中堅ゲーム開発会社は、どういうスタッフがいて、どういう悩みがあるのか?またどういう採用をする?設立35年コツコツ、大阪ゲーム会社オーツーに訊いた

大阪で長年受託というかたちでゲーム開発の携わっている株式会社オーツーに話を伺った。

関西のゲーム開発会社に、企業文化や特色などを訊く本連載。今回は、大阪で長年受託というかたちでゲーム開発の携わっている株式会社オーツーに話を伺った。同社は企画からデザイン、プログラムまで、一括でひとつのゲームをかたちにする力をもつ受託会社だ。

様々な受託タイトルを開発しており、幅広いジャンルの中でも存在感のある作品の開発に携わっている。従業員数は2025年時点で167名。規模感的にも中規模である。老舗かつ中規模受託会社である同社は、どのような会社で、どんな基準で人材採用をおこなっているのか。担当者に訊いた。

設立35年を迎えるゲーム受託開発の老舗オーツー

――皆さんの自己紹介をお願いします。

越田健一(以下、越田)氏:
コンシューマー部署を管理している越田健一と申します。プログラマーとしていろいろな受託案件のプログラムに携わらせていただき、自社ブランドであるpeakvoxを立ち上げた以降は、自社ブランドのタイトルも開発しています。元からゲーム制作が好きなのですが、今は業務でゲーム制作をすることがほぼなくなってしまったので、帰ってからプライベートで大体お酒を飲みながら、夜な夜なプログラムをしております。

金山左近(以下、金山)氏:
プランナーをやっている金山左近と申します。アシスタントマネージャーも務めておりまして、現在はプランナー関連の管理であったり各プロジェクト間のアサインであったり、あるいは僕自身もプロジェクトに入って仕様を書いたりと、いろいろなことをやっています。

山頬裕之(以下、山頬)氏:
デザイナーでアシスタントマネージャーの山頬裕之と申します。業務では主に背景モデリングを担当しています。peakvoxブランドではグラフィック制作に加えて企画・ディレクションやサウンド制作を手掛けております。

山下忠範(以下、山下)氏:
人事部課長の山下忠範です。オーツーには2022年に入社いたしましたが、それ以前はほかのゲーム会社や医療業界など、いろいろなところの人事を経験してきました。新卒採用では説明会や選考の管理を、中途採用ではいろいろなエージェントさんとの窓口などを担当しております。

――まず、オーツーとはどういった会社なのでしょうか。

越田氏:
大阪市を拠点にゲーム開発をしている、設立35年になる会社です。受託開発を柱にして、さまざまなジャンルのゲームを開発してきています。社内にはプランナー、グラフィックデザイナー、プログラマーにサーバーエンジニアと、一通りの人員がいるため弊社での一括開発も可能です。受託開発以外にも、前述したようにpeakvoxという自社ブランドも立ち上げておりまして、オリジナルタイトルの開発にも力を入れている会社です。

――オーツーにどんな部署があるのでしょうか。

越田氏:
制作関係では、我々が所属している家庭用ゲーム機向けとSteamなどのPC向けゲームを開発しているコンシューマー部署があります。古くはアセンブラからC++、C#、Unity、Unreal Engineなど、さまざまな言語や環境でゲーム開発をおこなっています。2つ目はモバイルゲームを中心に開発している部署です。こちらは開発から運営まで一貫しておこなっています。あとは運営のみの受託もおこなっているパターンもありますね。

3つ目はシナリオライターとイラストレーターが多数在籍している部署です。こちらは文化財を修復した経験があったりアッカド語が読めたり、元々似顔絵師だったり、多様な人材がそろっている部署ですね。さらにwebチームもございまして、弊社やpeakvoxのサイトだけではなく、さまざまな会社さまのwebサイトを作成しております。あと、制作以外では管理部、人事部といったかたちです。

――設立から35年経つとのことですが、設立当時からゲームの受託をされていたのでしょうか。

山頬氏:
弊社はもともとデザイナーだけの会社で、グラフィックの請負のみをしていたんです。ゲーム制作では主に”ギャルゲー”の一枚絵など、ビジュアル部分のみを制作しておりました。あと別業種として、Webデザインの制作を請け負っていました。その後、越田達が入社してきまして。その当時はプログラマーとかプランナーが入社すると聞いて戦々恐々としていたんです。どんな怖いやつが来るんだろうかと。

一同:
(笑)

山頬氏:
まぁ実際は気のいい人ばかりだったんですが。(笑)そうしてビジュアルのみ手掛ける会社から一転、ゲーム開発を何でも一通りできる会社になって、ありがたいことにさらにいろいろなゲームに関わらせていただくことになりました。

――オーツーが現在のかたちになるまでに大変なこともあったと思いますが、事業を広めるきっかけになったゲームなどはありますか。

越田氏:
大型アクションレースゲームに関わらせていただいたタイミングですね。人員も増えましたし、スタッフの経験値もぐんと上がりましたので。あと、2008年にpeakvoxの初タイトルをリリースしたんですけど、やっぱりそのタイミングから受託だけではなく、トレンドを見ながら自分たちで何かを作っていこうという意識が芽生えてきましたね。

――現在のオーツーはどんな会社と説明されてますか。

山下氏:
関わることができるタイトルに関しては、いろいろな会社さんからの受託に左右されるので未知数ではありますが、開発スタイル自体は、比較的アナログなコミュニケーションを大切にしつつ、のびのびと開発できる環境だと思っています。良くも悪くも小規模な、200人に満たない会社なので、新卒採用も杓子定規ではなくて、個人の成長具合に応じて研修期間を延ばしたり縮めたりと、マンツーマンでしっかりも研修ができる仕組みもあるので、ゲーム業界1社目の会社としてはかなりおすすめしたいと伝えています。

金山氏:
プランナーとしては、オーツーはプログラマー、デザイナー、プランナーと各業種がそろっておりますので、ワンストップでひとつのものを作れることを推しています。あと、新卒の方はよくオリジナル作品を作りたいという方がやはり多くて、弊社はたしかに受託メインではありますが、そういった方にもpeakvoxという自社レーベルがあるので、オリジナル作品を作る環境もあるということはアピールしています。

――最近、プランナー志望の方はレベルデザイナー志望が多いという話を聞きますが、御社もそうでしょうか。

金山氏:
弊社は、コンシューマーとスマートフォンアプリのセクションに大きく分かれていますが、現在の市場の関係もあって、運営系のスマートフォンアプリを経験された方が多く、それでレベルデザインが多いかなという印象がありますね。

――オーツーとしての直近の事例はどういったものがありますか。

越田氏:
さまざまなゲーム開発をお任せいただいておりまして、企画書からゲーム開発まで請け負ったり、各タイトルの移植やリメイクをしたりといったご相談もあります。どのパートの受託が多いというのはなく、満遍なくお任せいただいておりますね。スマートフォン向けの案件では、開発だけではなく運営に関する受託もあり、10年以上運営を継続させていただいているタイトルもございます。

――受託案件はどういったかたちでスタートすることが多いのでしょうか。

越田氏:
やはり立ち上げからご協力させていただくことが多いです。企画書ができましたのでちょっとどうですか、ご意見ください、工数はどれくらいかかりそうですか、といったかたちで。そもそもできそうですかといったところからのご相談をいただくこともありますね。立ち上げから関わる以外だと、ゲームのこの部分だけ、このゲームモードだけというご相談もあります。

――直近1年でどれくらいの案件があったのでしょうか。

越田氏:
弊社はシナリオ部門もあるので、シナリオのここの部分だけというものも1案件として考えるとかなりの数になりますね。あと、2Dイラストのお仕事だけという案件もあります。

――それだけいろいろな案件に関わっているオーツーが、受託会社として評価を受けている部分はどこなんでしょうか。

山頬氏:
やっぱりオーツーだけで何でもできることかなと。シナリオ案件でもモバイルでも、相談をいただいたらお応えできる体制があるので、その辺りが強みで、評価いただいている部分なのかもしれません。

越田氏:
あとは案件をお任せいただいたら、きっちりと最後まで仕上げてリリースできるところまでもっていくことを最優先に考えております。それをちゃんとできているということが次に繋がっているのかなと思います。

オーツーの採用観

――オーツーに所属している方々の職種は、どういった割合なんでしょうか。

山下氏:
毎年組織構成を見ていますが、プログラマー、デザイナー、プランナーがほぼ均等に所属していまして、全社員160人くらいのうち30%ずつくらいですね。あとはシナリオライターが5~6%、人事や管理が5~6%くらいという感じです。

山頬氏:
今はプランナーの人材に来てほしいですね。

金山氏:
プランナーはモバイルゲーム部署には多くて、コンシューマー部署ではだいぶ少ない状態なので、コンシューマー部署にぜひ来てほしいですね。特に手掛けているタイトルの関係上、野球に詳しい方だと非常にありがたいです。

――一言でプランナーと言っても、いろいろな業務がありますが、どういったタイプのプランナーを求めていますか。

金山氏:
いろいろな方面とやり取りしたり運営面で立ち回ったりすることが多いので、そういった部分でスピーディーに動ける人が欲しいですね。そういう意味では、進行管理系のプランナーもありだとは思うんですが、やっぱりプランナーの一番面白いところは企画書や仕様書を書くことなので、学生の方を採用する際の入り口は原則としてその部分にしています。

――いわゆる、なプランナーを求められていると。ちなみに、既卒と新卒はどれくらいの比率で採用されていますか。

山下氏:
新卒採用はその年によって割とバラバラですが、5人から10人くらいを毎年採用しています。中途採用は、年間10人以上は採用しております。

大体弊社で採用したいと思う人材は他社の内定を取っていることが多いですね……。大阪へのUターンの方を狙うことも多いですが、それでも周辺にはいろいろな会社があって、競合してしまって苦労しています……。

――プログラマーの採用も重要です。

越田氏:
プログラマーは比較的採用できているのかなという印象はあります。ただ、新卒の方はどうしてもUnityのみとかUnreal Engineのみとか、対応できる環境が限られるという人が多いですね。エンジンの扱いももちろんですが、C++という基礎をもっておいてほしいところです。たとえばUnityだけで済むというような仕事って限られてきますので。

――採用のときはどういったところを見ていますか。

山下氏:
一番大事なのは「一緒に働きたいかどうか」ですが、ほかに挙げるならゲームが好きなのかですね。いろいろなゲームがある中で、私たちは受託開発でどんなゲームに関わるかわからないので、いろいろなジャンルを満遍なく好きな人に安心感があります。

――やっぱりゲーム業界で働く上で、いろいろなゲームのインプットも重要ですか。

山下氏:
そうだと思います。プラットフォーム問わず、特に最近はSteamがとても増えましたが、そういったところも含めてプレイしているのか、あとはコンシューマー部署に所属していてもスマートフォン部署の方からヘルプが入ることもありますので、スマートフォンアプリもどれくらいプレイしているのかについてもお話を聞かせてもらうこともありますね。もちろん、プレイしているだけではなく、それを出力できることも大切です(笑)

――プログラム部門ではどういったことを重要視されていますか。

越田氏:
やはりソースコードを見せていただいて、どこまで自分で組んでいるのかだったり、コメントをちゃんと書いているのかだったり、もちろんソースをきれいに書いているのかを見ることが多いと思います。

それと、学生の方だったら作品を提出してもらうので、作品を見ながらどの辺りにプログラムのテクニックを使っているのかを見ますね。学校提供のひな形を使っている場合は、どこまでがひな形で、どこからが自分で作っていて、この部分を見てほしいということをアピールしてくれると、見る側としてわかりやすいんじゃないかと思います。

――デザイナー採用の傾向を教えて下さい。

山頬氏:
新卒者も採用していますが、最近は中途採用で全然別の業界から入社したスタッフの比率が多いです。たとえば工場で機械整備をしていた人とか、もともとは事務をしていた人とか。そういった別業種からの応募は、ポートフォリオからすごい熱意を感じるんですよね。仕事から帰った後や休日に3Dソフトを立ち上げて作品をコツコツ作り、ポートフォリオに仕上げて持ってくる。この時点で半端ない熱量です。

それと、社会人経験をしているおかげできっちりしている人が多いかもしれないです。なので、別業界で今働いていて、今からゲーム業界なんて受かるわけがないと思っている人も、悩んでいるなら応募してもらえたらありがたいです。もちろん新卒の応募もお待ちしています!

――全体として経験の有無に関わらず、その人のモチベーションやポテンシャルを重視されているわけですね。

山下氏:
そうですね。面接でしっかりと見ていますし、最終面接では弊社の代表も、人物面を重視して見ております。新卒採用面接で自分の言いたいことがうまく言語化できなくて泣き出してしまった方もいらっしゃいましたが、しっかりと人柄で判断して内定を出させていただいたこともあります。

――オーツーは研修などあるんでしょうか。

山頬氏:
新卒採用に関しては入社から原則半年以上は研修期間を設けています。研修はほぼマンツーマンで行いますね。なので、成長が若干遅くても、数か月研修期間を延長するくらいで、初歩的なところは概ね身に付きます。

――先ほどお話にあった異業種からの中途採用の方は、独学のスキルがあってもベースがないということもあると思いますが、そういった方々にも研修やガイダンスはあるんでしょうか。

越田氏:
ひとりメンターを付けて、余裕のある時は6か月くらい実際の業務ではないですが同じような作業をやってもらって、ある程度知識がついてから半年後に実際の業務に入ってもらうというかたちを取っています。それとは別に、来月から、早ければ来週から必要ということがあった場合はいきなり現場に入ってもらうしかないですが、それでも必ずサポートを付けて問題がないようにしています。

――未経験や経験が浅い人を抱えられないという問題が受託系の会社には多い印象なので、そこで面倒を見られますというのは強いですね。

山下氏:
目先のプロジェクトが忙しいと人を育てる時間がないというのはよく聞く話ですが、どこかの会社が育てないとゲームクリエイターがゼロから育ちませんので。幸いにも弊社はそれができる会社かなというところで、学生の方々にも魅力を感じてもらえるかと思っています。

――かなり育成が充実されているんですね。常に人を余らせていけないという課題が中小ゲーム会社にはあって、なかなか人材育成ができないのではと考えていましたが、オーツーに関してはそんなことはないと。

越田氏:
そうですね。とはいえ、あまり人材を余らせるわけにはいかないんですけど……(笑)ある程度未来がある状態で、次の案件では何人くらい必要かを計算して採用しているので、あまり余らせないようにはしたいとは思っています。あと、弊社にはpeakvoxがありますので、手が空けばオリジナル開発や基礎研究に取り掛かってもらうというかたちで、有効に余剰人材を活用しています。

中堅ゲーム受託会社の採用基準とは?

――それぞれの部署の採用において、志望書ではどういったところを見られていますか。

山頬氏:
デザイナーの場合はやっぱりポートフォリオですね。ご自分で作られた3DやUIのクオリティが一番の判断材料です。

3Dの場合だと、海外の方が描いたイメージボードなどを3Dで100%再現しました、というようなものだと弊社での実務と近しいので判断材料にしやすいですね。お手本どおりに作るっていうのは、ある意味ゲーム開発の一部ですので。

あとは、多少は口下手という人でも良いのかなぁ、とは思っています。プランナーとかはコミュニケーションが大きなウェイトを占めますが、デザイナーの場合はおしゃべりじゃなくても良いのかなと。和やかではあってほしいですけど(笑)

――ちなみに、3DモーションデザイナーやUIデザイナーのポートフォリオではどういった部分が気になりますか。

山頬氏:
モーションデザイナーからよく聞くのは、カメラアングルに凝った作品よりも、カメラを静止して、いかに滑らかに人間らしく、あるいはキャラクターらしく動かすかを見たいということですね。

――カメラを動かして格好良く見せた方が映像としては出来が良く見えますよね。

山頬氏:
映像としてはもちろんそうだと思います。ただ、モーションデザイナーとしては外連味のある映像ではなくて、じっくりとモーションを見させてほしいんですよね。キャラクターのアップばかりを撮っても全体の動きがわからないですし、普通のカメラアングルで全身を映したものがありがたいなと。

――なるほど、ほかにこういう人は見送りやすいということはありますか。

山頬氏:
外連味に通じるところですが、ものすごい自分を推してくる方は弊社だとちょっと見送られがちかもしれないです。

――えっ、クリエイターなら自分らしさがあった方が良いのではないですか。

山頬氏:
あった方が良いかもしれませんが、弊社は受託案件が中心なので……。自分のカラー全開で、UIにギラギラした目の痛い色を使ったり、ゴスロリ一辺倒のデザインだったり、ゲームには使えないだろうというものもたまにありますね。なので、受託中心の会社という前提も念頭に置いていただければと。

越田氏:
そういった方の場合、入社しても合わなかったり、こういうゲームは作りたくないからと離脱する人も稀にいますので、方向性はご理解いただきたいですね。

――プランナー部門はどうでしょう。

金山氏:
プランナーはやっぱり企画書ですね。ただ、最近特に学校で作った作品をそのままお送りいただくということが多くて、この人がどこの部分に関わったのかよくわからないことがあるんです。そうなるとちょっと判断が難しくて。あと、既存のゲームを焼き直しただけの企画書もさすがに難しいかなと。僕らは結構オリジナリティを重要視していまして、「この人は変わったことを考えているなぁ」とか、「この視点はなかったね」とか、こちらが見ても勉強になるようなものをいただけると非常に評価が高いですね。

――企画書は人によって書き方がピンキリですが、オーツーに受かりやすいプランナー募集向けの企画書はありますか。

金山氏:
僕らはゲームの形態に合ったフォーマットなのかという方に注目しています。1ページ目を見て気になった部分についての説明が次に書かれているかとか、プランナー的な視点で書かれているかも重要です。

――フォーマットはあまり関係なくて、ちゃんとメッセージ性があるかどうかということですか。

金山氏:
そうです。わかりやすく言うなら、企画書自体がひとつの作品として面白いかというところを重要視していますね。

越田氏:
企画力もそうですけど、資料として簡潔にまとめられている企画書は好印象ですよね。文字だけでダーッと書かれた企画書は読んだら面白い部分もあるんですけど、いきなりストーリーを書かれても……と。何を伝えたいのか、どこが売りなのかが、文章と絵でまとまっているものが良いかなと思います。

金山氏:
企画書って応募される方が思っている以上に、きちんと最後まで読んでもらえる機会は少ないんですよ。なので、最初で心をつかんで最後まで読ませる力がとても大事です。どうやって読んでもらうかっていうことも考えてみると良いかもしれませんね。あと、いざ読んでみたら「これあのRPGじゃん」となってしまうような、オリジナリティのない企画書も難しいかなと思っています。

――では、プログラマー採用はどういったところに注目されていらっしゃいますか。やっぱり実際に動くものが大事ですか。

越田氏:
動くものもわかりやすくていいですが、やっぱりソースコードの書き方ですね。

――越田さまはコーディング規約に厳しい方ですか。

越田氏:
ひとりで書く分には好きに書いているんですけど、ゲームは大人数で開発することが当たり前になっているので、企画書と同じようにほかの人が見ることを考えたコーディングであったりルールであったり、コメントだったりを意識してほしいですね。それで採用をふるいにかけることはないと思いますが、プログラマーとして働くようになってからでも役に立つ力じゃないかと思います。

――逆に、これをするとちょっと見送っちゃうなということはありますか。

越田氏:
新卒の方の場合なんですが、学校の与えられたものの中でしか作っていないようなものですね。同じ学校から何名か応募していただくと、これは学校で用意されたひな形だなという部分が自ずと見えてきます。そんな中で自分のシステムを組んでいる人を見ると、この子はできるんじゃないかなと良い判断材料になりますね。あと、シェーダーをかけたりネットワークコードを書けたりすると、さらに光るものがあるかなと。

――採用を取りまとめている山下さまの方から、一般的に採用されやすい傾向などは感じますか。

山下氏:
全職種の選考担当のコメントを見ているとおおむね今皆さんが仰ったようなところが判断材料になっていますね。補足すると、プログラマーはゲームエンジンや学校が提供してくれたライブラリを使っても構わないですけど、結局それがどういう動きをしているのか理解していないまま使っているのが見え見えだと、絶対的にNGな印象です。プランナーの場合は、良く学生さんで見られる傾向なんですが、企画書というよりも操作説明に終始してしまっている人ですね。そこじゃないんだよっていう。

一同:
(笑)

山下氏:
その先の売りはどの部分で、他のゲームと違うところはここですとか、それをまずアピールすることができていない人が多いです。グラフィックデザイナーはよりシンプルで、見た目ですぐわかります。面接のフェーズではやっぱり熱意ですね。本当に一緒に仕事をしたいとか、さっきお話しした面接で泣くような人であっても、ここで働きたいという意思がしっかりと伝わるのであれば、それはちゃんと汲むような採用を心がけています。なので、今まで採用してきた人たちは、現場に入ってもかなりモチベーション高く取り組んでくれています。

受託会社が提供するオリジナルIPはアイデア勝負の挑戦的ゲーム

――受託をしつつも、自社開発タイトルもあるんですよね。

越田氏:
はい、peakvoxというブランドです。peakvoxは弊社が2008年に立ち上げたオリジナルゲームレーベルです。当時、Xbox360の頃、Xbox Live Arcadeが流行り始めて、WiiにもWiiウェアが来るぞ、というムーブメントがありました。社内でもこれは絶対自社でもオリジナルタイトルを作るべきだという話になって立ち上がったのがpeakvoxです。iOS向けのゲームに始まり、Wiiウェア、DSiウェア、3DS向けのダウンロードソフト、PSHome、Switch、Steamと多岐にわたってダウンロードソフトを開発・販売してきました。

GOCCO OF WAR(Steam)。当時としては珍しい国産オンラインTPSだ

peakvox Escape Virus HD(Steam)。スネークゲームのようなサバイバーゲームのようなさくっと遊べるアクションゲーム。越田氏が生みの親。

peakvox Mew Mew Chamber(Steam)。ネコがやたらとかわいい3マッチパズル

peakvox Route Candle(Steam)。ロウソクに火をつけていくルートパズル

ちっぴーとのっぽー なかよしコンビのわくわく工場(Steam/Switch)。協力型組み立てアクションパズル。よゐこのインディーでお宝探し生活にも取り上げられたこともあり、なかなか売れたという。山頬氏が生みの親。

THE GENERAL SAGA(Steam/Switch)。仲間要素を取り入れたサバイバーゲーム。金山氏が生みの親。

越田氏:
企画は社員なら誰でも立案出来て、見込みがありそうなアイデアだったら試作へ進みます。企画に絵と音楽が合わさって、動いて初めてゲームの面白さが形になりますが、どれかひとつでもチープだと試作での判断が難しくなって、本制作にたどり着けなかったタイトルも少なからずありますね。今思い出してもちょっともったいなかったな、というタイトルもあるんですが、そこから練り直しても良い結果にならないというのも結構ありがちですね。

ちなみに、最初のコンセプトとインスピレーションどおりに試作を進めることができると、本制作もスムーズに進むことが多いです。といっても、結局開発って難産なんですよね。面白さを追求していくとやれることもかかる時間も青天井ですし、最適化やバグとの戦い、すぐに訪れるマイルストーンと、諸々大変ですね。特にPCゲーム開発は、専用機材が不要でPCのみでゲーム開発が出来て作りやすいのですが、いざデバッグのフェーズになると、途端に大変になります。社内にはかなりの数のPCがあるのですが、1台だけに極稀に起こるバグとか……もう泣けてきます。

――peakvoxの最新作である『THE GENERAL SAGA』についても教えてください。

金山氏:
『THE GENERAL SAGA』は、2025年の3月にリリースした作品で、ジャンルとしては『Vampire Survivors』に代表されるサバイバー系カジュアルアクションゲームです。このジャンルのゲームは、短時間で自分のビルドを作って時間いっぱい生き残ることを目指しつつ、失敗すると悔しくてついもう1回やってしまうという、リトライ性の高いゲームです。

本作は、ただ繰り返すだけではなく、リトライを歴史というかたちで残るということをコンセプトに、さらにJRPG風の要素を加えて世代交代風に見せていくという感じで、自分の歴史を作るサバイバー系カジュアルアクションとしてまとめさせていただきました。ただ、コンセプトや世界観、2Dドットキャラクターといった部分に一定数の評価をいただけた印象ですが、ちょっとゲームが尖り過ぎていたかなというところもありまして。

――たしかに、尖ったゲームでしたね。

金山氏:
仲間を集めていくサバイバー系で、仲間の使い方がすごい重要なゲームなんです。プレイヤーの皆さんには仲間たちをうまく使って、何よりもパーティーの中心にいるジェネラルを守り抜いてもらいます。で、周りの仲間たちはあくまでもその目的を達成するための駒という考え方で、そのマインドでプレイしてもらえるといろいろな遊びの幅が増える作品になっているんですが……、皆さんやっぱり仲間を死なせたくないようでして。こちらの意図がうまく伝わらなかったなというのが正直なところです。発売後はいただきましたご意見を参考にさせていただきQoL改善のアップデートやキャラクターの追加を行いました。

――では最後に、ゲーム業界がどんどん環境が変わっている中で、オーツーの開発現場としてはどういった方向性で生き残っていこうと考えていますか。

越田氏:
弊社で働きたいと応募していただく方々からは、長年さまざまなジャンルのゲームを作っている会社で、なおかつ自社のオリジナルブランドであるpeakvoxの存在も魅力だという言葉をいただいています。ですので、受託案件と自社オリジナルタイトルのどちらも大切にして、ジャンルに囚われない開発をおこないつつ、引き続き人材を成長してさらにスタッフを増やしてという、土台作りをしっかり続けていきたいと思います。

あと、今の時代は世界的にもインディー開発者が爆増しています。peakvoxはその中に埋もれないようにしていきつつ、少し尖ったものだったり新しいものだったり、光っている部分がある作品を産み出し、世に出し続けたいと熱く強く思っています!

――今後の活躍も期待して注目していきます。ありがとうございました。

[撮影・聞き手・編集:Ayuo Kawase]
[執筆・編集:Koutaro Satou]

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