“『クロックタワー』リスペクト”の新作ホラー『Remothered: Red Nun’s Legacy』開発陣、「『クロックタワー』の新作も機会さえあれば作りたい」。イタリアでホラーゲームを追求する職人たちに話を訊いた

本作の原点ともいえる『クロックタワー』への思いや、さらにその源流などをうかがうことができたので、本稿でお伝えする。

Stormind Gamesは『Remothered: Red Nun’s Legacy』を2026年内にリリース予定だ。対応プラットフォームはPC(Steam/Epic Gamesストア/GOG.com)/Nintendo Switch 2/PS5/Xbox Series X|S。

本作はホラーゲーム『Remothered』シリーズの最新作だ。シリーズ第一作目の『Remothered: Tormented Fathers』はもともと『クロックタワー』へのトリビュート作品として、ファンメイドで個人制作されていた作品。その後Stormind Gamesが開発に参加し、オリジナルのゲームとして世に出た経緯がある。

そんな『Remothered』は三部作の作品と謳われており、2020年には第二作目にあたる『Remothered: Broken Porcelain』が発売された。しかし三作目が発表されることなく、Stormind Gamesは別のゲームを次々とリリースするかたちに。ファンからはシリーズの完結を悲観視する声も聞かれていた。そうしたなかで、ついに新作が発表されたかたちとなる。

しばらく音沙汰がなかった同シリーズが、なぜ今回復活したのか。弊誌はオンライン上で実施された、複数メディアによる開発陣への合同インタビューに参加。本作のチーフクリエイティブオフィサーのDaniele Azara氏、ゲームディレクターのAntonio Cutrona氏、ナラティブディレクターのLuca Esposito氏を交えて話を訊いた。本作の原点ともいえる『クロックタワー』への思いや、さらにその源流などをうかがうことができたので、本稿でお伝えする。

――スタジオの紹介をお願いします。

Azara氏:
Stormind Gamesはイタリア・シチリアに拠点を置く独立系のゲームスタジオです。我々は“AA級”のゲームスタジオを自認しており、業界最大手の企業らと協力しながら、ゲーム開発に取り組んでいます。『A Quiet Place: The Road Ahead』の制作や、『マフィア:オリジン ~裏切りの祖国』の共同開発、『Dead by Daylight』の開発への参加など、著名IP作品にかかわった経験も有しています。そんなStormind Gamesにとって、『Remothered』シリーズはスタジオとして初めて手がけた作品という位置付けになります。

――本作『Remothered: Red Nun’s Legacy』の制作にあたっては、ほかの大手パブリッシャーやIPホルダーと協力しているのでしょうか?本作の開発経緯について教えてください。

Azara氏:
まず明確にしておくと、『Remothered: Red Nun’s Legacy』はStormind Gamesのプロジェクトであり、クリエイティブディレクション・開発・パブリッシングの責任は自分たちにあります。本作の制作を決めたのは、『Remothered』シリーズのファンに対する敬意と責任感からです。

『Remothered』は、第一作目と第二作目を合わせて85万本以上の売り上げを記録するなど、好評を得たシリーズです。コミックなどマルチメディア展開もでき、新規IPとしてファンベースを確立できました。しかし二作目のリリース後、『Remothered』シリーズはしばらく展開が止まってしまいました。その間スタジオはほかの作品に取り組んでいたのですが、当スタジオのファンからは「『Remothered』の新作はいつ出るのか?」という声をずっと頂いていました。

そして私たち自身、『Remothered』がこのまま消えていくのは受け入れがたいと感じていました。こうしてついに、新作の開発が決定したというかたちです。

――過去作から受け継いでいるものや、あるいは変化など、本作のコンセプトについて聞かせてください。

Cutrona氏:
物語はシリーズ第一作目から20年後が舞台となっており、過去作でお馴染みのキャラクターも登場します。しかし新しい物語としても作られているため、ほかのシリーズ作品をプレイしていなくても楽しめる作りです。

ゲームプレイの中心要素はシリーズの精神を踏襲しています。私たちは『Remothered』シリーズのコア体験を「重圧下での探索」と定義しています。昔ながらのホラーゲームのように、プレイヤーは恐ろしい追跡者から逃げつつ屋敷を探索し、謎を解いていくことになります。

本作独自のコンセプトとしては、“意識と催眠”がテーマになっています。催眠術にかかった恐ろしい信者が主人公のスーザンを追い回し、スーザン自身も催眠術に晒されて、現実を異なるかたちで認識し始めます。催眠的な力は謎解きにも活用され。鏡を見ると背後に隠されたオブジェクトが写るなど、スーザンの歪んだ知覚と超現実的な現象が表現されます。また本作ではプレイヤーの近接戦闘能力が過去作より拡張されており、武器を使って追跡者に対処することもできるようになっています。

――Remothered』シリーズの第一作目は『クロックタワー』の影響を受けていることが公言されており、主人公は戦闘能力をもちませんでした。今回の作品には戦闘要素が導入されたとのことですが、狙いはなんでしょうか?

Cutrona氏:
『Remothered』ではシリーズの第二作目で、ある程度の戦闘要素が導入されていました。今回はそれを拡張したかたちになります。戦闘要素を広げた理由としては主に二つあり、まずひとつはストーリー上のものです。今回の主人公は「行方不明になった子どもを救うためなら何でもする」という、強い決意を抱いている母親です。彼女が追手に反撃せず、逃げ惑うだけというのは作劇上不自然でした。

もう一つは過去作からのフィードバックからです。寄せられた反響より、一切の反撃ができない受動的なゲームプレイというのは、一部のプレイヤーには受け入れられにくい内容だと分かっていました。ある程度の能動性をゲームにもたらすことで、より広い層に訴える作品にできると考えました。

とはいえ、本作は派手なアクションゲームを目指しているわけではありません。私は2005年に発売されたホラーゲーム『DEMENTO』も好きでよく遊んだのですが、ゲームバランスとしてはちょうどそれぐらいのイメージです。追跡者に正面から対抗するのは難しいというのは大前提となり、昔ながらのホラーゲームのイメージは保っています。

Azara氏:
あまりネタバレはしたくないですが、追跡者への有効な対処法はタイプによって変わります。戦闘は対処法のひとつとして活用できますが、追跡者によってはまったく通用しないかもしれません。場合によって異なる対応が必要になるでしょう。

――近年のいわゆるAAA級のホラーゲームは、アクション要素が強い作品が主流になっています。こうした大作に対抗するために、“AA級のスタジオ”を自称するStormind Gamesはどのようなことを意識して取り組んでいますか?

Cutrona氏:
ゲームがAAAタイトルに対して独自の強みを持つことは、間違いなく重要です。私たちのスタジオの真の強みはイタリアホラー文化の理解にあると思っており、それを活かすことを意識しています。

『Remothered』シリーズはもともと『クロックタワー』のトリビュート作品として出発しました。そして『クロックタワー』は、ダリオ・アルジェント監督のホラー映画「フェノミナ」からの影響が公言されています。つまりイタリア映画の影響を受けて日本で『クロックタワー』が作られ、そして『クロックタワー』の影響を受けた我々が、イタリアで『Remothered』を作っている。一種のループがあるわけです。もしこのループの原点がイタリアホラーにあるなら、それはイタリアのゲームスタジオである我々の強みになると思っています。

Azara氏:
ホラーは私たちが作るすべてのゲームで追求している表現です。『Remothered』シリーズについていえば、柱としてあるのはヒューマンホラー、つまり人間の悪意です。人間関係、病的なもの、そして家族。そういったものがテーマになっています。

人間同士の関係をどう構想し、どう描写するか。そして人間関係が現実をいかに歪めうるかを、恐怖表現を通じて描くというのが本作の特徴です。予算の規模にかかわらず、『Remothered』シリーズには独自の魅力と掘り下げる余地がたくさんあると思っています。

――ちなみにもし『クロックタワー』シリーズの公式作品を作れる機会があったら、作りたいと思いますか?

Azara氏:
もちろんです!なぜノーと言えるでしょうか?(笑)もしIPホルダーからコンタクトがあったら、喜んで作りますよ。ホラー表現は我々が経験を積んできた分野ですし、ホラーゲームの制作こそが当スタジオのアイデンティティですから。

――『クロックタワー』や「フェノミナ」のほかに、本作が影響を受けている作品はありますか?

Cutrona氏:
たくさんありますが、ひとつ挙げるならやはりイタリアホラー映画の「サスペリア」ですね。実は本作主人公の名前のSusanは、「サスペリア」の主人公にちなんでいます。ちょっとしたオマージュです。

――本作を制作するうえで、もっとも難しかった課題はなんでしょうか?

Azara氏:
一言でいうならば「完結させること」ですね。ゼロから何かを作るのはとても難しいですが、作ったものを上手く終わらせるのも、同じくらい難しくなることがあります。本作は三部作の締めくくりとして、全体の物語を繋げる必要がありました。過去作で回収されていない伏線を拾い集め、すべての疑問に答えを与えて、ファンの期待に応える。しかし同時に、本作から『Remothered』をプレイする人も楽しめる内容にしなくてはなりません。達成は簡単ではありませんでした。

Esposito氏:
まさしくそのとおりで、自分から付け加えることはありません(笑)「過去を尊重しつつシリーズに進化をもたらす」というのが本作の目標で、それが私たちにとって最大のチャレンジでした。

――ここ数年は『A Quiet Place: The Road Ahead』や『マフィア:オリジン ~裏切りの祖国』など著名IPのゲーム開発を手がけていたとのことですが、大手パブリッシャーと協力してのゲーム開発の経験は、本作の制作にどう活かされていますか?

Cutrona氏:
『Remothered』シリーズの初期2作を作っていた当時からは、チームの知識や経験、規模など、多くのことが変わりました。しかしわかりやすく大きく変わったのは、プレイテストの頻度です。当時はそれほどでもありませんでしたが、現在の我々はプレイテストを極めて重視しており、本当に頻繁に実施しています。今では「たくさんテストして、フィードバックを得て、調整」というプロセスは、ゲーム制作の最も重要な要素の一つだと確信するに至りました。

Esposito氏:
ナラティブディレクターとして付け加えると、プレイテストではパズルの難易度やヒントの配置の仕方などはもちろん調整しますが、あわせて物語の伝え方も調整します。プレイヤーの反応を観察しつつ、押し付けがましくないかたちで情報を提供するやり方については、ほかの作品の制作で学んだことです。ストーリーの深みを犠牲にせずに、なるべく分かりやすく伝えるというのが目標になります。

Azara氏:
Behavior Interactiveや2Kといった大手ゲーム会社との仕事は、ゲーム開発のプロセスを改善する上で役立ちました。我々は全員リモートでゲーム開発をおこなっているため、適切な制作プロセスは非常に重要です。彼らはコミュニケーションの改善方法などについて、具体的な知識を提供してくれたので、非常によい経験になりました。

――本作を含めゲームを開発していくなかで、最も自分が誇らしくなる瞬間を教えてください。

Cutrona氏:
新作について紹介している、今この瞬間、でしょうか?個人的にゲームを作っていて最も誇らしいと思えるのは、作品を発表して皆さんから反響をもらうときです。オンラインでのイベントやプレスリリース、あるいは対面でのリアルイベントなど発表方法はいろいろですが、ファンから直接フィードバックを受け取れるのはいつも素晴らしい体験です。

Esposito氏:
確かに、この瞬間は素晴らしいですね(笑)個人的に、私は以前から『Remothered』シリーズのファンでした。チームとしても我々はシリーズを愛していますし、夢だった第三作を発表できた今は、誇らしい気持ちでいっぱいです。

もう一つ加えると、とある追跡者の出来栄えについて私は本当に気に入っており、誇らしい気持ちでいます。プレイヤーに早く本作を遊んで体験してほしいと、待ちきれない気持ちでいっぱいです。初遭遇はきっと素晴らしい瞬間になりますよ。

Azara氏:
私は入社二年目で過去シリーズの開発には参加していないのですが、本作の制作に加わってチームメンバーに会った瞬間は誇らしかったです。メンバーは自分たちが作り上げる作品について本当に献身的で、これほどの愛情と情熱をもつ人々と知り合えたのは素晴らしいことです。

もう一つは、本作の物語が完成したときですね。我ながら感情的になりました。ゲームプレイのメカニクスを活用してプレイヤーの感情をかき立てつつ、シリーズの長い物語を締めくくることができています。三部作の完結作にふさわしい素晴らしい内容になったと、とても誇らしく思っています。

――ありがとうございました。

『Remothered: Red Nun’s Legacy』はPC(Steam/Epic Gamesストア/GOG.com)/Nintendo Switch 2/PS5/Xbox Series X|S向けに、2026年内に配信予定だ。

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Akihiro Sakurai
Akihiro Sakurai

気になったゲームは色々遊びますが、放っておくと延々とストラテジーゲームをやっています。でも一番好きなのはテンポの速い3Dアクションです

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