『Days Gone』メディア向け体験会レポート。感染者の大群との戦いだけではない、緻密で膨大な本作の楽しみが明らかに
E3 2016にて鮮烈なデビューを果たしたサバイバルアクションゲーム『Days Gone』。昨年の東京ゲームショウにおける試遊出展を経て4月26日の発売日が近づく最中の2月28日、品川区にあるSIEビルのイベントホールにて、メディア向け体験会が開催された。モニターが怪しく光る薄暗い密室の中で一体何が行われたのか、その模様をお届けしたい。
『Days Gone』はSony Interactive Entertainmentが現在開発中のオープンワールド・サバイバルアクションゲームだ。舞台となるのは、「フリーカー」と呼ばれる理性を剥奪された感染者たちの大量発生から2年後のアメリカ西海岸北西部。ある事件によって自身の全てを失った主人公ディーコン、そして彼の相棒であるブーザーを中心に、生存限界という極限状態の中で、文字通り死に物狂いで「生」にすがる人間たちのドラマが描かれる。
この度行われた試遊体験は2部構成となっており、前半は「プレイ開始から1時間までの内容」という本作の物語の一端に触れるもの、後半は「プレイ開始から数時間が経過した状況で自由に操作できる」という、ゲームシステムの幅広さを中心に体験できる内容となっていた。加えて、試遊体験の後には本作のローカライズプロデューサーを務める浦野圭氏、ローカライズスペシャリストを務める立山斉氏がステージ上に登壇し、メディア向け合同Q&Aセッションも行われた。その模様に関しては本記事後部に掲載している。
人間というものを多角的に、なおかつ徹底的に掘り下げるストーリー
筆者は今回の試遊を経るまで、正直本作に対し、「ゾンビもののパニックホラー」というイメージが拭えずにいた。何故なら現在まで公開されてきたPVを確認した限りでは、“大量のフリーカーと彼らに追われるディーコン”という構図が強調されているように思え、その光景が自らの脳裏に焼き付いていたからだ。だが蓋を開けてみれば、その幻想は見事に打ち砕かれてしまったのだった。
試遊を開始して先ず驚いたことは、本作の物語は徹底的に「人間」という存在をフォーカスしながら進行していくということだ。フリーカーの大量発生という舞台背景は存在するものの、あくまで主役は追い詰められた人間たちであり、彼らが見せる一挙手一投足、関係性こそが見どころであった。例えばゲーム開始から1時間という限られた物語の中だけでも、平気で物資の強奪を試みる人や、無責任な言動をとる人、妄執に囚われ錯乱し最早人とフリーカーと区別がつかなくなってしまった人間たちが次々と登場する。それはフリーカーの登場数よりも多く感じられるほどにだ。さらには敵対組織として、フリーカーを崇めるカルト集団「リッパー」やフリーカーについて嗅ぎ回る「NERO」という国家機構も登場する。
しかし、作中強調されるのはこうした負の側面だけではない。相棒のブーザーをはじめとして、こちらに善意を向けてくれる人間も少なからず生き残っている。だが彼らの放つ善意も、全ては「生存」という目標のためである。親切に思える人間でも、状況によっては平気で汚い言葉をこぼし、果ては殺人を犯す。さらに言えば、先述した「悪」を行う人間たちも「生きるため」に悪を行っているのである。善悪という単純な二面性だけでは測れない、複雑怪奇で混沌とした人間というものを描こうとする想いが『Days Gone』という作品に込められているのだ。
では何故、筆者がたかだか数時間のゲームプレイによって本作の主題性を読み取ることができたかと言えば、『Days Gone』という作品のストーリーテリングの手法が特徴的であるからに他ならない。『Days Gone』には複数のストーリーラインが用意されており、その内容は物語の核心に迫るものから、ディーコンの過去を振り返るもの、地域の人たちとの関係を深めるものなどさまざまだ。”内容の密度”という点に関しては、やはり作品の中心に位置するメインのストーリーラインの方が高いことは拭えないが、そのどれもが本作を彩るものとして欠かせない内容となっている。
1本の物語へ表現したいことを全て詰め込むのではなく、あえて伝えたい要素を分割し「ストーリーライン」という連続性のある物語の枠組みを複数の要素ごとに設定することで、ディーコンという一人の人間、ひいては人の本質というものを多角的に、なおかつ深く掘り下げようとしているのである
フリーカー対ディーコンという、インパクトあふれる戦闘アクションに目を引かれがちな本作ではあるが、人の本質を描き出すストーリーにもぜひ注目していきたいものだ。
やりごたえ充分、戦略性の高い対フリーカー戦闘
では目玉となるフリーカーとの戦いはどうなのかといえば、本作が「オープンワールド」であることを存分に活かした、戦略性、やりごたえ共に充分な出来に仕上がっていた。
先述した通り、プレイヤーは作中さまざまな場所でフリーカーに遭遇。ときにこれを退け、ときに彼らから逃げ続けることとなる。倒すことで手に入るフリーカーの耳はゲーム内で換金アイテムとして用いられ、特定地域内の巣を全て壊滅させることができれば、俗にいう「ファストトラベル」が可能となる。
登場するフリーカーは成人が変異した一般的なタイプである「スウォーマー」、雄叫びで仲間を呼び寄せる女性型フリーカー「スクリーマー」、小型の「ニュート」など、多種多様なタイプの存在が確認されている。また、狼が感染した「ランナー」やカラスが感染した「クライアー」など、なにも感染者は人間だけとは限らない。彼らは一般的に群れを形成し、巣を作ることで生態系を確立する。
なお、本作には昼夜の概念が備わっており、夜行性である彼らは夜になるとその凶暴性を増し行動範囲を拡大させるが、その分巣が手薄になるという特徴も持っている。
プレイヤーがフリーカーに対し取れる行動は多岐に渡る。近接武器で殴打してもよし、重火器で遠距離から攻撃するのもよい。気づかれないよう背後から接近すれば一撃で仕留めることもできる。だが奴らは基本的に集団で襲いかかってくることが多い。故に単純な暴力のみで彼らを殲滅するのは至難の技だ。武器には全て耐久値が存在し、無闇やたらと振るっているといずれ壊れて消失してしまう。ただでさえ物資に限りがあるという現状の中で、津波のような勢いで向かい来るフリーカーたちを倒すには、本作がオープンワールドであることを活かして構築する戦略が不可欠だ。
燃料入りタンクローリーや丸太を積んだトラクターといったフィールドギミックの活用はもちろんのこと、音に反応するというフリーカーの性質を鑑みて広々としたフィールドから誘導ルートを構築、トラップを仕掛けるなどして一気に撃滅しよう。達成するべき目標によって昼と夜とを切り替えるということも念頭に置いておきたい。フリーカー共を一網打尽に出来たときの快感はパズルゲームをクリアした際のそれに似ている。
そして奴らと戦う上で最も重要な武器となるのがディーコンの足となるバイクの存在である。バイクは臨時の逃走手段として使うだけではなく、単純に敵を轢き殺し、カスタマイズをすれば第2のアイテム輸送手段としても使用することができる。万が一倒された場合のリスポーンポイント代わりにもなる。快適に使用するには日頃のメンテナンスと給油を忘れずに。いざと言うときに動かない、なんてことが無いようにしたい。野盗に盗まれないよう盗難対策も入念にしておこう。
また、弾薬を生成したり、バットに釘を組み合わせて釘バットを作り出すなど、いわゆる「クラフト機能」や、サバイバル生活を豊かにする「スキル機能」も本作には備わっている。どうしても敵に勝てないときは、根本的な装備から見直すというのも手だ。
ちなみに、戦闘において使用する回復薬などの既成品に関しては作中随所に点在する人類の居住区域で購入することができるが、物品の修理や爆薬などをクラフトする際に用いる資材の類はフィールドの散策を通じてでしか手に入れることができないので注意が必要である。物資が足りなくなった、もしくは勝てないと感じたときは素直に引き、物資を蓄えて途中から再チャレンジするといった行為ができるのもオープンワールドならではと言えるだろう。
本作の難易度は3段階存在するが、作中いつでも変更が可能となっているということも念頭に置いておきたい。
100時間遊べるやりこみ要素
本作はなんとプレイ時間合計100時間(メインストーリーだけでも30時間以上)を謳っており、その文句に違わない充分なやりこみ要素を備えている。
先程述べた武器やバイクのカスタマイズ、そしてそれらを用いたフリーカーの大群との対決という、アクションを中心としたやりこみ要素はもちろんのこと、依頼の達成を通じて、各地に点在する居住区のディーコンに対する信頼度を向上し区域の施設機能のアップグレードを行ったり、観光地の発見やラジオのバックナンバーなど、数種類のカテゴリに分けられた膨大な収集要素も存在する。
また純粋なやりこみ要素とは異なるが、愛機であるバイクに跨り、荒廃してもなお美しい世界をただ巡遊するだけでも充分に時間を消費してしまうことだろう。バイクの操作は独特の慣性によって癖が強く、慣れるまで時間を要するだろうが、手足のように動かすことができるようになれば、整備されたロードだけでなく山道などのオフロードといった地形も気持ちよく縦横無尽に駆け巡ることができる。加えて、本作には昨今のオープンワールド作品でおなじみ「フォトモード」機能が実装されている。バイクに乗って気に入った場所を見つけ一枚パシャリ、加工してSNSにシェアなんていうのも乙なものだ。
制作陣いわく本作の舞台は米オレゴン州をモチーフとして制作されており、鬱蒼とした森林だけでなく砂漠や降雪地帯も用意されているという。また天気もオレゴン州を準拠し、雷雨だったり雪が降ったりと不安定。敵の出現率やバイクの移動性などに関与してくる。試遊体験では森林をメインとした区域でプレイしたが、製品版ではさまざまな表情を持つアメリカの自然そのものを体感できそうである。
一見大味なパニックホラーと錯覚してしまう『Days Gone』ではあったが、その実、緻密に作り込まれた遊びがいのある作品であることを今回の試遊体験を通じて確認することができた。既存の同系作品群とはまた異なる楽しみを提供してくれることを期待し、発売日を迎えるのが待ち遠しい限りだ。
ローカライズ担当者によるQ&Aセッション
これより以下は本作のローカライズプロデューサーを務める浦野圭氏(以下、浦野氏)、ローカライズスペシャリストを務める立山斉氏(以下、立山氏)による、ゲームメディア合同Q&Aセッションの内容をまとめたものとなっている。
――本作をローカライズするにあたり拘った部分をいくつか教えていただけませんでしょうか。
立山氏:
本作はパンデミックが発生し人間現社会が崩壊してしまった後、生き残った人間の生き様であったり、その存在のあり方をリアルに追求した作品となります。さらには「(人間が)生き残る方法の可能性」という点に着目しています。その正解は一つではありません。本作にはリッパーや、キャンプに滞在する生存者など色々なコミュニティに所属するさまざまな人物が登場しますが、彼らの特徴を捉えて活かすということはローカライズを行う際、非常に考えさせられた点です。
――今回試遊できる中でお二人のお気に入りの部分というのはありますか。
浦野氏:
TGSでも見られたフリーカーの大群と戦うところですね。自分も初めてプレイしたとき、場合によっては速攻で死んでしまいました。まぁ今もですけど(笑)ですがそういうところも含めて、またもう一度挑戦したくなります。新しい罠を仕掛けたり、装備を整えながら試行錯誤していく、そんなチャレンジ精神を刺激される点が凄くいいなと思います。
あとは「バイクに乗って色々と探検する」というのはオープンワールドのゲームとしては非常に新しい、他のゲームにはあまり無いものだと思います。森の中だとか、整備された道ではないオフロードでの操作は慣れが必要ですが、そういった中で自分の技術が向上し、バイクもカスタマイズを重ねていくなかで、バイク操縦が上手くなっていくという点も楽しい部分だなと思います。
立山氏:
好きなシーンが結構多くて難しい質問なんですけども、先ずゲームプレイ面でいいますと、今回の試遊でたどり着けた方がいらっしゃるかは分かりませんが、ある生存者を探しに、ディーコンがマリオンフォークスという町を探検するというミッションですね。そのミッション中に敵であるリッパー達と戦うシーンがとても好きです。
先程もお伝えした通り、本作の世界にはさまざまなあり方を伴った生存者たちがいるんですけども、その中で特にこだわった派閥がリッパーなんです。ディーコンに対し「安らかに眠れ」「魂の解放を!」など意味不明な言葉を叫びながら襲いかかってくる緊迫感といいますか。リッパーたちを私は「ちょっと可愛い」なとすごく思っているので、彼らと戦うシーンは個人的にとても好きです。
あと物語中の場面で言えば、私はディーコンとブーザーの関係性がとても好きなので、ブーザーのために必死になってモノを探したり、命をかけて働くディーコンの姿が見られるシーンはお気に入りですね。
――『Days Gone』というゲームは本筋を追っていくだけでゲームクリアへと至れるのか、サイドストーリーを遊ぶことは必須なのかという、本作のバランスデザインについて教えてください。
浦野氏:
本作はメインストーリーラインをクリアしていくだけでエンディングにたどり着けるようデザインされています。ですが、今回の試遊でご理解いただけたように、現時点においても既に大量のサイドミッションが用意されていますし、コレクションアイテムを集めていったり、マップをくまなく探検しながらプレイをしていけば、本作は合計100時間以上遊べるようになっています。
立山氏:
サイドミッションをクリアせずとも、最後までメインストーリーラインを進めることは可能です。しかしサイドミッションをクリアしていくことでディーコン自身の成長がより深まったり、色々な人物との関係を観ることができたり。あとディーコンは賞金稼ぎをやっているので、賞金首を追うミッションであったり、生存者を救出するミッションもあります。サイドミッションを遊ぶことで、ディーコンと周囲の人物との関係性を垣間見ることができます。
――このゲームのターゲット層を教えてください。
浦野氏:
個人的な意見を言うと、正直PS4を持っている方全員に遊んでいただきたいゲームだと思っていますが、基本的にはコアゲーマー向けの内容だとは思います。試遊の中で何度か敵に倒されている方々も散見されましたが、そういった場合は難易度をイージーに途中変更することで、スムーズにプレイできるようになるのではないでしょうか。
――フリーカーへの感染というものはどういった経路をたどって広がっていくのでしょうか。
立山氏:
フリーカーに噛まれたり、彼らの体液が肉体に入り込むことで感染します。ですが、作中において人間が感染しフリーカーに変異していくという描写はあまり描かれていません。
――メインストーリーラインのみのプレイでは、クリアまでにどれくらい時間がかかるのでしょうか。
浦野氏:
メインストーリーラインだけでいうと約30時間以上を想定しています。全て含めると100時間以上となります。
――本作のローカライズにあたって、オリジナル版と国内版で作中の表現・描写に関して調整が行われている点があれば教えてください。
浦野氏:
現在、日本国内の販売においてはCERO「Z」(18才以上のみ対象)を想定しています。ゲームプレイ中の表現は、基本的には海外版と同じですが、CEROの規定に準拠しております。
この記事を通じて、『Days Gone』の魅力が少しでも多くのゲーマーに伝われば幸いである。
『Days Gone』はPlayStation4専用ソフト。価格はパッケージ版6,900円(税抜き)、DL版7,452円(税込み)を予定している。さらにデジタルサウンドトラックやアートブック、加えてバイクスキンなどゲーム内アイテム各種が付属するデジタルデラックス・エディションの販売も予定されている。こちらはDL専売なので注意が必要だ。詳しくは公式HPをチェックして欲しい。
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