『シナプティック・ドライブ』開発者見城こうじ氏は、『カスタムロボ』ファンのためにNintendo Switchを選び、使命感を持ってゲームを作る

サウザンドゲームズは、9月12日に『シナプティック・ドライブ』を発表した。ディレクションを担当しているのは見城こうじ氏。見城こうじ氏はかつてゲーム会社ノイズに在籍し、任天堂と共に『カスタムロボ』シリーズを共同開発したクリエイター。どのような想いで『シナプティック・ドライブ』を作っているのだろうか。

【UPDATE 2018/12/20 19:30】
『Synaptic Drive』公式アカウントは本日12月20日、念願であったパブリッシャーを見つけ、開発を正式にスタートすると発表した。対応プラットフォームは既報どおりNintendo Switch/Steamであるとのこと。2019年中にリリースできる予定だという。本格的な開発が始まる『Synaptic Drive』が、リリースされる日が楽しみだ。

https://twitter.com/SynapticDrive/status/1075697383005024257

【原文 2018/10/1 12:00】
サウザンドゲームズは、9月12日に『Synaptic Drive(シナプティック・ドライブ)』をTwitter上で電撃発表した。新設された名もなきアカウントから発せられたひとつの投稿は、あっという間に世界を駆け巡り、大きな注目を集めた。その投稿が多くの人々の目に止まった理由のひとつに、画像の開発者の項目に「ディレクター・見城こうじ」と記されていることがあげられるだろう。

見城こうじ氏はかつてゲーム会社ノイズに在籍し、任天堂と共に『カスタムロボ』シリーズを共同開発したクリエイター。かつて多くの少年たちを熱狂させた作品の開発者が、新たにロボットアクションゲームを作る。その事実に心躍らせたユーザーがいたわけだ。そのゲームの名前が、『シナプティック・ドライブ』なのである。

『シナプティック・ドライブ』は、閉じられた空間を戦場に、見下ろし視点で戦う対戦アクションシューティングゲームだ。対応プラットフォームは、現時点ではNintendo SwitchおよびSteam。プレイヤーはロボットらしき機体を選び、その後各項目に分かれたパーツを選んだ後、戦場へおもむきライバルと戦う。地上や空中を動き回りながら、メインウェポンであるガン、ボムに近い役割であるトラッカー、そしてトリッキーに動くワイヤーの3つを駆使し、敵の体力を削り切るのだ。その動きやシステム、コンセプトなどを見るとおり、“ほぼカスタムロボ”ともいえる作品だ。

幸運にも、東京ゲームショウ2018にてインディーブースに本作を出展している見城こうじ氏にお話をうかがうことに成功した。彼は何を思い、何を感じながら、どのような狙いを持って『シナプティック・ドライブ』を開発しているのだろうか?

 

使命感があった

――本日はお時間いただきありがとうございます。今回、『シナプティック・ドライブ』を開発しようとしたきっかけについて教えてください。

見城こうじ氏:
ここ長年、プレイヤーとして自分が好きなゲームを遊ぶ中で、自分の作ったものを見直しつつ、自分の作りたいゲームは何なんだろうと考えることがありました。そうするうちに、対戦ゲームが好きであることを再認識しました。自分自身も対戦ゲームを作ってきた実績がありますしね。自分が好きで、作れるゲームであると考え、『シナプティック・ドライブ』を開発するに至ったという流れですね。

――『シナプティック・ドライブ』は、ゲームとしては『カスタムロボ』シリーズを強く思い起こさせます。

見城こうじ氏:
そこについては、やっぱり話さないといけないですよね(笑)。『カスタムロボ』の新作が10年以上出ていなくて、僕のところにも新作を出してくださいというリクエストがきます。国内からだけでなく、海外からもいただきます。どうしても(カスタムロボに)似たゲームが、ないんですよね。それが影響しているのかなと思います。そういう中で、どうすべきなのか考えていました。

――ファンの期待に応えたかったと。

見城こうじ氏:
はい。こういう言い方が適切かはわかりませんが、使命感みたいなものを感じながら作っています。自分にしか作れないものなので、僕が作るしかないんだろうなという強い想いが、最近ふつふつと湧いてきていますね。

――ゲーム制作の現場からは、離れていたんですか。

見城こうじ氏:
いえ、しばらくスマートフォンゲームを作っていました。パズルゲームやカジュアルゲームを手がけていました。そうしたものをサウザンドゲームズさんと作っていて、こなれてきたので、ここらで一発大きなものを作りたいと話になりました。

――サウザンドゲームズさんは、開発会社なんですか。

見城こうじ氏:
いえ、どちらかというとプロデュースやマネージメントを一緒にしてくださる会社さんですね。僕が作りたいゲームがあり、サポートしていただいている形です。なので、現在パブリッシャーさんは別に絶賛募集しております。

――ちなみに開発チームは何人ぐらいで構成されていますか。

見城こうじ氏:
5~6人ですね。全員が常時いたわけではなく、デザイナーさんの入れ替わりや立ち代わりもありました。その体制で、4か月ぐらいをかけてプロトタイプ版を作りました。

――4か月でこのクオリティですか。さすがですね。では、『シナプティック・ドライブ』の内容について聞かせてください。遊んだ感覚としては直球として『カスタムロボ』だと感じて、同作のDNAを引き継いで作られていると感じました。一方で、『カスタムロボ』との違いについて教えてください。

見城こうじ氏:
ひとつは、グラフィックですね。『カスタムロボ』はおもちゃっぽい世界が特徴的ですよね。あのデザインが当時の小学生の男の子に刺さったと思うんですが、今回はもともとのファンの方に遊んでいただきたいというのもありつつ、ターゲットを広げたかったんです。上の年齢の人もそうですし、海外のユーザーさんについても意識しました。さらに広げたい気持ちがあり、リアル寄りのデザインにした形ですね。実は今回、ロボット以外のものも出そうとしているんです。たとえば、サイボーグだったり獣人だったり。ロボットだけに限定せず、広げていきたい。そもそも、当時のユーザーも年齢重ねていますし、そこに合わせたいところもありました。

 

躊躇なく難しくしていく

――大人のユーザーを狙って作っているというのが、本作と『カスタムロボ』の違いのひとつなんですね。ゲームプレイでの違いはなんでしょうか。

見城こうじ氏:
異なる点としては、初代『カスタムロボ』の時代は、ツインスティックがなかったことがあげられます。NINTENDO 64のコントローラーはワンスティックだけでした。今のコントローラーはツインスティックが標準なので、当時と比べると新しいことができるなと。それと、スティックの押し込み操作などもできるので、できることは増えている印象です。こうしたシステムによって導入できたのが、ワイヤーシステムです。右スティックでワイヤーを出し、線ではなく面で攻撃する特徴があります。

――ワイヤーも含めて、『カスタムロボ』よりも操作が忙しくなっている印象です。

見城こうじ氏:
はい、そこは意図してそうやっています。

――遊んでみて異なると感じたのは、比較的にテンポがゆったりめな点ですね。どのキャラクターやパーツを使っても、こうしたテンポで進むのでしょうか。

見城こうじ氏:
ゲームスピードについては、すでに何人かの方にご指摘いただいたところです。僕の方でも全体のスピード感については遅いと認識しています。内情としては、最初ワイヤーを導入した際にワイヤーの操作がなかなかまとまらず、ワイヤーを操作できるスピード感にするために、ほかのゲームスピードをあわせて遅くしていました。今はこなれてきたので、もう少しスピード感を上げていけるかなと思います。

ゲームスピードに関して補足をしますと、今回左スティックを押し込むことで、地上ダッシュをすることができます。それとまだ実装されてないんですが、右スティックで必殺技を繰り出せるようにする予定です。本作は競技での盛り上がりも意識していて、遊んでいる人だけでなく見ている人にも楽しんでほしいというのもあり、派手な必殺技や逆転技を入れていきたいと検討しています。

――もともと見城さんのつくられる作品は、見るのも楽しい作品だと思いますが、さらにそうした要素を強化するんですね。そのほかの、こだわりなどはありますか。

見城こうじ氏:
パーツに関しては、今までなかったような動きをするものも入れていく予定です。詳しくは内緒なんですが、いろいろ面白い動きをするものを入れていきたいですね。踏み込んでいきたいです。これまでの作品と、全部同じというのは面白くないので。

――ゲームとして、これまでの良さを守りつつ、複雑にさせていくと。

見城こうじ氏:
そうですね。そこに関しては、躊躇したくないですね。複雑にしても、深くしていっても、お客さんはついてきてくださると信じて作るようにしています。「難しすぎてついてこれないんじゃないか」「カジュアルにしたほうがいいんじゃないか」という迷いは持たないようにしています。

――現時点では、ワイヤーもゲームに馴染んでいる印象で、複雑になっていくのが楽しみです。敵のAIはどうですか。

見城こうじ氏:
シングルプレイとしてオフラインで遊ばれる方もいると思うので、良い相手になってくれるCPUも用意はしたいです。

――ゲームモードとしては、アーケードモードがメインですか。

見城こうじ氏:
そうですね。

 

対戦にこだわる

――ストーリーモードがなく、対戦特化の作品になると。

見城こうじ氏:
そうなります。オンライン対戦に力を入れていきますので。ただ、そこに至るまでの練習用にシングルモードがあるという位置づけにしたいと考えています。ストーリーモードがほしいという声は聞くんですけどね……。

――あのモードを作るとなると、コストがかさむのかなと。

見城こうじ氏:
まさしくそうですね。それが理由となります。ストーリーモードを入れると、コストが倍になるんですよね(笑)。それから、ストーリーモードよりはゲームバランスの調整などに時間を使いたいという部分も大きいです。

――やりこみに対するリワードはどのような計画をしていますか。遊んでいくとパーツがアンロックされていくような形ですか。

見城こうじ氏:
そうですね。そういう形を考えています。ただし、リリースの時点で大半のパーツは使えるようにしたいと思っています。アンロックが増えて面倒くさくなると辛いじゃないですか。早く対戦したい人が、じれないようにしたいと考えているので。そこの塩梅は難しいとは思うのですが、いろいろ考えています。

――あくまでユーザーの目線で考えられているんですね。つくる側としては、どうしてもアンロックは織り交ぜていきたいと思われるのかなと。

見城こうじ氏:
(笑)。でもやっぱり遊ぶ側としても、イライラしたくないので。そこらへんも含めて計画中です。たとえば、アンロックを採用するとして、パーツによってはプレイによってアンロックするのではなく、タイムリリースでアンロックする形がいいのかなと考えてもいます。ゲームを運営する上で、少しずつ増えていく形ですね。今の時代だとダウンロードコンテンツなども必要になってくると思うので、多少はそういったものも入れる計画です。

――こうしたゲームでは、色を変えたり、デザインを変えるスキンなどと相性の良さを感じます。

見城こうじ氏:
確かにスキンは強い弱いに影響しないですよね。相性の良さはありますね。

――ゲームの配信形態は、基本プレイ無料ではなく購入式ですか。

見城こうじ氏:
そのように考えています。ただ、オンラインゲームともなるとサーバー代など運営費もかかるので、難しいですよね。遊ぶお客さんにとっては関係ないと思うので、そこのバランスも見極めていきたい。

――では、本作をリリースする上でNintendo Switchを選んだ理由を教えてください。

見城こうじ氏:
『カスタムロボ』ファンに届けたいという強い想いがあったので、まずSwitchでリリースしたいというのは決めていました。開発を進めていく中でSteam版も、ほぼ同時期に出せる目処がたって来ましたので、今回思い切って東京ゲームショウに併せて展示させて頂いた流れです。

――個人的に興味を持ったのは、発表の仕方でした。どこのメディアも通さず、Twitterアカウントを新設して突然発表するというのは、そうそうないケースだと思います。非常にインディー的だと感じました。荒々しい印象でした。

見城こうじ氏:
それは僕よりもサウザンドゲームズさんの戦略なので、なんとも言えないんですが(笑)。でも正直なところ、AUTOMATONさんの記事を含めて、Twitterの反響がすごかったのは、とてもありがたかったですね。嬉しかった。後ろ盾もないので、手作りでもいいので自分たちのやり方で徐々に発表していくしかないと考えていました。東京ゲームショウでお披露目することを目指していましたね。

――ユーザーに寄り添った発表だったと思いました。

見城こうじ氏:
そうするしかなかったというのが、実情ですけどね(笑)。

――見城さんの熱い想いが伝わってきました。ゲームのリリースを楽しみにしております。ありがとうございました。

https://twitter.com/SynapticDrive/status/1044102798965596160

https://twitter.com/SynapticDrive/status/1044439114811039744

https://twitter.com/SynapticDrive/status/1044523465619890176

Ayuo Kawase
Ayuo Kawase

国内外全般ニュースを担当。コミュニティが好きです。コミュニティが生み出す文化はもっと好きです。AUTOMATON編集長(Editor-in-chief)

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