珍種メトロイドヴァニア『THE GOOD OLD DAYS』は周回するほど“味が濃くなる”。「借金返済ゲーム」だと思ったら、“死”すらもコレクションする収集ゲームだった

本稿では、『THE GOOD OLD DAYS~冒険団ヌーギーズの大冒険~』をプレイした感想をお届けする。“噛めば噛むほど味の出る”ような魅力が詰まっている。

パブリッシャーのGRAVITYは10月23日、ヨコゴシステムズが手がける『THE GOOD OLD DAYS~冒険団ヌーギーズの大冒険~』をリリースした。対応プラットフォームはPC(Steam)/Nintendo Switch

『THE GOOD OLD DAYS~冒険団ヌーギーズの大冒険~』は、4人組の少年冒険団を主役とするメトロイドヴァニア作品だ。地下に広大に広がる複雑なダンジョンを探索して行動範囲を広げながらお金を集め、冒険団メンバーのひとりであるショーンの父が残した3万ドルの借金を返済することが目的となる(関連記事)。

そんな本作は、19XX年を味わえるノスタルジーな世界観や雰囲気を特色として前面に打ち出しており、オマージュやパロディも多く存在する。しかし本作の魅力はそうした懐かしさだけでなく、“クリア回数”すらも周回要素のひとつとなる、ゲームプレイの作りこみにも存在していた。本稿では、メトロイドヴァニア素人であり90年代の映画好きでもある筆者が本作をプレイしたレビューをお届けする。

※本稿はメーカーより提供いただいたSteam版に基づき執筆している。

試行錯誤を活かせるたっぷりの探索時間

本作のプレイアブルキャラクターは4名存在する。少年冒険団ヌーギーズのメンバーであるショーン、フーディ、ブルース、ドクのうち、中心人物となるのは最初から操作可能なショーンだ。彼は爆弾を扱うことができ、ドクロのマークのついた扉の前で使用することで、中の宝や鍵を取り出せる。

このシステムと、「ヌーギーズ」というネーミングからすぐに察せられるかたもいるのではなかろうか。これは、映画「グーニーズ」を基にしたファミリーコンピュータ向けソフト『グーニーズ』にもあったゲームシステムのパロディであると思われる。幼少の頃プレイした際には、同作はかなり難しく感じられたことを思い出す。そんなことも懐古しつつ、さっそく借金返済のための探索をスタートした。

本作では探索中、現実時間と同じ速度でゲーム内時間が進行。ニューゲームは必ず午前10時に始まるようになっており、日付変更までに所持金を3万ドル以上にして取り立て屋に話しかければクリア条件は満たされる。また、体力がゼロになって力尽きるとゲーム内時間が瞬時に3分経過するペナルティも存在。とはいえ、ざっと14時間ほどは探索ができる計算である。

そう思いゆったり構えてスタートしたが、地下にバラバラに隠されている3人の冒険団メンバーのうち、ひとりたりとも救出できないまま無情に時間が過ぎていく。本作では、冒険団メンバーそれぞれが固有のアビリティとステータスを持ち、適宜キャラクターをチェンジしながら探索していくことになる。ショーンで行動できる範囲はすべて探索し尽くしたと思っていたのに、2人目のキャラクター「フーディ」のところへ到達できない。セーブポイントでゲーム内時間を進行させ、時間による変化が起こらないか試してみたりもしたが、無為に時間が進むだけだった。

マップではフーディが見えているのにたどり着けない

しばらく彷徨ったのち、ショーン自身が設置した爆弾を踏みつけて高く跳べる仕組みを活用していなかったことに気付いた。「あのちょっと高くて届かない場所には、ほかのキャラクターを救出してから行けるようになるのだろう」と、メトロイドヴァニアにおいて、探索可能箇所は新要素の解放とともに広がるという思い込みが災いした。最序盤で躓いたかたちだが、多くある探索時間を費やし、“ひらめき”も経て急激にゲームプレイが進み始めた。

「豊富なエンディングを見たい」という好奇心がゲームプレイを加速させる

その後はダンジョン内を歩き回ったり時間を進めたりし、思わぬ出会いにも遭遇した。時間をたくさん消費した結果として、特定時間以降に登場するNPCにすぐに会えることになったのだ。本作のダンジョン内では、所定の位置で冒険団メンバーを救出できるだけでなく、あちらこちらで奇妙な大人NPCと遭遇することがある。またそこに、ゲーム内時間が関係してくるケースもあるのだ。比較的浅い層にいるキースというNPCは「出現条件」のある勝負師で、2つのサイコロを使ったHIGH&LOWのギャンブルを持ちかけてくる。

借金返済のためにどのようにお金を工面するのか、その手段は問わないと言われているので、筆者はひとまず、キースとのHIGH&LOWだけで3万ドル稼いでみることにした。本作はマルチエンディングになっているため、どのような終わり方があるのかひとまず1回見てみたくてたまらない。ギャンブルで条件を達成したらどうなるかに興味がわき、ひとまずキースに勝負を挑み続けた。ギャンブル中はゲーム内時間が進行しなくなる利点もあるので、いざとなれば探索にも戻りやすいと考えたのだ。

なぜそこでピンゾロを出すのか

こうした寄り道が、結果としてゲームプレイを加速させた。手堅い勝ちを狙いつつも、次第に熱中した筆者はまんまとキースに弄ばれてしまった格好となった。少し稼いだと思うたびに、お金を巻き上げられる。ギャンブルのままならなさに苦い思いを噛み締めつつも、2時間ほどHIGH&LOWをプレイし、ようやく3万ドルを集めきった。探索とどちらが手っ取り早いかは今となっては不明だが、こうした豊富な寄り道要素で、常に夢中になれるゲームプレイが展開されていた。

取り立て屋に報告すると、あっさりエンディングに到達。フーディだけを救出して3万ドル返した場合のエンディングを見ることができた。エンディングを見たあとは、またショーンひとりからのスタートになるが、装備品などは次の周回に持ち越される。加えてプレイヤー自身にも「土地勘」がついていく。そのため探索の効率は周回を重ねるごとに加速度的に上がっていく。2周目、3周目……と進むにつれ、探索箇所への到達は素早く、未知の探索要素にはよりたっぷり時間を費やせるようになる。先述の寄り道なども含め、ストレスなく周回を楽しめるわけだ。

「死」すらも周回の糧になる、予測できない展開

何度も周回をしたのち、筆者は、冒険団のメンバーを全員集めた上で借金を返済することを目標にプレイしていた。ところがいつの間にか、あちらこちらのNPCとさまざまな会話のやりとりをしては、予測のつかない、さまざまな冒険の終わりを迎えることを楽しんでいた。

突然の死

本作は取り立て屋に子供が借金を返すという物語ながら、そんな取り立て屋以外の大人も登場する。その大人たちはしばしば突拍子もないことをする場合もあり、ショーンたちに「奇想天外な死」を突如もたらすこともある。本作におけるキャラクターの死は、その場でやり直せるわけではなく、所持金ゼロ、仲間ゼロで最初からゲームプレイのやり直しになるゲームオーバーにあたる。その代わり、これはアルバムに記録される数あるエンディング分岐のうちのひとつでもある。つまり、「コレクタブルな死」ということができる。

この人しか信用できない
NPCとの会話では、選択を誤り、取り合ってもらえなくなることもある

またダンジョンには、キャンプファイアーができるテントが置かれている地点が何か所もある。ここでは、ショーンと救出した冒険団メンバーが火を囲みつつ雑談するカットシーンムービーを見ることができる。これによって、少しずつ人物背景と関係性も明らかになっていくため、どんどん冒険団のメンバーにも愛着が湧いてくる。

キャラクターごとのステータスやアビリティがあるだけでなく、個性や考え方が見えてくるときに、ゲームは映画的な側面を帯びてくるように感じる。メトロイドヴァニア特有のゲームプレイである、探索箇所の解放と再訪の楽しさに加えて、「次はこのNPCにこう返答してみよう」「次はキャンプファイアーを何回囲めるか」というような、選択的進行シナリオアドベンチャーとしての楽しさも盛り込まれていた。

懐かしさと独自要素のマリアージュ

本作は、スーパーファミコンやゲームボーイアドバンスの時代を彷彿とさせるようなピクセルアートグラフィックやテクスチャが懐かしさを感じさせるだけでなく、現実とリンクした時間の概念がイベントに作用する要素などが絡み合って、懐かしいのに新しいプレイ体験になっているといえる。個人的にはサントラがかなり好みで、「いつかクレジットの流れるエンディングに到達して作曲者が誰なのか確認したい」というモチベーションで攻略を進めているところもある。

アクションゲームとしても、キャラクターを見つけることと切り替えることで拡張されていくところが楽しく、ダンジョンでは隠し通路をよく把握して活用することで鍵を温存できたりするなど、迷路・謎解きパズルのように攻略できる。試練の部屋やボス戦もどのような順序で攻略するかは完全に自由で、後回しにして探索できる範囲がかなり広い。さまざまな要素がただ盛り込まれているのではなくて、意味のあるものとして相互に作用し合っていることと、新しい周回に入るたびにマップの攻略順すらも前回とまったく異なるものにできる。

さらにマップはまるでバイオームのように複数のエリアに区切られており、下水道や廃線となった地下鉄路線、ツタの生えた洞窟や森などバリエーション豊かだ。探索スタート地点は同一でありながら進行ルートを毎回変えられるので、さまざまな方向からマップを塗っていく形になり、新鮮な感覚が長く続く探索アクションになっている。

本作はグラフィックのスタイルや、各種オマージュの要素もふんだんに盛り込まれており、80~90年代の映画やゲームを思い起こさせるような場面も多い。そうした要素に触れることでノスタルジーに浸るにはぴったりの作品といえる。しかし一方で、ゲームプレイにも趣向が凝らされている。探索範囲を広げていくというメトロイドヴァニアの楽しさに、周回してあらゆる要素を収集するというハクスラ的なゲームプレイも噛み合い、つい夢中で探索を重ねてしまう、いわゆる“噛めば噛むほど味の出る”作品であった。メトロイドヴァニアにあまり慣れ親しんでいない人にも、ぜひプレイしてみてほしい。

『THE GOOD OLD DAYS~冒険団ヌーギーズの大冒険~』はPC(Steam)/Nintendo Switch向けに配信中。またリリース記念セールとして、11月6日まで定価の10%オフとなる税込1440円で購入可能だ。

Kei Aiuchi
Kei Aiuchi

RPG、パズル、謎解きアドベンチャー、放置系などを遊びます。比較的やりこみ型。特に好きなゲームは『ルーマニア#203』

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