『ライザのアトリエ』3作品は開発者も認めるほど「異質」だらけだった。「肉感キャラ」「同一主人公」「独特ライティング」は、なぜ導入しどういう意義があったのか?
「秘密」シリーズについて振り返り、現在と未来の「アトリエ」シリーズやガストブランドについて訊いた。

コーエーテクモゲームスは2025年11月13日、『ライザのアトリエ ~秘密トリロジー~ DX』を発売した。対応プラットフォームは、PC(Steam)/PS4/PS5/Nintendo Switch/Nintendo Switch 2。なお同作は現在各プラットフォームでセール中である。
本作は、錬金術士ライザを主人公とした「秘密」シリーズ3作品に新規要素を追加した、同シリーズの決定版である。第1作から第3作までがそれぞれ単体で発売されるほか、3作品のセットも販売。3作品共通の要素としては、カゴ・コンテナの上限解放、UI/UXの改善など、遊びやすさを見直す調整がおこなわれているほか、新規プレイアブルキャラクター、新ストーリー、新マップなどが追加。さらに、これまでにリリースされた追加コンテンツも多数収録されている。
弊誌はこのたび、コーエーテクモゲームスのガストブランド長である細井順三氏と、本作の開発プロデューサーを務める河内克斗氏にインタビューを実施した。『ライザのアトリエ ~秘密トリロジー~ DX』発売タイミングで、改めて「秘密」シリーズについて振り返り、現在と未来の「アトリエ」シリーズやガストブランドについて訊いた。
ライザのデザインは異質だった

――『ライザのアトリエ ~秘密トリロジー~ DX』がリリースされたということで、改めて「秘密」シリーズがどういった作品だったのかをお伺いできればと思います。まずは、改めて自己紹介をお願いいたします。
細井氏:
コーエーテクモゲームスのガストブランド長を務めている細井順三と申します。元々は2009年の「マナケミア」シリーズの広報などを担当しており、その後『リディー&スールのアトリエ 〜不思議な絵画の錬金術士〜』からプロデューサーとして「アトリエ」シリーズに携わっています。
河内氏:
開発プロデューサーの河内克斗と申します。『メルルのアトリエ 〜アーランドの錬金術士3〜』でプログラマーとして参加して以降、多数の「アトリエ」シリーズタイトルに携わり、『ライザのアトリエ ~秘密トリロジー~ DX』で初めて開発プロデューサーを務めております。
――よろしくお願いします。まず『ライザのアトリエ ~秘密トリロジー~ DX』がリリースされるということで、オリジナルの第1作目『ライザのアトリエ 〜常闇の女王と秘密の隠れ家〜』(以下、ライザのアトリエ)を紐解いていこうと思います。まず、『ライザのアトリエ』はどういったきっかけから開発が始まったのでしょうか。
細井氏:
『ライザのアトリエ』の立ち上げの頃、私は『リディー&スールのアトリエ 〜不思議な絵画の錬金術士〜』で初めてプロデューサーを務めていました。『リディー&スールのアトリエ』は「不思議」シリーズの3作目にあたるのですが、前作『フィリスのアトリエ 〜不思議な旅の錬金術士〜』ではオープンフィールドに挑戦したり、同時期に新規IPである『BLUE REFLECTION 幻に舞う少女の剣』を立ち上げたりしていたため、開発メンバーには疲弊感が出てしまっていました。
そこで、『リディー&スールのアトリエ 〜不思議な絵画の錬金術士〜』は開発現場の立て直しも兼ねて、新しい要素を入れるというよりは「アトリエ」の王道の作品として制作することにしました。さまざまな家庭用ゲーム機にマルチに展開した甲斐もあって、売り上げもゲーム自体の評価も好調をいただきました。……ただ、私はユーザーさんのご意見を見たときに「「アトリエ」シリーズが元の形に戻ってしまった」と感じました。
――その直前でオープンフィールド含め新しいものを取り入れて進化を目指していたつもりが、結果としては以前の「アトリエ」に戻ったと。
細井氏:
そうです。で、その後は『ネルケと伝説の錬金術士たち 〜新たな大地のアトリエ〜』や『ルルアのアトリエ 〜アーランドの錬金術士4〜』などを作りましたが、セールスを含めた「アトリエ」シリーズの閉塞感のようなものを感じていました。その閉塞感とは、つまり、これまでのシリーズに倣った保守的な作品を作っていたんです。それに気が付いた時に、ここを抜け出すにはやはり新しい挑戦をしなきゃダメだと改めて思いました。
そこで、次にリリースする作品では、“市場に受け入れられるゲームを作りたい”と考えました。もちろんそれまでも、自分たちが作りたいものや、「ユーザーさんに求められているのではないか」と思ったものを信じて制作していましたが、今回は特に市場調査をしっかり行おうと決めました。そしてまずは、ライザのキャラクターデザインから考えました。当時の市場でどういった女性像やスタイルが受け入れられるのか、そこから検討をし始めたんです。
――それまでの「アトリエ」シリーズを振り返っても細身の主人公が多かったシリーズの中で、肉感のあるライザは異質な存在ですよね。

細井氏:
はい。様々な分析をした結果、そのふくよかさというのが、ユーザーさんが求めているものなんじゃないかなと思ったんです。文化や様々なご自身を取り巻く状況によって好まれる体型やキャラクターデザインの傾向が異なると感じました。ライザはその広い範囲の中でも、中央値になるようなデザインにしたかったんです。
――中央値を考えた結果、ライザが生まれたと。
細井氏:
はい。ですので、ライザがユーザーさんに受けいれてもらえた時は本当にほっとしました。また、キャラクターデザイン以外ではストーリーも改善の余地があるなと考えました。「アトリエ」シリーズは主人公の成長物語がベースの日常的なストーリーになっています。ただ、もっとわかりやすい日常系にしたいなと思ったんです。
その当時、私は「IT/イット」シリーズや「ストレンジャー・シングス 未知の世界」を観ていて、「IT/イット」は基本的にはホラー作品じゃないですか。でも、ホラーという題材を使いつつも、芯の部分にあるのは青春劇だなと思ったんです。「ストレンジャー・シングス 未知の世界」も同様に、怪異と触れ合いながら少年少女たちが成長していく物語だったんですね。
そこで、私たちも「アトリエ」シリーズというファンタジーRPGを土台にした青春劇を作りたいなと。さらに、そこに夏という日本人にとってもエモーショナルなものを取り入れれば、新しいプロダクトになるかもしれないと思ったのが、『ライザのアトリエ』の始まりでした。私は田舎出身なんですけど、田舎の人って変わることに対して抵抗があって、閉鎖的な部分があるんじゃないかと感じていまして。そういった部分も含めた、土着したストーリーを作りたかったんです。

――たしかに、ライザの故郷クーケン島はいいところですが、どことなく閉鎖的な空気感がありました。
細井氏:
そうなんです。だから青春劇という海外で受け入れられる土壌がある設定に、日本人が作れるものを組み合わせて完成したのが『ライザのアトリエ』です。この作品は「アトリエ」シリーズという文脈の中では異物化しますが、その異物感がシリーズを新しいところに導いてくれるかなと思って作りました。
『ライザのアトリエ』はそのような形で、「アトリエ」というある種の壁をいかに崩しつつ、そのときのユーザーさんが求めるものに寄り添っていくかというアプローチをした作品になりました。また、その当時はグローバルを強く意識していませんでしたが、結果的に世界中のユーザーのみなさんに受け入れていただける作品になりました。とてもありがたく思っています。
――『ライザのアトリエ』の開発中は、「これはいける」という手応えはあったんでしょうか。発表時、かなり盛り上がっていた印象でしたが。
細井氏:
反響はいただいていましたが、私たちも、キャラクターデザインを担当いただいたトリダモノさんも、みんな自信がなかったですね。キャラクターデザインにおいても、その時だけ流行る、話題になるケースは結構あるじゃないですか。一過性のものとして消化されてしまって、ゲームを発売するころには忘れられているというのも見てきたので、私たちとしてはやっぱり自信がありませんでしたね。
――話題になって「ほら!」となるわけではなく?
細井氏:
全然ないです。むしろこの話題性の高さを継続できるかなという不安の方が強かったですね。
――期待値が上がったわけですからね。
細井氏:
はい。また、「アトリエ」シリーズとしては初めて外部のシナリオライターさんを招いて、高橋弥七郎さんに参加いただきました。ただメディアさんの試遊会をした際に、書いていただいたシナリオをそのままゲームに組み込むと、「これはRPGではなくアドベンチャーゲームなのでは」ということに気づいたんです。それで、このままではRPGとして面白くないと、作り変えることになりました。それくらい、自信がない状態でした。
――メディア試遊会で面白くなかったと感じた理由と原因は何だったんでしょうか。
細井氏:
たとえば執筆いただいたシナリオには、ライザが部屋にいるとかどこかに移動するとか、そういったト書きがあります。それをただ繋げているだけだった、というのが原因です。その構成だとスムーズなゲームにならないんですよ。クエストやお使い、敵が出現するとか、そういったものを繋げてひとつひとつゲームにしないといけなかったというところです。
外部のシナリオライターさんを招くというのが初めてで、作家さんとのコミュニケーションの仕方も定まっていない状態だったので、それに気づいてからは密に連携させていただくようになりましたね。本当に全体的に紆余曲折でした。
――紆余曲折ありつつもリリース後は非常に評判が良かったですよね。キャラクターデザイン以外で、特にゲーム性でどこが評価されたと感じていますか。
細井氏:
「アトリエ」シリーズらしさと新鮮さのバランスでしょうか。ライティングに関しては、ファンタジーでは珍しい夏というテーマを取り入れた結果、コントラストがほかのゲームよりも強くなっています。これまでの「アトリエ」シリーズをイメージしていた人たちがプレイした結果、「今までと全然違う」というところが話題性に繋がりましたし、インプレッションに繋がってくれたんじゃないかなと思っています。また、調合に関しても「不思議」シリーズからグラフィカルに表現して、奥深いけど楽しみやすいというコンセプトで作っていて、「ライザ」でも直感的な調合を取り入れました。そこも新しいユーザーさんに受け入れてもらえて良かったなと思いました。

――「秘密」シリーズのライティングは「アトリエ」シリーズの中でも、かなり飛び抜けて明るいゲームという印象を位置づけるグラフィックでしたね。
細井氏:
あのライティングは元々『BLUE REFLECTION 幻に舞う少女の剣』で学校の中の暗さも表現できるように、陰影を作るためのものでした。
――『ライザのアトリエ』用に作られたものというのではなくて、そもそも『BLUE REFLECTION 幻に舞う少女の剣』のために作られていたんですか。
細井氏:
そうです、そのライトをもってきたら夏っぽくなるねと(笑)なので、シェーダーも何も変えていないんです。しかも、実は『リディー&スールのアトリエ 〜不思議な絵画の錬金術士〜』から予算規模はまったく変わっていなくて、だからアイデアで勝負するしかなかったんです。
初めから主人公続投は決まっていた『ライザのアトリエ2』

――『ライザのアトリエ』が無事発売されて、『ライザのアトリエ2』を作ることはすぐに決まったんでしょうか。
細井氏:
元々「アトリエ」シリーズは毎年1本作っているので、『ライザのアトリエ2』を作ることはすぐ決まっていました。同じ主人公にするということも、1作目を作り始めた時点で決まっていましたね。
元々、「アトリエ」シリーズは主人公が毎回変わることが鮮度に繋がっていて、そのおかげで長く続いているというところが確実にあって、それが「アトリエ」シリーズの良い文化だと思っていたんですね。ただ一方で、ユーザーさんにはまた0からキャラクターを知ってもらう必要があるんです。
――主人公やキャラクターを一新すると、キャラは新しく作る必要があり思い入れはリセットされます。
細井氏:
そうなんです。「アトリエ」シリーズでもうひとつやってみたかったのが、1作目を成功させて、「ハリー・ポッター」シリーズや「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズのように、登場人物を引き継いだ続編という手法に挑戦してみたかったんです。
多くの人は世界観よりもキャラクターの方を重要視しているんだと思うんですね。思い入れのある人物の冒険譚の方に比重を置いているんじゃないかと感じたんです。
――『ライザのアトリエ2』のコンセプトはありましたか。
細井氏:
1作目が成功したことによって、個人的には技術に対してもコストを掛けて進歩しないといけないと思い、登ったり、泳いだりといった様々なフィールドアクションを用意したり、高低差も生かした広い世界を感じられるフィールド設計に挑戦しました。3~5年後にきちんとグローバルで受け入れられる作品を作るためにも、技術面でもきちんと投資していこうということで、今までとはフィールドの作り方を変えるというのが大きなコンセプトとしてありました。
――1作目を作るよりはストレスとかプレッシャーは緩和されましたか。それとも人気作品になった分、プレッシャーがますますかかっていたんでしょうか。
細井氏:
コロナ禍も相まって、私もトリダモノさんもすごく緊張感がありましたけど、開発全体としては、そこまでプレッシャーはなかったかもしれません。
河内氏:
開発はリーダーに緊張感があった印象です。やはりコロナ禍でチームの温度感というか、全体の士気を上げることが難しかったです。どうやってリモートワークをしながら成果を出すかというところに非常に苦心した記憶があります。
――とはいえリリースまで漕ぎつけて、『ライザのアトリエ』の勢いをうまく保持したまま、『ライザのアトリエ2』のセールスも良さそうな印象を受けました。
細井氏:
はい。続編としては順当な結果になりましたし、私たちとしても非常に良い作品になったと思っています。でもそれはやはり主人公が同じだからこそですね。主人公が同じだと新作発売のタイミングで前作がまた伸びたんですよ。これまでと比べると「秘密」シリーズ全体の売り上げは全然違いました。
――主人公を変えた方が刷新感もあり、新しいファン層を獲得しやすく、新しいチャレンジがしやすそうなので可能性が広がるかなと思っていましたが、そうとは限らないと。
細井氏:
どちらもメリット・デメリットがあるんです。同じ主人公で続けていった場合、後の作品になるほど売り上げが減っていくのはほぼ確定なんです。主人公を変えた場合は、同じシリーズ内でも売り上げにばらつきが出ます。たとえば「アーランド」シリーズの場合はPS3版だけで見ると『トトリのアトリエ 〜アーランドの錬金術士2〜』が、一番売れていますし。
ちなみに、『ロロナのアトリエ 〜アーランドの錬金術士〜』は『新・ロロナのアトリエ』などもありますので、そういった作品も含めるとやはり1作目が一番売れたことにはなります。
「ライザ3」はかなりの挑戦だった

――『ライザのアトリエ』、『ライザのアトリエ2』がリリースされて、『ライザのアトリエ3』で完結となりますが、そこでの決意やコンセプトはありましたか。
細井氏:
『ライザのアトリエ3』は、「アトリエ」シリーズで一番スケールの大きい作品にしたいと思っていました。「秘密」シリーズ以降の作品を考えつつ、『ライザのアトリエ3』を「秘密」シリーズの集大成にしたいというところで、開発規模を「アトリエ」シリーズの中で最大にしました。
その理由としては、オープンフィールドとシームレスバトルの採用です。これらを標準装備として、『ライザのアトリエ3』を作り上げて、「秘密」シリーズを完結させたいという思いがありました。ですので、今までの「アトリエ」シリーズよりも、技術的に高いハードルを設定していた作品ですね。それが後に『ユミアのアトリエ 〜追憶の錬金術士と幻創の地〜』に繋がっていきます。
――集大成を作るということで、開発チームの士気は上がっていましたか。
河内氏:
やはりオープンフィールドでシームレスという部分で、今までの経験も活かしつつ、しっかり仕上げていこうという決意がありました。

――『ライザのアトリエ3』は、初報のトレーラーの時点で個人的に「「アトリエ」シリーズでそんな技術的な挑戦をするの」とかなり驚きがあった印象です。開発者の意気込みがユーザーに伝わった手応えはありましたか。
細井氏:
はい、特に海外での反応が非常に良かったですし、とても参考にさせていただきました。フィールドの作り方や敵の配置の仕方、ストーリーの置き方というのは非常に意識しました。
――元々「アトリエ」シリーズ自体が広いフィールドの中で探索するシステムでしたが、オープンフィールドになるのはやっぱり大変でしたか。
細井氏:
それはもう本当に大変でした。河内がメインプログラマーだったんですが……、本当に苦労していました。
――何が大変でしたか。
河内氏:
沢山ありますが、オープンフィールドはどこまでも行けてしまうので、そのせいで見えてはいけないものが見えるとか、あとロードが間に合わなくて奈落の底に……ということも3Dのゲームだとありがちです。
さらにフィールドが広いので色々なところで色々な問題が起きてしまうんですよ。それに対して、自分からトラブルを見つけて問題解決のアプローチをしていかないといけないというところがすごく大変でした。今までの「アトリエ」シリーズは、過去作がこうだったからこうだよね、という風に経験則で何とかできていたところがあったんですが、『ライザのアトリエ3』は本当にチャレンジしていたので、自分たちが変わらないとしわ寄せが結局自分たちに返ってくるんです。
――どのように解決していったのでしょうか。
河内氏:
ひとつひとつ地道に対処していきました。開発メンバーひとりひとりの個性もあって、どうやって解決するのかという手段がそれぞれあるので、『ライザのアトリエ3』を通して、各メンバーがそれぞれ自分たちのやり方というものをひとつレベルアップする機会になったと思っています。やっぱり苦労はありましたが、ひとりひとりがしっかりと思いやって形にした結果、『ライザのアトリエ3』が完成して自信をもてたんじゃないでしょうか。
――『ライザのアトリエ3』を作る前と後で、開発チーム内がレベルアップしたと感じますか。
河内氏:
現場としてはひとつ修羅場を乗り越えられました。ああいった経験があったから次はこうやれる、といった振り返りができて、そういった点がすごく変わった感じがします。
細井氏:
ただ、私としてはある種の修羅場をくぐり抜けた結果、今は踊り場にいるなと思っていて。もう一回上に登っていかないといけないなと考えています。
――厳しい。
細井氏:
やはり『ユミアのアトリエ 〜追憶の錬金術士と幻創の地〜』を開発してみて、新しいチャレンジをした一方で、色々と至らない点もあったと感じています。
ですので、今ゲームの作り方や開発体制を再配備し始めています。

――再配備というと。
細井氏:
元々今のガストブランドは、プロデューサー、ディレクター、それぞれのメインプログラマー、メインプランナーが統括して組織を作っていたんです。『ライザのアトリエ』まではそれでゲームを作ることができたんです。
でも、今はプロデューサー、ディレクターの下にパートリーダーがひとりひとり山を作って、それぞれの知見を元にして開発する体制になっています。要するに、規模が大きくなったということなんですが、ガストブランドでは今までこの大きな規模の開発をしたことがなくて……。
――今はその体制を土台にしている最中なんですね。着々と成長のステップを踏んでいる中で、危機感みたいなものを出されている理由を教えてください。
細井氏:
今がある種のバブルだと思っているからですね。『ライザのアトリエ』の人気はずっと続くことはないですし、だからこそ今のうちに、開発力も売り上げもベースを一段高くできるように伸ばしていかなくてはいけないと思っています。
河内氏:
『ライザのアトリエ』を再現できるかと言われると、かなり難しいのではと思ってしまいます
細井氏:
再現できない商品はすごく価値があると思う一方で、プロデューサーとしてはやはり再現性を持つ方が望ましいです。市場を見てキャラクターデザインを検討して、結果的に『ライザのアトリエ』を作ってご好評をいただきましたが、それは運が良かった部分もあると思います。
ゲーム業界のほかのブランドを見ていると、みなさん再現性がある価値をもっているんです。ゲームのシステムに強みがあって、キャラクターのような水物ではないんです。ですので、私はガストをシステムできちんと評価されるブランドにしていかないと、忘れられてしまうと思っています。
――「アトリエ」シリーズは、今どういった方向に育っているんでしょうか。グローバルは各国で人気ですか。
細井氏:
ユーザー規模は国内が最も大きく、次いでアジアと北米が近年伸びてきています。特にアジアはライバルが多いのですが、「アトリエ」シリーズのようなタイトルを定期的にリリースしているデベロッパーやパブリッシャーはあまり多くないのが現状かと思います。
――ここまでコンスタントにリリースされるJRPG系のタイトルはあまりないです。
細井氏:
ですので、そういう部分で評価されて、あるいは目に留めていただき北米で伸びている部分もあると思っています。ある種のブルーオーシャンという部分もあるのではないでしょうか。グローバルで人気のあるJRPGシリーズには及ばないですが、「アトリエ」シリーズとして認知を得て遊んでいただけることを目指しています。そのためには常に我々のゲームシステムや技術の向上をお見せしていかなければいけないと思っています。
――だからキャラや世界観も大事だけど、何よりもシステムで勝負したいわけなんですね。
細井氏:
そうなんです。私の認識では、「アトリエ」シリーズとして指名買いしてくれているユーザーのみなさんもたしかにいらっしゃって、非常にありがたいです。ただ、さらにファンを増やすためにはゲームをさらに面白くして、今のコアファンの方々が「このゲーム、文句なしでおすすめだよ」と言っていただけるような環境を作らなければと考えています。だからこそ、システムで勝負したいという使命感をもっています。
「アトリエ」は今後どのように進化するのか?

――以前のインタビューで細井さんは「今後、どこの地域のマーケットに向けてどのような要素をもってシリーズ新作を作ればいいのか迷っている」「それぞれの地域のニーズが違うから」と仰っていました。今は心境的には変わりませんか。
細井氏:
そうですね。今も色々と考えながら試行錯誤しているところです
――弊誌の以前のインタビューでは、日本向けに作ってくれという欧米ユーザーの声も多くありました。
細井氏:
みなさんから色々なお声をいただけるのは大変嬉しいです。ありがとうございます。私が意識していることとしては、日本向けか海外向けかのどちらかではなく、日本のユーザーさんに楽しんでいただきながら、海外の方にも受け入れてもらえる作品作りです。
近年「アトリエ」シリーズがだんだんと海外のユーザーさんにも注目いただけるようになってきていますし、我々の考えるJRPGの良さ、「アトリエ」らしさを大切にしながら、海外のニーズも意識していきたいと思っています。
――なるほど。今は「いよいよ海外市場を意識し始めた」というだけで、コンセプトレベルで海外を狙おうみたいなフェーズではないと。
細井氏:
はい、コンセプトはこれまでと変わりません。国内のユーザーさんを置いてけぼりにして、海外に振り切ろうという考えはありません。ただ、海外での売り上げも近年伸長しているという事実はありますし、国内海外問わず口コミでリピートが伸びていきます。今後もっと多くの方に手に取っていただくためには、やはりゲームとしての面白さが鍵になってくると考えています。ユーザーの皆さんからいただく声をしっかり受け止めながら、ゲームシステムをさらに磨き込み、より楽しんでいただける作品にしていきたいです。
――今後のスタンスが見えてきました。楽しみです。ありがとうございました。
『ライザのアトリエ ~秘密トリロジー~ DX』は、PC(Steam)/PS4/PS5/Nintendo Switch/Nintendo Switch 2向けに発売中。各プラットフォームでセール中である。
[執筆・編集:Koutaro Sato]
[聞き手・編集:Ayuo Kawase]
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