デジタル竪琴、負けず嫌いなコントローラなど、2017年のGDCでプレイアブル出展される発想力豊かな作品たち

2017年のGDCに出展されるゲームのラインナップが発表された。デジタル竪琴、プレイを妨害するコントローラ、ターンテーブルやランニングマシンを使ったゲームが登場するなど、E3、PlayStation Experience、東京ゲームショウといったゲームイベントとはまた一味違う実験的かつユニークな作品たち。

2017年2月27日から4日間にかけて開催されるゲーム開発者向けのイベントGDC(Game Developers Conference)。このたび当イベントで出展されるゲームのラインナップが発表された。デジタル竪琴、プレイを妨害するコントローラ、ターンテーブルやランニングマシンを使ったゲームが登場するなど、E3、PlayStation Experience、東京ゲームショウといったゲームイベントとはまた一味違う実験的かつユニークな作品が選ばれている。いずれもコントローラという概念、そしてプレイヤーとゲームとのインタラクションを拡張するような試みばかりである。本稿ではその一部を紹介していく。

 

レーザー弦で竪琴を弾く『Orpheus Quest』

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一風変わったリズムゲーム『Orpheus Quest』では竪琴状のコントローラを使用する。弦は実物ではなくレーザー弦となっている。プレイヤーは画面上に表示されるノーツに合わせて竪琴を奏でていく。画面は上下に分割されており、画面下部でノーツが流れ、画面上部にプレイヤーキャラクターである竪琴の名手オルフェウス神が映る。竪琴の音色で凶暴な獣を眠りにつかせ、黄泉の世界からの帰還を目指す。

開発はLaura Palavecino氏、Raul Palavecino氏、Anibal Hormeche氏の3人で進められており、Unityエンジンを活用している。すべての要素はオルフェウス神をモチーフとしており、楽曲についてはORPHÉE AUX ENFERS(Orpheus in the Underworld)というオペラ・ブッフ(一種の喜歌劇)で使用されたものを用いている。ただし風刺として機能していた劇とは異なり、本作では音楽を通じて表現される愛の力をテーマとしている。

 

負けず嫌いなコントローラ『Victor the Loser』

負けず嫌いなアーケードコントローラ『Victor the Loser』ではプレイヤー対AIの格闘ゲームをプレイし、AIが負けそうになるとコントローラがチートし始める。具体的にはプレイヤーが自由に操作できないようボタンを押さえ込んだり、ジョイスティックを制御不能にするといった妨害行為に走る。画面に集中できないよう車のワイパーのように右へ左へと旗を振り始めることも。

Victorの妨害行為は負けが続くに連れてエスカレートしていく。つまり「程よく負けてあげる」という大人な対応が求められるのだ。プレイヤー同士の対戦でも、勝利よりも人間関係を優先するため、わざと負けたことのある方もいるだろう。不思議と人間味のある『Victor the Loser』はChuck Kuan氏、Chao-Hui Tu氏、Yumeng Wang氏、Magnus Pind氏、Xianghan Ma氏の5人で進められているプロジェクトである。

 

ターンテーブルを回してシューティングする『vinylOS』

vinylOS』はゲームコンソールでありながらインスタレーション・アートでもある。使い方としては、ターンテーブルの真上にプロジェクターを設置し、レコード上に映像を映し出す。ターンテーブルはインプット用の装置でもあり、スクラッチしたりスピンすることでゲームをプレイできる。ゲームに限らずとも、さまざまなインタラクティブ作品に応用できる可能性を秘めている。

上記のサンプル動画ではシューティングゲームをプレイしており、レコードを回すことで自機を移動、スクラッチすることで銃弾を撃つことができる。開発はJonas Bo氏とゲームデベロッパーのJosef Who?氏が手がけている。

 

トレッドミルを使って床を這う『Zombie Crawler』

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Zombie Crawler』は人間ではなくゾンビを操作するアーケードゲームである。トレッドミル(ランニングマシン)をコントローラにするという斬新なアイデアから生まれている。プレイヤーは地面を這うゾンビとして両腕でトレッドミルを動かしていく。目的は廊下の奥にいる生存者の元に辿りつくことだ。トレッドミル上で前に進めば画面上のゾンビも両腕で前進する。トレッドミル自体を左右へかたむければ人間の銃撃をドッジする。

開発にはGameMaker: Studioが利用されているという。プロジェクトメンバーはAnders Karlsson氏、Ida Andersson-Junkka氏、Louise Fändriks氏、Linda Thern氏、Erik Nord氏、Adrian Lavrell氏の6人である。

 

砂場をいじって地形を形成する『Sand Garden』

Image Credit: Psylight
Image Credit: Psylight

これぞ未来の砂場遊び。文字通りのサンドボックスゲームだ。箱に詰められた砂がインプット用のデバイスとして機能している。砂場をいじることで画面上の世界も地形を変えていく。仕組みとしては、Xbox Kinectを使って砂場の深度データを読み込みゲーム上のマップに反映する。そこからプロジェクターを介して地形に合ったカラーを砂場に投影している。

『Sand Garden』の世界では複数の村落が存在しており、彼らを繁栄へと導くことがゲームの目的となっている。山地での生活に適した村落であれば周辺に山をつくり、平地に適した村落であれば砂を平らにしてあげる。複雑な操作が必要のない本作は小さな子供たちでも楽しめるだろう。開発は米国のDigiPen工科大学の学生チーム「Psylight」によるものだ。

今回紹介しきれなかったが、出展リストには他にも興味を引くタイトルがずらりと並んでいる。筒状のシリンダーにつけられた600個のLEDライトを戦場と見立てて、360度の戦いを繰り広げる『Cylindrus』、バーチャルペットと綱引きをする『Doggy Tug-Of-War』、表情から人間の感情を読み取る『Emotional Fugitive Detector』、ダンボール箱の中に入り動かすことでゲーム内の宇宙船を操作する『Space Box』など、どれも刺激的なアイデアかつ幅広い世代に向けて作られたプロジェクトばかりである。知識の共有、そしてゲーム開発における次の一歩を考えるGDCらしいラインナップといえるだろう。

Ryuki Ishii
Ryuki Ishii

元・日本版AUTOMATON編集者、英語版AUTOMATON(AUTOMATON WEST)責任者(~2023年5月まで)

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