Ubisoftが生成AI実験プロジェクト「Teammates」を発表。AIチームメイトと“四人五脚”でともに戦うFPS、音声コミュニケーションにも対応
Ubisoftは11月22日、生成AIを活用してNPCを本物の味方のように動かす実験的プロジェクト「Teammates」を発表。本プロジェクトでは、AIとコミュニケーションを取りつつ協力するFPSとなるようだ。

Ubisoftは11月22日、生成AIを活用してNPCを本物の味方のように動かす実験的プロジェクト「Teammates」を発表した。現在クローズドな環境でプレイテストがおこなわれている段階にある。
「Teammates」は実際にプレイできるFPSゲームで、AI駆動のNPCや音声アシスタントが状況の変化に対応しながら動作しているという。シングルプレイのゲームでありながら、言葉によるリアルタイムなやり取りでNPCと協力することができ、あたかも本物の人間とともに攻略しているかのように進めていくことができるようだ。ゲームの舞台はディストピア的な未来。プレイヤーはレジスタンスの一人として、行方不明の仲間5名を探し出すという任務を遂行することになる。

ゲーム内では音声アシスタントJaspar、2人の味方NPCであるPabloとSofiaと協力することになるようだ。Jasparは敵やオブジェクトのハイライト表示、ストーリーや任務についての詳しい説明、リアルタイムなゲームの設定変更、ゲームの一時停止といった機能を、音声指示によりおこなう。また、Jasparはただのアシスタント役として機能するだけでなく、出来事に対してリアクションを取るなど物語上のキャラクターとしても動作する。さながら本物の音声ガイド役というわけだ。
PabloとSofiaは、プレイヤーと協力して戦うNPCである。ゲームの序盤では、声で指示を出すという仕組みをプレイヤーに体験してもらうため、プレイヤーは武器を所持していない状態で敵と遭遇することになる。PabloとSofiaに応援を頼み、敵の位置や攻撃すべきタイミングなどを的確に伝えることで攻略しなければならないのだ。プレイヤーが武器を入手した後は、まるで協力マルチプレイの作品で遊んでいるような感覚になることだろう。
これらの音声アシスタントやNPCとは、音声だけでなくチャットを通じたやり取りも可能となっているようだ。指示出しやゲームに関する質問といった攻略上で必要なやり取りはもちろん、ストーリーに関する会話も可能。同じ舞台でありながら、プレイヤーによって交わす会話は異なるものとなり、独自の体験が得られるとのこと。
UbisoftのCEOを務めるYves Guillemot氏は、11月21日の決算発表会にて「生成AIはゲーム業界にとって、2Dから3Dへの移行に匹敵するほどの革命である」と述べていた(Game File)。この「Teammates」で使われている技術が、Yves氏の語る「革命」にあたるのだろう。ちなみにUbisoftは11月14日に、2025年〜2026年度上半期決算の発表を土壇場で延期していた(関連記事)。業界内では延期の理由について何か大きな発表が控えているのではとも噂されたが、実際には「Teammates」によるものではなく、国際財務報告基準(IFRS)に沿うかたちで売上計上方法などを見直していたためとのこと。
Ubisoftは以前からゲームにおける生成AI活用の研究開発を進めていた。2024年3月のGame Developers Conferenceでは、対話可能なNPCの研究開発「NEO NPC」のプロトタイプを発表。ただ、NEO NPCがおこなう自然言語でのやり取りは、静的な環境内に留まっていた。いっぽう「Teammates」では、動的に変化するゲーム内の状況に対応してやり取りがおこなわれる。こうしたやり取りはGoogle Geminiと自社製ミドルウェアの組み合わせによって実現しているようだ(Game Developer)。

現在「Teammates」の開発チームは80名いるとのことで、NEO NPCが発表された当初の25名から大幅に増加している。開発チームは昨今の生成AIに対する批判的な意見を認識しているとしつつ、データ&AIディレクターのRémi Labory氏は「AIをクリエイターに取って代わらせることが目標ではない」と強調している。世界観やストーリーから外れない範囲でNPCが即興で動き、決められたストーリーを辿るのではなく、プレイヤーが中心となってストーリーを展開させていく。そうした新技術による新しい体験の提供が目指すところのようだ。
「Teammates」は現在クローズドプレイテストの段階にあり、フィードバックを受けながら開発が進められているという。今後、より詳しい解説をおこなう動画を公開予定とのこと。Ubisoftが示すゲームの未来の一つの可能性に、引き続き注目したい。




