3DCG制作ソフト「Blender」開発元、赤字計上も「無料のまま」の体制維持。事業拡大の裏で、寄付キャンペーンも好調
Blender Foundationは9月17日、2024年度年次報告書を公開。積立金による赤字の緩和もおこなわれているものの、運営体制に揺らぎはなく、追って実施された寄付キャンペーンも好調である旨が伝えられている。

非営利団体Blender Foundationは9月17日、2024年度年次報告書を公開した。報告では寄付収入が増額しつつも赤字決算となったことが報告されている。とはいえ、運営体制に問題はなく、今後も寄付やスポンサーを柱として、引き続き無料で利用できるオープンソースソフトウェアとしての立ち位置は崩さない方針を改めて明らかにしている。
Blender Foundationはオランダ・アムステルダムに拠点を置く非営利団体だ。オープンソースの3DCG制作ソフト「Blender」の開発をおこなっている。Blenderは1994年にリリースされ、昨年には30周年を迎えた。
またBlenderはゲーム方面への活用も多く見られ、なかには公式主導のコンテンツも存在する。Blender公式は今年7月、映像制作スタジオBlender StudioとゲームエンジンGodotとの連携により、開発などに関する知識の共有を目的としてカジュアル探索ゲーム『DOGWALK』をリリース。同作はPC(Steam)向けに無料で配信されており、カジュアルに楽しめ、癒される作品として好評を博している(関連記事)。
今回Blender Foundationが公開した年次報告書では、2024年度の収入の合計は約310万6000ユーロ(約5億4000万円)となり、2023年度の255万3000ユーロ(約4億円)と比較し大きな増収となった。一方で支出も大幅に増加しており、特にスタッフに対する給与支出は2023年度から2024年度にかけて約70万ユーロ(約1億2000万円)増加している。加えて「翌年度への繰り越し(Reservation for coming years)」では、2023年では約13万ユーロ(約2260万円)を計上しており、積み立てられたことが記されている一方、2024年度では約マイナス7万4000ユーロ(約1290万円)となっている。後述するように2025年度に計上が持ち越された収益もあるものの、赤字を和らげるために積立金が用いられたこともうかがえる。
こうした支出の拡大は、Blender Foundationの事業規模の拡大が原因にあるようだ。同団体は2024年、DevOpsや財務マネージャーなどといった重要な役職に人材を採用したことなどもあり、額面として赤字を出さざるを得なかったのだろう。なお理事会としては、事業拡大によるものとはいえ、過去数年間積み立ててきた財務上の準備金が許容できる水準を下回っていることを懸念しているようだ。

こうした状況に対応するため、Blender Foundationはすでに対策を打ち出しており、特に小口寄付の寄付額の増加を狙う「Join the 2%」キャンペーンを11月に実施している。Blender Foundationによれば、2023年にはBlenderは2000万ダウンロードを記録した。「Join the 2%」は、そのうちの2%のユーザーが支援をおこなうだけで開発費を賄うことができるとして、「2%」に加わろうと寄付を呼びかけるキャンペーンであった。
製品責任者であるDalai Felinto氏によると、このキャンペーンは成功したとのこと。ただ11月と遅い時期に実施されたこともあってか、「Join the 2%」による収益の計上自体は次年度に持ち越しとなるようだ。とはいえ、もともと2024年はBlenderの30周年キャンペーンを実施していたこともあり、少額寄付の額面は2023年に比して10%程度上昇している。
数々の要因により赤字を計上したBlenderながら、収益自体は増加し組織体制強化を続けており、サービス提供方針が変わることはなさそうだ。なおBlender自体については、そもそもGNU GPLのオープンソースソフトウェアであることも鑑みると、有料での提供は現実的ではないだろう。そうした中ではやはり小口/大口問わず寄付がBlender Foundationの運営における柱となっているようだ。事業拡大とあわせて、今後もスポンサーによる大口の寄付以外にも、「Join the 2%」のような小口寄付の増加に向けた施策も重要視していくとみられる。