早期アクセスのサンドボックスゲーム『Windborne』がSteamで発売・開発中止に、開発資金が底をつく
米国のゲームデベロッパーHidden Path Entertainmentは、Steam早期アクセスにて2014年2月からリリースしていたサンドボックスゲーム『Windborne』の開発を中止すると発表した。Steamでの販売はすでに停止している。Hidden Pathは、なぜSteam早期アクセスにてリリースした『Windborne』が今回のような自体に陥ったのか、アップデート情報にてその経緯を明らかにしている。
発売1年で幕を引いた『Windborne』の世界
Hidden Pathは、タワーディフェンスゲーム『Defence Grid』シリーズで知られる米国のゲームデベロッパーだ。同社は2014年2月に、“ソーシャル型のサンドボックス・クリエイションゲームを次の段階へと引き上げる”と謳う『Windborne』をリリースした。ざっくりと言うと、『Windborne』は『Minecraft』と『どうぶつの森』をかけあわせたような内容である。プレイヤーは素材を収集してアイテムをクラフティングしたり、建築物を建てたりして、愛らしい外見を持つ種族「Jin」の文明を築き上げることができるとしていた。
当初は週に一度はアップデートされていた『Windborne』だが、1か月も経過するとその間隔は開き、2014年7月28日を最後にアップデートは途絶えてしまう。公式サイトでも2014年6月のインタビューを最後に、その後『Windborne』の情報が伝えられることはなくなってしまった。なぜこの時期にアップデートが途絶えたのかは明らかにされていないが、Hidden Pathは同年9月に『Defense Grid 2』をリリースしており、その開発に集中していたとみるのが自然だろう。実際に『Defense Grid 2』のアップデートや最新情報は、6月や7月以降も頻繁に公開されてきた。
『Defense Grid 2』がリリースされてからおよそ1か月後の2014年10月に、Hidden PathはSteamフォーラムへとファンに対してメッセージを掲載した。そこでは、『Windborne』の開発は当初3年間が予定されており、早期アクセスにおけるファンからのフィードバックや資金回収で短縮できることを想定していたが、最終的に3年間が必要となることが明らかにされた。そして今後もフルリリースへ向け開発が続けられることが宣言された。一部のプレイヤーたちは『Windborne』が見捨てられていなかったと安堵した一方で、「金を返せ」と声を高らかに挙げるプレイヤーもいた。
しかし年を越しても、『Windborne』にアップデートはやって来ず、最新の情報も明らかにされない。2015年1月には、Hidden PathのCEOであるJeff Pobst氏が海外フォーラムRedditに登場し、AMAスレッド(質問スレッド)を立ち上げた。ファンから『Windborne』のことについて聞かれると、Pobst氏は大規模なチームを継続し得るだけの売上がSteam早期アクセスにて挙げられなかったため、チームの規模を縮小しており、そのために開発が遅れていることを明らかにした。
誰が見ても『Windborne』の開発に暗雲が立ち込めるなか、また5か月ほど『Wildborne』は沈黙を保ってしまう。そしてSteamサマーセールとE3 2015が開催されている裏で、『Windborne』の開発および販売中止が発表された。Hidden Pathはさまざまな方法で『Windborne』の開発資金を確保しようと試みたが、最終的に開発を継続するだけの資金を確保することは不可能と判断し、『Windborne』の制作にみずから幕を引いた。
セルフファンドの願望の果てに
Hidden Pathによれば、『Windborne』はゲームライブラリから削除されず、販売停止後もオンライン上で継続してプレイできるという。『Windborne』の所有者にはギフトとして5本の『Windborne』が提供されるほか、メンバーシップ「Order of the Dragon」を購入していたユーザーには『Defens Grid 2 Steam Special Edition』が3本、『Defense Grid: Containment bundle』が3セット提供される。
なかなか良心的に思えるかもしれないが、『Windborne』の価格は29.99ドル、また「Order of the Dragon」メンバーシップは19.99ドルと、『Defense Grid』シリーズに比べれば高めである。またすでに早期アクセスの利益はすべて『Windborne』の開発に回されており、さらにその10倍の金額をHidden Path自身がつぎ込んでいるため、返金できるだけの財源はHidden Pathには無いとしている。
Hidden Pathは、なぜ今回早期アクセスモデルを利用して『Windborne』を開発しようとしたのか。この作品について、彼らは常に「セルフファンディング」や「内部ファンディング」という言葉を用いて、同社がIPを保有し、同社の資金だけで開発し、その利益をまた開発に投じることができる作品づくりを願ってきたことを説明してきた。Hidden Pathの歴史を振り返ると、初代『Defense Grid』は当初Microsoftがパブリッシャーであったし、『Defense Grid 2』も個人投資家から資金を受けて手がけた作品だ。『Counter-Strike: Global Offensive』の開発に参加し、HDリマスター版となる『Age of Empires HD Edition』も手がけたが、いずれも他社のIPである。彼らは自身でIPを保有し、最大限の利益を得て、自由に開発できるビジネスモデルを早期アクセスに見いだしていたのかもしれない。
Hidden Pathは早期アクセスから多くのことを学んだとしており、またファンとのコミュニケーションは明確にしなければならなかったと伝えている。さらに『Windborne』の開発中に早期アクセス自体が大きく変化したと伝えたほか、当時は早期アクセスがどのようなものなのかまだ把握できておらず、ゲームを完成させるために早期アクセスは利用すべきではないと最後に結論づけている。『Windborne』のコードはユーザーに対して公開しておらず、またいつの日かみずからの手で完成させたいと考えているという。