アクティブゲーミングメディアにて翻訳者(英日)募集中。現場で働く2名からこだわりや働き方を聞く

弊誌AUTOMATONを運営するアクティブゲーミングメディアが、現在翻訳者を募集中だ。今回は、英語のテキストを日本語へと翻訳する翻訳者を募集している。現場で働いている2名のスタッフのインタビューを読み、ぜひとも応募を検討してほしい。

弊誌AUTOMATONを運営するアクティブゲーミングメディアが、現在翻訳者を募集中だ。アクティブゲーミングメディアはさまざまな事業を展開しているが、柱となる事業のひとつがローカライズである。ターゲットとなる言語を、文化などを踏まえてローカライズする。翻訳のみならず、レイアウト調整や組み込み、そして音声収録や言語デバッグなどのタスクにも対応可能。今回は、英語のテキストを日本語へと翻訳する翻訳者を募集している。主な条件は以下のとおり。

・年齢:25~35くらい
・重視する能力:英語の読解力、日本語の表現力、想像力
・英語力:英検準1級、TOEIC850以上の英語力
・業界経験:2年以上の英日翻訳経験者が望ましい
・勤務地:大阪・東京(在宅翻訳者も募集中)
・給与:個別相談

シンプルに条件だけを提示しても、自身にマッチするか疑問に思う人もいるかもしれない。そこで今回、実際に現場で働いている2名のスタッフに、要求されるスキルや苦労、働き方などについて語ってもらった。

───今回アクティブゲーミングメディア(AGM)におけるプロフェッショナル翻訳者募集ということで、お集まりいただきました。まずは自己紹介からお願いします。言える範囲で、普段どういう仕事をしているかとか、こんなことに関わっているなどを教えていただければと思います。

本城:
名前は本城彰人と申します。5年ほど翻訳の仕事をしています。この会社には4年ほど在籍していて、今は翻訳チームのリーダーをしています。誰もが知っているような大手クライアントのゲーム翻訳を担当することも多く、広告翻訳を含めると40作品以上に携わっていると思います。

本城彰人

───その翻訳というのは、自分自身が翻訳をやるのか、それとも監修がメインなのか、どちらが多いですか?

本城:
半々くらいです。

───監修もしつつ、翻訳もすると。

本城:
はい、そのような感じです。

───ちなみに今担当されているのはゲーム翻訳だけですか?

本城:
ゲームだけではないです。公式サイトの翻訳だったりとか、プレスリリースだったりとか、宣伝動画も。ゲームに関連したことはなんでもやりますね。他にも契約書や、社内のプレゼン資料とかも訳すので、ビジネス知識も必要になります。

───ありがとうございます。では、もうひとりの方もお願いいたします。

慎:
慎曜と申します。AGMに入社して約1年近く経ちました。それ以前は5年ほど在宅で、英日・日英の翻訳。直近では1年、翻訳会社で、主に日英のチェックのお仕事もパートタイムでしていました。AGMに入ってからは、主にゲーム翻訳の英日翻訳とチェックのお仕事をさせて頂いています。

 

求められる能力とは

───ありがとうございます。お二方はやはり、翻訳を仕事にしているぐらいですので、それなりに英語もおできだとは思うのですが、留学経験はありますか。また、自身の英語のスキルを自分なりに表現していただければ。

本城:
留学経験とか海外生活経験とかは僕には全くなくて、昔から英語の小説とかを読むのが好きでした。客観的なものになると、やはり資格などになるのですが、TOEICが950点、それから英検は1級を持っていますね。で、新聞を毎日英語で読んだりとか、そういうことで、常に自分の英語のアップデートをしているつもりです。

慎曜

───では慎さんはいかがでしょうか。

慎:
難しいですね……。経歴としては、私は一応アメリカに11年住んで、向こうで大学も出ています。ただ、日本に帰ってきて翻訳者として課題だと感じるのは、英語力よりも日本語力ですね。今はその部分のスキルアップに悩んでるところなんです。同時にもちろん英語も少しずつでもレベルを上げていかないといけないと思うのですが……。言語って、なんというか習得しようとすればするほど、新しい道が拓けていくので終わりがなくて。自分が今どこにいるのかがだんだんわからなくなってくるんですよね。

───お二方は対照的ですね。海外に留学したことはないけど英語が好きだ、というところでリーダーまで登り詰めた本城さん。海外留学経験はあって英語を使って生活をしてきながら、日本語の部分で、いろいろ模索されている慎さん。対照的なお二方に話してもらうのは面白いのかなと思います。両者を踏まえて、さまざまなタイプの方が今回の募集対象であると。

本城:
そうなりますね。

───ありがとうございます。ではまず、翻訳者を募る上で認識として共有しておきたい点として、こだわっていることについて教えていただけますか。

本城:
翻訳は難しい仕事ですが、究極に言えば、品質をいかに高めるかというプロ意識が大切になります。

───具体的にはどのようなことを指しますか。

本城:
日本語のプロライターが書いたような訳文を作る。それが、僕が定義する高品質ですね。より細かく分解するとすれば、台詞やシナリオは小説家、広告テキストはコピーライターをイメージするといった具合になります。

───なるほど。いずれにおいても、品質が大事ということですね。高品質を実現するにあたって必要なことと、実現する上で阻まれることを教えていただけますか。

本城:
まず必要なことにおいては、英語の読解力と日本語の表現力が重要になるのかなと思います。

───なるほど。たとえば、英語における読解力というのは、前提として下地になる英語のスキルも必要になると思うのですが、それ以外にいるものって何かありますか。

本城:
想像力も実は大事なのかなと思っていたりしますね。

───と、いいますと。

本城:
ゲーム翻訳では、翻訳中のテキストがどこに配置されるかが掴みにくい、ということがよくあるんですよね。台詞で言えば、ゲームの序盤にくるパートなのか、中盤にくるパートなのか、終盤にくるパートなのか。そういった情報が明示されずに翻訳を依頼されることもあります。

───よくあることですか?

本城:
それは本当にクライアント次第です。開発側がどういう開発フローを組んでいるかによって変わりますね。

───時に、「I」が「俺」か「私」を推察する能力も求められる。

本城:
求められます。

───そういう時はどう対処されますか。

本城:
あくまで一つの手がかりですが、ストリングIDでコンテクストをつかむという方法があります。たとえば、台詞ならChapter1_Scene1_といった感じで、どの辺りに配置するものかが分かる。ゲーム内テキストであればItem_Description_、Item_Name_のようなIDがついていて、テキストの使用箇所や用途が分かるようになっています。

 

センスだけではなく事例にも基づく

───なるほど、その文を読むだけでなく、網目状の要素の中からこう、ものをくっつけるというか、縫製能力みたいなのがいると。そのほか、翻訳者として陥りがちな落とし穴みたいなものはありますか。

本城:
こだわりですかね。一番ベタなのは、変に自分の表現や自分らしさにこだわると、落とし穴にはまることもあります。

───と、いいますと。

本城:
たとえば、女性軍人や女性警官などのセリフ翻訳を外注すると、すごく男勝りな口調で出してくる人がいるんですよね。で、そういうキャラクターがドラマや映画であてられている口調を調査してみたんですが……。

───時代の変化につれて、男口調が増えていると。

本城:
いえ、たとえば「踊る大捜査線」の女性警官とか、「トゥームレイダー」のララ・クロフトとか、「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」のレイとか、そういったキャラクターはみんな女口調のままで奮闘しているんですね。ざっとした印象では、8割9割がそう。最近、特にアニメ界隈では男口調の女性も増えているとは思うんですけど……。海外ゲームは実写志向なので、ドラマ・映画の口調に寄せるべきかと考えています。翻訳で口調を作るときは、心に浮かんだイメージも大事にするべきだけど、それと並行して、類似ジャンルのライターによる前例を客観的に調べていく必要があります。

───感覚ではなくて、もっと過去の事例に基づく解釈がいるということですね。

本城:
そうですね、その類似案件でどういう風に扱われているか。

───同じ軍人ゲームを遊ぶわけですから、そこに統一性が無いと、いくら優れていても違和感がありますよね。ちなみに慎さん、今のお話で付け加えたい事などありますか。

慎:
口調に関して特に私が感じるのは、たとえば本とか小説とか映画とかでもそうなんですが、全体を通した色とかトーンとかがあると思うんですよね。だから全体像を見て訳さないといけないんです。

女性なのに口調が男性に近いというのは、一般的に考えると、日本語の表現としてはちょっと特殊なキャラクターかなと思います。それ一つでゲーム全体の雰囲気が変わってしまうなと、今聞いていて感じていますね。自分も実際訳していて、それに気を付けようと意識を持ってやってはいるのですが。

───品質を上げるためのいろんな工夫をされていると思うのですが、それを実現するにあたって、必要なものはなんでしょうか。

本城:
いくつもありますが、しいていうならホスピタリティですかね。クライアントやユーザーが求めるものを正しく予測するということ。他者の目線に立つというホスピタリティは大事かなと思いますね。

それを身につけるには探偵スキル、要するに調査力を伸ばす必要があるのかなと思います。キャラクターの口調もそうですし、広告で使う文体も、調査ベースで選びたい。ファミリー向け作品の広告では、親御さんと子供の両方が読者になるので、簡潔な言葉と「です・ます」調でまとめることが多いはずです。一方で、流血描写が多い戦争系シューティングだったら、「日本は非常事態に陥った!〇〇〇〇だ!」という風に、「だ・である」調を使うはず。跋扈とか殲滅とか、難しい言葉も使うでしょう。

こういう判断をするときに、自分の感覚はいったん脇に置き、翻訳中の作品の売り出し方を見極める必要があります。そして国内のゲーム企業が、類似作品で採用している文体を調査する。間口が広い作品は任天堂さんの商品サイトが参考になるだろうし、戦争ものだったらもっと違うところ、スクエニさんやコナミさんのサイトを見て、文体を吸収する。そういった意識をした方が良いのかなと思いますね。

───なるほど。やはり、コンテクストは重要なんでしょうか。

慎:
はい、そうですね。ものすごく大事だと思います。私は結構在宅の時に、手あたり次第にいろんなジャンルの翻訳を広く浅く扱ってきましたが、ゲーム翻訳ほどコンテクストのない翻訳はないなと(笑)。

───そうなんですか?

慎:
一番翻訳者泣かせなんじゃないかなと思います。

───もう少し具体的に教えていただけますか。

慎:
さきほど本城さんが仰っていた、頼れるものがIDしかないという点ですね。私の経験だと、そのIDから読み解けることも限られてるんですよ。本城さんは経験がおありなので、私がわからないところも、「おそらくこういうコンテクストだよ」と教えていただいたりするんですが。

───経験における優位性は高めですか。

本城:
そうですね。

───仕事を請ける際に気をつけている点などはありますか。

本城:
お客さんが求めているものを先読みするセンスは必要になると思います。会社で案件を受注する前に、トライアルを受けることがあるんですが、そこでは作品名やジャンルを伏せられる場合さえあります。その時には質問を送るんですが、たとえ回答が返ってきても、十分な説明はなかなか期待できません。

───情報をもらおうとしても、キリがないと。

本城:
そうです。トライアルに限らず、実際に請け負った時でも本当にキリがない。だからやっぱり、ある程度こっち側で空気を読む力っていうのは必要になってきます。ジャンルに特有の専門用語とか、相手のニーズを想像して、こんな日本語を求めているだろうと推測していく予測力は、非常に大切です。

───なるほど、ではその読む力を培うために何をされてますか?

本城:
ゲームに限ったことでは無いんですが、教養を磨くことと、調査力を磨くことですね。教養というのは、たとえばゲームのジャンルというのは本当に幅広くあって、戦争以外にもホラー、レース、歴史、SFとか。本当にいろんなものがあるわけです。そうした様々なジャンル・表現に対する理解が求められる……そこをフォローするには、幅広い興味と教養が求められるのかなと思います。

とはいえ広く深い知識を、案件が始まる前から持つことは中々難しいので、たとえばレースゲームの案件が始まったら、レース雑誌を日本語・英語で買ってみるとか、いろんな調査をするわけです。雑誌に限らず、信頼できる情報が載っている媒体を見極めるセンスもいると思います。そのセンスも、先ほどの探偵スキルに含まれてくるんでしょうね。

───本城さんからいろいろと話してもらいましたが、慎さんはどのようなホスピタリティをお持ちですか。

慎:
私のホスピタリティはひとえに品質ですね。ゲームを実際にする人にとって、いかに読みやすい・ゲームの邪魔にならないテキストにできるかというところを常に念頭に置いています。それがクライアントにとってもベストなことかなと思います。

 

楽しさと達成感

───ではそのほか、喜びや楽しさを感じる瞬間、やりがいなどを教えていただければと思います。

本城:
やはりエンターテイメント作品に関われるということ。ゲーム翻訳は、シーンが未完成の段階で翻訳することが多いんです。それがたとえば実際にムービーに仕上がって、自分の台詞を声優さんが読み上げてくれる。ムービーに至るまでのいろんなドラマを経て、クライマックスの台詞で、声優さんが感動的な演技をしてくれる。それが形になったものを見た時には、他にはない喜びがあります。

自分が翻訳者を志したきっかけは、小説や映画などの翻訳作品で感動したことです。ゲームがモノとして形作られると、それに近い現象が起きることがあるんですね。そういう体験をしたときは、やってて良かったなぁと思いますね。

───慎さんからは何かありますか。

慎:
全く同じですね。それこそビジネス翻訳だったり、医療翻訳だったり、そういう翻訳物というのは、特定の人にしか目に触れないんです。でも、ゲーム翻訳は自分のテキスト自体が商品になる、それは醍醐味だなと思いますね。実際にそれを読んでる人がいて、楽しむ人がいて、感動する人がいて。

───成果物を見るのも、作業のプロセスも両方楽しいと。

本城:
楽しいですね。まぁこれは人によって向き不向きもあるかもしれないです。すごく細部に注意して根気よく進めていかなきゃいけない作業ですし……。文脈やコンテクストを予想して、当て込んでいくのも大事なんですけど、その一方で細かい裏取りも重要です。辞書や情報サイトで調べまくらないといけない。そうした情報を細かく積み上げていって、大きなタワーが作れたらやっぱり楽しいですよ(笑)。そういう作り上げた時の達成感は、発表されなくてもあると思います。

───慎さんは?

慎:
まさにその通りだと思います。どんなに苦手なテキストでも、やっぱり最後までやりきったときの達成感はありますね。

───パズルをはめ込んでいくような印象ですかね。

慎:
信じられないほど苦しんで作ったパズルでも、やり遂げた時は満足感を感じると思います。

 

どのように働いているか

───では、実際の勤務について、教えていただければと思います。出勤からの一日の流れを教えていただけますか。

本城:
平均の出社時間をいうと、10:30~11:00くらいですかね。出社して、メールチェックして、僕はリーダーの業務があるので、振り分け関係のことをできるだけ先に済ませて、大体そこから翻訳に取り掛かります。

───翻訳に取り掛かるのは何時頃が多いですか。

本城:
基本的には12:30くらいから始められたら良いですね。朝来た時点で着手できる翻訳案件というのは、長期の大型プロジェクトが来ている時と、あともう一つは、海外からの依頼が来ているとき。海外、特にヨーロッパのクライアントなんかは、こっちの夜中に案件が来ます。それが朝に判明し、急ぎの案件は先方の翌朝、つまり夕方に納品しないといけません。

───退勤の平均時間は?

本城:
バラバラですね。AAA作品とかで開発が佳境に差し迫っている場合は遅いです。AAA作品は、世界同時発売だからローカライズの締め切りを遅らすこともできないので、23時24時くらいまで働くこともあります。平均で言うと、10~11時くらいから始まると、大体9時間くらい働きます。実働プラス1時間残業くらい働いて、20時から21時くらいが多いですかね。

───なるほど。今請け負っている案件によっては、それが短くなったり、長くなったりすると。慎さんは、家庭を持たれているということで、どのような働き方をされていますか。

慎:
子供がまだ小さいので、入社時に、時短でも良いですよということで入れていただいて、今は9:30から17:30までです。17:30になったら、もう席を立っています(笑)

───1日の流れを教えていただけますか。

慎:
会社には9:30までに着いて、メールチェックをします。何か返信する必要がある時には返信して。前日から数日に分けて対応している案件があれば、そのまま始めたりとかですね。その日朝一から始めることが無ければ、PM(プロジェクトマネージャー)さんから案件が来るまで、やることがあったらやりつつ、無ければ過去のゲームの用語集を整理したりとか、できることを探したりしています。

───その日によって業務量が異なると。

慎:
そうですね。

───基本的には、勤務時間の8~9割くらいが翻訳に関わる仕事でしょうか。

慎:
私はそうですね。

───本城さんはリーダー業務があるので割合は違いますか。

本城:
翻訳は半分くらいです。

───ちなみに、土日に出勤されることってありますか?

本城:
よほど特殊な案件がこない限り、休みですね。

───慎さんも休日出勤することは無いですか?

慎:
こないだ初めて日曜日に出勤したんですが、クライアントの事情でどうしても週末に対応しないといけないというケースでした。

───改めて募集要件を整理していただけますか。

本城:
1つめがゲーム知識、2つめが英語力。英語力はあればあるほど良いです。翻訳業界で一般的に言われているのが、入口としては英検準一級、TOEICで850とか。ただし、ゲームに限らず翻訳業界では高ければ高いほど良い。TOEIC900~950になってくれば、多少有利にはなるでしょう。ただし、「TOEIC950なら翻訳ができる」というわけでもないので、あくまで目安です。それと、全体的な日本語力。

───つまり、語彙力みたいな言い方でも良いですか?

本城:
語彙力も大事ですね。それと、変身力というのかな(笑)。いろんなキャラクターになりきらないといけないし、それこそ企業の広報になりきらないといけないときもある。

───慎さんが求める同僚はどういう方ですか。

慎:
社内では同じ案件を複数の人が違う時に対応するケースがあるんです。私は結構、自分が対応した時に用語集が丁寧に作られてたりとか、過去のこういう文字が揺れてましたという、細かい情報のメモとかがあるとすごく助かるんですよ。なので、自分もそれをしたいなと心がけていて、一緒に働く人もそうであってほしいという希望があるんです。自分がやってもらった時に助かることを、他の人にもできる人というか、みんなでやりやすい環境を作りましょうという気持ちを持っている人に来てほしいと思っています。

───……耳が痛いお話です。

慎:
でもそれは、翻訳者あるあるだと思います。基本的に一人でやるものという考えがあるので、中々想像できない。でもゲーム翻訳って一人でできないですもんね。

本城:
できないですね。

慎:
なので、やっぱりそれは大事かなと思いますね。

 

得られるものはノウハウ

───生々しい話にも少しふれておきましょうか。待遇についてはどう思いますか。

本城:
専業のゲーム翻訳者で超高年収という人はそう多くはないと思います。なので、やりがいとかはあるけれども、求められるスキルの多さの割には、もしかしたら、満足しない方もいるかもしれません。

慎:
そこには持論があって、会社から支払われる報酬が自分のスキルに見合わないと思っても、翻訳者としてスキルを磨く、次に繋げていくっていう意味では、それ以上のものはあるんじゃないかなと。

本城:
ノウハウという対価がありますね。

慎:
経験を積めば積むほど、翻訳者は成長するはずなので、その気持ちさえあれば大丈夫ではないでしょうか。「いずれはフリーランス」とか漠然と考えられている方もいると思うんですけど、私はフリーランスとして始めてから入社しました。そういう意味では、やっぱりここでの経験が必ずいつか自信を持って、「これだけ経験しました」っていう風には言えるようになります。なので、もし今満足してなくても十分価値はあります。

───もう一つのポジティブな面としては、こんなにいろんなゲームが毎日翻訳できる会社というのはなかなか無いかなとは思います。

本城:
そうですね。ゲーム専門の翻訳会社という立ち位置自体は珍しい、そんなに競合が多くないところだから、特殊です。かなり経験値は分厚くなるかなと思いますね。

───やりがいもそうですが、一つのスキル形成のために、やる意義はあるのはメリットなのかなと。

本城:
さっきも言ったように、報酬面が極端に高いジャンルでは無い分、他の医療翻訳とか特許翻訳とかに比べると、入口として求められるスキルが低めで、チャンスはある業界かなと思います。

───ちなみに、働きやすさはどうですか?

慎:
それはもう、私の事情で時短にしていただいているので、すごく有難いと思ってます。

───たしかに、割と風通しのよい環境ではあると思います。

慎:
そうですね。外国人の社員さんが多いので、そういう意味では、全く翻訳には関係ないけども、会社としても興味深いんじゃないのかなと。

本城:
毎日、国際交流(笑)。

慎:
いろんな文化に触れられます(笑)

本城:
英語のゲーム用語がわからない時に、答えを持っている人もいたりしますしね。

───では最後に、この記事を見ている方にメッセージをいただけますか。

本城:
ゲーム翻訳は面白い仕事だと思います。さきほど話したように、小説とかの翻訳を目指していても入ってこられます。僕もそういうタイプだったと思います。そういうタイプの人でも楽しみを感じられる仕事かなと思いますね。

今回、ゲーム翻訳で求められるものを中心にして話をしましたが、今言ったもの全部を持っている人、完璧に揃っている人はそうそういません。だから、入った上で、伸ばしていってほしいです。自分はゲームが得意だな、でも英語はちょっとまだそこまでだなという人もうちの会社にはいますし、逆に慎さんなんかは英語の翻訳経験は豊富。でもゲームの知識はまだまだだった。そういう人でも、社内で一緒にやっていけるかなと。

───慎さんはいかがでしょうか。

慎:
ゲーム翻訳の勉強は私も現在進行形で、いろいろと壁にぶち当たっています。ただ、本城さんの言うとおり、ゲーム翻訳は本当にいろんな要素があって楽しいです。私は結構飽き性なので、多分一つのジャンルでずっとやるというのは結構難しいと前々から思っていました。そういう意味では、ゲーム翻訳だったら、同じゲーム一つの本編でも、テキストにいろんな種類があって、台詞があって、UIテキストがあって、契約系のテキストがあって。いろんなことができるのが、わくわくできるポイントなんじゃないかなと思います。

───本日はありがとうございました。

[執筆者: Aya Nishimura(AGM)]
[聞き手&撮影: Minoru Umise]

 

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