『メタルギアソリッドV』の核廃絶イベントがついに発動、ただし発生条件は未達成。核なき世界はいまだ実現せず
PC版『メタルギアソリッドV ファントムペイン』の核廃絶イベントが2月2日、突如として発動した。同イベントがゲーム内で発生したのは、2015年9月に本作が発売されてから初めての出来事。対象となるのはSteamで販売されているPC版のみで、コンソール版については未発生。redditでは記念すべき瞬間をとらえた映像が投稿されている。ただし本作の公式ツイッターアカウントによると、イベント発生条件は満たされておらず、意図せずイベントが生じてしまったとのことだ。
The nuclear disarmament event was triggered in the Steam version of METAL GEAR SOLID V: THE PHANTOM PAIN on Feb 2nd at approximately 12:00 GMT. We are still investigating, but can confirm that the event was triggered while the nuke count hadn’t reached zero. (1/3)
— METAL GEAR OFFICIAL (@Metalgear) February 4, 2018
核廃絶イベントとは、プラットフォーム別のサーバ上から全ての核兵器が廃棄され、総核兵器数がゼロになったときに発生するカットシーンのことである。本作における核兵器には、オンライン要素であるFOBミッションにおいて、他プレイヤーからの報復を抑制する効果がある。抑止力としての明確なメリットがあるだけに、皆が皆、廃棄を望んでいるわけではない。「サーバ上から全ての核兵器が廃棄」されるという条件は厳しく、ゲームのリリースから2年半近くが経つ今になっても達成されていない。データ解析によりイベントシーンの内容は動画サイトを通じて広まっているが、実機にて正規ルートで発動したことはないのだ。
コナミデジタルエンタテインメント(以下、コナミ)がイベント発生条件を公開したのは2015年11月。それからというもの、核なき世界の実現を目指すsubreddit「Metal Gear Philanthropy」や「Metal Gear Anti Nuclear」が立ち上がり、核廃絶という壮大な挑戦が始まった。だが全世界に広がるマザーベースから核兵器を取り除くという彼らの試みは、核拡散を目論む「Metal Gear Patriots」というカウンターグループの誕生により制止された。対立グループが存在している時点で、イベントシーンの自然発生は望み薄だろう。プレイヤー同士が争うことを、人々が核の争奪戦に参加することをやめない限り、核なき世界は実現されないのだ。
※redditユーザ「Swerverdude」氏が投稿したイベント映像
ではなぜ、核保有数がゼロに達していないのに、核廃絶イベントが発生してしまったのだろうか。コナミ公式は原因に言及していないことから、さまざまな憶測を呼んでいる。先に数字を見ておくと、公式ツイッターでは定期的に「プラットフォーム別の核兵器保有数」が報告されており、Steam版ユーザの核兵器保有数は2018年1月25日時点で7533発となっている。2017年6月時点では8586発あり、そこから2017年12月にかけて1万1500発を超えるまで増殖の一途を辿っていた。だが2018年に入ってからは7533発にまで一気に縮小。他プラットフォームが増加傾向にあるなか、Steam版のみ急激な変化を見せている。
1月25日現在の「MGSV:TPP」ゲーム内核兵器保有数をプラットフォーム別にお伝えします。PS4:1942(95)、PS3:1054(32)、One:331(118)、360:398(-4)、Steam:7533(-4110)です。グラフはPS3/PS4の推移です。(J) pic.twitter.com/TqU3Y9Au8x
— メタルギア公式 (METAL GEAR) (@metalgear_jp) January 25, 2018
ただ今回ゲーム内で発動したイベントシーンによると、開発された核兵器の総数は「21億4748万3647発」と、不自然な数量にまで伸びている。「21億4748万3647」は32ビットで使用できる符号付き整数の最大値であることから、カウントできる数値の限界を超えたことで、ゲーム内の核保有数が正しく認識されなくなったのではないか(その結果イベントがトリガーされたのではないか)、という憶測が飛び交っている(reddit)。本作における核兵器は、そう簡単に大量生産できるものではない。よって誰かがハッキングにより核兵器を量産して、ゲームのリミットを突破しにかかったのではないかというわけだ。
また海外メディアPolygonは、社会情勢を踏まえたタイムリーな出来事であったことに興味を示している。核廃絶イベント発生と同日2月2日には、米国のトランプ政権が核政策指針「核戦略体制の見直し」を発表。抑止力としての小型核兵器開発の強化が謳われた。また今年1月には、地球最後の日までの残り時間をイメージした「世界終末時計(Doomsday clock)」が、冷戦期の1950年代以来となる「午前0時まであと2分」まで進んでいる(The New York Times)。強引な憶測ではあるが、核の脅威が身近になりつつあるなか、反核反戦、核のあり方を描いてきた『メタルギア』シリーズの話題を、この日に再浮上させたかった者がいるのかもしれない。
なお同じく核廃絶イベントが発生した2月2日には、『メタルギアソリッドV ファントムペイン』をプレイしたユーザ向けに、『メタルギア サヴァイヴ』のゲーム内で使用できる特別アイテムを付与する旨が、コナミ公式よりアナウンスされている。『メタルギア サヴァイヴ』は2月21日発売予定のシリーズ最新作。最大4人までの協力プレイに対応し、「潜入・防衛・生存」を融合した新しいメタルギア体験が届けられる。