「新作ゲームをどんどん買う人」「買わずに基本プレイ無料ゲームを遊び続ける人」で二極化が進んでいるとの米国アナリスト分析。“格差”は遊ぶゲームにも反映

市場調査会社Circanaのアナリストが米国ゲーム市場の「二極化」について見解を述べ、話題となっている。

市場調査会社Circanaのアナリスト、Mat Piscatella氏がポッドキャスト番組のインタビューにて今年のゲーム市場などに関するさまざまな見解を解説。このなかで同氏は「市場の二極化」について説明しており、GamesRadar+などが報じて話題を呼んでいる。

今回Kyle Bosman氏のポッドキャスト番組に出演したPiscatella氏は、今年のゲーム業界の動向について説明。このなかでPiscatella氏は今年起こった大きな変化のひとつとして、ゲームの消費において富裕層と貧困層が二極化する「K字経済」が発生しているとの見解を述べている。同氏は、『Ghost of Yotei(ゴースト・オブ・ヨウテイ)』のようないわゆるフルプライスである70ドル(約1万800円)規模のゲームはお金に余裕のある層によって買い支えられているとの考えを説明。一方、あまり裕福ではないプレイヤーはフルプライスの新作タイトルを購入せず、基本プレイ無料型タイトルや低価格帯のゲームに移行しているという。

Piscatella氏は、この二極化の背景には、食料品や住居費といった物価の上昇による、人々の支出行動の分離があると述べている。米国では数か月前から日常における出費が大きく増加しているものの、富裕層はまるでそうした価格の変動がないかのように買い物を続けているという。そのためそうした層はたとえフルプライスゲームであっても従来どおり何の問題なく購入し続けており、新発売されたNintendo Switch 2や値上げ後のPS5も買い続けているとのこと。

一方で同氏によれば「K字経済」における貧困層にあたる層は、食料品の購入や家賃の支払いさえ難しくなっており、支出パターンがかなり極端に形を変えているという。そのため同氏は自身が考える仮説として、新作ゲームの購入よりもサブスクリプションサービスによりお金をかける傾向が生じていると述べている。また同氏は基本プレイ無料タイトルが好まれている点にも言及し、ユーザー制作コンテンツがさまざま展開されている『フォートナイト』『Roblox』を例に挙げている。

Hyper enthusiast, price-insensitive players are really keeping things going, especially in the non f2p gaming space.According to Circana's Q3 2025 Future of Games, only 4% of US video game players buy a new game more often than once per month, with a third of players not buying any games at all.

Mat Piscatella (@matpiscatella.bsky.social) 2025-10-02T16:54:18.096Z

実際、Piscatella氏は過去に、米国では月に1本以上の新作ゲームを購入するユーザーが14%にとどまるというデータを示していたことがある。この際には新作ゲームの購入頻度が半年に1本以下のユーザーが63%におよぶことも示されていた。少なくとも米国では、“新作が出ればとりあえず買う”というゲーマーばかりではなくなっているのだろう。

とはいえPiscatella氏は今回、フルプライスゲームでも高額なゲーム機・デバイスであっても、富裕層であれば生活費高騰の中でも変わらずに買い続けているとの見解を述べているかたちだ。この消費行動の格差により「静かなインフレ(quiet inflation)」が進んでいると述べている。同氏いわく「静かなインフレ」は特にゲーム機のような、高額かつ頻繁に購入されるわけではないカテゴリーにおいて懸念される傾向とのこと。同氏は、購入者が“値段にこだわりのない富裕層”に限られると「昔と比べての価格の増減」が購入の際に考慮されなくなっていくと説明。先日値上げが実施されたXbox Game Passも例に挙げつつ、じわじわと値上げされたり、あるいは価格は据え置きでも内容が削減されるシュリンクフレーションが発生したりしても誰も気づかなくなる可能性に危機感を示した。

そして同氏は、もしも「静かなインフレ」が進行すれば、元に戻らない可能性もあるとの考えを述べる。これまではゲーム機といえばライフサイクルの中でどんどん価格改定で定価の値下げが実施されるものであったが、「静かなインフレ」の中ではメーカー側がゲーム機の定価の値下げの必要性がないことを学ぶのではないかと言及。今後の方針として確立されることに消費者目線で警鐘を鳴らしているわけだろう。

ちなみに日本においては、2024年に株式会社HIKEの猿楽庁が実施した「コンシューマゲーム市場におけるプレイ状況及びプレイ環境にまつわるユーザー調査」にて調査対象者が過去1年間にどのくらいのゲームを購入・入手したかの回答が集計されていた(関連記事)。この調査ではサブスクリプションサービスで入手した本数も含まれていたものの、年間で1~3本とした回答者が59%、4~6本とした回答者が21%であった。そして1年間あたりのコンシューマゲーム購入額は1万円以下が53%、1万1円~3万円が27%におよび、日本においても定価1万円級のフルプライスの新作ゲームを年間何本も購入する層が少なくなっていることがうかがえる。

そうしたなかで、今回Piscatella氏が米国で生じていると述べた「K字経済」が日本のゲーム市場においても発生しているかどうかは不明ながら、その原因とされる物価高騰は対岸の火事ではないだろう。同様の傾向が続けば日本でも「ゲーマー間の格差」が生じる可能性はあり、その点でも興味深い問題といえそうだ。

Motoharu Ono
Motoharu Ono

隠れた名作に目がない一方で、話題作にもすぐ手を伸ばすミーハー気質のゲーマー。『ゴースト・オブ・ツシマ』では本編よりもマルチプレイにハマり、アーマードコアの新作を心待ちにしている。

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