『SEKIRO』ノーマルエンドスピードラン、はやくも1時間切りが達成される。控えめなグリッチと洗練されたプレイ
※以下の内容には『SEKIRO:SHADOWS DIE TWICE』のエンディングや攻略についての情報が含まれる
先月3月22日に発売されて間もないフロム・ソフトウェアによるアクション・アドベンチャー『SEKIRO:SHADOWS DIE TWICE』(以下、SEKIRO)。多くのスピードランナー達が既にこのゲームに精力的に取り組んでおり、3月31日にははやくも『SEKIRO』におけるノーマルエンドといえる「不死絶ち(Immortal Severance)」ルートにて1時間切りが達成された。
以前のクリアタイムを10分近く更新する56分45秒という驚異のクリアタイムで1時間切りを成し遂げたのは、ソウルシリーズのスピードランナーとしてよく知られるDistortion2氏。『Dark Souls II』の全ボスカテゴリーでの世界記録を保持しているほか、『Getting Over It with Bennett Foddy』や『Welcome to the Game 2』などといったイロモノゲームのスピードランでも世界記録を保持していたことがある多才なプレイヤーだが、今は『SEKIRO』に注力しているようだ。
多くの3Dアクションゲームがそうであるように、ソウルシリーズのスピードランはどれも非常にグリッチ技が多い。あまりにも滅茶苦茶であるため「これを使わない」というカテゴリーを新設せねばならなくなった『Dark Souls』のワープバグや、シュールな光景が展開される『Dark Souls III』の監視者棒立ちバグ、そしてシリーズに共通する特殊カメラ演出を利用した壁抜けスキップなど、見ているだけでは何が何だか分からないようなテクニックばかりである。
そんな中、『SEKIRO』は発売されて2週間も経っておらず研究が進んでいないこともあってか、スピードランに大掛かりなグリッチやスキップはさほど使われていない。ボス戦に用いられるテクニックや戦術も、カジュアルプレイにも流用できるようなお手軽なものが多く、特にDistortion2氏の葦名本城での弦一郎戦は、『SEKIRO』の教科書があるならば載せたくなるような美しく正統派なプレイである。破戒僧1戦目では種鳴らしと爆竹、最後はにぎり灰まで使うことでボスを常に怯ませ一方的に撃破する戦術が採用されており、2戦目では落下忍殺を利用することで第三形態までをほぼスキップしつつ1戦目と同じく爆竹を活用して素早く倒している。
また、獅子猿の第一形態には「大怯み(怯み中に攻撃し続けるとさらに大きく後ろにのけぞった後に走り回る)させない限り怯み蓄積値がリセットされない」という特徴があることを利用し、大怯みが発生しないよう怯んでも途中で刀では攻撃せずに爆竹を使って体幹ダメージのみ与え、怯み蓄積値をリセットさせないことでいわゆる「怯みハメ」を成立させている。このように、初見プレイでこれらのボスに苦戦したプレイヤーであれば思わず「そんな簡単な手が!」と歯噛みしてしまうような戦術が多くのボスで取られている。
もちろん、『SEKIRO』のスピードランにはグリッチを使ったスキップが全く存在しないわけではない。Distortion2氏のランで用いられている大きなスキップは3つある。ひとつめは事故死の絶えないボスである「火牛」を無視するBull Skip。ふたつめは仙峯寺で本堂からワープせずに、道中から直接幻廊に向かいボス戦を開始するFolding Screen Monkey Skip。最後は白蛇を落下忍殺するイベントを無理矢理進行させ利用することで落ち谷を丸々スキップするWhite Snake Skipである。特に後者2つのスキップは本来であれば葦名本城で弦一郎を倒して御子の間に到達していなければ進めないエリアに強引に進入するスキップであるため、スピードランの中盤はカジュアルプレイとは大きく異なる攻略順で進むことになる。
『SEKIRO』にはエンディングが4種類用意されており、その中でもストーリー的にバッドエンド扱いされているもののクリア自体は最速で達成できる「修羅(Shura)」エンドと、多くのプレイヤーが初見プレイで最初に到達したであろう「不死絶ち(Immortal Severance)」エンドが現在Any%スピードランでは主流のカテゴリーになっている。また、いわゆるAll BossesにあたるのはAll Prayer Beads/Memories、すなわち数珠玉と戦いの記憶を全て回収してクリアするカテゴリーとなる。Distortion2氏は、自身のAny% Immortal Severanceの記録をまだまだ伸ばせるものであると考えているようだが、当面はAny% ShuraやAll Prayer Beads/Memoriesに着手するつもりのようだ。
前述したように、『SEKIRO』のスピードランはフロム・ソフトウェアの過去作品に比べると発見されているグリッチやテクニックが少なく、精密な操作を要求されるものの、まだまだカジュアルプレイの延長線上にあるような印象を受ける。しかし、今後新たなスピードランナー達が続々と参戦しゲームへの理解と研究が深まるにつれて、驚くようなバグやスキップが発見されスピードランへと投入されていくであろうことは想像に難くない。Distortion2氏のこれからの活躍と、『SEKIRO』のスピードランコミュニティからは今後も目が離せない。