『007 First Light』披露会レポート。映画館のスクリーンで圧巻のシネマティック&奇想天外ゲームプレイ鑑賞、そして新ジェームズ・ボンド登場
『ヒットマン』のIO Interactiveが担当することで話題沸騰中の『007 First Light』。本作のメディア向けの披露会が、映画館の1ホールを貸し切って行われた。開発陣や出演者が参加した豪華お披露目会。本稿ではその模様をお届けしよう。

ジェームズ・ボンドのオリジンストーリーを『ヒットマン』のIO Interactiveが担当することで話題沸騰中の『007 First Light』。本作のメディア向けの披露会が、映画館の1ホールを貸し切って行われた。開発陣や出演者が参加した豪華お披露目会。本稿ではその模様をお届けしよう。
『007 First Light』はIO Interactiveが手掛けるアクションアドベンチャーゲームだ。「007」シリーズの主人公であるジェームズ・ボンドの新米時代を描く。対応プラットフォームはPC(Steam/Epic Gamesストア)/PS5/Xbox Series X|S/Nintendo Switch 2。発売日は日本時間で2026年3月28日となっている
ゲームプレイ映画を楽しむ

最初に行われたのは、「映画館でデモプレイを鑑賞しよう」というコーナー。スクリーンに映し出されたのは文字通り映画を観ているかのような光景だ。美しくも柔らかい、包み込むようなライティングの中で、ボンドが駆るレトロな車体がショーケースに飾られた宝石のように艷やかな光沢を放っている。本作のジェームズ・ボンドは青二才。業界の酸いも甘いも噛み分けられない、おろしたての新車のような若造である。請け負っている任務はいたってシンプル。運転手としてターゲットがいる現場に潜入し、接触を目指すようだ。
開発スタッフいわく、本作のゲームプレイは大きく分けて2種類あるという。『ヒットマン』シリーズでお馴染み、課題解決に向かってプレイヤーの「自由なアプローチ」が可能なパート。そして、「動かせる映画」を意識したリニアに進行するパートだ。まずお披露目となったのは「自由なアプローチ」である。会場に入ろうとして、「入場証がなければ無理」と跳ね除けられてしまうボンド青年。フィールドをうろついて何か使えるものがないか探してみれば、目に入ったのは落ち葉の山。そこにさっき拾ったライターで火をつければボヤ騒ぎを起こせるかもしれない。実際に火をつければ案の定、大衆の視線はそこに向かう。計画は上手くいったようだ。すぐさま壁に向かってジャンプ。壁面の僅かな出っ張りを掴みながら、侵入できそうな窓へと向かう。先程のシネマティックな映像美はどこへやら、まさしく「ゲームらしい」奇想天外な光景が巨大なスクリーンに広がっている。ギャップのせいで思わず吹き出しそうになってしまった。

次にお披露目されたのは、カーチェイスから飛行機へ潜入するまでのシークエンス。こちらはリニアなゲームプレイとなる。「カーチェイスは本当に気合を入れて作った」とは開発者の弁だが、まさにその通りだ。自然光のようなライティングと細かいモーションブラーのおかげで、単なるレースゲームではなく、追走劇が成立している。ターゲットを追って飛行場へ。銃撃戦が始まった。サブマシンガンやショットガンを使って敵を撃退しつつ、打ったら爆発しそうなタンクを起爆させる。文字にしてみると一般的なシューティングゲームの1シーンだが、卓越した音響とシネマティックを意識した映像によって「007のゲーム」に仕立て上げている。飛行機に潜入すれば右へ左へ機体を傾けながら戦闘することができる。オブジェクトや敵が傾けた方向へ流れ落ちていく。たとえリニアな場面だとしても、インタラクティブ可能なギミックは残しているとのことだ。これにてゲームプレイの鑑賞は終了。一度でいいから映画館でゲームプレイをしてみたいと思えた時間だった。
開発関係者へ質問タイム。『ヒットマン』とは何が違うのか

お披露目会は開発者に対する質問タイムへと移る。ステージには本作のナラティブ・シネマティックディレクターであるMartin Emborg氏、シニア・ライセンスプロデューサーのTheuns Smit氏、そしてAmazon社のMatt Group氏が登壇。質問内容としては、非リニアなゲームで著名なIO Interactiveがリニアな体験も取り入れたゲームを作る、という点に注目が集まっていた。
――なぜ007のゲームを作ろうと考えたのか、そして、本作を開発するにあたってどのようなことにチャレンジしたのか、お聞かせください。
Martin氏:
それは自分もジェームス・ボンドになってみたかったから……みなさんもそう思いますよね?(本作を担当することになったのは)我々にとって自然な流れだったと思います。「007」シリーズのゲームを開発するにあたって、若きジェームズ・ボンドのエモーショナルな成長譚を描くことに挑戦しようと思ったんです。諜報の世界において、ジェームズ・ボンドという「原石」がどのように磨き上げられていくのか、ユーザーの皆さんが彼に寄り添うかたちで体験して欲しいと思っています。
――『007 First Light』のゲームプレイは『ヒットマン』シリーズにおけるゲームプレイと何が違うのでしょう。
Martin氏:
『ヒットマン』シリーズとはまったく違う体験になります。本作はキャラクタードリブン(キャラクター主導)のアクションアドベンチャーゲームであり、そこが大きな違いです。ジェームズ・ボンドというキャラクターの魅力、ウィットを楽しんでほしいです。
本作はリニアと非リニアが組み合わさることで、勢いよくストーリーが流れていく、キャラクターが推進するゲームになっています。『ヒットマン』シリーズと比較すると、プレイヤーがゆっくり考える時間がないのが特徴ですね。スニーキングミッション、カーチェイス、飛行場での戦闘から潜入など、次々と切り替わる状況に対して、常に「どうやってプレイしようか」とリアルタイムで考えながら即座に行動することが求められます。
――カーチェイスのシーンをはじめ、シネマティックな演出には驚かされました。この映像美を作り上げるために、どのような工夫を盛り込みましたか。
Theuns氏:
これまでの取り組みとはまったく違うことをしなければいけないため、本当に大変でした。
幸いにして、本作の開発を発表した際、多くの優秀な人材を採用することができ、エンジンの最適化をはじめ、さまざまな課題をクリアすることができるようになりました。
――タイトルに使われている「ファーストライト」(First Light)という文言にはどういった意味が込められていますか。
Theuns氏:
「スパイ世界の光と影」というボンド映画シリーズの共通テーマを、ボンドのオリジン(起源)の再構築に取り入れたかたちです。ボンドがスパイの世界を徐々に知っていく中で、世界には白黒つかないグレーな部分が多いことを学んでいく。最初は希望に満ちていても、闇があることをボンドが学んでいく体験を、ユーザーにも共有してほしいという思いを込めました。
――本作は13年ぶりの「007」シリーズのゲーム化であり、IO Interactiveの新作でもあります。開発過程で最も楽しかった作業は何でしたか。
Matt氏:
IO Interactiveが持つ強みと「007」シリーズファンが思い描く理想を折衝し、組み合わせていく過程が、エージェントとして最も嬉しく、楽しい作業でした。
――『ヒットマン』はリプレイ性の高さや豊富なインタラクティブが特徴ですが、『007 First Light』ではどのようにその知見が生かされていますか。
Theuns氏:
過去のゲームで培った「エージェント・ファンタジー」の知見は生かされています。ゲームを進めると、解放されるガジェットが増えていくため、多様なゲームプレイを楽しむことができます。序盤はステルス中心でも、後からアグレッシブな戦闘も試せます。一度のクリアでは体験できないサプライズをたくさん詰め込んでいるので、繰り返しプレイしてほしいです。
――ゲームストリーマーとして、この『007 First Light 』をプレイするにあたって、「ここを知ってたら面白い」「注目してほしいポイント」があれば教えてほしいです。
Matt氏:
これまでのシリーズのファンならニヤリとしてしまうようなイースターエッグ(隠し要素)をたくさん散りばめているので、楽しみにしてください。それがどのようなものなのかはご自身で確かめてくださいね。

IO Interactiveいわく、本作のアジア地域向けの展開に対して非常に強い意気込みを持って挑んでいるようだ。それに合わせて、日本向けのアンバサダーにストリーマーの「ボドカ」氏が就任。「スニーキングゲームは個々人で異なるアクシデントが起きやすく、視聴者との一体感を感じやすい、盛り上がるゲームジャンルである」とし、「ストリームを通じて本作の魅力を伝えていきたい」とコメントした。
新ボンドウーマンと新ジェームズ・ボンドによるミニ・トークショウ


最後に、ヒロインであるミス・ロス役の中井ノエミ氏と、ジェームズ・ボンド役のパトリック・ギブソン氏によるミニ・トークショウが展開され、歴史的な大役を担うことへの意気込みを語ってくれた。ノエミ氏はオーディションに合格した際、「ボンドガール」という役に対し大きなプレッシャーを感じていたそうだが、モーションキャプチャー用のボディスーツに身を包んだ自分の姿を観て楽になったそうだ。「一人でトイレも行けないし、ソファーに座ったら立ち上がれない、プレッシャーに怯えている余裕など、ない。」撮影に緊張していたのは10分程度しかなかった、とのこと。「ミステリアスな女性」という役を演じる上で「仕事に興味がない」ようあえて振る舞ったところ、オーディションに合格したというエピソードも披露してくれた。
一方、新ジェームズ・ボンドを担うパトリック・ギブソン氏は自身の役に対して気合十分という印象を受けた。言ってしまえば、本作に登場するジェームズ・ボンドは一番若い時期のボンドであり、ゆえに過去作の影響に囚われすぎることもない。本作にふさわしいオリジナルなジェームズ・ボンドを作り上げていく自由さが、自身の役作りのなかであったそうだ。また、ノエミ氏をはじめ、共演者から得たインスピレーションと活力が、若いボンドの人間的な魅力を考えるうえで大きな刺激になったとのこと。ノエミ氏は彼の取り組みに対して、「我々をどこかに漂流しないよう留めてくれる碇(アンカー)のような役割を果たしてくれた」と感謝していたのが印象的だった。

以上、お披露目会はこれにて閉幕となる。『007 First Light』は日本時間で2026年3月28日発売予定。対応プラットフォームはPC(Steam/Epic Gamesストア)/PS5/Xbox Series X|S/Nintendo Switch 2だ。