ゲーム開発者間で「バネ+トゲ天井系ギミック」を巡り議論白熱。“プレイヤーの学びを裏切る再利用”の使いどころ

「バネとトゲ天井」というアクションゲームではおなじみのギミック配置の是非を巡り、海外掲示板Redditのゲーム開発者コミュニティで議論が白熱している。

「バネとトゲ天井」というアクションゲームではおなじみのギミック配置の是非を巡り、海外掲示板Redditのゲーム開発者コミュニティで議論が白熱している。既存のギミックの組み合わせで新たな課題や意外性を生む一方で、あらゆるゲームに使えるわけではないデメリットも検討されているようだ。

発端となったのは、ゲーム開発系のトピックが扱われるSubreddit「r/gamedev」に投稿されたスレッドだ。ユーザーSuper_Inevitable776氏が「What are your takes on this meme? Is this good or bad design?」と題し、バネの上にトゲを配置したイラストを提示した。アクションゲームにおけるバネ系のギミックは通常、プレイヤーを上方向へ跳ね上げる装置として使われることが多い。しかし、同イラスト内ではその真上にトゲが置かれており、そのまま使えばダメージを受ける構図になっている。

なおこの画像自体は、「Game Design Genius(ゲームデザインの天才)」と記されたキャラクターが憎たらしい表情で得意げに「プレイヤーの助けになるはずのバネが一転して罠になる、皮肉なギミック」という“狙い”を語るネットミーム画像となっている。画像の作成者としては、そうしたギミックを批判視し、揶揄する意図があったのだろう。とはいえスレッドの投稿者は、そうしたネットミーム画像において指摘された配置が「良い設計か、悪い設計か」という素朴な疑問を抱いたようだ。スレッド内にはゲーム開発者だというユーザーも含めて、さまざまな意見が寄せられている。

肯定的な意見として多くみられるのは、「既存ギミックの自然な応用だ」という見方だ。バネもトゲも、どちらもアクションゲームにおいて基本的な要素である。それらを組み合わせることで新しい状況を作るのは、レベルデザインの基本だという考え方だ。プレイヤーがバネの挙動を理解しているからこそ、その先に何があるかを考える余地が生まれる点でも、こうした発想は重宝されている模様だ。

『Celeste』

また、ギミックを増やし続けるのではなく、限られた要素を組み合わせて変化を出す設計は、ゲーム全体を整理しやすいという考えも寄せられている。新要素を次々と投入するのではなく、既存の仕組みを使って緊張感を高める。プレイヤー側からしても覚えることが増えず、遊びやすさに繋がるだろう。

一方で否定的な意見も少なくない。特に目立ったのは、「これまで安全だと学習してきた要素を、いきなり致命的な罠に変えるのは不親切ではないか」という指摘である。プレイヤーはゲーム内で何度もバネを踏み、その結果を経験として蓄積していく。その積み重ねがあるからこそ、見た瞬間に「使っても問題ない」と判断する。その前提を予告なく覆すことは、学習の積み重ねを損なう可能性があるという見方である。

特に、『ソニック』シリーズのようにテンポの速いアクションゲームでは、画面全体を細かく確認する余裕が限られる場合もある。従来安全だった装置が突然危険になる構図は、状況によっては理不尽と受け取られる可能性があると考える開発者もいるようだ。ギミックの再利用自体はメリットも多いようだが、「どのように提示されているか」「危険を事前に読み取れるか」は重要なのだろう。

『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』

なお、バネとトゲ天井のような、既存のギミックの応用についてはさまざまなかたちでゲーム内に見られる。たとえば『Portal 2』ではとあるステージでジャンプパッド(空中信頼性プレート)に“裏切られる”場所が存在。ここではそれまで「前方に跳躍できる」ように配置されがちだったジャンプパッドで、一転して真横に跳ばされることになる。作中に用意された開発者のコメンタリーによれば、この場所では前方に跳ね続けるボックスがあり、プレイヤーがタイミングを計らって跳ぼうとすることでいっそう「横に跳ぶ」意外性を高めているという。ちなみにこの場面でプレイヤーは驚かされつつも死ぬことはなく、あくまで演出の一環となっている。この点では“理不尽さ”もないギミックの応用例といえるだろう。

なおそうした意外性をどれだけゲームに取り入れるかも、開発において重要視されるようだ。元Ubisoftで『Splinter Cell』『Watch Dogs』『Far Cry』などの開発に携わってきたシステムデザイナーDylan Sparling氏はLinkedIn上で同様のテーマに言及。同氏は、ゲームデザインは「テレグラフ(予告)」と「プレイヤーの予想を裏切る設計」の両立だという持論を述べている。たとえばボスの攻撃前にその範囲を赤く表示するといったように、何が起きるかを事前に示すことでプレイヤーは納得して行動できる。一方でテレグラフが多すぎると、マンネリ化や機械的な印象も生じる。そこでときに予想を崩すことで驚きや緊張感も生まれるが、これも行き過ぎれば不公平さやでたらめさに繋がる。重要なのはバランスであり、プレイヤーがルールを理解したうえで驚きをもたらすことが理想的だという。

プレイヤーに何を学習させ、その前提をどの程度まで揺さぶることが許容されるのか。バネとトゲというシンプルな組み合わせに代表されるギミックやシステムの意外な応用には、バランスの難しさが開発者を悩ませる側面もあるようだ。取り入れることが吉と出るか凶と出るかはゲームや場面によってケースバイケースであり、今回のスレッドでも議論を呼んでいるのだろう。

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Junya Shimizu
Junya Shimizu

ローグライクが大好きです。映画や海外ドラマも好きなので、常に時間に追われています。

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