『マインクラフト』で「天空の城ラピュタ」を再現するプロジェクトが6年を費やしついに完結。作者に製作の苦労や見所を聞いた
『マインクラフト』内で「天空の城ラピュタ」を再現するプロジェクトが先月9月末についに完結した。その壮大なプロジェクトの最終回となる映像は、ニコニコ動画やYouTubeから確認できる。同プロジェクトはその名のとおり、『マインクラフト』の世界で「天空の城ラピュタ」を再現しようとする野心的な計画だ。約6年の製作のうえについに完結した。今回は、同プロジェクトを手がけたはじクラ☆もっち氏(以下、もっち氏)にお話をうかがったので、聞いた話をまじえてその内容をお伝えする。
このプロジェクトは、まさに映画の「天空の城ラピュタ」を再現すべく作られたものだ。同プロジェクトはもっち氏ひとりで作られたという。動画は第五部にまで分かれており、第一部はオープニング~ドーラ一家からの逃亡シーンまで、第二部は炭鉱の街~シータとの別れのシーンまで、第三部はパズーとドーラ一家~シータの救出シーンまで、第四部はタイガーモス号~竜の巣のシーンまで、そして第五部はラピュタ城着地から崩壊エンディングのシーンまで描かれる。総時間としては1時間10分以上にもわたる。各部が完成するまで、どのような苦労やこだわりがあったのか、氏に語ってもらった。
第一部
もっち氏によると、第一部(オープニング~ドーラ一家からの逃亡シーン)のこだわりは、映画のシーンをすべて再現することを目指した点だという。迫力のある特徴的なシーンだけでなく、ズーの家の地下にある模型の飛行機の下においてある塗装のバケツや小道具をスケルトンのヘッドで表現、パズーが屋根から飛び降りた場所から窓までの経路、その窓からみえるオートモービルの方角は正しいかどうかなど、とにかく細かい点を作り込むことを目指して製作された。あまりの膨大な量であったが、地道に積み上げていったようだ。再現するなかでは、スタジオジブリが生み出した原作の構図や背景の美しさがあらためて認識できたともっち氏は話す。
第ニ部
第二部(炭鉱の街~シータとの別れ)で苦労した点は「のっぺり感の回避」だという。『マインクラフト』は立方体のブロックを採用しているので、4つ以上くっつくと平面の「のっぺり感」が目立ってしまう。海軍基地を建設する際には、この「のっぺり感」を回避するために時間をかけて斜めに建築を進めていったとのこと。ただ、円柱の塔や砲台群を斜めにすると形が崩れてしまうリスクもある。そこでもっち氏はブロックの色を変えることで影表現をつけることで立体感を出すことを選択。見る方向によっては影の位置に違和感を抱くことが拭えないが、それでも「のっぺり感」を回避するために必要なことであったと氏は語っている。またこの影をつけることで立体感を手法は映画でもふんだんに使われており、影を取り入れることにより再現率を高めることができたとのこと。
第三部
第三部(パズーとドーラ一家~シータの救出)では「撮影技法の工夫」にこだわったようだ。映画の世界ではキャラクターはダイナミックに動くものの、『マインクラフト』の世界ではそこまでは動かない。ゆえに、ところどころにキャラクターの目線を導入したのだという。映画ではカメラは固定されているが、今回のプロジェクトはカメラを動かし続けることで立体感を出せるように腐心しており、そういった意味でも「撮影技法の工夫」がなされているようだ。もっち氏は、ドーラが気絶しフラップターの海面スレスレから浮上するシーンとシータの救出のシーンのふたつの場面をお気に入りのシーンにあげており、映画に迫るの演出ができたと感じていると語っている。
第四部
第四部(タイガーモス号~竜の巣)は、3部から2年が経過したということで、氏自身の技術やスペック、Modの進化とあわせて全体的に大幅にスケールアップがなされている。第四部のこだわりは「人物と効果音」。「天空の城ラピュタ」は人間ドラマも特徴的な作品だ。キャラクターの同士のかけあいについてどう再現するか悩んだすえにもっち氏は「脳内補完を邪魔しないキャラクター描写」を選択。たとえばドーラ一家のメンバーたちがシータを取り巻き騒ぐシーンはキャラクターを登場させつつも、見ている人の想像の補完もできるような演出に留められている。ただ、これだけでは演出として弱かったようだ。そこでもっち氏はタイガーモス号のエンジン音や羽音など効果音を強調させることで、見ている人に没入感を与えることを試みた。状況にあった効果音を探すところから始めなければいけないので大変苦労したが、結果として距離感や臨場感が生まれる映像が完成したようだ。
第五部
最終回である第五部(ラピュタ城着地~崩壊とED)では「すべて」にこだわったという。実は最終回が公開されたのは「天空の城ラピュタ」の再放送日の9月29日。2年に一度再放送されるという再放送日を一か月前に知ったもっち氏は、この日を目標に急ピッチで仕上げていく。時間をかけながら質の高いものを作るために、血反吐を吐きつつ必死にこの最終回を作ったという。映像が前後半に分かれていることからもそのこだわりがわかるだろう。ラピュタ城の崩壊シーンについては、使われているブロックをTNTブロックに置き換えつつテクスチャを普通ものに変えて使用したとのこと。ラピュタ城の崩壊シーンを撮影している際には、憑き物がとれたような感覚を味わったと氏は語っているように、集大成となるシーンであることは間違いない。
現在ツールやModが大きく進化したことにより、こうした再現プロジェクトなども作業効率は大きく向上しているものの、ブロックの形や間隔や向きの違和感は、見ている側にはすぐバレてしまうという。ベースとなる部分は効率よく構築できたとしても、細かい手作業での修正がメインとなり、やはり膨大な時間が要するようだ。またゲーム内に舞台を作る作業と撮影する作業のふたつにより今回のプロジェクトは構成されている。一方がスムーズに終わっても、もう一方はなかなか終わらないといったこともあったようだ。効果音や音楽については、フリーのものおよび権利者から許可をもらい利用しているとのこと。
氏が使用したModおよびプラグインは以下のとおり
バージョンおよびサーバー:
ver1.7.10 cauldron1.7.10
Mod:
Optifine
TooManyItems
Camerastudio
BetterFoliage
Lotmetablockpack
Shadersmodcore
CustomNPCs
ExtendRenderDistance
ReisMinimap
プラグイン:
Extendhotbar
pointteleport
TSP_A_Jumper
TSP_A_Metadatachanger
TSP_A_Replacer
Voxelsniper
WorldEditor
WorldGard
外部ツール:
McEdit
もっち氏は『マインクラフト』を遊ぶうちに「天空の城ラピュタ」を再現しようとしたのではなく、そもそも「天空の城ラピュタ」を再現するために『マインクラフト』を始めたという筋金入りっぷりだ。尋常ではない情熱と作品への愛着が完結を導いたという点には疑いない。6年間という期間は公になっていたが、製作にかかった総時間は2190時間におよぶという。日常生活のあいている時間は費やし映像を作り上げていった。
また気になる同プロジェクトで舞台となった世界の配布についてたずねたところ、予定しているとの返答をもらった。当初から配布することでユーザーに楽しんでもらいたいと考えていたとのことで、バージョンの違いや広さの問題からすぐにとは言えないものの、将来的には配布する予定であるので、気を長く待っていてほしいともっち氏は語っている。ちなみにプランとしては、ただ配布するだけでなく、サバイバルですべての建築物を一通り歩けようにする予定であるという。
もっち氏は「天空の城ラピュタ」プロジェクトだけでなく、実況動画も投稿したり、『マインクラフト』初心者向けのサイトを運営するなど、幅広い活躍を見せている。同プロジェクトでより活動が終わるわけではないようなので、もしこのプロジェクトの完成度に魅せられた方がいるならば氏の次なる動きに注目してみてもいいかもしれない。