『鳴潮』Ver2.7のストーリーがとても良かった。「最初から覚悟が決まった新キャラ」と「困難を乗り越えて成長を遂げた旧キャラ」たちが奏でる、神殺しのハーモニー

『鳴潮』Ver2.7のストーリーは最高潮の盛り上がりを見せてくれた。

継続的にコンテンツが配信される基本プレイ無料のゲームとして、『鳴潮』Ver2.7のストーリーは最高潮の盛り上がりを見せてくれた。困難を乗り越えた旧キャラと最初から覚悟が決まりすぎている新キャラが織りなす神殺しともいえるストーリーは、大きな区切りを付けるのにふさわしいカタルシスをもたらした。Ver2.5でフローヴァに恋した筆者やVer2.6でオーガスタに跪きたくなった筆者からすると、新Verで旧キャラがあらためて活躍するのは大切なことだ。

滅びの予言に翻弄されるメインストーリー第2章の舞台「リナシータ」最終編と題されたストーリーについての感想をまとめたい。具体的には、2025年10月9日より配信されたVer2.7「暗き潮に映る夜明け」において追加された潮汐任務第二章第十幕「去りしものの帰還」と潮汐任務第二章十一幕「暗き潮に映る夜明け」を8時間プレイした感想をお届けする。

過去Verでの共闘が人類の運命を変えた大団円のストーリー

ここ最近の『鳴潮』のストーリーは、新キャラクター主体で展開されてきた。たとえば、オーガスタは彼女の過去が丹念に描かれるとともに、王として民を守る意志の強さを培っていく。ただし、そこには葛藤が存在して、主人公はオーガスタと交流していくうちに彼女の悩みがわかるといった具合だ。

キャラクターのことを深く知れるという意味ではいいストーリーかもしれないが、どうしてもそのキャラクター中心の出来事でストーリーが展開されていくため世界の謎から離れることも多い。そして、なにより興ざめしてしまうところは新キャラと過去のキャラがほとんどからまないことだ。新キャラはそのVerのいわば主役となるので無理もないが、個性豊かな面々がそろっているのにもったいない。キャラクター同士の交流は頻繁にやってほしい、と筆者は考えている。

そうした筆者の気持ちに呼応してくれたかのように、旧キャラがVer2.7の序盤から頻繁に登場するのはうれしいサプライズだった。残業の多さに悩みながらも頼りがいのあるザンニーや洗練された令嬢のようなカルロッタなど、しばらくメインストーリーでは見ていなかった面々だ。しかも、それぞれに新たな見せ場があるのがいい。バトルで使用できるのはもちろんだが敵の襲いかかってきた街を守ったり、市民の警護をしたりと、それぞれの社会的立場に応じて対処していくのが頼もしい。

Ver2.Xのイベントは主人公と新キャラが仲良くなっていくストーリーがここのところ多かったが、それが功を奏して大団円に繋がっているかのようだ。キャラクターの成長をライブ感たっぷりに展開したことで、成長を遂げた彼女たちにプレイヤーも安心して任せることができる。成長と信頼を積み重ねた結果、今回のストーリーでは本来は弱者である人間たちがまどわされることなく、運命に抗うことができたのだと思う。そうまでしてこそ、常識や慣習で固定化されてしまった神を殺すことはできない。『鳴潮』は団結と意志の強さで神を殺して、人間の時代へと歩みを進めることができた。そこにライブ感たっぷりでストーリーが追加されていく『鳴潮』の凄みを感じた。自分の過去や弱みを共有したからこそ、相手から理解してもらえて強くなることができる。相手の失敗を受け入れて許すことができるのが人間の強さであり、不完全な存在が神をも倒すというところはロマンの塊だ。美麗なグラフィックや格調高い楽曲の数々などがストーリーの感動をさらに盛り上げる。

過去があってこそ、現在直面した滅びの危機を乗り越えることができた。そうしてたどりついた明日は人間のものであり、神は死んで人間の真の時代が始まるのだろう。ただし、『鳴潮』の世界はどうやら1度滅びているのは確かなようだ。その悲劇を繰り返さないために戦っているのが主人公である。滅びの予言を覆すことのできたリナシータ編では大きなヒントになった。人の意志の強さをもってすれば常識を打破することも、神を殺すこともできるのだ。今回のリナシータ編で上手くいったように、その影響力を全世界に広げるようなスケールアップした展開に期待したい。

最初から覚悟が決まりすぎている新キャラ

旧キャラたちが期待以上の活躍を見せてくれた一方で、新キャラの「ガルブレーナ」についても語っておきたい。端的に言ってしまうと、ガルブレーナは最初から覚悟が決まりすぎているキャラクターだ。作中世界で「残像」と呼ばれるモンスターを狩り続けてきた彼女は、命のやり取りに慣れている。

もちろん、彼女がそうして戦いの日々を繰り返すのにも理由はある。それはほかのキャラクターほど丁寧に描写されることはなかったが、かなり壮絶だったことが彼女の過去を回想するイベントシーンで散見された。今回はメインストーリーで区切りを迎える山場だったので、彼女自身のストーリーを深堀りすることを避けたのは英断だったと思う。とにかくストーリーがテンポよく進んだのは好印象だ。ガルブレーナもまた失ったものを渇望し、悲劇を繰り返さないために冷徹に振る舞っているようなところが存在する。そうした本音と建前を隠して戦う彼女の姿は気高くて美しい。

リナシータ編の最終局面では、ガルブレーナがボスと戦うシーンが存在する。彼女の相手は作中でお馴染みの反社会的勢力の「フラクトシデス」の組織長だ。得体のしれない力と並外れた実力を備える組織長を相手に、ガルブレーナは一歩も引きはしない。しかも、戦闘能力は決して見劣りしない。組織長の油断さえも逆手にとって、ガルブレーナは一矢報いる。本当の決着はついていないが、それでもこの場でガルブレーナが組織長と戦うのは驚きだった。彼女の命をかけた戦いは勇敢であり、フラクトシデスの横暴を止めるという目的は共通するところがあるといえそうだ。

メインストーリー後には主人公と今後も連絡を取り合うようなシーンも存在したので、どこかで再会したい。リナシータ編は終りを迎えたかもしれないが、破滅を免れたからといってすべてが解決したわけではない。運命を乗り越えて未来を切り開いていくのは人間自身だ。簡単な道では決してないが、必ずできると信じて疑わないのはリナシータ編のキャラクターたちは街では重要な立場にあるため、彼らの導きによって復興していくという確信があるからだ。少し寂しくもあるが、主人公が直接的にできることとしてはリナシータ編のメインストーリーは大団円を迎えたといっていいだろう。]

少しだけ彼女のガルブレーナについて、言及しておくと『Devil May Cry』のエッセンスを感じ取ることができた。ガルブレーナが名乗る職業はこちらの作品とあちらの作品では少々意味は異なるものの「デビルハンター」とそのままであり、彼女のモチーフ武器「ルクス&アンブラ」はダンテの使う「ルーチェ&オンブラ(日本ではエボニー&アイボリー)」のような二丁拳銃となっている。『鳴潮』を手がけるKURO GAMESは同じく『パニシング:グレイレイヴン』でも『Devil May Cry』とコラボしていたので、とくに気に入っているコラボなのかもしれない。

今後の伏線もバッチリ張られた

リナシータ編のメインストーリーに区切りが付いたので、今後の『鳴潮』のストーリーがどのように展開されていくのか気になるところだ。その伏線がVer2.7の最後で張り巡らされた。やはり反社会的勢力の「フラクトシデス」との戦いが大きな軸の1つとなってきそうだ。ガルブレーナに実質的な敗北を喫したとはいえ、組織長も健在だ。

フラクトシデスで何より不気味なのが、「脚本家」を名乗るクリストフォロという男だ。主人公たちがフラクトシデスの企みを阻止するのも脚本のうちと語るところもあり、その真偽は謎に包まれている。ストーリーの山場で登場し、どれも想定していたと語られるのは愉快ではない。早くクリストフォロを倒したいが、いまはまだクリストフォロの手のひらで踊らされているにすぎないのかもしれない。

クリストフォロは大犯罪者として囚えられていた幹部のスカーを脱獄させることにも成功し、同じ幹部のフローヴァも復活を遂げているようだった。フローヴァは主人公と共闘したこともあるため、今後はどのような立ち位置で登場するのかが気になるところだ。なにより、これほど一癖も二癖もある幹部たちがまとまる理由とは何であるのだろうか。どこか崇高な目的があるように感じられるため、その真意がわかるのはずっと先のことかもしれない。

スカーはフラクトシデスの幹部としては、近日中にもっとも動きがありそうだ。1度は捕まった大罪人であり、現在は仇遠(キュウエン)を名乗る剣客に追われている。仇遠はVer2.7後半の限定ガチャでプレイアブルキャラクターとして登場し、10月30日にメインストーリー任務の第二章幕間「独り異郷にありて異客となる」が開放される予定。今後メインストーリーがどのように展開されていくのかは不明なため、こちらにも注目したいところだ。

鳴潮』は、PS5/iOS/Android/PC(Windows/Steam/Epic Gamesストア)向けに基本プレイ無料で配信中。なお、『鳴潮』は2025年12月3日に開催されるイベント「PlayStation Partner Awards 2025 Japan Asia」の「USERS’ CHOICE AWARD」にノミネートされた。日本・アジア地域におけるPlayStationユーザーの総プレイ時間上位30タイトルに入るのがノミネートの条件となっており、上位5タイトルはユーザー投票によって選出される。

Ryuichi Kataoka
Ryuichi Kataoka

「ドラゴンクエストIII」でゲームに魅了されました。それ以来ずっとRPGを好んでいますが、おもしろそうなタイトルはジャンルを問わずにプレイします。

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