『アサシン クリード』シリーズを率いた元Ubisoft幹部、約1億5000万円の損害賠償を求めてUbisoftを提訴。“会社に恨みはない”と述べつつも訴える

元UbisoftのMarc-Alexis Coté氏はUbisoftに対して、約130万カナダドルの損害賠償を求める訴訟を提起した。

元UbisoftのMarc-Alexis Coté氏はUbisoftに対して、約130万カナダドル(約1億5000万円)の損害賠償を求める訴訟を提起した。訴状では、Coté氏は形式上Ubisoftを自主的に退職したものの、実態は受け入れがたい降格を迫られた結果の「みなし解雇(Constructive Dismissal)」だったと主張されている。海外メディアRadio-Canadaが報じている。

Marc-Alexis Coté氏は元Ubisoftのゲーム開発者だ。『アサシン クリード III』でゲームディレクターを務めるなど『アサシン クリード』シリーズの要職を歴任。2022年には同シリーズのバイスプレジデント兼エグゼクティブプロデューサーに就任し、フランチャイズの全体戦略を主導するように。2005年から約20年に渡って同社に在籍した、ベテラン幹部だった。

『アサシン クリード III リマスター』

そんなCoté氏がリードする『アサシン クリード』シリーズはこれまで、カナダ・ケベック州に拠点を置くUbisoft MontrealやUbisoft Quebecを中心として開発。Coté氏もケベック州で活動していた。しかしUbisoftは2025年10月、『アサシン クリード』『ファークライ』『レインボーシックス』の3シリーズの開発に特化した新スタジオとして、Vantage Studiosの設立を発表。同スタジオが中心となって世界各地にあるスタジオを束ねるように、開発体制の再編がおこなわれた。

そしてVantage Studiosの設立発表と時を合わせ、2025年10月にCoté氏はUbisoftを退職した。Ubisoftの社内向けメールに基づく報道では、Coté氏にはVantage Studiosにおける新ポストが用意されたが、同氏がこれを辞退して自主的に退職したとされた(関連記事)。しかしCoté氏は自身のLinkedInアカウントにて、「自ら去ったのではない(I did not walk away)」と投稿。会社側とCoté氏側のあいだに認識の相違があることをうかがわせる状況となっていた(関連記事)。とはいえ当時同氏は解雇について「何の恨みも抱いていない」とも述べていた。

ただ2026年1月17日、Radio-Canadaの報道により、Coté氏がケベック州高等裁判所にてUbisoftに対し訴訟を提起していたことが明らかになった。報道によると、Coté氏がUbisoftを退職したのは「受け入れがたい降格」を提示されたためであり、これは“みなし解雇”にあたるとCoté氏は主張。退職金と2年分の給与、さらに精神的損害賠償を含めて、約130万カナダドル(約1億5000万円)の支払いを請求した。また、ゲーム業界の他社に雇用される機会を制限する、競業禁止条項の解除も求めている。

訴状による経緯の説明によると、Coté氏は2025年夏におこなわれたUbisoftの経営会議に参加。その際、新スタジオVantage Studiosで『アサシン クリード』『ファークライ』『レインボーシックス』の3シリーズを総監督する、新たなフランチャイズ責任者を探すプロセスが開始されたと伝えられた。そしてその新ポストは、Coté氏のこれまでの職責と大部分が重複していたという。

Coté氏は新ポストに志願したが、同ポストはUbisoft本社が拠点を置くフランスでの勤務を想定していたため、ケベックに在住するCoté氏の就任はUbisoft・CEOのYves Guillemot氏に反対されたとのこと。代わりにCoté氏には制作責任者(Head of Production)のポストが提示されたが、それはCoté氏のそれまでの役職よりも、威信や権限が低いものだったという。

Coté氏とUbisoft経営陣の話し合いは緊迫したものになり、9月になってCoté氏には別のポストが改めて提示されたとのこと。訴状によると、その役職はまだ具体的なかたちがはっきりとしない別の新スタジオを率いて、「二次的な位置づけのシリーズを束ねるもの(regroupant des séries de second ordre)」だったそうだ。同氏はこのポストを受け入れるか否か決断するように迫られ、最終的に退職を選んだという。

『アサシン クリード シャドウズ』

訴状ではこうした経緯は、受け入れがたい降格を突き付けて自ら辞めざるを得ない状況に追い込む「みなし解雇」にあたると主張。退職金の支払いのほか、不況の最中にあるゲーム業界では以前と同等の職を見つけるのは難しいとして、2年分の給与の支払いも要求している。また、権力の乱用と名誉毀損に対する精神的損害賠償として7万5000カナダドル(約850万円)の支払いも求めており、総額として130万カナダドル(約1億5000万円)を超える額が請求されているかたちである。

以上の経緯は、Coté氏側が提出した訴状に基づいていることに留意されたい。本件を報じたRadio-Canadaによると、Ubisoft側は異議申し立ての準備をおこなっているとのこと。今後Ubisoft側から反論が展開され、法廷で事実関係が争われると思われる。続報が注目される。

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Akihiro Sakurai
Akihiro Sakurai

気になったゲームは色々遊びますが、放っておくと延々とストラテジーゲームをやっています。でも一番好きなのはテンポの速い3Dアクションです

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