『鳴潮』Ver3.1前半ストーリー感想。“デジタルゴースト”エイメスの秘密がもたらす美しさと切なさ満載のストーリーは最近のバージョンでも抜群の完成度
本稿では、2026年2月5日に配信された新ストーリーの三章第三幕「旅立つ星」の感想を語りたい。

KURO GAMESの手がける『鳴潮』は、Ver3.0になってからキャラクターたちが空へ向かって手を伸ばす描写が増えた。夢や憧れに思いを馳せ、それに近づこうと努力していくキャラクターたちの姿に胸を打たれる。こうしたキャラクターの振る舞いは、宇宙への進出が閉ざされた作中世界においては夢の実現が不可能であることを示唆しているようにも思える。しかし、必ずしもそうではない。断固たる決意によって、不可能なことを可能にするキャラクターたちが『鳴潮』には存在する。Ver3.1に登場するエイメスも、そのひとりだ。
本稿では、2026年2月5日に配信された新ストーリーの三章第三幕「旅立つ星」の感想を語りたい。約5時間のプレイ時間ではエイメスや主人公における衝撃の事実が明かされるとともに、今後の壮大なストーリー展開を予感させるものとなっている。なお、本稿は『鳴潮』Ver3.1前半のネタバレを含んでいるため、クリアした人に振り返るように読んでほしい。
洗練された振る舞いと英雄になる覚悟を併せ持つエイメス
エイメスは、主人公がVer3点台の舞台のひとつとなるラハイロイではじめて出会ったキャラクターだ。かつてはスタートーチ学園の生徒であったエイメスだが、現在は誰にも姿が見えない幽霊のような存在となっている。ラハイロイ到来時に2人が出会ったことをエイメスは覚えていなかったが、彼女は自分の姿を認識できる主人公に興味をもつ。
生前のエイメスは人気の歌姫でもあり、将来を嘱望される学生でもあった。エイメス自身が「誰かを救えることは本当にすごいことよ」と語るように、彼女自身も英雄になる憧れと覚悟が備わっているようだ。優れた才能がありながらも、「星を見つめて守る人のほうが、ずっと素敵に思える」と語るエイメスには慎み深さを感じる。とある出来事をきっかけに肉体を失ってしまったが意識は存在し、デジタルゴーストとしていまもスタートーチ学園で日々を過ごしている。

自分を認識できない他者から反応の返ってこないことには慣れているエイメスだったが、過去の映像でかつての同級生たちの記憶に触れているときはさすがに悲しそうだ。本来ならば一緒に迎えられるはずだった卒業式も、エイメスは参加することができなかった。そうした場面に際しても、エイメスは本当は悲しいはずなのに笑みを作る。世界の理から逸脱したエイメスの姿は切ないものとなっているが、「無理に笑わなくてもいいよ、疲れるでしょ」という気遣いができた主人公には感心した。
主人公は自分のエネルギーが何者かに吸われている現象を解決するために、ラハイロイへとやって来た。その手がかりとなる場所を見つけた主人公だったが、そこは危険を伴う場所だ。エイメスは自身が好むロードムービーを今回の旅にたとえて、主人公が映画の主演で彼女はそれを助ける存在になるのだという。主人公の危険な旅路に同行してくれたエイメスは封印された宇宙船のギミックを解くのに協力し、強敵との戦闘にも助太刀してくれる。デジタルゴーストとして宇宙船のシステム内部に侵入して、次から次へとセキュリティを解除してくれるエイメスが頼もしい。


2人の秘密の旅をしているような感覚がある今回のストーリーだったが、次第にラハイロイそのものへの謎に迫る展開が描写されていく。エイメスはラハイロイの地を守るエクソストライダーの共鳴者であることが明かされ、英雄と称される主人公に憧れていたことが明かされる。主人公とエイメスの衝撃的な過去も判明し、Ver3.1のストーリーは『鳴潮』の作中世界を深堀りするものとなっていた。
これまでのキャラクターにはないエイメスと主人公の関係性
エイメスが明るく軽妙に振る舞う一方で、その表情の節々にどこか切羽詰まったものが含まれている。それは、エイメスと主人公の間に存在した過去によるものだった。記憶喪失の主人公は覚えていなかったが、宇宙船での探索を経て、主人公とエイメスはかつて一緒に暮らしていたことが明らかになる。それはもう十数年前のことであり、両親を亡くしたエイメスにとっては命を救ってくれた主人公が親のようなものだった。
主人公は冒険の途中でさまざまなキャラクターと出会ってきた。キャラクターによっては過去に交流があった存在もいる。しかしながら、自分の娘のような存在と再会するのは初めてのことであり、かなり驚いている様子だった。過去のことをエイメスに尋ねると、主人公は遠いほしからやって来た存在であり、かつて故郷をもう一度みたいと願っていたことを知らされる。主人公の所属している組織の判断からその願いは叶えられなかったが、それには幼い頃のエイメスは納得できなかったらしい。
作中世界において、主人公が特別な存在であることはこれまでにも描写されてきた。主人公は長年にわたって生きており、記憶を消す前から世界を何度も救っていることが明らかになっている。その主人公の願いの可否を判断できる組織のような上位組織が存在することがわかったのは衝撃的だった。故郷を一目見たいという訴えを「必要ない」とにべもなく却下される扱いには、主人公は自由が縛られている存在のようにも思える。


エイメスは主人公の力になるために英雄を志した。英雄として扱われる主人公に憧れつつも、エイメスにとって主人公は大切な家族だ。主人公の抱える英雄としての重荷を自分が減らしてあげたいとの思いで、研鑽してきたエイメスの人生は尊いものだ。与えられた才能を他者のために使うことには、英雄としての資質が備わっていることを実感させる。主人公とかつて一緒に暮らしたことを内緒にしていたのは、エイメスの気遣いだった。そうした健気さに感心させられつつも、子供から成長していく過程を見てくれなかった主人公に文句をいうエイメスがかわいらしい。冗談めかしていながらも、こうしたエイメスの姿は親に等しい主人公にしか見せないものといえるだろう。主人公に頭を撫でられるエイメスは真顔になりながらも、その直後には笑顔を見せてくれる。


過去を知った主人公は、「2人で解決しよう」とエイメスに語りかける。エイメスもそれに快く応じるが、ひとりきりになるとその表情が晴れない。Ver3.1のストーリーはジェットコースターのように感情が揺さぶられるストーリーであり、ここから怒涛の展開が待ち受けている。
エイメスの秘密がもたらす美しさと切なさ
子が親に向けるような笑顔を見せてくれたにも関わらず、ひとりでいるときのエイメスは物憂げた。エイメスの伸ばした手が眠る主人公に届かないことは、彼女なりに葛藤していることを示唆している。エイメスは重大な秘密を抱え込んでいた。それは主人公を慮る優しさによるものでもあり、自己犠牲の賜物によるものだった。告げると主人公が悲しむことがわかっていたから秘密にしていたのだ。そして、覚悟を決めたはずの自分が揺らいでしまうことが怖かったのだろう。
エイメスが眠る主人公に手を伸ばすシーンには、彼女の葛藤があふれている。長年にわたって会いたかった人が再び手の届く距離にいる喜びと、手が届いてしまうと覚悟が揺らいでしまうという恐怖。英雄になったエイメスは、子供の頃のように手を伸ばして主人公に触れることはできなくなっていた。そうした人間の不器用な側面までも丹念に描かれていくエイメスの表情を見て、筆者はどうしようもなく切なくなった。


エイメスはデジタルゴーストになることで、英雄となる力を得た。その力を使えば、主人公と同じ英雄になることができる。そして、英雄になって主人公の負担を減らすことは、エイメスが子供の頃からの夢だ。ラハイロイの地で育った彼女には、そこで暮らす人々を守りたいという気持ちも芽生えていた。もう、引き返す気持ちは彼女には残されていない。主人公の行く末は気がかりだが、記憶喪失後に旅先で出会った仲間たちと今後もうまくやっていくだろう。そうした理由で自分を納得させながら、エイメスはデジタルゴーストになったことで発現したタイムトラベルを行うことを決意する。
タイムトラベルは帰ることのできない一方通行の旅になるという。主人公と再会できないことを承知でタイムトラベルをし、ラハイロイの地を守るために強敵と戦うという決意をエイメスは隠していた。タイムトラベルしなければラハイロイの地は滅ぶし、タイムトラベルをすればエイメスと主人公は再会することができない。あまりに辛い選択であるにも関わらず、それを貫き通そうとするエイメスには真の英雄の姿が見えた。過去で主人公がエイメスの命を救ったことも、ラハイロイが救われるのもエイメスがタイムトラベルをするからだ。タイムトラベルを止めようとする主人公を振り切り、エイメスは「信じて」と言い残して旅立つ。


円環のように始まりと終わりが含まれるストーリーは美しい。しかし、エイメスに感情移入してしまったプレイヤーにとっては、あまりに辛すぎるストーリーだ。エイメスの覚悟には英雄としての姿が見られたし、彼女が目的をやり遂げたことには称賛する。でも、世界を守る英雄として、そして家族として主人公の傍にいつづけてほしい。
タイムトラベルを実行する前にデジタルゴーストではなくなったエイメスだが、今度は肉体を残して魂は別のところへと行ってしまった。いまはエイメスの姿をした人形を見続けるようなものだが、希望はある。自我がないはずのエイメスの肉体だが「悲しま、ないで……」と話して主人公を驚かせたように、タイムトラベルをした先でエイメスが生きているからこそ、こちらの世界のエイメスの肉体も生命活動が続いているのだという。
生きているならば、どれだけ離れていてもエイメスと再会する可能性は残されているはずだ。主人公もエイメスを取り戻すことを決して諦めていない。エイメスと主人公が手を取り合って喜べる未来が訪れることを、筆者はひとりの『鳴潮』プレイヤーとして切に望む。


『鳴潮』は、PS5/iOS/Android/PC(Windows/Steam/Epic Gamesストア)向けに基本プレイ無料で配信中。2026年2月26日から開幕するVer3.1後半では、第三章幕間・潮汐の続き「陽の光が差し込む場所」が開放される予定となっている。Ver3.1後半ではリューク・ヘルセンが限定ガチャに登場し、ストーリーでは彼と次なる計画を協議することになる。
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