壺男が山を登る高難易度アクション『Getting Over It』を1分56秒でクリアするプレイヤー現る。高速ハンマー回し炸裂
今月1月12日、『Getting Over It with Bennett Foddy(以下、Getting Over It)』の最速クリアを競うスピードラン(RTA)にて、世界記録が生まれた。ルールはGlitchless(グリッチ利用なし)で、タイムは1分56秒となっている。今回のタイムを叩き出したプレイヤーは、現時点で『DARK SOULS II』と『Human: Fall Flat』のふたつで最速記録を持ち、『Cuphead』や『バイオハザード7 レジデント イービル』など多岐にわたるタイトルにて偉大な記録を残してきたDistortion2氏だ。2週間前にはLumonen氏が2分4秒の記録を打ち立てていたが、ここから更に8秒を短縮し1分台に突入している。
『Getting Over It』は12月7日にSteamで発売されたゲームだ。Humble Bundleにおいては10月6日より先行リリースされている。またモバイル向けにも配信中だ。下半身が壷にはまった男がハンマーひとつで山を登るという設定の奇抜さと、理不尽ともいえる難易度。ひとつのミスによってすべてが巻き戻しになることもある容赦のなさと、一方で緻密に設計された奥深いステージデザインによって注目を集めている。開発者であるBennett Foddy氏は、過去に物理演算を導入した高難易度ランニングゲーム『QWOP』をリリースしたことでも知られている。
Distortion2氏のプレイ動画を視聴すると、いかにも簡単そうに見えるかもしれないが、断じてそうではない。プレイヤーは、PC版であればマウスもしくはタッチパッドでハンマーを操りステージを上へ上へと登っていくのだが、まずこの基本操作が困難だ。直線的にハンマーを引っ張り上げても、壷が壁や障害物にすぐに引っかかってしまうため登れない。山道を登るためには弧を描くように、マウスをスムーズに操作する必要がある。
そしてこの動作をリズムよく、ある程度の勢いを付けて繰り返していく必要もある。さらに左右に障害物が設置されておりプレイヤーの行く手を阻むポイントも見受けられ、ハンマーでジャンプした直後にハンマーを崖にを引っ掛けるといったテクニックを要される場面も多い。少しでも操作を誤ると、これまでの努力は水の泡に消える。動画内で苦も無く進んでいるように見えるのは、Distortion2氏の卓越した技術の賜物であろう。基本操作の熟達に加えて、48秒での大幅なショートカットなど随所にテクニックを見せ、冷静なプレイが光る。
本作ではほんの少しの失敗によって始めからやり直しになることが多く、幾度も喪失感を味わうことになる。ゲーム中落下すると開発者が音声で慰めてくれるが、逆撫でするようなコメントで余計失敗したことが腹立たしくなる。ストアページの紹介文に「特定の人を、傷つけるために。」と記されているように、その苦しみこそ本作の最大の特徴であるといえる。
しかし、本作はただ理不尽で苦痛なだけではない。プレイヤーの力量を巧みに引き出していくようにステージは設計されており、あきらめず何回も挑戦することで上達を実感できるはずだ。それこそが本作が熱狂的なファンを生み出す要因のひとつであろう。実際に、発売から1か月強経った現在、Steamにおいて約57万本の売り上げを記録している(SteamSpy調べ)。またSpeedrun.comには現在、274位までの記録が存在している。売れているだけでなく、多くのプレイヤーが最速を競っているのだ。ゲームとしての奥深さがあるからこそ、競技としても盛り上がっているのだろう。