国産自由ローグライクRPG『Elin』開発者インタビュー。『Elin』は『Elona』の種が20年越しで実ったゲームで、みんなの存在が「ずっとアプデ」を可能にする
Steamで高評価を得ている自由ローグライクRPG『Elin』の開発者にインタビューを実施した。

Steamにて2024年11月に早期アクセス配信開始され、高い評価を得ているローグライク・オープンワールドサンドボックスRPG『Elin』。本作の開発者noa氏は、『Elona』を手がけたことでも知られる人物だ。
『Elin』では1年以上にわたる早期アクセスのなかで、多種多様な要素がアップデートで追加されコミュニティを賑わしてきた。実際のところどのように売れて、どんな風に盛り上がっているのか。開発方針も含めて、noa氏に話を伺った。

──自己紹介をお願いします。
noa氏:
個人でゲームを開発しているnoaです。Lafrontierというスタジオ名義で、かれこれ20数年ほどゲーム開発に携わっています。『Elin』以前は、『Elona』や『Elona Shooter』といったフリーゲームを作っていました。
昔から、緻密な世界観を持ったエピック・ファンタジーやSFに目がなく、アニメやゲームはもちろん、本もよく手に取ります。以前はD&D系の小説はゲーム色が強そうで少し敬遠していたのですが、昨年は『ドラゴンランス』シリーズにどっぷりはまってしまい、何度も読み返してはレイストリンのかわいさに悶え苦しみつつ、永遠に出そうにない『氷と炎の歌』や『キングキラー・クロニクル』の最新作を待ち続けています。実はElinにも、これらの作品へのオマージュがいろいろと散りばめられています。
ゲーム開発の他に、趣味でも物語や台本を書いたり、音楽や動画の製作、AIやプログラミング言語をいじったりと、創作全般が好きです。
──改めて『Elin』についてご紹介お願いできますか。
noa氏:
『Elin』はオープンワールドなやりこみ系ローグライク冒険生活&拠点運営ゲームです。前作『Elona』で好評だった部分を残しつつ、より自由でカオスな方向へと進化しています。
一言で言えば、「作者の偏執的な情熱によって、一生かけて作られていくタイプのゲーム」でしょうか。昨年だけでも200以上のアップデートがリリースされ、コンテンツが日々増え続けています。広大な世界に飛び込んで、ランダムに生まれる物語や混沌を楽しむゲームといえるかもしれません。
ランダム生成主体のゲームには珍しく、世界設定やストーリー表現に力が注がれているのも、本作の特徴の一つです。個性豊かなNPCや神々が登場し、プレイヤーの拠点を舞台に、ファンタジー感あふれるほっこりホームクエストが冒険を彩ります。日本のサブカルチャーと硬派なローグライクが融合した独特の雰囲気、かわいい萌え要素も、もちろん健在です。
また、本作ではMod機能も導入され、ワークショップでは既に1500件近くのModが公開されています。
──早期アクセス配信から1年が経過しました。セールスの調子はいかがでしょうか。
noa氏:
販売本数は、早期アクセス開始直後の2024年が約20万本、昨年が約15万本、合計でおよそ35万本ほどとなっています。
──そんなに売れているんですね。
noa氏:
もともと『Elin』は、発売時のインパクトというより、アップデートを重ねながらじわじわとプレイヤーが増えていくタイプのゲームを想定していました。そのため、宣伝なども特に行っておらず、初動の販売数は驚きでした。Kickstarterでのクラウドファンドで広く知ってもらえたのと、熱心な『Elona』プレイヤーが多かったというのが大きかったと思います。
発売直後の勢いが落ち着いた昨年も、販売数は月毎に大きく変わらず安定していました。本来目指していた「継続的なプレイヤー数の増加」という点においては、こちらの方がより重要だと感じています。
いつになるか分かりませんが、「100万人の妹!」(※妹=プレイヤー)というのを、ひそかに目標に掲げています。商業的な意味より、憧れに近い感覚ですね。ファミコン時代からゲームに救われてきた者なので、昔夢中になったタイトルと『Elin』がSteamで同じ画面に並んでいたり、少しでも同じ土俵に近づけるのを、何よりも光栄に感じてしまいます。そして、やはり自分のゲームを一人でも多くの方に遊んでもらえたら嬉しい、というのがあります。
──国別売上を教えてください。
noa氏:
これまでの累計売上の内訳は、日本が35%、米国が24%、中国が16%、次いで大きく下がってカナダの3%となっています。一方、直近の月の販売数を見ると、米国が33%、中国が16%、日本が15%となっており、欧米での売上が上昇してきています。
前作の『Elona』は海外にコアなプレイヤーが多かったので、今作も世界中のたくさんの国々で遊んでもらえればと思っています。まだ公式で対応している言語が少ないという点もあり、現在は、欧米にターゲットを絞ったPR動画を製作・公開し、プロモーションを行っています。

──欧米でも人気があるのはそういう理由なんですね。ゲームのどのような要素が、今の数字につながっていると思いますか。
noa氏:
前作のファンベースがあったことを筆頭に、サバイバルやクラフト、拠点運営といった人気の要素を取り込んだこと、ドット絵の親しみやすさなどが、数字の上では一番大きいと思います。
そのうえで、「長く付き合えそうなゲーム」と受け取ってもらえている感触もあります。プレイ時間的な意味だけではなく、今はプレイしていなくても、たまたま流れてきたイラストや小ネタで冒険を思い出したり、妙なアップデートの噂にクスッとしたり、「またそのうち」と心の隅に置いてもらえるようなプレイヤーとの関係ですね。
最近創刊した「エリンだより(『Elin』の月間記事)」も、「この世界は今日もちゃんと息をしているよ(いつでも戻ってきてね。ね!)」と伝えるための、小さな灯りのようなものを目指しています。
こういったアプローチが数字に直結していると断言するのは難しいですが、長くElinと付き合ってもらえるような試みは継続していくつもりです。
少し背景の話をすると、私は「終わらない物語」や「続いていく世界」が好きで、今作でもイルヴァという世界をひたすら拡張し続けてみたいと思っています。地球のどこかで妹がどんどん増殖していって、その先にどんな景色が待っているのか、見てみたいですよね…?
実は前作『Elona』も同じような心構えでのぞみ、その時は何も変わった景色は見られず、半ば失意のまま開発を断念した経緯があります。「景色が見えなかった」というのは、当時はSNSも盛んではなく、ファンアートなんてほとんどなかったですし、フィードバックも一年に何通かという状態だったからです。ただ虚しく無料ゲームの開発に時間を費やしている、という感覚ばかりがつのっていました。
あれから20年近く、『Elona』で蒔かれた種は枯れずに残っていて、『Elin』の代になって芽を出したのだと思っています。
数字の上では、「前作のファンベースがあった」「IPとして育っていた」みたいに説明できるかもしれません。ただ、私の実感としては、そこにあったのは商業的な成功というよりも、古の妹たちと再会できたというかなり個人的なドラマで、今も『Elin』を作り続けるモチベーションの柱となっています。
案外、そういう市場性からは少し外れた動機や物語のようなものが、インディーゲームらしさや作品の独自性となり、数字にもつながっていくのかもしれません。
…とはいえ、正直なところ確証はありません(笑) ですので、これからElinがどうなっていくのか、数字も含めて注目して頂ければ幸いです。
──なんだかジンときました。ありがとうございます。本作の自由度を表す、ユーザーの遊び方のエピソードのようなものがあれば教えてください。
noa氏:
好きな仲間を集めて好きな拠点を作れるというゲームなので、やはり連れている仲間や拠点にプレイヤーの特徴がよく現れますね。
巨大な温泉にかわいい子だけはべらかした楽園もあれば、特定のキャラをとにかくいじめる拠点、現代風の建築の再現や、明らかに何かがおかしい施設、強い執念やフェチを感じる展示室もあります。効率を追求した超巨大農園や発電風呂も、それはそれで地獄のような絵面になって面白いです。
テントを背負って世界を旅する冒険者もいますし、NPCのパンティーを収集する冒険者や、各地で世界最高の家具を盗んで回る冒険者、竜や妹だけの軍隊を作っている冒険者もいます。
「自分で好きなように物語を作っていく」というのが、『Elin』の最高の楽しみ方の一つだと思います。

──たしかに、『Elin』の魅力がよくわかるエピソードです!2025年のアップデート内容について、改めて振り返っていただけますか。もっとも力を入れたアップデートについて教えてください。
noa氏:
「吸血鬼」種族の実装は、プレイヤーの期待度が高く、予想以上に時間のかかるアップデートとなりました。「ルーリエ海底神殿」を含む海底マップの導入も大変でしたが、水中の雰囲気には満足しています。
もっとも力を入れたアップデートは、最新のホームクエストのためのダンジョンやボスの演出・ギミックでしょうか。このアップデートでは、ボスの行動に「特殊行動」という概念が導入され、また、マップ全体に特殊なルールを加える「フィールドエフェクト」が導入されました。これらは、今後のダンジョンやボス戦でもガンガン使っていく予定です。
カードゲームなどでもよく見られる「フィールドエフェクト」は、戦闘・探索の難易度や戦略を大きく変えるため、ランダムダンジョンで発生させても面白いかもしれません。
──ありがとうございます。ちなみに、もっとも反響のあったアップデートについて教えていただければと。
noa氏:
ゲームプレイへの影響が大きかったのは「ルーンの鋳造」や「遺伝子合成」などの導入ですが、ちょっとした寄り道や思いつきで作った機能のほうが反響が大きかったように思います。
直近では、例えば「ASMR再生機」ですね。任意のNPCのASMR的なテキストを延々とラジオが喋る機能で、公募したところプレイヤーからも大量のASMR台詞が届きました。今後は恒常的なおまけコンテンツとして、アップデートの合間に追加していくことになりそうです。
また、拠点の住人がパンティーを履くようになる「おもいやりパンティー着用条例」や、しばくと何にでも卵を産ませられる「卵の鞭」も大きな反響がありました。一見ネタとしか思えない機能でも、例えば最近では最終素材の入手手段として「卵の鞭」が使えると判明したり、色んなシステムがカオスに組み込まれた『Elin』ならでは、と感じます。
そうやって予期せずプレイヤーによって発見された裏技やテクニックは、修正が必要なものも多いのですが、できればどうにかして残すというスタンスで開発しています。

──なるほど。2025年はnoaさんの思い描いた開発はできましたか。
noa氏:
2024年の早期アクセス開始直後は、フィードバックの量が膨大で本当に大変でした。その後フィードバック管理の仕組みを整え、Nightly(開発版)と安定版を分ける体制にしたことで、昨年は快適に開発できるようになりました。物理的な制作環境(=古くて汚い部屋)も改善でき、とても充実した一年だったと思っています。
開発自体は仕事というより好きでやっているので、作業を負担に感じることはありません。合間に『モンハンワイルズ』をプレイしていたのがバレてしまいましたが、それ以外でも『ロマサガ2リメイク』を2日間ぶっ通しプレイでクリアしていたり、アニメ「葬送のフリーレン」を一気見していたりと、こっそり遊んでいます。
ちなみに、普段からプレイヤーを妹と呼んでいますが、決して危ない属性に目覚めているわけではありません。これには実用的な意味もあって、小規模開発の場合、間のクッションなしにユーザーのフィードバックを直接読むことになるため、辛辣な言葉にダメージを受けることが結構あるんです。ただ、そういったメッセージも、かわいい妹たちが書いて送っていると思うと、不思議と心が和らぎますよね…? もしフィードバックで悩んでいる開発者の方がいましたら、ぜひ試して頂けたらと思います。
──(笑)2026年はnoaさまはどのように過ごしたいですか。
noa氏:
トラブルなどに時間を割かれることなく、開発に集中できる環境を維持していければと思っています。
開発面ではまだまだ詰め込みたい機能が山ほど残っていて、ファクトリー系の自動化機能なんかも入れてみたいという欲望と戦っています。ただ、早期アクセスをあまり長引かせるわけにもいかないので、正式リリース後の楽しみにとっておくつもりです。
今年最大の目標は、何と言ってもホームクエストの完結ですね。完結といっても、そこで物語が綺麗に終わりという感じではなく、「一旦区切りの良いところで畳んでおく」ぐらいの閉じ方を考えています。(正式リリース後に)再び物語が動き出す余地を残す感じです。
ホームクエストで加わるキャラたちは人気も高く、ストーリーにひとまずの区切りがついたら、キャラ同士の他愛のない掛けあいやエピソードも追加していければと思っています。コルゴンのもきゅもきゅをもっと聞きたい方も、楽しみに待っていて下さい!
──ありがとうございました。今年も期待しています。
『Elin』はPC(Steam)向けに早期アクセス配信中だ。
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