『箱庭えくすぷろーらもあ』 すき氏インタビュー。Valveをも困らせるセクシーなドット絵は「みんなの欲望」から生まれた

美麗なドット絵で彩られたクォータービューのマップ。縦横無尽に敵を叩き斬る爽快感のあるアクション。そして、自由度の高いプレイを特徴とするフリーゲーム『箱庭えくすぷろーら』。同作の開発者であるすき氏にインタビューをおこなった。作品のルーツやドット絵で表現するエロスについて語ってもらう。

美麗なドット絵で彩られたクォータービューのマップ。縦横無尽に敵を叩き斬る爽快感のあるアクション。そして、自由度の高いプレイを特徴とするフリーゲーム『箱庭えくすぷろーら』。それに追加要素を加えて英語版にも対応した『箱庭えくすぷろーらもあ』がBitSummit Vol.6に出展された。価格は税込み980円で、近日中にPLAYISMおよびSteamからリリースされる。今回は、その『箱庭えくすぷろーらもあ』の制作者であるすき氏にインタビューをおこなった。ゲームでは、美麗なグラフィックとは裏腹に、シモネタがオンパレードで、女の子モンスターもきわどい格好で登場する。そんなけしからん表現のルーツについてもすき氏から語ってもらった。

『箱庭えくすぷろーら』のはじまり

今回、BitSummitのために北海道から訪れた、すき氏

――改めてこのゲームの紹介をお願いします。

すき氏:
『箱庭えくすぷろーら』は、ドット絵のクォータービューのアクションRPGです。2016年にHSPプログラムコンテストで完成版として発表して、もともとフリーで公開していたものなんですが、ローカライズして有料で出すことになったのが『箱庭えくすぷろーらもあ』です。そのままのバージョンで出すのは申し訳ないと思ったので、自分ができる限りのことをして、追加要素を加えました。可愛い女の子がいっぱいでてきて、ちゅっちゅ吸われたり、お尻で攻撃されたり、そういったゲームになります。

――お尻のことは後で詳しく聞きたいと思います。ゲームは最初はコンテスト用に作っていたんですか。

すき氏:
元の元を言うと、ゲームになる予定ではなかったんですけど、追加要素を加えていくうちにみんなで遊んでもらうゲームになった感じですね。

――処女作といえるのが『箱庭えくすぷろーら』なんでしょうか?

すき氏:
そうですね。形になったのがこれがはじめてです。

――僕のプログラマーの友人が、普通はゲームエンジンを使うのに、昔ながらにすべてをスクリプトで制作しているので、変態すぎると驚いていました。

すき氏:
作り始めた当時は、学生でした。『RPGツクール』で色々ゲームを作っていたんですが、ちょっとアクションゲームを作るには難しいなと感じまして。当時、プログラミングのことを調べていたらHSPというプログラミング言語があって、それがゲームを作るのに敷居が低いという理由で始めたんですね。最近、Unreal EngineとかUnityとか知って、いいなぁとは思いつつ(笑)、そのままHSPで作り続けています。

――『箱庭えくすぷろーら』のためにだけにイチからプログラムを勉強したということですか。

すき氏:
そうですね。サンプルのスクリプトが豊富にあってわかりやすかったんで、ほとんど苦労することなくここまでこれました。制作期間は5年くらいで、スローペースでがんばって作りましたね。

――制作体制はお一人で?

すき氏:
難易度調整やデバックは自分一人でやっていたんですが、途中から音楽を提供してくれる吉松たつゆきさんという方が現れて、その方が音楽面で色々と手伝ってくれました。うぐさんという方がボーカルを務めてくれたんですけど、歌まで作ってくれて。そんなこんなで、ちゃんとしたゲームになってしまったという感じです。

緻密で可愛いドット絵が、本作の魅力になっている

――このゲームにつながるという意味で、幼少のころはどんなゲームをやっていたんですか。

すき氏:
そうですねぇ……『スーパーマリオワールド』ですね。ほかには『マリオペイント』『ロックマンX』、あと『スーパーマリオRPG』もやりました。『スーパーマリオRPG』はクォータービューでしたし、そういう意味では影響は大きいと思います。さらに昔のことをいうと、レゴブロックですね。あれの取説がクォータービューなんですよ。小さいころからレゴブロックが好きで、説明書を眺めているだけでも楽しかった思い出があります。

――ドット絵のアートスタイルもそういったゲームから来ていると。

すき氏:
『マリオペイント』で、ドット絵を描いていたんですよ。小さいときから、ドット絵ってこういう風になっているんだって、よくさわってはいたんで、ドット絵でゲーム制作を始めるのもそんなに問題なく始めることができました。

――『箱庭えくすぷろーら』では、情報収集して情報を得ることで、はじめてその場所に行ける点がユニークだと感じました。

すき氏:
『ロマンシング・サガ』シリーズで街の人の話を聞いて、地図に場所が現れるというのがあったので、多分そこから影響されていると思います。

――主人公もバックグラウンドを持たず、世界にいきなり放り込まれるような、遊びに特化したものですが、これはどうしてですか。

すき氏:
自由に冒険してほしいないう気持ちがあって、あんまり目的つけないほうがいいかなと思いました。だからあまり主人公に個性をもたせていないんです。

――実は世界設定とは緻密にあったりするんですか?

すき氏:
いや全然、考えてなくて(笑)。ただ思うがまま追加していっただけなんで、全然お話はないんです。

――参考にしたアクションゲームはなにか思い浮かびますか。武器や防具がすぐに壊れるのがユニークですね。

すき氏:
アクションは、構想と似たゲームがなかったので、試行錯誤を繰り返しながら、あの形になったという感じです。僕がRPGをやっていると、アイテムを溜め込んじゃうんですよ。だからプレイヤーには溜め込んでほしくなくて。もったいがらずに新しいアイテムをどんどん試してほしいなと思い、ああいう風にしました。

――そういう発想もあるんですね。マップを区切られているのはプログラム的な重さを考慮してですか。

すき氏:
PCによってFPSが安定しなくて、どうしても重いんですよ。僕が作ってる単位が10×10×10なんですけど、1000回描画しつつ、それに加えてキャラクターを設置して、メニューも表示しないといけない。それを考えるとスペックを問わず、みんなで遊んでもらうにはあのマップの大きさが限界かなと思いました。それがちゃんと安定化するようにプログラムを組むのがこのゲームで一番大変なところでしたね。

――今後は、色んなフランチャイズ展開していきたいですか。

すき氏:
そんなに難しくなければ、家庭用ゲーム機に挑戦してみたいんですけど、HSPだと難しいらしくて。最初からUnityで制作すればそんなこともなかったんですけど。だから、けっこう厳しいですね。

――『もあ』の追加要素を教えていただけますか。

すき氏:
『風来のシレン』には、ランダム・ダンジョンがあるじゃないですか。ああいうものを4つ追加して、ラスボスの黒幕を出現させたバージョンになります。細かいところをいうと、アイテムとかものすごく増えたり、持ち物のアイテムが勝手に腐っていったり、主人公の性別の要素もつけました。Twitterの反応を見ていると、女の子がいじめられる要素がほしいなと意見もあったので追加してみました。

――本作の続編か、まったく違う次回作などの構想はありますか。

すき氏:
ありますね。Twitterとかでもちょっと呟いたことがありまして、シリズモウを作りたいと思っていて。

――シリーズものですか。ということは続編か、前日譚ですか。

すき氏:
いえ、『箱庭えくすぷろーら』には全然関係なくて、「尻相撲』です。

――えっ、『尻相撲』!?

すき氏:
お尻とお尻がぶつかりあう戦い。

――もしかして今度はUnreal Engineとか使うんですか。艶かしいお尻とお尻がぶつかりあって……。

すき氏:
いえ、それもドット絵で描いてHSPで作るのかなと。今まで勉強してきて、作れるならすぐ作れますからね。昔、携帯アプリで似たようなゲームがあったんですが、今は古くてできなくなっちゃったんで、あれをやりたいなぁと思いまして。じゃあ作ろうかなと。なかなか僕が遊びたいゲームがないんで、どうしても自分で作ろうと思っちゃいますね。満たされないんです。

 

ドット絵でえっちさを表現するこだわり

――ドット絵でえっちな表現をすることに、なぜそれほどこだわりがあるのでしょうか。

すき氏:
やっぱり、それはみんながエッチだからですかね、それを外に出さないだけで。僕はそれを外に出したというだけの話かと思います。多分ですけど(笑)。もともとえっちなものを作る意図があったわけじゃないんですけど、反響があったので、どんどん追加していきました。自分もそういうのは嫌いじゃないですし。今回、追加したボスも実はえっちなものを追加していて、“使って”いただければ幸いですね。

――ゲームには背面システムと呼べるようなものがありますね。背中からキャラクターに接触するとお尻が触れたり、リアクションが違うという。

すき氏:
あれも自分ではよくわからないんですけど、入れてみたら面白かった(笑)。お尻は好きでしたけど。Steam用のバナー素材にえっちなボスを複数体のっけたら、「えっちすぎる」とValveから言われまして、キャラクターだけ差し替えました。

――あれだけ暴力的やエッチなゲームがSteamにあるのに、可愛い感じのドット絵で言われるなんて聞いたことがないです(笑)。海外の人たちには、最初はドットの絵の可愛さで釣って、そのあとドット絵のエロさに目覚めさせて、2Dドットじゃ興奮できない体しようと画策しているんでしょうか。

すき氏:
ゆくゆくは僕と同じえっちなドット絵が好きな人が出てきて、その人がえっちなドット絵のゲームを作ってくれれば、僕もそのゲーム遊べますよね。みんな幸せ。それは割と真面目に考えています。

――これまでドット絵で「えっちだ……」と思ったものってありますか?

すき氏:
『サガ』シリーズですね。女の子キャラの敵が多かったんです。あとは『ファイナルファンタジー』シリーズ。特に『4』が一番よかったですね。

――歴代の『FF』シリーズは、召還獣のシヴァなど毎回セクシーでしたよね。

すき氏:
ラミア系の敵とか、可愛くて、めちゃくちゃセクシーなんですよ。女の子モンスターの入り口はそこですね。

――人間の女の子のドット絵はあんまりですか?

すき氏:
人間の女の子のほうが、どっちかというと好きです。なんですけど、人間の女の子に攻められるって、あんまりないんです。モンスター娘だと絶対に攻めてくる。こっちが攻めるんじゃなくて、向こうが攻めてこないとダメなんで。

――では、18禁まで踏み込んでくるドット絵もあってしかるべきだと考えていますか?海外では最近でも全裸のドット絵が表現されているゲームもありますが。

すき氏:
そうですね。僕的には丸裸よりも……。

――(笑)。それでは最後に、すでに同作をやりこんだ方向けにメッセージがあればお願いします。

すき氏:
一度やったダンジョンも、マップが変わってるところとか、追加のギミックがあるので、そこの違いを遊んでもらえたら楽しめるかと思います。特定の場所にいくと隠しコインがあるとか、隠しマップがあって、そこに宝箱があったりとかするんで、探してみていただけたらなと思います。

――ありがとうございました。

ポーズまでしてくれた、サービス精神旺盛なすき氏

 

Koji Fukuyama
Koji Fukuyama

小学2年生のときに、『ドラゴンクエスト5』に出会い、「ゲームは、ゲーム独自の手法を使って人間のドラマや物語を伝えることができる」ということに衝撃を受けました。そこから一貫して、ストーリーメディアとしてのゲームに注目しています。

同時に中学生から映画を浴びるように見始め、西部劇やホラー、SF映画など、アメリカの古典的なジャンル映画をとくに偏愛しています。

オールタイムベストゲームは『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』。このゲームで感じた面白さや感動を再び体験するために、ずっとゲームを続けています。

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