新規e-Sports競技場Blizzard Estadium紹介 & 台湾OverwatchプロチームFlash Wolvesミニインタビュー

私は『Overwatch』についてそれほど詳しいわけではないが、『League of Legends(LoL)』の台湾公式リーグである「2017 LoL Master Series Spring」の取材許可がおりた段階で、第二の狙いを「Overwatch Pacific Championship 2017 Season1」に定めるほどには注目しているゲームタイトルである。今回私はBlizzard Estadiumを訪れ、このリーグを生観戦してきた。

いま『Overwatch』観戦が熱い――と、思う。

何だか歯切れの悪い言い方なのは、あくまでも個人的な考えに過ぎないからだ。e-Sportsとしての盛り上がりという意味では、まだこれからという感じがしている。私は『Overwatch』についてそれほど詳しいわけではないが、『League of Legends(LoL)』の台湾公式リーグである「2017 LoL Master Series Spring」の取材許可がおりた段階で、第二の狙いを「Overwatch Pacific Championship 2017 Season1」に定めるほどには注目しているゲームタイトルである。今回私はBlizzard Estadiumを訪れ、このリーグを生観戦してきた。

 

今年3月オープン、Blizzard Estadium内部を徹底取材

台湾でe-Sports競技場と言えば、2011年から『StarCraft2』などのリーグが行われていたTeSL Studioを真っ先に思い出す私は、珍しい部類に入るかもしれない。台湾のe-Sportsシーンを追っているのであれば、2014年にオープンしたGarena e-Sports Stadiumを連想する人が多いのではないだろうか。先に触れた『LoL』の台湾公式リーグが行われている会場だ。

そんな台湾で、今年3月にオープンしたのがBlizzard Estadiumである。驚いたのは、その立地だ。前述のふたつの競技場はITテクノロジーの街として知られる内湖という郊外にあるのに比べて、こちらは忠孝復興・忠孝敦化という台北市内の中心地にある。しかも、流行の最先端を行く台湾きってのおしゃれスポットである「誠品書店」が入っているビルだというのだから、最初はにわかに信じられなかったほどだ。

ただし入口は表側ではなく、裏側の金融ビルのエレベーターを利用する。入口のわきにBlizzard EStadiumの今後のスケジュールが看板として出ていたので、それがちょうど目印になった。12階に上がってなかに入ると、右側に飾られたスポンサーのロゴマークが目に留まる。左側にはカウンターがあり、飲み物が売られていたようだ。カウンターの外に立っているお姉さんが入場の印として腕にハンコを押してくれた。これを見せれば出入り自由ということらしい。

その奥にはBlizzardグッズの展示があった。思わず欲しくなるようなお宝グッズばかりである。その反対側には、今回の「Overwatch Pacific Championship 2017 Season1」に出場しているチームのロゴが飾られていた。そこを通り過ぎると、横長に試合会場が広がっている。左右に『Overwatch』の6人が横並びに座れる競技席、真ん中に巨大スクリーン。観客席もそれに合わせて横長になっており、真ん中の最前列からは画面がまさに目の前である。

その巨大スクリーンの前がステージになっていて、試合終了後にはここでインタビューが実施される。選手の生声が聞こえてきてしまうほど、距離がとにかく近い。ところで試合中は、各選手の席の下に設置されたモニターに個人画面が映し出される。かつて韓国で『StarCraft』が全盛期だった時代にはかならずあった会場を訪れた人の特権のようなものであり、とても懐かしい気持ちになった。一人称画面や選手の顔が見たければ、お目当てのチーム側の席に座れば良い。

ありがたいことに、途中でBlizzardの方に呼ばれ、特別にVIPルームと放送席およびプレスルームを見せていただいた。あまりに突然で驚いてしまって写真がうまく撮れなかったことを懺悔したい。そのほか、左脇には練習スペース、右側には実況解説席と放送の主調整室が設置されていた。この日はあいにくの大雨で観客はまばらだったが、普段は人気チームの試合ともなると満席になることもあるそうだ。

 

「Overwatch Pacific Championship 2017 Season 1」とは?

この日行われていた「Overwatch Pacific Championship 2017 Season1」は、アジア太平洋地域から8チームを招待して行うリーグ戦で、Blizzard Entertainmentの公式大会である。レギュラーシーズン終了後に上位3チームによるプレイオフが行われ、優勝チームには賞金300万台湾ドル(約1110万円)が贈られる。素晴らしいことに、この大会には日本からもDeToNator GOLD(DTN)とSunSister(SST)の2チームが参戦している。

台湾からはFlash Wolvesとahq e-Sports ClubとMachi Esports、そして香港のHong Kong Attitudeも参加しており、個人的には『LoL』でおなじみのチームが目につく。あとはタイのFireBallと、オーストラリアのBlank Esportsである。私が取材した時点でちょうど1st Roundが終了し、オーストラリアのBlank Esportsが7勝0敗で単独首位に立った。そして6勝1敗で台湾のFlash Wolvesがすぐあとを追いかけている。

DeToNator GOLD(左からSamuraiD、delave、Saih4tE、yoshiharu、dohteloff、Ameken)
SunSister(左からkira44、Elu、Molis、ZETMAN、Odenkun、XQQ)

私は運よくSST対DTNの日本対決を、現地で観戦することができた。ひとつの拠点を互いに占領し合う「コントロール」をDTNが、攻撃チームが拠点を占領してからペイロードを目的地点へ運ぶ「ハイブリッド」をSSTがそれぞれ制し、1-1の状況。攻撃チームが2つの地点を狙う「ポイントキャプチャー」でDTN、ペイロードを運ぶその名も「ペイロード」でSSTが勝利し、スコアは2-2。最終戦は再び「ハイブリッド」での対決となったが、DTNが拠点を占領しペイロードをきっちり目的地点まで運んだのに対し、SSTは時間内に拠点を占領することができずGG。最終的に2-3でDTNの勝利となったが、非常に接戦で手に汗握る戦いだった。

 

Flash Wolves Overwatch部門のメンバーを直撃

今回私は、Flash Wolvesのメンバーに少し話を聞くことができたのでその模様をお伝えしたい。

――初めまして。まずは皆さんがどういう選手なのか、簡単な自己紹介からお願いします。

左からZonda、Realment、Jongie

Zonda:こんにちは、DPSを担当しているZondaです。僕はもともとLoLの選手だったので、プロゲーマーとしての経験はチームで一番豊富だと思います。『Overwatch』では攻撃的なプレイが得意で、前に出て行ったり敵のバックラインに入ってスナイプしたりするようなプレイが好きですね。でも性格は、対戦相手に笑顔で挨拶しに行ってしまうぐらいすごく楽天的です。

Realment:僕はRealmentです。チーム内では一番年上で、昔は『Counter-Strike』の選手をしていました。自分の試合での特徴は、できるかぎり敵を自由にさせないよう考えながらプレイしていることです。性格はとても冷静で、どんな試合でも緊張しないほうですね。

Jongie:僕はタンクを担当しているJongieです。ゲーム内での特徴は、やっぱりタンクで極限までフィジカルを発揮したいという思いがあるので、あんまりチームメイトに頼りたくないというのがありますね。性格的には僕もけっこう楽天的なほうで、新しいことをたくさん学びたいという気持ちが強いタイプです。ちなみにチーム内では僕が一番年下です。

左からBaconjack、KMoMo、S1nkler

Baconjack:DPSを担当しているBaconjackです。僕はどちらかというと、試合を楽しんでいるタイプだと思います。相手の動きを分析して、相手の狙いを崩すようなプレイが好きです。相手の動きを読みきれたときは、ものすごい達成感を感じますね。

KMoMo:僕はKMoMoといいます。サブタンクをプレイしています。試合のときは緊張しやすいタイプだと思いますが、普段のときは新しいプレイを学ぶのが好きです。今まで経験したことのない状況に出くわすと、すぐに人に聞きに行くほうです。

S1nkler:サポートのS1nklerといいます。僕は試合に出るのが大好きで、とにかく試合となると熱くなってエキサイトしやすいタイプですね。性格はわりと完璧主義者なほうで、常に最高の状態にしておきたいという感じです。

――プロゲーマーになったきっかけや理由を教えてもらえますか。

Zonda:プロゲーマーになったのは、とにかく優勝したいからという感じでした。『LoL』から転向した理由は、前に所属していたチームが解散してしまい、続ける意欲がなくなってしまったからです。まあ、『LoL』はとても長いことプレイしましたから疲れてしまったんですよね。それでストリーマーに転向したのですが、そこで『Overwatch』と出会いました。このゲームはMOBAの要素もありつつ、僕がかつて遊んでいたFPSの要素もあって、いろいろ突き詰めていくうちに自然にプロゲーマーになって現在に至るという感じです。

Realment:ズバリ、世界チャンピオンになりたかったからです!でも僕が以前プレイしていた『Counter-Strike』はだんだん大会も少なくなり、台湾ではシーンそのものがほぼなくなってしまいました。それで一時は『LoL』をプレイしていたこともあって実力も悪くはなかったんですが、やっぱりMOBAそのものよりもMOBA要素を含んだFPSのほうがいいなと思って『Overwatch』に転向しました。

Jongie:僕は『Overwatch』がとても面白くて、だんだん試合に出たいと思うようになったんです。ラッキーなことにNamelessというチームに入ることができて、その後Flash Wolvesに誘われて入ることになりました。

Baconjack:やっぱり僕も『Overwatch』を遊んでいてすごく楽しかったんですが、自分としてはさらなる高みを目指したいというのがあったんです。それでいろいろな試合に出場したところ、みんなに上手い選手として認めてもらえるようになりました。そこからもっと自分の可能性を試したいと思うようになり、プロゲーマーになりました。

KMoMo:僕は子供のころからゲームが大好きで、プロゲーマーになれるチャンスがあったら絶対につかみたいと思っていたんです。それでアマチュア時代に活躍することができて、チャンスをつかむことができました。

S1nkler:僕もアマチュアチームStay Frosty時代に良い成績を収めることができたので、プロゲーマーになることができたと思います。

――好きなヒーローは何ですか。その理由も聞かせてください。

Zonda:好きなヒーローはハンゾーです。昔から、弓を使うキャラクターが好きだったんですよね。

Realment:僕が好きなのはルシオです。ほかのヒーローとは違うプレイ方法が気に入っています。

Jongie:僕は、アルティメットひとつで形勢を逆転させることができるラインハルトが一番好きです。ストレスも解消できる気がするし、自分だけで敵6人をディフェンスできる感じもいいですね。

Baconjack:僕の好きなヒーローはリーパーです。僕はリーパーのスキルのエフェクトが本当にカッコいいなって思うんですけど、実はプレイはすごく繊細なんですよね。たぶん皆さんもリーパーを長く見続けていけば、きっと理解してもらえると思います。

KMoMo:僕が一番好きなのはメイです。機能もすごく多くて、敵に対し攻めにくくさせることができる点が気に入っています。

S1nkler:僕はアナが一番好きです。チームメイトたちをうまく回復させてあげられたときに、すごい満足感がありますね。

――最後に、日本の『Overwatch』ファンに向けてメッセージをお願いします。また、日本のことで何か興味を持っていることがあればあわせて聞かせてもらえますか。

Zonda:僕たちはこれからも努力して、試合で良い成績をおさめていきたいと思っています。日本についてですが、実は日本に2回行ったことがあり、最近だと今年2月に姫路城を見に行きました。僕は日本の城を見学するのが好きで、昔の武士の刀や鎧などを見るのも大好きです。

Realment:毎試合ベストを尽くして、皆さんに面白い試合をお見せしたいなと思っています。日本については、個人的に食べ物が世界一だと思います。ラーメンとか丼物とかスイーツとか、日本には行ったことがないんですが日本の食べ物は大好きです。

Jongie:日本というと僕もラーメンですね。よく食べるので。試合のほうは僕の場合、経験が少ないんですけど、日本の皆さんにもっと応援してもらえるようになりたいです。これからも、全力を尽くしてファンの皆さんに応えたいと思います。

Baconjack:もしもStay Frosty時代からずっと応援してくれるファンがいたら、すごくありがたいなと思います。逆に僕のことをあまり知らない人たちにも、応援してもらえるよう頑張ります。日本にはまだ行ったことがないんですが、日本の街は清潔そうだし日本人は礼儀正しいので、ぜひ行ってみたいです。でも、台湾人もみんな優しいですよ!

KMoMo:僕も日本には行ったことがないんですけど、日本へ行ったことのある人から聞いた話では、温泉などはすごくリラックスできると聞きました。日本の皆さん、僕たちを応援してくださってありがとうございます!

S1nkler:僕はONE PIECEとかの漫画が大好きです。まあ、チームメイトもみんな日本の漫画は大好きですけどね。日本の皆さんがFlash Wolvesを応援してくれたら、とても嬉しいです。さらに台湾まで僕たちを応援しに来てくれたら、もっと嬉しいです!

 

Overwatch観戦の未来、さらなるファン獲得を目指して

e-Sports競技としては、まだ始まったばかりという感じの『Overwatch』。もちろんファンもそれなりに集まってはいたのだが、あの立派な競技場からあふれんばかりのファンの姿というのは残念ながら見ることができなかった。環境整備は完璧と言ってもいいだろう。あとは、選手や試合の見せ方などの工夫が必要なのかもしれない。そういう意味では、今回のFlash Wolvesの選手たちの声を伝えることで、日本語コンテンツとはいえ台湾『Overwatch』界に貢献できれば幸いである。

なお、Flash Wolvesの練習室の様子は、『LoL』部門のメンバーのインタビューとともに後日お届けする予定なので、もう少しお待ちいただきたい。

Hiromi Mizunaga
Hiromi Mizunaga

韓国在住経験5年。在韓中の2006年ごろeスポーツと出会い、StarCraft: Brood Warプロゲーマーの追っかけとなる。帰国後2009年ごろから本格的に「スイニャン」の名でライター活動を開始。さまざまなWEBメディアで取材、執筆活動を行うほか、語学力を活かして国際大会の引率通訳やeスポーツ特番の翻訳字幕なども手がけている。自らはゲームをほとんどプレイせず、プロゲーマーの試合を楽しむ生粋の観戦勢。

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