニティと出会えたのは、本当にかけがえのないことでした。

私たちのような小さな西洋のコミュニティに関心を持っていただき、ありがとうございます。Steam版をローカライズしてリリースしてくれたことにもお礼を言いたいです。小さなコミュニティですが、新作については興奮しすぎず静観することに努力しています。『ゆめにっき』のコミュニティがさらに広がる日が本当に楽しみです。もっともっとこのすばらしい作品のファンが増え、多くの友人ができる日を心待ちにしています!

ゲームジャムリンク/Tumblr

 

別々の境遇を持つ海外プレイヤーに、それぞれの想いを語ってもらった。『ゆめにっき』は、国内プレイヤーであっても、海の向こうのプレイヤーであっても、同じ体験を提供してくれる、文化を越えた作品なのだろう。なお、『ゆめにっき』作者ききやま氏が監修し、弊社アクティブゲーミングメディアが開発に携わる『YUMENIKKI-DREAM DIARY-』は、SteamPLAYISMにて2月23日に発売予定。

Ayuo Kawase
Ayuo Kawase

国内外全般ニュースを担当。コミュニティが好きです。コミュニティが生み出す文化はもっと好きです。AUTOMATON編集長(Editor-in-chief)

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