『モンスターハンターストーリーズ3』は本気で「RPGらしさ」に特化。『メタファー』『Expedition 33』など最新RPGも研究、“快適でヒリつく”バランスのこだわりなどを開発陣に訊いた

『モンスターハンターストーリーズ3 ~運命の双竜~』開発陣に向けておこなわれた、メディア合同インタビューの様子をお届けする。

カプコンは3月13日、RPG『モンスターハンターストーリーズ3 ~運命の双竜~』(以下、モンスターハンターストーリーズ3)を発売する。ハンティングアクションとして人気作の『モンスターハンター』を、コマンド式のパーティバトルに落とし込んだRPGの第3弾となる。主人公はレンジャーと呼ばれるライダーチームの隊長で、アズラル王国の王位継承者だ。モンスターと絆を結びながら、絶滅危惧種の保護・育成、生態系の調査や回復・維持活動などもおこなうこととなる。

今回は、発売に先駆けて本作の開発陣にメディア合同インタビューをおこなう機会に恵まれた。シリーズを通してのこだわりポイントや新システム、設定などについての意図を聞くことができたので、本稿で紹介する。

――まずは自己紹介をお願いします。

辻本良三(以下、辻本)氏:
モンスターハンター』シリーズ、エグゼクティブプロデューサーの辻本です。

大黒健二(以下、大黒)氏:
ディレクターの大黒です。

若原大資(以下、若原)氏:
リードゲームデザイナーの若原です。

川野隆裕(以下、川野)氏:
アートディレクターの川野です。

左から川野氏、大黒氏、辻本氏、若原氏


――本作はグラフィックも含めてリッチな仕上がりで、以前のインタビュー(関連記事)で仰っていた“スピンオフからの脱却”といったコンセプトも感じ取れました。とはいえ、本家『モンハン』シリーズから転用できるものは転用することでリソース節約も図られているかと思います。ひと際節約できた点と、コストをかけて実現できた点それぞれの代表例はありますか?

川野氏:
モンスターモデルはほとんどそのまま転用できるのでコスト削減になっています。おもに加工するのはシェーダーやテクスチャ、アニメーションです。モンスターのモーションもある程度切り貼りはしますが、アクションの『モンハン』からそのまま採用できるのでコスト削減できたと思っています。フィールド上のオブジェクトにも本家から借りたものがあります。一方で、本作ではお話のスケールが大きい分オリジナルとなる登場キャラクターがたくさんいますので、削減できた分のコストをそちらに割きました。

――パラメータやクエストなどの画面情報が少なく、フィールドでのUIがかなりすっきりしていると感じました。デザイン上のこだわりによるものでしょうか?

川野氏:
フィールドでは風景も楽しんでほしいし、探索に集中してほしいという思いから、風景がよく見えるように極力画面情報を削りました。できればミニマップすらも表示したくないくらいで、可能な限り小さくしています。クエストガイドなども前作は常時表示されていましたが、今回は非表示にしました。

若原氏:
今作ではユーザーが必要だと思ったときにはワンボタンで目的地などのガイド情報を呼び出せるという利便性を持たせることで、必要のないときには可能な限り不要な情報を隠しておけるようメリハリをつけました。常時表示することも設定でき、ユーザーのニーズに合わせた表示が可能です。

――1作目から2作目にかけては共通する登場人物がいたり、時間・舞台設定に繋がりがあったのに対し、本作の試遊の範囲ではそうした連続性が薄まったように見えます。新規層にとってハードルが下がった印象ですが、あえて「3」というナンバリングタイトルにしている狙いは何でしょうか?

辻本氏:
まず、『ストーリーズ』はシリーズとしてどこから入っても独立したお話を楽しめるように作るようにしています。1と2はたしかに繋がっている部分もあるのですが、お話自体は単独で完結するようにできていて、2をやってから3をやって1に戻るような遊び方でも、それぞれをちゃんと理解でき、完結するという作りを目指していますし、どこからでも入ってきていただきたいという姿勢でいます。そのうえで、「3」をつけるかどうかはたしかにちょっと悩みました。やはり、シリーズとして作ってきているので3作あるというアピールも込めて「3」はつけつつ、サブタイトルでそれぞれの意味合いやコンセプトをわかってもらおうということで今回のタイトルにしました。

――本作では、弱いザコ敵はライドアクションでシンボル撃破できたり、1戦終わるごとにコストなしで体力と状態異常が回復するなど、現代のRPGとしてスムーズに遊べる配慮が前作以上に細かく行き渡っていた印象です。どのようにノウハウを培ったのか、また参考にしたRPG作品はありますか?

若原氏:
近年、たとえば『メタファー:リファンタジオ』や『Clair Obscur: Expedition33』のように、ユニークな試みを取り入れたコマンドバトルRPGの話題作は増えています。今作の、フィールドで近接攻撃をすることでその場でモンスターを一発で倒せるという仕組みは、まさに昨今のRPGを研究して掴んだ結果をもとに開発した点です。レベリングの“作業感”を感じないで済む、サクサク進められるものが良いという風潮や傾向があると感じますので。ユーザーが起こした何らかのアクションに対して報酬があるという点は、各社かなり洗練されてきたと感じ、我々もそういうものを取り入れました。

なので、遊びやすくなったと思われたのであれば、それは色々なRPGを研究した結果が実を結んだかなと思いますし、すごく嬉しいです。ありがとうございます。

――逆に、ここは簡略化したらダメというような譲れないポイントやコンセプトのようなものはありますか?

若原氏:
バトルを歯ごたえ良いものにするという部分に関しては譲らずに、バランス調整をしました。便利にするということと簡単にするということは、また別かなと思っています。攻略するためのヒントはゲーム側が提示してくれるけれども、いたずらに簡単にテンポを良くしようという風には考えませんでした。達成感あるバトルというレベルデザインを意識していました。

大黒氏:
アクションゲームとしての『モンハン』の「3乙でゲームオーバー」というところを、『ストーリーズ』ではハート3つというところに落とし込んでいるのですが、前作ではハートがギリギリでヒリつくという場面が少なかったように感じます。もちろんプレイヤーやモンスターによっても変わるとは思いますが、「もっとヒリヒリしたいよね」と。ゲームで一番楽しくて脳汁が出る瞬間というのは、ギリギリで勝ったときだよねという思いがあって、そういう達成感のあるプレイ体験を目指しました。利便性とバトルの歯ごたえが両立したゲーム体験にしたいという設計思想に基づいて、「プレイヤーがすること」のリソース管理を考えました。そこで、バトルでは1戦1戦全力を出してもらう一方で、終わった後の回復行動は簡略化していこう、ということになりました。あらかじめどういうゲーム体験をしてほしいかをよく話し合って、それに応じた機能面の調整をおこないましたね。

――本シリーズの特徴のひとつに三すくみのバトルがあると思います。今回はどのようなコンセプトでバトルの方向性を設定したのでしょうか?

若原氏:
三すくみがバトルの重要な要素であることは変わっていません。ただし、今作では三すくみの設定をだいぶ整理し直したのに加えて、「三すくみに勝った上で何を選ぶか」というところに注目しました。

真っ向勝負に勝ってどの部位の部位破壊ゲージを削るのかや、ダメージリソースを振り分けるかの選択を重ねていくうちに竜気ゲージがなくなってモンスターが疲労する。するとシンクロラッシュを発動できて、絆ゲージが溜まってライドして、絆技を放つ……というふうに気持ちの良い瞬間が連続でやってくるようになっています。真っ向勝負と三すくみの“じゃんけん”はその連鎖を引き起こすための大きな手段のひとつという定義付けで開発していきました。

――登場モンスターはどのように選定されているのでしょうか?

若原氏:
基本的に、ディレクターの大黒と相談しつつ選んでいきました。たとえばわかりやすい選定基準に「人気度」があります。もちろん、人気の度合いですべてが決まるわけではありません。今作には「竜気ゲージ」というスタミナのようなシステムもありますので、その要素に噛み合いそうなモンスターを優先して取り入れたり、全体の属性やタイプのバランスに偏りがなくなるように考えたりもしました。あとは、若干個人的趣味もあり(笑)

大黒氏:
具体的にどのモンスターとは言えませんが、あまりにも若原が推してくるモンスターもいて、それだけ熱量あるんだったら『モンスターハンター』シリーズファンもきっとこれは望んでいるんだろう、ということで採用に至りました。「これを出したいんだ!」というスタッフの熱量があれば、きっと良いものを作ってくれるだろうというところもあるので大事にしたいと思っています。そんな熱量にしたがって取り入れたモンスターへのユーザーの反応は、今からすごく楽しみですね。

――一方でゲームの構造上、登場させるのが難しかったというモンスターもいますか?

大黒氏:
技術的に困難だったり課題があるモンスターはもちろんいます。超大型のようなモンスターを果たしてオトモンのサイズに縮めても良いのか、という設定上の観点もあります。

川野氏:
マシンスペックが上がった分、解像度も高くなってキャラクターの衣装などについて以前より装飾などのディテールを細かく描写できましたが、モンスターは本流『モンハン』のモンスターの情報量が異常なまでに多すぎて、必要な要素を削らずに処理を軽くするバランス調整が大変なんです。具体的には、毛が生えているモンスターですね。ジンオウガの首周りのふさふさとか、何回も作り直しましたね(笑)毛を減らせば出したいハードスペックで動くのですが、途端に安っぽくなるんです。パオウルムーも本当に再現が難しくて。本流『モンハン』のパオウルムーってすごい作り方で全身ふわふわにできているんですけど、そのまま出すとパオウルムーのいるときだけ負荷が跳ね上がるという現象が起きて……。あれが一番調整に時間がかかったんじゃないかと。

――『ワイルズ』のようにアクションの『モンハン』シリーズもストーリー性がすごく上がってきているように感じます。『ストーリーズ』はどのように差別化を図っているのでしょうか?

辻本氏:
まず、『ストーリーズ』というシリーズの一番はじめのコンセプトに立ち返ると、ジャンルがRPGであることに加えて、モンスターを近くに感じられるようなゲームを作りたいということがコンセプトにあります。アクションの『モンスターハンター』シリーズを長くやってきて、「一番人気があるキャラクターは何?」となると、それはやはりモンスターなんです。

今作では、双子のリオレウスが生まれるところから話が動き始め、そこにライダーである主人公が絡んでくるといった展開になりますが、こういうストーリーはアクションの『モンハン』で描くことは難しいです。ここは『ストーリーズ』ならではかなと思っています。

――今回、ストーリーがシリアス寄りの雰囲気になったり、キャラクターの頭身が上がったりしています。ターゲット層を広げたいという狙いもあるのでしょうか? また『ワイルズ』の方でも主人公ハンターが熟練の者ですが、この共通点は意図されているのでしょうか?

辻本氏:
2が出てしばらくした後に、大黒と「3をどうしようか」と考える期間がありました。その中で、もっとRPGらしくしたいと思いました。そして、1と2はライダーとして成長していく物語だったのに対し、3ではすでにライダーになった者のシナリオを描いていこうということになりました。その結果、今回の年齢や頭身に設定しました。

大黒氏:
『ワイルズ』との共通点は偶然ですね。1や2のような成長物語ではなく新しいものにしたいという大きな方針が先にあり、そこから年齢を設定していきました。1は12歳という設定で小学生が卒業して知らない世界に飛び出していくイメージで、2は15歳くらい。今作は19歳のエースライダーという立ち位置にしました。ゲームチュートリアルも毎回先輩から教わるのではなく、何か新鮮さを出したいということで主人公をエースライダーにして新人に教える側という導入にしてゲーム体験に変化を与えました。ストーリーだけでなくゲーム進行やサイクルの上で今までと違う側面を出せたかなと思います。『ワイルズ』側の設定やターゲットの年齢層が影響したわけではなく、自分たちで作りたいものを考えて設計した結果こうなりました。

――新要素の「里孵し」では、そのエリアにいなかったはずのモンスターを出現させられるなどかなり自由度が高く感じました。このシステムを導入した狙いは何でしょうか?

大黒氏:
開発には、設定面とゲーム体験の二つの軸がありました。設定面では主人公が「レンジャー」の隊長として生態系を取り戻すという役割を担っています。その部分をお話だけではなくゲームシステムの中でロールプレイとして体験できるようにリンクさせたいと思いました。

さらに、育成の幅を広げたいという目的もありました。これまでも、卵を拾って伝承して自分だけのオトモンを作るというサイクルは実現できていたのですが、あとひとひねり加えたいという思いがずっとありまして。前作までは、どこで何の卵が拾えるかは、ゲームの進行状況に応じて種類が増えはするものの固定されていたんですね。そこに変化をもたらすことができれば面白いかもな、と考えました。

「里孵し」によって自分だけの土地が作れる感じといいますか。そういうアイデアが浮かんだときに、若原と話していく中で実際面白い仕組みができそうだ、と広がっていった感じですね。

最初は、リオレイアがいなかった場所に卵を還したら卵が拾えるようになるというアイデアがスタートだったんです。でも、ただ拾えるようになるというだけではなくて、リオレイア自体がそのエリアに登場する方が生態系を取り戻した感じが出るんじゃないか、と。

1のときに色違いモンスターにすごく反響があったので、属性と色違いというのも「伝承の儀」ではなくエリアの影響で起こるようにするのはどうか……といった具合にどんどんアイデアが広がって、「里孵し」の仕組みの中へ集約されていきました。

――1と2にはオンラインのマルチ機能があったのですが、今作では撤廃された認識です。この理由と、撤廃されたことで別の何かが実現できたというようなメリットはありますか?

辻本氏:
今までよりもさらにRPGらしさに特化した作品として作っていきたいという方針があったからですね。RPGは一人で物語にどっぷり没入して遊んでもらいたいという思いがあって、ここは一旦思い切って今まであったマルチやオンラインの要素を取り外して、RPGとしての世界、シナリオ、キャタクターたちに集中してもらえるようなゲームを作ると決めました。

そうすることによって幅が広がった部分もあります。たとえば、「里孵し」はまさにそうです。一人で没入してほしいというテーマがあったからこそ思い切って取り入れることができたシステムはほかにもいくつかあります。

――最後に、エンドコンテンツについてお訊きします。たとえば、前作のマム・タロトのようにストーリークリア後に遊べる手応えのすごいものはありますか?

大黒氏:
今作はRPGとしてのストーリー体験をみなさんに満足して遊んでもらいたいという方向性で開発してきましたので、ヘビーユーザー向けに強調してアピールするほどのクリア後の要素はありません。ストーリー進行上戦うことになるボスよりもさらに強力な相手は物語の途中に散りばめていて、クリアの前に倒せるまで挑み続けるという遊び方もできますし、クリアしてからそれらに触れていくという遊び方もできます。

――ありがとうございました。

モンスターハンターストーリーズ3 ~運命の双竜~』はPC(Steam)/PS5/Nintendo Switch2/Xbox Series X|S向けに、2026年3月13日に発売予定だ。各プラットフォーム向けに、セーブデータを引き継ぎ可能な体験版も配信されている。

[聞き手・執筆・編集:Kei Aiuchi]
[聞き手・編集:Hideaki Fujiwara]

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