「ヴァンサバっぽいけど全然違う」時止めローグライク『アセンドトゥゼロ』に宿る日本ゲームの「突き抜けた発想」。なぜ今『勇者30』インスパイアなのか、開発者に訊く
『アセンドトゥゼロ』は時間を制御するローグライクアクションゲームだ。舞台となるのは、人類が機械型のエイリアンによって大打撃をうけた2225年の世界。

KRAFTON傘下のクリエイティブスタジオFlyway Gamesは『アセンドトゥゼロ』を開発中だ。対応プラットフォームはPC(Steam)で、日本語表示に対応。また本作ではキャラクターボイスを務める声優として鬼頭明里さんを起用し、日本語キャラクターボイスも実装される。
『アセンドトゥゼロ』は時間を制御するローグライクアクションゲームだ。舞台となるのは、人類が機械型のエイリアンによって大打撃をうけた2225年の世界。主人公は人類最後の生き残りとして、タイムマシンを使い過去へと飛び、滅亡の未来を回避するために戦う。
本作においてプレイヤーは、制限時間内で戦闘をおこなう。そうしてキャラクターを成長させ、ミッションを達成することでゲームを進めていく。時間は初期状態ではたった30秒しかないものの、主人公は「時間停止」の特殊能力を持ち合わせている。時間停止や強化要素をうまく活用し、いかに“時間”を節約するかといったマネジメントも求められるわけだ。
そんな本作は現在Steamにてデモ版が配信中。現在350件以上のユーザーレビューを集め、うち92%が好評を博す「非常に好評」ステータスを獲得している。今回弊誌はそんな本作を手がけるFlyway Gamesのディレクター、ホ・テウク氏にインタビューを実施。同氏が推す本作のポイントや、開発の進捗について話をうかがった。
――自己紹介をお願いします。
ホ・テウク氏:
はじめまして。『アセンドトゥゼロ』でディレクターを務めています、ホ・テウクです。 日本のゲーマーの皆さんにこうしてご挨拶できて、本当に光栄です。
実は僕、元々は韓国のKAIST(韓国科学技術院)で物理演算エンジンを勉強していましたが、でも、物理の研究よりもゲームの方が好きすぎて……結局、博士課程を中退して開発の道に飛び込んでしまいました。
(※KAISTは、韓国国内ではソウル大学とほぼ同等扱いされる、理系トップの大学とも言われている)

――ホ・テウクさんが博士課程を中退してまでゲーム開発の道を志したきっかけとはいったい何でしょうか。
ホ・テウク氏:
ゲーム開発の道に進んだ決定的なきっかけは、高校2年生の時に出会った『インフレーションRPGクエスト』です。日本の個人開発者であるTatsuki Sasakiさんがたった一人で作られた作品なんですが、プレイした時は本当に大衝撃を受けました。
昔から個人制作のゲームが好きで「いつか自分も、誰かの心に残るゲームを作りたい」という夢は持っていたんです。大学で研究を続けるうちに、「物理演算エンジンの仕組みそのものを研究するより、エンジンを使って新しい世界や体験を創り出す方が、自分には合っているな」と確信しました。結果的にKRAFTONに入社し、現在はFlyway Gamesにて『アセンドトゥゼロ』のディレクターとして開発を統括しています。
――それでは『アセンドトゥゼロ』について、改めて紹介をお願いします。
ホ・テウク氏:
『アセンドトゥゼロ』は、その名の通り「時間」をコアテーマに据えたローグライクアクションです。滅亡してしまった世界を救うために、主人公が過去へと遡っていく……という物語を描いています。
このゲームの肝は、プレイヤーに「制限時間内に世界を救わなきゃいけない」という厳しいミッションを課す一方で、その対抗策として「時を止める」という強力な切り札も与えている点です。 この能力をいつ、どこで切るか。その判断一つで、戦況も選択の結果もガラリと変わるように設計しました。
時間の「制約」と、時間を操る「自由」。この表裏一体のシステムの中で、プレイヤーの皆さんが瞬時の戦略的判断を繰り返し、深い没入感を味わえること。それこそが、僕がこのゲームで実現したかった体験なんです。
――『アセンドトゥゼロ』はどのようなゲームだと考えていますか。見下ろし型、オート攻撃で大勢の敵を倒す、というゲームシステムは一見『Vampire Survivors』に類似したゲームにも映りますが、そういったタイトルとどの点が差別化されているでしょうか。
ホ・テウク氏:
確かに、パッと見の画面やシステムだけ見れば『Vampire Survivors』を連想されるのは当然だと思います。オートで発動する多彩な攻撃で、ワラワラと迫る敵をなぎ倒していく……でも、実際に遊んでくれたプレイヤーさんからは、「これ、ヴァンサバとは全然別ゲーじゃん!」という声をたくさん頂いているんです。
僕はこの二つの作品はプレイヤーに投げかけている「問い」のベクトルが決定的に違うと思います。僕の解釈では、『Vampire Survivors』が「この時間を生き残れるか」を問うゲームであるのに対し、『アセンドトゥゼロ』は「限られた時間でどこまで行けるか」を問うゲームなんです。
「時止め」というシステムをどう活用するか。プレイヤーの選択次第で、戦闘の流れは劇的に変化します。単なる受動的な「生存」ではなく、自分から道を切り開く能動的な「突破」。それこそが、このゲームの目指したところですね。
――ほかのサバイバーシューター作品との違いについて、より具体的にはどこにあると感じますか。
ホ・テウク氏:
最大の差別化ポイントは、やはり「時間の扱い方」だと思います。 一般的なサバイバー系シューターは、「制限時間をいかに長く生き延びるか」がゴールですよね。でも『アセンドトゥゼロ』は逆で、制限時間内により多くの「タイムパラドックス」を作り出さなきゃいけないです。
強敵を倒せばキャラが強化されるだけでなく、プレイ可能な「残り時間」そのものが増えていくんです。つまり、安全地帯に逃げ込むのではなく、必然的に戦いを続け時間を奪い取らなきゃいけないことです。
「時を止める」能力も、このサイクルを回すための核として設計しました。単なる緊急回避スキルじゃありません。ここぞという場面で火力を一点集中させたり、あるいはコーヒーを一口飲むために止めたとしても(笑)、プレイ復帰時には何らかのアドバンテージが得られるように作っています。これが本作ならではの痛快な体験だと思います。
成長システムに関しても、大きな特徴があります。 多くのローグライクは、プレイ中に獲得した強さがゲームオーバーですべてリセットされてしまいますよね。あの「あれ、俺の強さが全部消えちゃった……」あの虚無感。あれを少しでも払拭したくて、『インフレーションRPGクエスト』にインスパイアされた仕組みを取り入れました。本作では「ラン(周回)」の結果として、プレイヤーが強力な武器などを「持ち帰る」ことができます。
爆裂的なレベルアップと合わせ、一度のプレイで得た結果を、制限付きではありますが、恒久的に維持できるようにしました。ヴァンサバ形の特有の「ローグライクらしさ」は少し薄れましたが、代わりにRPG的な「永続的な成長」と「積み上げる達成感」を強調しています。アイテムを獲得するたびに数値が桁違いにインフレしていく快感……これは既存のサバイバー系とは一味違う面白さになっていると確信しています。

――プレイヤーの能動的行動を引き出しつつ、インクリメンタル的な面白さも用意されている、ということですね。ところで『アセンドトゥゼロ』制作にあたっては、どのようなゲームから影響を受けましたか。
ホ・テウク氏:
真っ先に挙げるなら、やっぱり先ほども触れた『インフレーションRPGクエスト』ですね。構造はシンプルなのに、数値が天文学的に跳ね上がっていく……あの「インフレの快感」が強烈に印象に残っています。
その後、時が経って『Vampire Survivors』や『Hades』といったローグライクアクションが登場し、世界中で支持されるのを見て、僕の中で『インフレーションRPGクエスト』が持っていたコアな面白さを、ローグライクアクションの形で拡張・昇華させられるはずだという確信ができました。その発想と試行錯誤の結晶が、今の『アセンドトゥゼロ』なんです。
もう一つのルーツは、『勇者30』ですね。 実は本作のチュートリアルの制限時間を「30秒」にしているんですが、『勇者30』へのオマージュです。「魔王が世界を滅ぼすまでの30秒」と、「世界を救うために与えられた30秒」。似て非なるものですが……とにかく、その30秒という短い時間の中で「秒速で強くなっていく快感」を、プレイヤーの皆さんに味わってほしかったです。ちなみに、本作の「魔王」にあたる存在はまだ秘密です(笑)
こうして振り返ると、日本のゲーム特有の「突き抜けた発想」やユニークなアイデアから、僕は本当に多大な影響を受けているなと感じます。
――本作についての日本国内での反響はいかがでしたか。またベータテストを経てゲームプレイの改善を図ったとのことでしたが、どういった課題がありましたか。
ホ・テウク氏:
Steam Next Festを通じて、本当にたくさんのフィードバックをいただきました。例えば「キャラのデフォルメが小さすぎる」というビジュアル面の話や、「周回プレイのグラインドがキツい」、「ランダム要素が強すぎてストレスだ」といったご意見など……。
その中で、開発チームとして一番深刻に受け止めたのは、「面白さに到達するまでのハードルの高さ」でした。 レベルを何十万も上げて、強力な装備が揃った段階まで遊んでくれた方々は、ものすごく熱狂してくれているんです。でも一方で、多くのプレイヤーさんがゲームのごく序盤で「何が面白いのかわからない」「難しい」と感じて、離脱してしまっていました。


僕たちは『アセンドトゥゼロ』がユニークで、絶対に面白いポテンシャルを持っていると確信していますが、その「面白さ」を伝えるプロセスに明らかな欠陥があったと思います。だから今回のテコ入れでは、単にコンテンツを増やしたり数値をいじったりするより、「プレイヤーが核心的な面白さに到達するプロセスそのもの」の再設計することに集中しました。より多くの人が自然にゲームの魅力を理解し、躓かずに最後まで体験できるように導線を敷き直すこと。それが、今回僕たちが取り組んだ最大のミッションでした。
――そうした課題について、現在どのように対応されているのでしょうか。
ホ・テウク氏:
正直、『アセンドトゥゼロ』の核である「時間の制約がある中で、時間停止を使って状況を突破する」という体験は、多くのプレイヤーにとって少し馴染みの薄い感覚なんだと思います。だからこそ、頭ごなしに「ほら、時間を止めて攻略しろ!」と高難易度を突きつけるのよりは、プレイヤーが既に持っている「慣れ親しんだ感覚」から、自然とゲームに入り込めるような導線作りを徹底しました。具体的には、序盤の区間においてローグライクアクション特有の戦闘テンポや、選択肢の楽しさをより強調したんです。「敵をサクサク倒せる爽快感」や、「装備を手に入れたら一気に強くなった」という、あの気持ちいい感覚をまず味わってもらえるようにしました。
そうやって「急速な成長の楽しさ」を実感できる段階までのハードルを下げてあげると期待し、 実際に最近のプレイテストのフィードバックやプレイデータを見ていると、このアプローチはある程度成果を出せているなと手応えを感じています。
――現状の開発ステータスはどの程度でしょうか。
ホ・テウク氏:
『アセンドトゥゼロ』は全4ステージ構成なんですが、現在は最後のステージを制作中です。ボリューム的には、だいたい80%くらい完成していると見ていただければと。
各ステージのコンセプトをざっくり説明しますと、デモ版で遊べる第1ステージのコア体験は「ローグライク要素で楽しむ手軽な狩り」です。プレイテストで一時的に公開した第2ステージは、「強力な装備を集めて強くなる永続的な成長」にフォーカスしていました。そして、正式版で解禁される第3ステージ以降……ここはもう、無数のアイテムがドロップする「ハクスラによるドーパミン爆発インフレーション」が目標です。何かが大量にジャラジャラと手に入ると、理屈抜きで脳が喜ぶじゃないですか(笑)
なお第4ステージについてはまだ秘密ですが、これまでの要素を全てぶち込んだ集大成的なステージを準備中です。 コンテンツの開発が一通り終わったら、残りの期間はひたすら完成度を高めるためのバランス調整と演出、そして全体的なプレイ体験のポリッシュに没頭するつもりです。

――最終的にはどのようなゲームに仕上げたいですか。
ホ・テウク氏:
開発当初から、「世界に一つだけのゲーム」を作りたいという強い思いがありました。 特定のジャンルの「単なる亜流」を作るのではなく、このゲームの代わりになるものが存在しない、唯一無二のプレイスタイルを確立したかったんです。
だからこそ、「時間を直接操る」という扱いが難しいコンセプトを、面白さを損なわず、かつプレイヤーの負担にならない形でゲームに落とし込むことにこだわりました。 サバイバーシューターに限らず、どんなゲームを遊んでいる時でも……例えば激しい弾幕を避けている瞬間に、「ああ、避けきれないから時を止めてしまいたい……!」と、ふと本作のことが脳裏をよぎるようになれば、それは僕にとって大成功と言えるでしょうね(笑)
結局のところ、誰しも一度は「時を止めたり、巻き戻したりできる能力者になりたい」という、ロマンというか憧れを抱いたことがあるじゃないですか。 そんな感覚を、せめてゲームの中だけでも存分に味わっていただければ嬉しいです。
――ありがとうございました。
『アセンドトゥゼロ』はPC(Steam)向けにリリース予定だ。
この記事にはアフィリエイトリンクが含まれる場合があります。

