認知症患者の記憶を旅するアドベンチャー『ZED』開発中。生きた証を遺すべく、消えゆく自己の足跡を辿る

まだ誰も見たことがないような最前線の作品を紹介してゆく「Indie Pick」。第611回目は『ZED』を紹介する

発売前や登場したばかりのインディーゲームから、まだ誰も見たことがないような最前線の作品を紹介してゆく「Indie Pick」。第611回目は『ZED』を紹介する。

人は自らの死を意識したとき、いったい何を視るのだろうか。そして心の内に何を抱くのだろうか。後悔?それとも決意?これからいなくなる自分と、それでも続いていく世界。このゲームは、他人からも、そして自分からも忘れ去られようとしている、生きた証を遺すべく奔走した、一人の老人の物語。

今回紹介する『ZED』は、一人称視点で進行する探索型アドベンチャーゲームだ。
対応プラットフォームはPC(Steam)。Kickstarterを利用した支援を経て、今春発売を予定している。また、本作はOculus Rift、HTCのViveといったVRデバイスもサポートしているとのことだ。

プレイヤーは認知症を患った一人の老画家として、自らの生きた証を遺すべく、これから生まれてくる孫娘に向けて一枚の絵を掻き上げようと試みる。絵画に用いるのは使い慣れた画材と、自身の道程。今まさに失われつつある記憶をたどりながら、散逸していく自己をなんとか掻き集めていくのだ。

プレイヤーが訪れる記憶の世界は、認知症の影響からか非常にシュールで、靄がかかったように不鮮明。野菜の姿をした遊具、本が散らばった駅のプラットフォームなど、本作のビジュアルデザインは、「あり得そうで現実とはどこか違う」という、記憶特有の歪さ、リアルとのズレを絶妙に表現する。だがそれでいて世界の全てが悲しくなるほど美しいのは、思い出が持つ特質なのだろうか。

本作の物語は、その見た目も相まって非現実的なおとぎ話に思えるかもしれない。だが私達が今まで人生を歩んできた人間である限り、誰しもが当てはまる普遍的な物語でもあるという。没入感を一層のものにするためにも、VR機器を利用してプレイされることが推奨されるだろう。

本作の制作を手がけるのは、かつて『Myst』や『Raven』の開発に携わったChuck Carter氏によって設立されたEagre Gamesを中心とする制作陣。『BioShock Infinite 』『The Flame in the Flood』のシナリオで知られるJoe Fielder氏や、『メタルギアソリッド』シリーズのローカライズ・ リードエディターを務めるDavid Chen氏が参加している。『Thief: The Dark Project』のギャレット役や『Fallout 4』のミスターハンディ役など、数多くの海外ゲームに出演しているベテラン声優Stephen Russell氏による演技も注目すべき点のひとつだ。

本作に関する最新の情報は公式Twitterより確認することができる。興味を持った方はぜひチェックしてほしい。『ZED』は、PC(Steam)向けに、VRデバイスに対応し発売予定だ。

Takayuki Sawahata
Takayuki Sawahata

娯楽としてだけではなく文化としてのゲームを知り、広めていきたい。ジャンル問わず死にゲー、マゾゲー大好き。

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