『アークナイツ:エンドフィールド』第二回ベータが実施される、それはそれとして『アークナイツ』について語らせてほしい。身近な社会問題を通して世界を救うゲーム
『エンドフィールド』をプレイする上では『アークナイツ』の知識は必須ではない。しかしながら、関連作である以上は、フレーバーは存在する。『アークナイツ』を遊んでおけばより楽しめるのは間違いない。ならば筆者としてはプレイしたいその背中を押そう。

『アークナイツ:エンドフィールド』(以下、エンドフィールド)の第2回ベータテストが11月28日に実施されることが発表された。現在参加者を募集中だ。そもそも『アークナイツ』を遊んだことがないものの『エンドフィールド』が気になる人もいるだろう。となれば、『アークナイツ』を遊んでみることを検討するかもしれない。ファンである筆者としても、『エンドフィールド』といっしょに、『アークナイツ』をプレイして、2つの物語の関係性を楽しんでほしいと考えている。
結論からいうと、『エンドフィールド』をプレイする上では『アークナイツ』の知識は必須ではない。しかしながら、関連作である以上は、フレーバーは存在する。『アークナイツ』を遊んでおけばより楽しめるのは間違いない。ならば筆者としてはプレイしたいその背中を押そう。というか、『エンドフィールド』の展開にめでたく動きがあったので、それはそれとして『アークナイツ』について語らせてくれ、というのが本稿の趣旨である。
『アークナイツ:エンドフィールド』(以下、エンドフィールド)は『アークナイツ』の関連作品となる基本プレイ無料の3Dリアルタイム戦略RPG。対応プラットフォームはPC/スマートフォン(iOS・Android)/PS5となっている。キャラクター同士のリアルタイムな連携を活かした戦闘と、工場経営シミュレーション、異なるジャンルのシステムが両方入っているのが特徴だ。『エンドフィールド』の物語は『アークナイツ』の未来の世界が舞台で、プレイヤーは工業会社「エンドフィールド工業」の管理人として、仲間とともに惑星「タロⅡ」の開拓を進めながら、母星である「テラ」との繋がりを再構築すべく奮闘する。
『アークナイツ』ってどんな話?

では『アークナイツ』はどういった物語なのか。それをシンプルな言葉で表現することは難しいが、強いて言うならば「歴史物語」もしくは「哲学的SF」だろう。たとえるなら、「三国志演義」や日本で言う「大河ドラマ」のような、コミュニティ群の盛衰を描いた物語をベースに、「インターステラー」や「虐殺器官」というような、ヒューマニズムと文化を主題としたSF作品の要素が組み込まれている作品である。
宇宙滅亡の危機に取り囲まれているような世界のなかで、争い続ける人類文明が存続するためには何をすればよいのか。どうすれば種族や文化の垣根を超えて団結できるのか。そもそも団結するとは何か。コミュニティとは、アイデンティティとは何か、というテーマを約6年ほど描き続けているゲームである。よく広告に掲載されている「新資源によってもたらされた不治の病と戦う」というコピーは、本作において、数ある宇宙滅亡の危機のうち1つを示す内容に過ぎない。

こう聞くと「難しい、ややこしい話だ」と思う人も多いのではないだろうか。だが実際のところ、描かれるのはかなり身近な話で共感しやすい内容である。たとえば、直近のストーリーで描かれたのは「相互理解が自動で可能になったら世界は良くなるのか」「信仰って洗脳?」「移民はどうすればその国の人間になれるのか」「生命として存在するとは何か」といった話だ。本作はこうした諸問題に対し、運営型というゲームデザインを利用することで1つのコミュニティに関する物語を時間をかけて何度も展開。コミュニティが抱える問題が改善され続けている、という描写を採用している。基本的に政治的な問題において、達成すればすべてが解決される目標は存在しない。事象ごとの関係性を少しずつ解きほぐし、時間をかけてより良い形に再構築する必要がある。『アークナイツ』は買い切り作品ではなくサービスとしてゲームを提供し続けることにより、この表現を可能にしている。つまり、『アークナイツ』は「身近な社会問題に対処することは世界を救うことにつながる」という話を約6年語っているゲームなのだ。

そして、社会問題に対処するためのアプローチに「世代交代」を採用しているのも特徴である。若い人間が古き伝統を引き継ぎつつも、それを今に適した形に改良し、現状を改善していく。作中のキーキャラクターたちには「師匠」や「未練を残した者」が寄り添い、思いを託していく。逆に敵対者であったり、失敗者は後継者をとらず、すべてを抱え込み自滅しがちである。基本的に次世代の人間は差別や偏見を超越することができ、たとえ親のかたき、友のかたき、先祖のかたきと共に肩を並べることになったとしても、共に戦うことができる。そうした世代交代の果てに、すでに滅びたとされる旧文明と、いまを生きている現文明による世代交代劇がある。

こうした表現に説得力を持たせているのが、歴史の設定と時間経過である。本作には現実をモデルにした架空国家群が存在しており、それぞれに歴史と文化が存在する(いわゆる原始時代より前からの歴史的設定や、暦が存在したりするこだわりが面白いところである)。これによって、社会階層の分断や差別といった問題が発生する理由にリアルな説得力を持たせている。また、本作に登場するキャラクターの多くは新資源に由来する不治の病を患っているほか、種族によって寿命が異なる。作中時間が経過するほど、各々成長が観られるとともに、死期を悟るかのような、自身の生き様を誇るような面構えになっていく。『アークナイツ』から100年以上が経過していると予想される『エンドフィールド』の時代ともなれば、すでに故人となっている人物もいるだろう。時間を設けることで、キャラクター自体により没入感を覚えることもできるわけだ。
総じて、『アークナイツ』は「無敵の人」や「差別」など身近な社会問題に対し世界規模で長い年月をかけアプローチを行うことで、人類文明の存続を目指す物語なのだ。そしてこのテーマは、『エンドフィールド』にて描かれる内容と地続きだと言える。存続に成功した人類文明はやがて外宇宙に足を伸ばし、なおも社会問題と向き合いながら、時間をかけて惑星開拓を進めていくのである。
『アークナイツ』をプレイしておくと『エンドフィールド』の何が楽しめるの?

そして、『アークナイツ』と『エンドフィールド』のつながりは背景設定にとどまることはない。これまでの物語表現をみる限り、『エンドフィールド』は『アークナイツ』の延長線上にある作品である。いわゆる続編のように、作品ごとの隔たりが存在するのではなく、『アークナイツ』の第X章として、歴史の1ページとして、『エンドフィールド』があるという印象だ。
ゆえに『アークナイツ』をプレイしておくと、サービスを運営する上で伴う時間経過を活かした、壮大な物語体験を得ることができる。『アークナイツ』に登場したプレイアブルなキャラクターがプレイヤーと共に成長し、命をまっとうしたのち、彼らが世界に残した痕跡までを一貫して体験することができるのだ。
たとえば、『エンドフィールド』の物語設定に関して「スターゲート」の存在がある。これはいわゆる空間をワープする装置であり、主人公たちはこれを利用することで、作中舞台に到着したという背景がある。そして、この「スターゲート」が実用化するまでの経緯については『アークナイツ』の高難易度ゲームモードのクリア報酬として語られている。プレイヤーが努力して勝ち得た物語が、新作の物語に影響を及ぼしている。


『エンドフィールド』の「再旅者」という設定も同様だ。これは大まかに言うと『アークナイツ』における特定のキャラクターが、クローンのような形で別人として『エンドフィールド』にて登場するという内容である。つまり、『アークナイツ』を事前にプレイしておくと、彼らのオリジナルな存在と共に攻略を行った経験を持ちながら、再び出会い冒険するという物語体験を得られる。
このほか、作中の重要な局面で『エンドフィールド』の舞台に関する言及があったり、「生息演算」という『エンドフィールド』のプロトタイプとも形容できるコンテンツもある。このように、両者は単なる設定上のつながりだけではなく、プレイ経験によって結ばれる可能性を秘めており、この関係性を構成する「『アークナイツ』から『エンドフィールド』に向けてリアルタイムに物語を紡いでいる」感覚の魅力は筆舌に尽くしがたい。そのため、『エンドフィールド』のプレイを検討している人にはぜひ、『アークナイツ』もプレイして、物語を体験してほしいと考えている。

とはいえ、『アークナイツ』は約6年前にリリースされた「古い」ゲームである。興味を持ったとて、いまプレイして楽しめるのか不安に思っている人もいるだろう。しかし心配は御無用。『エンドフィールド』が3Dアクションと工場経営の融合という奇異なゲームデザインを採用しているように、『アークナイツ』もまた、タワーディフェンスゲームであることを活かしながら、常にさまざまなコンテンツ制作や機能改善にチャレンジしているゲームである。ゆえに、いまプレイしても悪い意味での古臭さはまったく感じることがない。快適なプレイに必要な課金要素についてもリーズナブルな範疇に収まっている印象だ。くわしくはこちらの記事を参照してほしい。
一方で『アークナイツ』の攻略はプレイヤー個々人のスキルへ非常に依存しており、攻略に必要な育成に関しても、課金抜きでは時間がかかる。攻略の報酬となる物語についても膨大で、読み切るために時間がかかる。『エンドフィールド』に関する内容は『アークナイツ作中の核心部にまつわる内容なため、正直なところ到達するのは大変である。
筆者としてはゆっくりプレイしてほしいが、そういうわけにはいかない人もいるだろう。また、そもそもゲームを複数本、並行してプレイする余裕がない人もいるのではないだろうか。そうした場合には『アークナイツ』のチャプター1(0章~8章+サイドストーリー「闇夜に生きる」)が映像化されたアニメをおすすめしたい。全26話で構成され、各配信プラットフォームで配信中だ。
アニメでは主に「源石(オリジニウム)」「鉱石病(オリパシー)」に関する設定や、世界にはびこる社会問題の一端が描かれるほか、『エンドフィールド』は『アークナイツ』から社会情勢がマシになった世界であるため、アニメの中で差別を受けている種族が『エンドフィールド』では差別されていなかったり、作中人物の子孫とみられるキャラクターが登場する。両作品間に共通するものやそうでないものを発見してみるだけでも十分楽しめるだろう。アニメ自体のクオリティも高い。
作品の初報が出てから今回の第二回ベータテストに至るまで、すでに3年以上が経過し、ようやくリリースの目処が立ったように思える『アークナイツ:エンドフィールド』。ベータテストにチャンレジする前に、サービスが正式リリースされるまえに、ぜひ『アークナイツ』をプレイしてみてはいかがだろうか。沼どころか人を溺れさせる洪水のような物語の魅力と、やりこみ満載なゲームプレイがあなたを待っている。




