個人開発者が“趣味で”作った「MMORPG」が注目集める。ゲームエンジンからシステムまですべて自作、書いたコードは8万行

“趣味で”MMORPGを作った開発者の投稿が、海外掲示板Redditで話題となっている。

開発者のarenajunkies氏は12月26日、MMORPG『Dreadmyst』を開発したと海外掲示板Reddit上に投稿した。対応プラットフォームはPC(Steam)。2026年1月9日リリース予定となっている。本作は個人開発でありながら自作のゲームエンジンを使用して一から作られているとして、注目を集めている。

『Dreadmyst』は斜めから見下ろす視点のファンタジーMMORPG(大規模多人数同時参加型オンラインRPG)である。プレイヤーは一人の冒険者としてダンジョンに挑み、冒険者としての高みを目指すことになる。操作キャラクターは性能の異なる4つのクラスから1つを選ぶことができ、それぞれに奥深いビルド構築要素がある。自分以外の3人のプレイヤーとパーティーを組んでダンジョン攻略に挑んだり、2対2のプレイヤー対戦をしたりといったマルチプレイが楽しめるほか、1人でダンジョンに挑戦することも可能となっている。

本作の紹介は、サブレディットと呼ばれる多数のコミュニティから成るReddit上の「r/gamedev」サブレディットに投稿された。同サブレディットは日夜多くのユーザーがゲーム開発について語り合っている場だ。紹介をおこなったarenajunkies氏の投稿は、本稿執筆時点で700件以上のUpvote(いいねに相当)を集めており、約90件のコメントも寄せられて注目されている。

投稿内では、ゲーム紹介は1つの段落で簡潔に済ませてある。あとは技術的に大変だった点や工夫した点など、実装についての話が中心だ。寄せられているコメントとしても、技術的な質問が多く見られる。本作はC言語、およびC++、OpenGLを使った独自のゲームエンジンで実装されており、サーバーサイドのソースコードが約3万3000行、クライアントサイドのソースコードが約4万7000行になったという。数字を聞くだけでも大変なボリュームだが、開発は直近の1年間の週末を利用して、趣味として進めていたとのことだ。

arenajunkies氏はMMORPGを作る上で自身が凝らしたさまざまな工夫を明かしている。特に、呪文に関する実装は多くの人が見落としがちだと語る。たとえば、スタンやポリモーフ(変身魔法)など行動制限系の効果を敵に与えた際、味方のNPCが敵を殴って即座に解除してしまうことがないように、敵のヘイトを一時的に下げるといった処理を加えているとのこと。こうしたヘイト管理はarenajunkies氏がもっともしっかりこなしたかったことの一つであるといい、敵の攻撃を引きつけるタンク役のデバフ効果についても、攻撃ですぐに外れてしまわないような仕様になっているそうだ。

またマッチングシステムについても自作しているといい、ダンジョン攻略ではタンク役1人、ヒーラー役1人、DPS役2人というパーティー編成のチェックがおこなわれる。また2対2のアリーナでは、「イロレーティング」を使ったレート制のマッチングシステムを採用。ソロまたはデュオのプレイヤーから、すべての可能な組み合わせでチームを作り、レートの許容範囲の中でマッチング。待ち時間に応じて許容範囲を広げたり、同じプレイヤーが重複してマッチングしてしまわないようにするなど、運用上の問題も考慮したさまざまな工夫がなされている模様だ。投稿ではそのほか、データベースやネットワークに関する実装についても紹介されている。

ちなみに一連の開発はarenajunkies氏が、もっぱら趣味としておこなってきたものだという。同氏は長らく開発者として企業に勤めているが、しばらくはゼロから製品化までのすべてを手がけるといったことはなかったようだ。そこで自分自身の手で大規模な開発をおこなうことにし、完遂できたことに充実感をおぼえているとのこと。こうした開発経緯を反映してか、本作は基本プレイ無料で公開される予定で、収益化の予定はないとされている。リリース後も同氏の趣味の一環として、私費を投じて運営されるものと思われる。

なお先日にも、インディー開発者のElirath氏が同じく一人で手がけたという基本プレイ無料MMORPG『Ethernia』が話題となっていた(関連記事)。同作は公式サイトのカウントダウンを見るに、日本時間では12月28日午前6時頃のリリースとなる見込み。今回話題となった『Dreadmyst』をはじめ、昨今では個人開発とは良い意味で似つかわしくない大規模な作品も多数現れている状況だ。

『Dreadmyst』はPC(Steam)向けに基本プレイ無料で2026年1月9日リリース予定だ。

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Naoto Morooka
Naoto Morooka

1000時間まではチュートリアルと言われるようなゲームが大好物。言語学や神話も好きで、ゲームに独自の言語や神話が出てくると小躍りします。

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