死にゲーシリーズ新作『NINJA GAIDEN 4』開発者が考える「ちょうどいい高難易度」の境界線。甘くない、でも理不尽でもない線引き
『NINJA GAIDEN 4』の開発者に、「死にゲー」シリーズ新作としての本作の難易度に関して訊いた。

マイクロソフトは10月21日、コーエーテクモゲームスが手がける『NINJA GAIDEN 4』を発売する。『NINJA GAIDEN 4』は、『忍者龍剣伝』シリーズに端を発する、『NINJA GAIDEN』シリーズの最新作だ。対応プラットフォームはPlayStation 5/Xbox Series X|S/PC(Steam)。
本作ではかつて封じたはずの古の敵が復活し、近未来の東京に終わりなき瘴気の雨が降り注いでいた。メインキャラクターのヤクモは、若き天才忍者だ。ヤクモは行く手を阻む機甲兵隊や異界の魔物と対峙。伝説のリュウ・ハヤブサと共に運命と向き合い、東京を呪いから解き放つべく戦いを繰り広げていく。なお、本作はコーエーテクモゲームスとプラチナゲームズが共同開発している。
このたびは、プラチナゲームズのプロデューサー兼ディレクターである中尾裕治氏、コーエーテクモゲームスのTeam NINJA ディレクターである平山正和氏に話を訊いた。
――ファミコンの『忍者龍剣伝』から37年を経て、シリーズ新作『NINJA GAIDEN 4』が今年リリースされます。そんな長い歴史を背負う今作の開発は、どんな気持ちで向き合いましたか。また、歴史に負けないように開発の中で特に苦労したところはありますか。
平山氏:
我々Team NINJAとしては、十数年『NINJA GAIDEN』を作るチャンスをずっと伺っていました。我々もずっと作りたかったので、そういった意味では今回プラチナゲームズさんやマイクロソフトさんの応援も含めて新規のタイトルを作れたというところは大変嬉しく思っています。私自身も初めてゲーム開発に入ったIPは『NINJA GAIDEN』シリーズだったので、今回ディレクターという立場で再びチャレンジできることは、すごく身を引き締まる思いでやらせていただいています。
実際にプラチナゲームズさん、特に中尾さんは『NINJA GAIDEN』のファンだと公言してくださっているので、『NINJA GAIDEN』シリーズを再びリブートするという部分に関しては、両者で垣根を越えていろいろ協力してやってこれたかなと思っています。
中尾氏::
私自身が『NINJA GAIDEN』シリーズの大ファンでした。学生時代に『NINJA GAIDEN Σ』や『NINJA GAIDEN Black』、『NINJA GAIDEN 2』など、大体全部のタイトルをやってきました。それがまさかプラチナゲームズで、しかも私自身がディレクターとして関わらせてもらうのは、すごく光栄でしたし、何よりもずっとワクワクしていました。
やはり先ほどお話もあったとおり、最後のナンバリングから十数年ほど間が空いているというところもあるので、『NINJA GAIDEN』の面白さについては様々なプレイヤーに楽しんでほしいなと思いました。『NINJA GAIDEN』シリーズの持つ本来の面白さを軸として、忘れないように作っていこうという思いが強かったです。
――その長い歴史の中で、多くのファンを集めながら、『NINJA GAIDEN』はアクションジャンルの象徴的なシリーズとしてアイデンティティが固まってきました。それはなぜだと思いますか。『NINJA GAIDEN』らしさは何だと思いますか。また、そのらしさは今作ではどのように反映されていますか。
平山氏:
『NINJA GAIDEN』シリーズの特徴というのは、皆さんが忍者というワードで想像するような、いわゆる超人らしいアクションを、リュウ・ハヤブサという主人公を通して思い通りに動かせるというところが『NINJA GAIDEN』の特徴かなと思っています。
そういった意味で、思った通りに動かせる直感性、その直感性を実現するために多彩なアクションの選択肢があって、プレイヤーのスーパープレイはもちろんのこと、それに対応してくる苛烈な敵の攻撃を体験できるのが、『NINJA GAIDEN』のアイデンティティであり魅力でもあり、楽しさなのかなと。
今回プラチナゲームズさんとコラボしながら、新主人公を据えたり、新しいバトルシステムを入れたりと、いろいろチャレンジする中でも、根幹の『NINJA GAIDEN』らしい体験というところを徹底してチューニングしてきたので、本作も新主人公ではありますが、今までの『NINJA GAIDEN』らしいと感じていただけるような体験を取り込むことができたかなと思っています。
中尾氏:
苛烈に襲ってくる敵という点でいうと、『NINJA GAIDEN』をプレイしていて特徴的だなと感じるところは、やはりプレイヤーと敵が対等だというところですね。敵もガードしてきたり、何なら投げ技もしてきたりするんですが、これをアクションゲームで作るのはすごく難しい部分ではあると思います。
そういったところを今回も損なわないように、ただ気持ちがいいだけじゃなくて、不利な逆境を超えた時のカタルシスという部分は、大事な軸として開発していたところです。

――シリーズ『NINJA GAIDEN 3』から長く休止していました。『NINJA GAIDEN 2Σ』や『NINJA GAIDEN: Ragebound』を含めて、なぜ今『NINJA GAIDEN』がこれほど大きく動き出したのでしょうか。なぜ『NINJA GAIDEN』なのでしょうか。
平山氏:
最初の話の、「ずっと我々もチャレンジしたかった」というところに戻るかもしれませんが、その上でやはりプラチナゲームズさんもそうですし、『Ragebound』も我々だけではなく、他のデベロッパーさんにご協力いただいた上で開発しています。
そういった『NINJA GAIDEN』というタイトルに対してご協力してくれる皆さんがあってこそ、今回「イヤー・オブ・ザ・ニンジャ」と銘打って、今年はいろんなタイトルをリリースさせていただいています。そういった、『NINJA GAIDEN』を通じた縁によって達成できたのかなと思っています。
中尾氏:
ずっとチャンスは伺っていた、という感じですよね。Team NINJAさんといえば『NINJA GAIDEN』だと、そこはずっと忘れないように、ということなのかなと。
――ドット絵からの3D、ファミコンからのXboxやマルチプラットフォームリリース、様々な進化を遂げた忍者外伝シリーズですが、今作ではどんなところでその進化が一番見えますか。
平山氏:
本作でいえば、プラチナゲームズさんらしさと『NINJA GAIDEN』らしさの融合というところをどうするのか、これが一番大事なミッションでした。本作の「ヤクモ」という新主人公が持つ「鵺の型」というアクションが、そうした融合の象徴になっています。やはりプラチナゲームズさんといえば、『NieR: Automata』や『ベヨネッタ』など、いろんな素晴らしいアクションゲームを開発されていて、プラチナゲームズさんの持ち味である「ダイナミックでスピーディーなアクション」といったところは取り入れたいなと思っていました。我々も尊敬しているので。
ヤクモというキャラクターの特徴としては、通常の武器を持ったモードと、「鵺の型」と言われる、いわゆる上位モードを使うことができます。もちろん通常モードでも『NINJA GAIDEN』のプリミティブな攻防が楽しめるんですが、その上で鵺の型を使用すると、例えばデフォルトで持っている双剣から変更して、非常に長い太刀を使用することができます。そういったダイナミックなスケール感、バトルのスケール感のアップといったところは、しっかりと今回『NINJA GAIDEN』のナンバリングの中でも、プラチナゲームズさんの良さを取り入れた部分かなと思っています。
プラットフォームの進化という点でいうと、グラフィック表現の進化があります。『NINJA GAIDEN』の特徴の一つとして、バイオレンス表現があると思っています。そこはプラチナゲームズさんも最初から力を入れて開発してくださったポイントです。ただ、ホラー的なグロさではなくて、あくまでもアクション的な爽快感を軸に開発しています。
剣で切った時の手触り感とか、身体を切断したときの爽快感といった部分は、プラットフォームが進化したことによって、血の飛び散る表現や、腕が激しく吹っ飛ぶ表現など、ディテールにおいても進化できたのかなと。そういったアクションをより気持ち良くするためのバイオレンス表現というところも、本作では今まで以上に力を入れたポイントでした。

中尾氏:
ゴア表現に関しては、一つ殻を破れた部分があるかなと感じています。これまでの『NINJA GAIDEN』でもゴア表現は圧倒的でしたが、どちらかというと恐ろしい怖い感じのグロテスクさではなくて、どちらかというとちょっとスカッとするような感じの方向性でした。本作では、鵺の型という異形の力、超常的な能力で扱う巨大な武器があることによって、さらにその表現が拡張できるようになったというのは、本作の大きい進化です。そこで得られるダイナミックな敵を切断する表現だとか、敵を叩き潰す表現だとかみたいな部分には、やはり時を越えて『NINJA GAIDEN』を最新のプラットフォームで開発できたので、こだわれた部分かなと思います。
結構、血を含めたゴア表現の部分はずっとこだわって作っていますね。めっちゃ細かいところでいうと、例えばタイトル画面も微妙に血が滴っていたりとかするんですよ。細部まで頑張っています。
――リュウとヤクモのプレイスタイル、アクションの手応えはどう違いますか。作る中で意識したことを教えてください。
中尾氏:
リュウ・ハヤブサとヤクモは今回別々の所属のキャラクターなんですが、アクションもそうですし、キャラ設定も含めて、今回2人は徹底的に対比させているんです。そもそも新主人公に当てがう中で、やはり差別化がしっかり必要だろうということで、若い忍と歴戦の戦士みたいな感じで分けたりとかしています。
その中でアクションに関しては、ヤクモはスマートで、リュウはパワフルというテーマにまとめていって、それぞれの技の特徴に、ヤクモだとスピーディーでスマートな攻撃が多かったりとか、リュウだとこれまでのような力強いアクションの数々が楽しめるようになっています。
ただ共通しているのが、両方基本的な技、例えば往年の「イズナ落とし」だったりとか「絶技」だったり、基礎的な遊びの部分の手触りだったりとか、収録しているアクションの内容というのは、両方とも同じものが使える形にはなっています。それぞれ微妙にチューニングされていて手触りが違うみたいなイメージで捉えていただければいいんですが、あくまでもどちらを使っても『NINJA GAIDEN』らしい体験ができるというところはお約束できるかなと思うので、その二人の違いを楽しみにしていただければなと思っています。
死にゲーシリーズ新作
――本シリーズはとても難しいと評価されることが多いシリーズですが、本作はどの程度難しいですか。
平山氏:
まず従来のシリーズのファンの皆さん向けで言うと、しっかりと今までの『NINJA GAIDEN』シリーズらしい、苛烈で歯応えのあるバトルというのは、しっかりお届けできるようにしているというのをまず前提としてお伝えしたいです。
その上で、十数年ぶりのアクションゲーム新作ではあるので、やはり初めてシリーズをやる方や、初めてアクションゲームをプレイする方、多くのアクションゲームファンの皆さんにも触っていただきたいなと思っているので、そこは結構柔軟な難易度設計といった部分を今作に取り入れています。
たとえば、「ヒーローモード」という特別なモードを実装しています。そちらのモードですと、オートガードやオート回避など、プレイングをサポートするようなアシストシステムがあります。ただ我々としても、最終的には『NINJA GAIDEN』らしい、プレイヤーの皆さんが上達しながら、より自分のスキルアップに合わせた歯応えのあるバトルを体験していただきたいと思っています。アシストシステムもモードを通じて固定になっているのではなく、オプションからオン・オフの切り替えができるようにしています。例えばガードでいえば、そのモードをオフにしてもらってガード練習してもいいですし、そういったアクションのステップアップという動線も用意しています。
あと、今作に関しては難易度が1周目だと「イージー」、「ノーマル」、「ハード」という3つの難易度が選べるんですが、1周通じて同じ難易度を続ける必要はなく、チャプターごとに自在に変更できるようにしているんです。なので、例えば今回のチャプタークリアした時に、「上達したな」となったら1個上の難易度にチャレンジしてもらってもいいですし、逆に「難しすぎたな」となれば、また下げてもらってもいいですし。常に自分の一番気持ちいい難易度でチャレンジできるようにしていただいています。
その上で1周目クリアすると、いつも通り、「マスターニンジャ」という最高の難易度が解禁されるんですが、そちらに関しては難易度変更は不可能で、2周目なので1周目にしっかり修練を進めていただいて、しっかりとこの最高難易度、一番歯応えのある難易度にチャレンジしていただくというような設計にしています。従来のファンの皆さんもそうですし、あまり難しいと敬遠せずに、ぜひ触っていただければと思っています。
中尾氏:
ただイージーなモードがあってひたすら簡単に進められるということではなくて、『NINJA GAIDEN』ならではの個性である、「ヒリついた戦闘」というのがどんな方にも体験できるようなチューニングが可能となっています。
――最近「死にゲー」というジャンルがよく話題になりますが、自分が最初に死にゲー的な気持ちよさを知ったのは『NINJA GAIDEN』かもしれません。
平山氏:
私もそうです。やはり敵と自分とのフェアさというのが重要だと思っています。死んだ時に自分のせいだと感じられるかどうかというのが、公平性としてすごく重要なんです。
たとえばプレイヤーが理不尽に殺されてしまうと、「次はどうしようか」という気づきがなかなか得られないと思うんです。いろんな選択肢がある中で、その選択を失敗してしまって死んでしまった場合は、「じゃあ次はこうしよう」といった試行錯誤ができる。そういうトライ・アンド・エラーこそ、やはり攻防のフェアさが成立しないといけないと思っていて、Team NINJAの中でもよくその話はよく出ますし、『NINJA GAIDEN』でもシリーズを通じて大切にしてきたポイントかなと思います。
――お二人が考える「ちょうどいい難易度」はどれくらいだと思いますか。本作ではそういった難易度は実現できましたか。
中尾氏:
何をもって「ちょうどいい」とするか、ですが……。『NINJA GAIDEN』というタイトルにおいては、私自身、ファンとしてというのもありますし、最新作に責任を持って開発している身という意味でいうと、やはり何にせよ“サクサクプレイできるゲーム”ではないところかなと思っています。何かしら一定の苦労だったり、苦戦するような要素というのが道半ばにたくさん散りばめられているものかなと思っていて、そうした苦労を達成した時のカタルシスみたいなところというのは、やっぱり大事にしている部分です。
「ちょうどいい難易度」というのをどう感じるか、というところではあるんですが、少なくとも『NINJA GAIDEN 4』に関しては、シリーズ同様のひりつきもありながら、難易度のこともそうですし、アクセシビリティも充実していたりするので、遊びやすくなったという意味では、ちょうどいい感じにできたのではないかなと。

――『NINJA GAIDEN 4』はどういったプレイヤーに合うと思いますか。最近の高難度ジャンルといえばソウルライクなどもありますが、本シリーズを知らないソウルライクプレイヤー向けに本作に期待できる部分を教えてください。
平山氏:
まずはやはりピュアアクションゲームとして、『NINJA GAIDEN』のアイデンティティの話じゃないですけど、キャラを動かす楽しさといったところは何よりも感じていただきたいなと。シンプルに忍者を動かしたいなと思っていただいた方には手を取っていただけると、こんなこともできるな、忍者っぽいアクションできるねっていったような思いがあります。
中尾氏:
やはり、往年のピュアなプリミティブなアクションゲームって、なんだかんだ色々なシリーズが続いているとは思うんです。現代は多種多様なジャンルが出てはいるものの、やはりピュアなアクションゲーム自体が廃れたわけではないのかなと私は考えています。そういう作品をプレイしたい潜在層も、自分含め存在するだろうなというところは結構確信しているので、そういう方々にはすごく刺さるゲームになっているんじゃないかなと思います。そうした要素は外せない部分だったので。
それこそいろんなトレンドに合わせることってできたりはすると思うんですが、ただ『NINJA GAIDEN』らしさ、みたいなところは、やはり時が経ったとしても外してはいけないなというところは、ずっとTeam NINJAさんと話し続けて、変えずに作ってきたというところは一つ大きいかなと。
――今回プラチナゲームズが開発に参加していますが、プラチナゲームズが参加したからこそ実現できたアクションを教えてください。
平山氏:
先ほどお話した通り、やはり鵺の型というシステムは、まずそのダイナミックなケレン味といった部分で、プラチナゲームズさんだからこそできたアクションを象徴しているかなと思っています。
ちょっとアクションとは外れてしまうんですが、プラチナゲームズさんらしいケレン味というのは、アクションだけじゃなくて、アートのケレン味みたいなところも独自のアートスタイルを持っているかなと。『NINJA GAIDEN』は、東京っぽいけど本当の東京じゃない、ちょっと面白いアートが特徴ではあったんですが、その中でもプラチナゲームズさんが入ったことによって、よりそこの個性みたいな部分は、我々だったら出ないだろうなというアイディアは結構ありましたね。
たとえばステージの中で、いわゆる森林や街のステージだけでなく、ナイトクラブみたいなステージがあったりするんですが、それは私も初めて見たときに、こんなふざけたステージがあっていいのかと思いましたね。クラブの中でゾンビが出てきたりするんですけど、それがなんかいいなと思って。
そういったちょっと笑っちゃう馬鹿ばかしさというか、抜け感みたいなところも、プラチナゲームズさんのアイデアが色濃く出たところはありました。もちろん真面目に開発していますけどね。アクションだけじゃなくてスタイルの両方を含めて、そういったプラチナゲームズさんと組んだからこそ、我々だけだったらできなかったという魅力は出せたんじゃないかなと思っています。
――発売直前最後の新情報として、何か教えていただけることはありますか。
平山氏:
まずは本作をプレイして、楽しんでいただきたいというのが一つなんですが、その後も、長く『NINJA GAIDEN』を遊んでいただくために、現在DLCの開発も進めています。DLCでは新主人公である「ヤクモ」の、新武器種の追加に合わせて、ストーリーも含めた追加、あとはやり込み的な新しいチャレンジミッションといったものを用意する予定です。まずは来月のリリースとして本編を十二分に楽しんでいただいて、後のDLCも含めて忍者外伝を長く遊んでいただければなと思うので、よろしくお願いいたします。
――ありがとうございました。
『NINJA GAIDEN 4』は、PlayStation 5/Xbox Series X|S/PC(Steam)向けに10月21日発売予定だ。
[聞き手:Đorđe P]
[執筆:Haru Takitoh]
[編集:Ayuo Kawase]
【UPDATE 2025/10/9 20:36】
発売元について修正