『Garry’s Mod』を継ぐゲームエンジン「s&box」がオープンソース化。ゲームを作って共有もできるプラットフォーム、まるごと公開
Facepunch Studiosは11月26日、ゲームエンジン「s&box」をMITライセンスでオープンソース化したことを発表した。

Facepunch Studiosは11月26日、ゲームエンジン「s&box」をMITライセンスでオープンソース化したことを発表した。同エンジンは現在、開発者向けにDeveloper Previewが公開されている段階だ。「s&box」公式WebサイトにSteamアカウントでログインすることで入手可能となっている。
「s&box」はゲームエンジンであり、ゲーム配信/共有プラットフォームである。なんでもできる自由なサンドボックスゲーム『Garry’s Mod』や、サバイバルクラフトゲーム『RUST』などで知られるFacepunch Studiosが開発を進めており、「s&box」は『Garry’s Mod』の精神的後継作と謳われている。同スタジオが持ち味とする自由度がゲームの垣根を飛び出し、ゲーム開発そのものにまで発展したかたち。ゲームを開発して共有し、そのままプレイできる環境としては、Roblox社の『Roblox』などが近いと言える。なお「s&box」の発音もそのまま「サンドボックス」だ。

「s&box」内でユーザーは、公開されているゲームをインストールすることなしに、クリックするだけでプレイできる。また、ゲームを作って公開することも「s&box」内で可能となっている。使用するプログラミング言語はC#で、変更が即座に反映されるホットリロード機能を搭載。マルチプレイの機能もエンジンに組み込まれているため、特別な設定は必要ないとされている。そのほか、マップを作るHammerエディタ、ビジュアルスクリプティングに用いるAction Graph、シェーダー作成用のShader Graphなど、数多くの開発ツールが用意されている。
今回の「s&box」のオープンソース化により、ユーザーは自由にソースコードを閲覧・変更・複製することができるようになった。「s&box」を利用して自作のゲームを開発することはもちろん、「s&box」を土台にして独自のゲームエンジンを開発することもできるのだ。コミュニティに貢献したい場合は、ゲームエンジン自体の改善や機能拡張に取り組むのも良いだろう。
ただし今回のオープンソース化の範囲には、現在「s&box」が低レイヤー部分に利用している「Source 2」は含まれていない。「Source 2」はSteamを運営するValve社が開発したゲームエンジンで、『Counter-Strike 2』などのゲームに使われているものだ。当然、Facepunch Studiosがオープンソース化できるようなものではない。オープンソース化を知らせる告知の中では、「Source 2」がオープンソース化されるかどうかについてはValve社の判断に委ねられるとしている。

また、同告知内ではオープンソース化の理由について、次のように語られている。
「ゲームエンジンを開発してロイヤリティなしで無償で配布し、そのコードのすべてをオープンソースで公開するのは、ビジネス的な観点で見ると奇妙に映るかもしれません。しかし我々は自分たちが作っているものを愛するオタク集団です。作ったものを皆さんの好きなように使って欲しいし、その機会を提供したいのです」(筆者拙訳)
こうした説明の通り、「s&box」を利用するにあたって料金は発生しない。本稿執筆時点でも、「s&box」内で多くのゲームが開発・共有されていることがうかがえ、ライセンス料の支払いなしで収益化が可能となっている。ただしSteamなど他のプラットフォーム向けの展開については、先述の通り「Source 2」を利用しているため、2025年10月時点で交渉段階にあることが伝えられている。将来的にはゲームをエクスポートしてSteamでリリースできるようにする予定であり、その際にもロイヤリティは発生しないとのことである。今後の交渉の進展が期待される。


ちなみにFacepunch Studiosは「s&box」にまつわる財務状況についてグラフを公開している。「s&box」内で帽子などのコスメティックアイテムを販売しており、しっかりと収益をあげていることがうかがえる。ユーザーが作成したゲームや承認されたコスメティックアイテムに対して支払いがおこなわれていることも読み取れるため、実際にクリエイターも収益をあげていることがわかる。
「s&box」で作ったゲームが今後Steamで販売できるようになるかどうかは未知数ながら、現在すでに多くのユーザーがゲームを作り、シェアして、一緒に遊んでいるようだ。今回のオープンソース化によって開発が加速し、「s&box」が正式に公開される日もそう遠くはないのかもしれない。




