古いゲーム復刻の最大の壁は「権利者探し」。ゲームの保存活動を進めるGOG.comは、時に“探偵”を雇ってでも捜索する
古い作品をリリースするにあたっては権利処理が大きなハードルとなっており、PCゲーム販売プラットフォームGOG.comでは時に私立探偵を雇うこともあるという。

PCゲームのデジタル販売プラットフォームであるGOG.comでは、ゲームの保存活動の一環として、新作だけでなく往年のクラシックゲームも積極的に取り扱っている。そうした古い作品をリリースするにあたっては権利処理が大きなハードルとなっており、時に私立探偵を雇うこともあるという。海外メディアThe Game Business Showが報じている。
GOG.comは、ポーランドに本拠を置くCD PROJEKT Groupに属するGOG Sp. z o.o.(以下、GOG)が運営するPCゲームストアだ。同グループには、『サイバーパンク2077』や『ウィッチャー』シリーズの開発元CD PROJEKT REDも存在する。販売するPCゲームが、DRMフリー(デジタル著作権管理技術なし)で提供されることが大きな特徴となっている。

海外メディアThe Game Business Showは10月14日、GOGのマネージングディレクターMaciej Gołębiewski氏とのインタビュー映像を公開した。その中で同氏は、クラシックゲームを後世に向けて保存(復刻リリース)するにあたっては権利処理が欠かせず、その作業には皆が想像する以上の時間がかかっていると明かした。
権利処理とはすなわち、商標やコード、楽曲など、そのゲームにまつわるあらゆる権利を、それぞれ現在誰が保有しているのかを把握し、許諾を得る作業のことだ。権利が誰かに継承されていれば、それを追跡する必要もあり、情報収集作業は膨大になるという。Gołębiewski氏は、これまでの経験を総合すると、本を1冊書けるほどだと述べている。

一例として同氏は、複数のクラシックゲームの権利を継承した英国在住の人物に関するエピソードを明かした。その人物は、所在を掴むことが困難であったため、私立探偵を雇ってやっと探し出したのだという。結果的に、携帯電話もインターネットもない、ある意味で完全に孤立した生活を送っていたことが分かったそうだ。
また、そのゲームの権利は相続財産の中に含まれていたもので、自らが保有していることを把握していなかったことも、捜索に手間がかかった背景にあるようだ。どのゲームのことであるのかは伏せられたが、その人物は家族の遺産の保存につながるということで、快く許諾してくれたとのこと。
Gołębiewski氏によると、協力的な権利者は多いそうだが、そこにたどり着くまでが大変な作業となるようだ。これまでには、知的財産権の保有を証明する書類が火災で焼失していた事例もあり、古い作品になるほど物理的な記録に依存している状況にあるとも語られている。
似た話題としては、アーケードゲームの名作を復刻する「アーケードアーカイブス」シリーズなどを展開しているハムスターが、「みなさまのゲームをぜひリリースさせてください」とゲームの権利保有者に呼びかけて注目を集めたことが記憶に新しい(関連記事)。おそらく、同社も権利保有者を探す苦労を経験しており、逆に名乗り出てもらおうと考えたのだろう。
なお今回のインタビューでは、GOG.comにて『バイオハザード』シリーズの初期3作品などを復刻リリースしたカプコンについても言及されている。Gołębiewski氏によると、それらの作品はすでにリメイク版が発売されていることもあって、当初カプコンはオリジナル版を復刻させることに価値を見出していなかったという。それでもGOG側は、当時のままのゲーム体験を求めるファンは数多くいるとして説得し、リリースにこぎつけたとのこと。結果として、同シリーズの復刻版は評価も売り上げも好調だそうだ。
ちなみに、GOGは弊誌とのインタビューの中で、カプコンとは粘り強く時間をかけて信頼関係を構築したとも語っていた。興味のある方はそちらもチェックしてほしい。