Steamで2025年好評殺到した国産ヒットゲーム開発者、みんな“予想外の成功”だった。『Chill with You:Lo-Fi Story』『Öoo』『DRAPLINE』開発者が振り返る、意外な高評価の裏側

Steamのユーザーレビューにて好評率95%以上を獲得していた日本発のインディーゲームを中心に、スタジオ・販売元にアンケートを実施した。

毎年のように活気を増していくインディーゲーム界隈では、2025年もたくさんのタイトルがリリースされ盛り上がった。一方で、非常に高い評価を獲得したり、大きな成功を掴んだりできたタイトルは、全体からすると一握りだろう。そこで弊誌では、2025年にゲームをリリースし高評価を得たインディースタジオ・販売元にアンケートを実施。自らの作品の成功をどのように受け止めているのかや、今後の展望などについて語ってもらった。

今回のアンケートは、Steamのユーザーレビューにて本企画開始段階で好評率95%以上を獲得していたインディーゲームを中心に選定して実施。みな同じ5問に回答してもらった。なお、たくさんの回答をいただいたため、回答してくれた開発元・販売元の所在地域別に3回に分けて記事を公開する。本記事は日本編である。欧米編記事はこちら。中国編記事はこちら


『Chill with You:Lo-Fi Story』

PC(Steam

──自己紹介と『Chill with You:Lo-Fi Story』の紹介をお願いします。

『Chill with You:Lo-Fi Story』のディレクターを務めている藤森です。本作は、サトネと一緒に作業することで、日々のデスクワークを少し楽しく、続けやすくする作業効率化×アドベンチャーゲームです。「作業する時間そのものが、心地よい体験になる」ことを目指して制作しました。

──本作はSteamのユーザーレビューにて現時点で好評率98%を得ています。こうした成功はリリース前に想像していましたか。そして高評価を得られたのはなぜだと思いますか。

正直なところ、ここまでの評価をいただけるとは想像していませんでした。開発当初は「作業用ツールとしてちゃんと使えること」と「サトネと過ごす時間が心地よいこと」、その両立、または融合を目標にしていましたが、それがどこまで受け入れてもらえるかは未知数でした。

結果として高評価をいただけた理由は、ゲームとして強い刺激や派手さを狙うのではなく、「毎日使い続けられる体験」に徹底して向き合った点だと思っています。作業の邪魔をしない距離感や、音・ビジュアル・会話のテンポなど、細かな部分を丁寧に積み重ねたことが評価につながったのではないでしょうか。

──Steamで成功したことで、生活や心境面で変化はありましたか。

想像以上のプレイヤーから応援や要望などをいただきました。これらに応えるために日々アップデート内容を考え、実施し、プレイヤーたちの期待に応えたいと思うようになりました。失敗することも多々あり、挫けてしまいそうになる時もありますが、それでも頑張っていられるのはプレイヤーの皆さんが期待し続けてくれているからなのかなと思っております。

──2025年にリリースされた他社のゲームで、もっとも刺激を受けたタイトルを教えてください。

『都市伝説解体センター』は強く印象に残っています。リッチなピクセルアートやカットシーンに目を奪われました。どのシーンを見ても都市伝説解体センターだなと思える独自性と、制約の中、絶妙なバランスで表現しているアートの統一感が素晴らしいです。キャラクターもどれも魅力的な設定で、常に続きが気になる感覚がありました。

──2026年の活動について計画をお教えいただけますか。

多くのプレイヤーの期待に応えられるよう『Chill with You:Lo-Fi Story』のアップデートを続けながら、新企画にもチャレンジしていきたいと考えております。


『Öoo』

PC(Steam

──自己紹介と『Öoo』の紹介をお願いします。

インディーゲーム開発者のNamaTakahashiです。『Öoo』は爆弾イモムシとなって、食べられてしまった怪鳥の体内から脱出する探索型パズルアクションです。爆弾の意外な使い方をプレイヤー自身が気づくことで、新たな道を切り開くゲームとなっています。

──本作はSteamのユーザーレビューにて現時点で好評率99%を得ています。こうした成功はリリース前に想像していましたか。そして高評価を得られたのはなぜだと思いますか。

いいえ、まったく想像していませんでした。本作は、前作『ElecHead』をクリアしたプレイヤーを想定してつくっていたため、前作以上に「プレイヤーの気づき」に委ねる設計になっています。そのため、先に進めずに不満を持つプレイヤーが出るだろうと予想しており、リリース後にここまで評価をいただけたことは正直意外でした。

今振り返って思うのは、テストプレイによるものが非常に大きかったのではないかと思います。ゲームの不評の理由って多くがバグや細かいストレスだったりするんですよね。こうしたバグや細かいストレスは、テストプレイを重ねることで気づくことができ、ある程度は減らせます。何十回もテストプレイを行ったことで、そうした不評につながる要素ををしっかりと潰せたのが良かったのではないかと思います。

もう一つは「ゲームの設計的なすごさ、美しさ」が評価されたことです。そうした設計の完成度の高さによって、たとえ合わなかったとしても低評価を付けにくい側面があったのではないかと思います。レビューを見ていると「すごい」、「どうやって思いつくんだこれ」などが多く書かれています。中には「もはや怖い」と書かれているレビューもありました。そういった「プレイヤーではなく開発者としての目線」、いわばメタ的な視点での評価をする人が多かったのかもしれないです。

──Steamで成功したことで、生活や心境面で変化はありましたか。

自信がついたというのが本当に大きいです。実は前作『ElecHead』も圧倒的好評をいただいている作品でしたが、その時は「たまたま上手くいっただけかもしれない」、「次も同じように評価されるのだろうか」という不安を常に抱えていました。いわゆる「2作目問題」です。

今回その2作目の『Öoo』が同様に圧倒的好評をいただけたことで「この業界で自分はやっていけるかも」というある程度の確信を得られた気がします。それに伴い、「これが受け入れられるなら、この企画もいけるんじゃないか?」など企画で表現していい幅なども増えた気がします。今は次回作がつくりたくて仕方ないです。

──2025年にリリースされた他社のゲームで、もっとも刺激を受けたタイトルを教えてください。

『REMATCH』ですかね。現実のサッカーの知識が勝敗を分けるくらいリアルサッカーを綺麗に落とし込んだゲームだと思っています。自分はそのときちょうどサッカーマンガの「アオアシ」を読んでいました。そのマンガに出てくるサッカーで強くなるコツや考え方をそのまま『REMATCH』で実践してみたら、みるみる上達していったときに、ものすごい感動を味わえました。このような「現実世界で学んだことがゲームに活きた体験」は今後の企画の良いテーマになりそうだと思っています。

──2026年の活動について計画をお教えいただけますか。

もくもくと新作を開発していきます。どんな新作かはリリースまで言えないかもしれません。チャレンジングな作品であることは間違いないです。発表はまだまだ先になりますが、楽しみにお待ちいただけたらと思います。


『DRAPLINE』

PC(Steam

──自己紹介と『DRAPLINE』の紹介をお願いします。

個人開発者のカナヲです。『DRAPLINE』はなんでも食べるドラゴン娘を1年間で最強に育て上げ、迫る災いに立ち向かうことが目的のターン制育成ローグライトゲームです。画像から音楽に至るまで、ほとんどの部分を私が一人で手掛けています。

──本作はSteamのユーザーレビューにて現時点で好評率96%を得ています。こうした成功はリリース前に想像していましたか。そして高評価を得られたのはなぜだと思いますか。

正直そこまでの評価はまったく想像していませんでした。事前に大々的なプロモーションを打ったわけでもなければ、ローグライトの鉄板ジャンルであるデッキ構築からも少し外れたゲーム内容だったからです。

作者自身が「こういうのが好きだから」と思って作った様々なものが、思いのほか皆さんの琴線に触れたということなのかなと思っています。

──Steamで成功したことで、生活や心境面で変化はありましたか。

早期アクセス中ということもあって日々開発に明け暮れているので、今のところあまり実感はありません。早期アクセス開始直後の一か月くらいが爆発的に人が増えた時期でしたが、その時もただただ世界が回るスピードが速くて、置いて行かれないよう必死にしがみついているような感覚でした(笑)

──2025年にリリースされた他社のゲームで、もっとも刺激を受けたタイトルを教えてください。

9月に正式リリースを迎えた『ShapeHero Factory』です。工場自動化、タワーディフェンス、ローグライトと様々なジャンルが組み合わさったるつぼのようなゲームですが、それがまたほかの場所では見られない独特さで、ゲームの「遊び」の幅はまだまだ無限にあるんだなあと感じさせられました。

──2026年の活動について計画をお教えいただけますか。

2026年はDRAPLINEの正式リリースを予定している年なので、あまりペースを落とさず駆け抜けたいと思っています。また2025年は早期アクセス開始前後が忙しすぎてあまりイベント出展できなかったので、2026年はそこも頑張りたいです。



本記事は、今回の高評価インディーゲームアンケート企画の日本編である。欧米編記事はこちら。中国編記事はこちら。なお、回答いただいた各スタジオのタイトルは、いずれもSteamにて配信中だ。一部はコンソールなどにも展開されており、興味のある作品があればチェックしてみてはいかがだろうか。

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Taijiro Yamanaka
Taijiro Yamanaka

国内外のゲームニュースを好物としています。購入するゲームとプレイできる時間のバランス感覚が悪く、積みゲーを崩しつつさらに積んでいく日々。

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