スカイリムおばあちゃん『The Elder Scrolls VI』に出演決定。彼女はいかにしてNPCになったのか

スカイリムおばあちゃんとして知られるYouTuberのShirley Curry氏が、『The Elder Scrolls VI』のNPCとして登場することが決まった。Curry氏は48万人の登録者を持つYouTuberであり、スカイリムの熱烈なファンである。

Bethesda Softworksは、「The Elder Scrolls」シリーズ25周年を記念する動画配信の中で、一人の熱狂的な『The Elder Scrolls V: Skyrim』(以下、Skyrim)のファンを、NPCとして次の『The Elder Scrolls VI』(以下、TESVI)に出演させると明らかにした。その熱狂的なファンは、「TES」ファンの間で、親愛を込めてグランマ(おばあちゃん)と呼ばれている。そもそもグランマは、なぜ『TESVI』に出演することになったのだろうか。

Grandma’s World Of Skyrimと銘打たれたその人のブログには、冒頭からいきなり、

「ニルン、タムリエル、スカイリムが何のことかわかるかい? それもわからないようなら、このブログにはお呼びじゃないよ。遊びじゃないんだからね」

と挑発的な文言が書かれている。初心者は、お断りなのだ。Grandma’s World Of Skyrimというブログ名は、じつに的を射ている。彼女は“ゲーマーおばあちゃん”とか“スカイリムおばあちゃん”とか、様々な異名で呼ばれてはいるが、『Skyrim』の世界で単に“グランマ(おばあちゃん)”といえば彼女しかいないのだから。『TESVI』に出演することになったグランマとは、48万人の孫(登録者)たちを持つ82歳のユーチューバー──Shirley Curry氏だ。

 

いかにしてグランマは有名になったか

グランマのゲーマー歴は90年代にまでさかのぼる。初めてプレイしたゲームは、息子から渡されたPCに入っていた『Sid Meier’s Civilization II』だったそうだ。いきなりCivだ。そこら辺のゲーマーとは一味違う。グランマは海外メディアPC Gamerの取材で語っている。

「すぐに中毒になったわ。ゾンビになるほど昼夜問わずにプレイしたわね」

『Civilization』あるあるは、洋の東西や年齢、性別など関係ないのだ。

歳月は流れ、2014年のことだ。グランマはついに『The Elder Scrolls V: Skyrim』を発見する。

「まるで映画の中にいるように、やりたいことは何でもできるし、好きな場所に行けたわ。只々、恋をしたのよ」

『Skyrim』との出会いが、グランマの運命を大きく変えてしまう。

2015年、Redditに張られた一本のYouTube動画によって、グランマは一気に時の人となる。動画が拡散した翌日には、11000件ものメールが彼女のもとに届いた。最初は怖がっていたグランマだったが、だんだん楽しくなったという。いまでは彼女がYouTubeに投稿した動画は数百本にのぼり、再生回数は1千万回を超えている。グランマはYouTubeについて「ほとんど仕事」だと語っている。「一日のどれぐらいをYouTubeに費やしてるのか?」という問いに答えて、グランマは言う。

「起きてから、寝るまでよ」

 

いかにしてグランマは『TESVI』に出演することになったか

タムリエルで盗賊相手に暴れまわるグランマも、時々は「今日はもう誰も殺したくない気分」な時がある。昨年、そんなグランマをさらに憂鬱にさせる出来事が起きてしまう。──『The Elder Scrolls VI』の発表だ。

どうやらグランマにとっては『TESVI』の舞台がハイロックになろうが、ハンマーフェルになろうが、かつて海中に沈んだヨクーダ大陸になろうが、そんなことはどうでもよかったようだ。5か月前。グランマはYouTubeの、とある『TESVI』のリリース日をあつかった動画のコメント欄に、次のような心の叫びを書き残している。

「おやおや、文字通りわたしの棺桶に釘が打たれそうだね。『TESVI』が出るころには88歳になっちゃうわよ! どうやらわたしはプレイできそうにないね」

このグランマの悲壮感あふれる書き込みには「おれはいま70歳だぜ! おれはプレイできるかもな」といった心無いジジイからの返信を含む、345件の返信がついた。

Redditにはグランマの書き込みについてのスレッドが立ち、大きな話題を呼んだ。そしてなぜか事態は斜め上の展開を見せ、change.orgで「グランマを不死のNPCとか、ユニーク武器とか、地名として『TESVI』に残そう」という署名活動がはじまってしまった。

もっとも、Redditでは過去にも「グランマの記念碑をModにして『Skyrim』に登場させよう」といったスレッドが立ったことがあるので、ある程度予想できた流れだったかもしれない。

change.orgの署名はまもなく5万人に達する勢いで、現在も伸び続けている。そしてこのたび、『TESVI』の開発を手掛けるTodd Howard氏は、署名活動のことは聞いているとしたうえで「彼女はゲームの中で不死身になるだろう」と語り、グランマをNPCとして『TESVI』に登場させることを公表した。同じ動画の中でグランマは『TESVI』への出演について次のようにコメントしている。

「わたしにとって大きな意味があることよ。未来の『TES』で誰かが私のキャラクターと一緒にプレイしてくれるのかと思うと、とても幸せな気持ちになるの」

※グランマ登場箇所は8:40から

動画には、3Dスキャンされたリアルなグランマのモデルが映っている。意外なことかもしれないが、このグランマの3Dモデルは、いまのところ私たちが知ることができる数少ない『TESVI』の新情報だ。グランマの3Dモデルを見る限り、『TESVI』ではキャラクターの造詣が緻密でリアルになっていることがよくわかる。

Bethesda Softworksは、開催中のPAX Eastで『TESVI』を支えるテクノロジーについての新情報を公開している。同社はその中で、現実をスキャンし精密な3Dで再現するフォトグラメトリ(写真測量法)を使用する計画を明らかにしている。フォトグラメトリはゲーム内空間を製作するのに使用される予定で、グランマをゲームに登場させるのにも同様の技術が使用されている。

 

グランマは『Skyrim』にもModで出演する

『TESVI』の発売が6年後と決まったわけではない。しかし、遅くなることは確実だ。「グランマを『TESVI』に」と呼びかけた人物は、6年後では遅すぎると思ったようだ。彼は現在Redditなどで「『TESVI』では遅すぎるので、『Skyrim』に彼女っぽいことを言うNPCのModを追加しよう」と活動している。「遅すぎるので~」というところが、その意味を考えると悲しみを誘う。『Skyrim』のグランマModは、まず間違いなく『TESVI』より早く登場するだろう。

ちなみにグランマはModについても「白髪の老婦人になるわ。私の物語の中で彼女を演じるのよ」と協力的で、必要なら声優もいとわないとノリノリである。

Bethesda Softworksの『The Elder Scrolls VI』については、価格や対応プラットフォームは未定。グランマが88歳になる頃に発売予定と噂されている。

Masahiro Yonehara
Masahiro Yonehara

ゲーム世界の散策とスクリーンショット撮影を趣味にしています。コア、カジュアルを問わず、ハードルが低く奥が深いゲームに惹かれます。

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